俺と吸血鬼

クローバー

文字の大きさ
上 下
27 / 28

関係修復は一瞬

しおりを挟む
「おはよう」
「っ...?あ、おはよう」
なんか体が熱い。
いや寝起きだから体温高いのかな?
まあいいや。
「お、おお?兄ちゃんどうしたの?」
「わかんないけどなんか抱きつきたくなった」
「っ!!」
めっちゃ嬉しそう。
だけど力を込めて抱きつかないでほしい。
めっちゃ苦しい。てか痛い。
必死にバタバタ暴れつつ、尻尾でバシバシ叩いてやった。
「力加減考えろ!?」
「ごめん...てかその尻尾結構硬いんだ。地味に痛い」
「それはごめん」
「別にいいよ」
「うん。それより離してくれる?学校遅れる」
「あ、それなんだけど、兄ちゃん来年まで学校休みね」
「...うん?え、今なんて言った?」
「兄ちゃんは2年生になるまで学校休み。俺もだけど。上が調整してると思うから心配しなくていいよ」
「...陰陽師ってなんなの?」
「なんでしょう?」
「...陰陽師すげーってことで強引に納得しとく」
「世のため人のための良い組織だよ?」
「拘束するのに?」
「う、割と根に持ってるんだ...ジャックが戻ってきたら外せるから」
「...っ」
「大丈夫?」
「まあ、うん」
昨日混乱して二度と会わない的なこと言っちゃったから顔合わせずらい。
いや、もう怖くないよ?
会ったら腰引けるだろうけど。
「愛だねぇ...ジャックをぶち殺したい」
「ちょっと?」
「そんな事しないよ。ちょっと嫉妬しただけ」
やべぇ、信用出来ない。
爽やかな笑顔を浮かべてるけど、これ絶対本気で言ったよね?
「そんな顔しないでよ。だって、聞きかじりだけど、兄ちゃんを傷つけやがったクソみたいな妖怪の能力は、虚実転換と洗脳。対抗するには意志の力が強くないと駄目」
「口悪いよ?」
「ごめんごめん。けど、つまりさ?兄ちゃんはそれだけアイツのことが好きってことなんでしょ?」
「うぅ...」
確かにその説明を聞いた限りそういうことになるね。
抗うのが難しい洗脳に抗えるくらい惚れてるって俺結構ヤバいな。
「そ、そんなことよりお腹すいた!ご飯は!?」
「ふふふ、照れて可愛い。持ってくるから兄ちゃんは顔洗ったりしてて」
「頭撫でるな!」
「いいじゃんちょっとくらい」
「お前は兄に対する扱いを少しくらい勉強しろ!」
「はいはい」
笑いながらまた頭を撫でられた。
敗北感!
くそう...
憮然とした表情で睨みつけていると、哲生がベットから降りて、部屋の端っこに移動した。
「それじゃあちょっと待っててね。あ、これ転移陣なんだけど、使ったら脱走したってことで処刑だから」
「転移陣!?処刑!?はあ!?て、説明しろ!」
哲生がなんかボソッと呟いたかと思ったら、体全体が光に包まれて消えた。
...マジで陰陽師ってなんなんだ。
ファンタジーかよ。
...これ以上考えないようにしよう。
さてと、顔洗い歯磨き。
鎖をジャラジャラ言わせながら洗面台に向かう。
うるせぇ、邪魔。
どうせ転移陣?の使い方なんてわかんないんだからこんなの着けなくてもいいのに。
そんなに俺の主が怖いってことなんかな。
怖いんだろうねー。
...あ、歯ブラシは新品のやつを用意してくれたみたい。
家から持ってきてよ。もったいないでしょ?
貧乏性だなー...
微妙に意味が違う気がするけど。
いや合ってるのか?
そんなことを考えてる間にいつの間にか体が勝手に動いてやることを終わらせていた。
...まだ来てないか。
ベットにダイブする。
あーなんかさっきから体が熱い。
そんでもってなんか物足りない。
体の中心にある何かが満たされてないっていうか。
自分でも何言ってるかわかんねぇ。
「ただいまー」
「あ、おかえりー...ん!?」
突然声をかけられて、一瞬ドキッとしながら振り向くと、トレーを持った哲生がいた。
そしてその後ろに巨乳があった。
「兄ちゃん」
哲生から物凄く怖い声で呼びかけられて、慌てて目を離す。
...うん、思わずガン見しちゃったんだ。
いや、アレがあったら男なら誰でもそこに目が行っちゃうでしょ。
立派な胸部装甲をお持ちですね。
...ちょっと真面目に胸以外を見よう。
キリッとした目に、筋の通った高い鼻。
中性っぽい顔立ちだね。
髪は肩の辺りまで伸ばしてある。
色は黒から毛先が青くなってるっていうどっかで見たことがあるような色合い。
それとちょっと口を開いた時に見えた真っ白い牙。
あとなんか、この気配に馴染みがめちゃくちゃある気がするんだけど。
「えーっと...」
「あ、気づいた?」
「いや、ちょっと待て、これ、え?」
「兄ちゃんが怖がらないようにって女体化してみたらしいよ?」
「...トモヤ、大丈夫か?」
「え、あ、はい...?」
ちょっと急展開で頭の整理が必要ですね。
「とりあえずご飯食べよー。冷めたら料理人に申し訳ないでしょ?」
「う、うん?」
しゃ、釈然としねー!

