俺と吸血鬼

クローバー

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体育の授業

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「お、おはよー...」
「うん!?智也どうしたの、そんなにやつれて」
「...朝から色々あってね」
「色々ってなんだよ」
「まぁ、ね?」
流石に弟と吸血鬼の威圧で憔悴してるなんて言えないし...
「言いたくないなら聞かないけど...頼ってくれていいからね?」
頭をポンポンと撫でてくれた。
割と心配そうな顔をしてる。
あぁ、親友の優しさが身に染みる...
とりあえず恥ずかしいから手をどかす。
「にひひ、敵同士の2人に取り合いされてて大変だね!」
「...死ね」
そっと自分の席に戻る。
健太はふにゃってした感じで安心感があるけど、Kはなんか雰囲気が気色悪いから嫌い。
マジで何故か神経を逆撫でしてくる喋り方するからなー。
それに抑制剤的なやつで騙してきた前科もあるし。
...だけど、主2人が戦ってる時に助けてくれたのは嬉しかった。
喜べる要素はそこしかないけど。
...そういえば俺オッドアイ&エルフ耳なのに何も言われてないな。
Kが上手いこと印象操作してくれてるのかな。
喜べる要素追加で。
「認めてくれて嬉しいねー」
「うおっ!?急に話しかけるな!あとさりげなく心読むな!」
「さっき死ねって言ったんだからこれくらいのことならしてもいいでしょー?」
「いや良くない」
「えー?ならさぁ、体操服貸してくれない?健太が忘れたみたいなんだよねー」
「...まあ、それくらいならいいかな」
「さっすが智也!やっさしー!」
「お前が喜ぶのはなんか違くない?」
「僕には関係ないしねー。そもそもこうやって頼む必要すらないけどねー」
「は?」
「歴史を改変できるって前言ったじゃん。体操服を持ってきた世界線にするくらい造作もないよ」
...
突っ込んだら負けだし、気にしても負け。
この世には知らない方がいいことも沢山あるのだ!
「それじゃあ俺は帰るよ。また面白そうなことがあったら来るし、暇になっても来る」
「せめて面白そうなことがあってから来て欲しい。ていうか二度と来るな」
「ふふふ、僕嫌われてるねー。それじゃ...うぅ頭痛い...智也、頭痛薬持ってない?」
「持ってない。今度から持ってくるようにしたら?」
「そうするー...あぁ、あと体操服のジャージ持ってない?忘れてきちゃって...」
「おっけー、ジャージ貸してあげる。ただしジュース奢りな!冬にジャージなしはきついんだから」
「わかった!ありがとう!」
犬かな?
なんか俺の周りに犬が増えてる気がする。
俺自身はネコだけどな!
あっはっは!
...
キッッッツ
もういいや、何も考えずに椅子に座ってじっとしとこう。
何も考えなければ悶々としなくて済む。
「高野!おーい、高野ー!」
「ひ、ひゃい!!」
いつの間にか先生が来て点呼を取っていたみたい。
「月曜の朝からボーっとしてどうした?」
「いや、なんでもないです」
周囲でクスクスと笑い声が聞こえて顔を真っ赤にしてそう言う。
うっわダッサ...
黒歴史ノートに新しい書き込みが増えました。

「はい健太」
「ありがとう!さすが親友!」
「煽ててもジュース奢りは消えないよ」
「ちぇっ...」
なんて平和なんでしょう!
これ哲生とジャックから距離を取れば平和な日常が戻るんじゃ...
『俺とテツオが逃がすと思うか?』
背筋にゾワっとした物が走る。
カバンの中に隠れてるはずなのに、背後から抱きしめて頬を撫でられてる気がする。
『俺たちから離れようとするなよ?』
はい分かりました絶対に離れませんだから遠隔で威圧を飛ばさないでください死んでしまいます。
所作は優しいのに声が怖い。
その所作もイメージだけど。
「ちょっ、どうした!?顔青いし震えてるし!」
「な、なんでもない...」
「お前朝から様子おかしいよ?保健室行く?」
「いや大丈夫。精神的なやつだから」
「尚更大丈夫じゃない気が...いやけど智也が大丈夫って言うんなら...」
そうブツブツ言いながら着替え始めた。
時間があれだから俺も便乗して着替える。
「あれ?智也運動始めた?なんか体がゴツくなってる」
言われて体に視線を向ける。
確かにちょっといい感じの体になってる。
前まで平らだったのに腹筋ができてるし。
...心当たりで顔が赤くなってしまった。
絶対これ2人とヤッた影響よねー...
オッドアイ&エルフ耳と違って困らないってかむしろ嬉しいからいいけど。
「健太のに比べたらまだまだだよ。生粋の運動部に俺が勝てるわけない」
こいつサッカーやってるしね。
「まあね。着替え終わったしそれじゃあ体育館行こ」
「おっけー」

やって来ました!体育館!
寒いです!健太にジャージ貸したの後悔してます!
1本と言わず2本奢ってもらおうかな...
さてさてそんな中する競技はバスケットでございます。
死ぬわ!!
バレーほどじゃないけど、バスケは寒い中やると軽く死ねる競技なんだよ!
ボールが硬いから受け取ったときがマジで痛い。
あー見学したい...
「はいじゃあ男女別で2チームずつ作ります。出席番号の偶数と奇数に分かれてください」
健太と同じじゃないのか...
ジャージの分働いてもらおうと思ったのに。
「最初は男子同士でゲームをします。女子は端っこで見学してください」
よーし挨拶が終わったらコートの端っこによって見学しましょう!
俺運動音痴だからいても邪魔にしかならないし...

ピーーー!!

さあ始まりました、1年5組バスケ選手権!
初手はこっちのチームがボールを取りましたね。
どんどん前に攻めていきます!
あの人って確かバスケ部の人じゃなかったっけ?
本業の人がいるのはずるいよねー...
「キャー、日野君かっこいいー!!」
女子からも黄色い声援が飛び交っております。
俺?俺は自軍のゴールのところで突っ立っとくだけの簡単なお仕事です。
このまま無双しててくれー。
そうは問屋が卸さなかったけど。
颯爽と現れた小さい影が、日野君からボールを奪ってこっちに突っ込んできた。
...ん?突っ込んできた?
「高野!守れ!!」
「いや無理です無理です!!」
俺が本業の人に勝てるわけ無いでしょ!?
とりあえず目の前に出てきたけどどうしようこれ!!
そうやってテンパっている間にも水島君(この人の名前)はゆっくりと近づいてきて、後ろに回り込もうとしている。
...あれ?なんか遅くね?
なぜだかわからないけどゆっくりに見える。
ほんとに何で?
だけどそんなことは後回し。
ボールをゴールにシュートしようとしている体勢からでは特に抵抗できないと判断して、ジャンプして後ろからボールを触る。
それで軌道がずれたのか、ゴールネットの端っこにぶつかってあらぬ方向に飛んでいく。
それをダッシュで取り、日野君に投げ渡す。
「ナイス!後は任せろ」
水島君も追いかけようとしていたけど、結構距離があったから追いつけなさそう。
日野君の足止めが効いてなさそうだし。
面白いよね、敵チームも壁作ってるのに思いっきりスルーされてるもん。
あっという間にゴールに近づき、ボールがゴールに入るパスッという音が聞こえた。
圧倒的ではないか!我が軍は!
ほとんど日野君しか何もしてなかったけどそこはそれ。
「日野君すごかったね!何人も抜き去っていって。かっこよかった!」
「水島君最初に一気に押し返してたのすごかった」
「高野君もじゃない?高野君がいなかったら水島君がゴール入れて終わってたもん」
俺も話題に上がってる...嬉しい...
「お前よくあの状況でゴール防げたな」
健太が後ろから近づいてきて、腕を首に回してきた。
「たまたま。奇跡的にボールに触れただけ」
「運痴の智也がバスケ部のゴールを止められたんだぞ?」
「運痴は余計!!」
俺をなんだと思ってるんだろう。
「日野と水島は手加減してやってくれ。これじゃ他の人が何もできない」
流石にさっきの様子を見て、先生が手加減するように指示を出す。
そりゃあね。
んじゃあ俺はゴールの方に行ってまた置物になっとこう。
「高野ー、お前オフェンスやって」
嫌です。
「確かにさっきの動き良かったし、一回オフェンスしてもいいと思うよ。てかさっきゴールから全く動いてなかったし一回やってみて」
うっ、サボるなって言われてる気がして断れない...
「わかった...足引っ張ると思うけど許して」