...
......
.........

あ、ちなみにジャックにはご飯を食べる直前に女体化を解いてもらった。
なんかこう、ね?
抱きついてきたときに...
胸部装甲という言葉で察してください。
まあそんなことは置いといて。
「あの、2人とも?」
「なんだ?」「どうしたの?」
「昨日もそうだけど、なんで威圧を撒き散らしながらご飯食べてるの?」
胃痛食事、再び。
あのさぁ...
「兄ちゃんにヘタレ蝙蝠がちょっかい出さないように、ね」
「トモヤにブラコン野郎がちょっかい出せないように、な」
「「あ"?」」
みそしるおいしいなー。
ここから出れたら料理人にこの味噌汁の作り方教えてもらおう。
「ヘタレ蝙蝠か。ヘタレだけなら許せたが、蝙蝠呼ばわりは流石に頂けないな。吸血鬼に蝙蝠呼びはいい度胸してんじゃねえか」
「だって事実ですし。兄ちゃんとの付き合い方がわからずにウジウジしてるお前にはヘタレ蝙蝠呼びで十分だよ。それよりもブラコン野郎ってなんだよ。事実無根なことをさも当たり前のように言うのやめてくれないかな」
うーん、漬物も結構美味しい。
これ作った料理人さんうちに連れていきたいな。
いやしないけど。
「事実無根?何言ってんだか。中二にもなって兄離れどころか執着はます一方。それに加えて乳首開発したり、挙句の果てには抱いて従魔にしたんだろう?」
「黙れ、蝙蝠が」
「お前こそ黙れ」
あ、水が入ってるコップが割れた。
「痛って...」
コップの破片が指を引っ掻いて少し血が出てきた。
...現実逃避して無視しなきゃよかったかな。
なんかだんだん威圧と言うか殺気というかの密度が上がってきてるんだけど。
もう俺なんか目に入ってなさそう。
放置しといたらまた気絶する羽目になりそうだから手を打つか。
食べ終わった食器をトレーから下ろす。
んでそのトレーを持ち上げて振り下ろす。
バァン!という小気味いい音が部屋に響いた。
呆気にとられてるところ悪いけどお前もだ、ジャック!
バァン!以下略。
そこで一言。
「2人ともいい加減にしろ!!」
うん、スッとした。