さあ続きが始まりました!
俺は現在ボールを持っています。
そして囲まれております。
俺の立ち位置じゃない!
俺は外側から見守るタイプの人だよ?
てかこれの打開方法を教えてくれ!
とりあえず外側にいる味方にパスをする。
はい俺の出番終了。
「高野パス!」
「あ、え、まってまって!」
何で俺なんだよ!?
とりあえずキャッチはしたから反射的にドリブルをして突っ込んでいく。
戦術もクソもない、ただの特攻。
...なんだけど案外どうにかなってる?
え、ゴール来たよ?シュートするよ?入れるよ?
投げてみると、ちょっとリングのところでくるくるしたけど普通に入った。
周りから歓声が聞こえる。
えー...何で普通に出来てるの?

そんなこんなで時間が来て男子の出番は終了。
結果はこっちチームの圧勝でした。
ちなみに点を入れまくったのは俺。
逃げたかったけど、みんなにいい笑顔で前に押し出された。
てか何で俺こんなに運動できてるの?
...やっぱり、ジャックの力が...ヤッた事によってー...受け渡された的なー...感じ?
うぅ...この素直に喜べない感じ...
身体能力が上がるのは嬉しいけど、ヤるのは嫌だー...
あーもう疲れたし、冬なのに汗びっしょりだしで気分が落ち込む...
「智也危ない!」
え?
その声が聞こえた瞬間腕を引っ張られて倒れ込んだ。
まってなになにが起こった!?
「イテテ...」
「荒っぽくやってごめん、ボールが当たりそうになったから...」
「二人とも大丈夫!?ごめん私のコントロールが悪かったから...」
どうやら...この、名前なんだっけ?
あ、小野さんだ。
小野さんの投げたボールが俺に当たりそうだったってことで健太が引っ張ってくれたみたい。
「健太ありがとう。小野さんも気をつけてね。それと健太は離してくれない?くっそ恥ずかしいんだけど」
今の俺は健太に抱きつく感じで倒れ込んでいた。
ものすんごく恥ずかしいから今すぐに離してくれないかな!!
「ごめん...今の衝撃で腰がめっちゃ痛くて...ちょっと身じろぎしただけで響くから今動かないで...」
首を動かして顔を見ると、めっちゃ涙目だった。
そんでもって泣きそう。
「大丈夫?保健室連れて行こうか?」
「そこまでは痛くないから大丈夫。ちょっと衝撃でジーンとしてるだけだから...」
「できるだけ早く治して。この状況恥ずかしすぎて死にそう」
「しゃーない。前向いて座って」
「それだったら離れて良くない?」
「無理、捕まるものがほしい」
反転して健太の足の間に座ったらお腹のところをホールドされた。
うー...これはこれで恥ずかしいけどまあいいか。

「はぁ...はぁ...」
ぼーっとしてると、上から荒い息が聞こえてくる。
ついでになんか鼓動が早い。
んーそれとなんか股間のところがもっこりしてるように感じるのも気のせいだよね?
だよね!?
「健太どうしたの?」
「え!?あ、いや、なんでもないよ?」
なんでもある人の反応なんだよなー。
いい加減腰痛くないだろうと思って体を起こそうとしたけど、普通に抑えられて動けなかった。
「待って動かないで。見られたら困る!」
「そりゃあね。けど俺もこのままでいたくないし、健太もバレたらアウトだから移動しよ」
「いや移動したらバレるでしょ」
「大丈夫、任せて。せんせー!健太がまだ腰痛いって言ってるから保健室連れていきます」
「おーわかった」
よし許可貰った。
「ちょっ!?」
「ふふっ、保健室まで運んであげますよ、お嬢様!」
「やめろもっと方法あっただろ!」
「うるせー!俺のこと抱いてたんだからこれくらい我慢しろ!」
健太のことをお姫様抱っこした。
めっちゃ重いんだけど。
とりあえず俺は健太をお姫様抱っこしつつのっしのっしと保健室に向かった。
周りがめっちゃ見てる気がしたけど綺麗に無視した。
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