俺の目の前には正座をした二人がいる。
ちなみに俺は睨みつけるさんになっている。
二人の視点から見たら炎っぽいオーラを纏ってるみたいだから間違ってないと思う。
なんかこの前同じようなしたときに哲生から炎のオーラをまとってたって言われたんだ。
それくらい激怒したように見えたらしい。
実際怒ってたし。
「ごめんなさい」「すまなかった」
「どうして昨日の今日で同じことをするの?俺二人の力で見た目多少人外になってるけど中身は人間なの!二人の喧嘩に巻き込まれたら簡単に死ぬの!」
これは事実。
実力行使をしなくても、今やってるような牽制レベルでも普通に死ねる。
「ジャックが...」「テツオが...」
「子供じゃないんだから喧嘩を売ったり買ったりしない!」
「いや俺中二だし、まだ子供だし」
「中二くらいならもうやっていいことと悪い事の区別くらいつくでしょ。それに、お前の場合被害がでかすぎて子供の可愛い喧嘩として見ることができない。死人が出る喧嘩は戦争と一緒」
「...そうなの?」
「いや知らんけど。ジャックもさあ、あんた年いくつよ。絶対年寄りと言う概念が崩壊するくらい長生きしてるでしょ?ちょっとは周りを見て行動してよ。というわけでどうぞ、ここから出ていって思う存分喧嘩してきてください。あ、哲生、絆創膏無い?」
「...うわ、めっちゃ切れてるじゃん。ホントごめんね兄ちゃん」
「いや、もう怒ってないから。そこまで落ち込まれたら申し訳なくなるから落ち着いて?ほら、これも血は結構出てるけど見た目ほど怪我してるわけじゃないから」
そう言って指を動かして見せる。
地味に痛かったからやるんじゃなかったと後悔した。
「...ちょっと見せてみろ」
「え、うん。ちょっと!?」
怪我をしたところをジャックがぺろりと舐める。
唾液が染みてピリッとした痛みを感じた。
「もう痛くないか?」
手を見ると、切れてた部分がもとに戻っていた。
傷跡も残ってないってヤバいね。
「うわ、これどういう仕組?まあ、ありがとう。だけど突然始めないで。びっくりするから」
「あぁ」
「...じゃあ俺はやることがあるからもう行くね。しばらくこの部屋から出すことはできないけど、勉強道具とゲーム類は持ってきたから。ジャック、しばらくよろしくね」
「分かった」
うわーこれジャックいるからだいぶマシだけど普通に監禁じゃん。
「俺っていつからここから出られるの?」
「うーん...一週間くらい?色々しなきゃいけないことがあるから。それとここから出たらまず戦いのテストがあるからそのつもりで」
「...へ?」
「陰陽師の一員として戦ってもらうことになるから」
「いや無理だけど。戦えるわけ無いじゃん」
「大丈夫、なるようになるから。それじゃあまた」
「え、あ、じゃあね?」

はい、監禁生活開始です。
...とりあえずラインにクラスの連中から連絡が来てるからそれ見よう。うん。
現実逃避は大事。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

ガテンの処理事情

BL
高校中退で鳶の道に進まざるを得なかった近藤翔は先輩に揉まれながらものしあがり部下を5人抱える親方になった。 ある日までは部下からも信頼される家族から頼られる男だと信じていた。

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

柔道部

むちむちボディ
BL
とある高校の柔道部で起こる秘め事について書いてみます。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

一人の騎士に群がる飢えた(性的)エルフ達

ミクリ21
BL
エルフ達が一人の騎士に群がってえちえちする話。

なんか金髪超絶美形の御曹司を抱くことになったんだが

なずとず
BL
タイトル通りの軽いノリの話です 酔った勢いで知らないハーフと将来を約束してしまった勇気君視点のお話になります 攻 井之上 勇気 まだまだ若手のサラリーマン 元ヤンの過去を隠しているが、酒が入ると本性が出てしまうらしい でも翌朝には完全に記憶がない 受 牧野・ハロルド・エリス 天才・イケメン・天然ボケなカタコトハーフの御曹司 金髪ロング、勇気より背が高い 勇気にベタ惚れの仔犬ちゃん ユウキにオヨメサンにしてもらいたい 同作者作品の「一夜の関係」の登場人物も絡んできます

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...