俺と吸血鬼

クローバー

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2人の主

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...
この世の全ての神に感謝。
俺を兄ちゃんの弟に産んでくれてありがとう!
厳密には兄ちゃんが兄でなければ俺は弟ではないけど。
まあそんなことは関係ないよね。
とりあえず頭を持ち上げて腕を引き抜く。
まだまだ俺の腕の上でスースー寝息を立てている兄ちゃん愛でてたいけどやることがあるからね。
...行きたくねー!
だけどなんか熱烈な殺気を浴びせてくる奴がいるんだよね。
もうほんとにさー...
「うぅん...」
...
ほら、兄ちゃんも引き止めてくれてるしー...
ほんと、もうちょっとだけ...
『...』
あっ、ダメ?
案外嫉妬深いんだなアイツ。
いそいそとベットから這い出して、もう1回ベットに潜って、毛布を整えて...
おやすみ!
『...』
ったくさー!
あなたの眷属が寝てるのに震えてるよ?
俺に殺気を向けるのはいいけど二次被害が兄ちゃんに来るからやめてくれない?
これ兄ちゃんが起きてたら確定で気絶コースだよ?
まじでぶっ殺すよ?
『だったら早く来い』
はいはーい。
これ以上怒らせたら大変なことになりそうだから行っとこ。
俺は大丈夫だけど兄ちゃんが心配。

「はいはいわざわざ来てあげましたよー」
「...」
「おわっ!?ちょっとふざけただけじゃん!攻撃しなくても良くない!?」
「かなりイラッとしたからしょうがない」
あのさ、あなた吸血鬼の真祖って自覚ある?
ただでさえ強いのに夜になったら力が上昇するって性質があるのおわかり?
普通に避けたら家に甚大な被害が及ぶからわざわざ相殺しないといけない俺の気持ちもおわかり?
それをイラッとしたからって理由で発散するのやめてくれる?
うー、やり返してぇ...
だけどそれしちゃったらマジバトルに発展して大変なことになるから我慢する。
ほんとね、俺たちレベルになるとちょっと戦うだけでも周りの被害がデカすぎるんだよね。
悔しい、我慢するしかできないのが悔しい。
「フッ」
「...」
自制心よ、さようなら。
台所に直行。
えーっと...あ、あったあった。
哲生選手、振りかぶって、投げたー!
なんということでしょうー。
ジャックがめちゃくちゃ嫌そうな顔をしているではありませんかー
俺がしたことはなんてことは無い。
単純にニンニクを投げつけただけ。
本当は包丁を投げたかったんだけどこっちのほうが効くし。
いくら弱点を克服したと言っても苦手は苦手。
昼に外を出歩くことはあんまりしてないし、そのほかの弱点のものも結構避ける。
まあ苦手だから避けてるだけで効きはしないんだけどね...
だけど殴る切るとかよりも効くのはホント。
もし仮に俺が包丁を投げつけたとしても一瞬で傷が回復して終わり。
そもそも普通の武器でジャックを傷つけるのが難しいし。
もし仮にマシンガンで蜂の巣にしようとしてもケロッとしてると思う。
だから俺が包丁を投げつけてちょっとでもジャックを傷つけられるのはかなり凄いんだよ?
まあ普段は陰陽師の特殊武器を使うんだけど。
こっちなら簡単にダメージを与えられるし。
倒せるかどうかは別だけど。
だけどニンニクはやばい。
投げつけるだけで精神的に大ダメージを与えられる。
それだけじゃなくて、ある程度の量があれば普通に撤退させることが可能。
あれだね、ジャックから見たらニンニクってゴキブリなのかも。
そりゃあG投げつけられたら精神的に大ダメージ受けるわ。
ましてや大量に居たとなったら撤退もしたくなるね。
...今度からはよっぽどの事がない限り投げつけないようにしよう。
いくら敵対関係にあるって言っても流石に可愛そう。
...こんな考えができる俺、大人。
「っ!」
痛った!
ジャックに殴られた!
大丈夫かな?頭えぐれてないよね?
「今なんか変なこと考えてなかったか?まあそうじゃなくても殴ってたが」
「なんで急に殴るのさ!」
「お前他人にゴキブリを投げつけられて許せるのか?」
...
俺内心で同じようなかと考え終わったばっかりなんだけど。
どうしようかな、もう一回投げつけようかな。
これはよほどの理由になると思う。
「まあ、それに関してはもういい。それよりも俺に言うことがあるんじゃないか?」
「え、なんかあったっけ?」
「...」
すごい。
殴りかかる直前のポーズで固まってる。
俺だったら理由関係なしにそのまま振り抜いてるかも。
「お前な、何勝手に契約結んでるんだ?」
「え、だめだった?」
「...初めてお前を本気で殺したいと思った」
熱烈な殺意をありがとう。
全く嬉しくないよ。
「だってジャック居なかったしー、俺も兄ちゃんのこと好きだしー、兄ちゃんもほとんど抵抗しなかったしー」
「はぁ...まあ過ぎたことはしょうがないか。それに契約を結べたってことはそういうことだしな」
「でしょ?ジャックもそこのところわかってるでしょ?」
「だけど、あいつにはちょっとお仕置きしたほうがいいかもな」
アイツ、お仕置き...
「あ?お前言っていいことと悪いことあるのわかってるよな?兄ちゃんに手出しするならただじゃ置かないけど?」
「手を出すとは言ってない」
「...わかった。けど一つだけ言わせて。言う意味はないと思うけど」
「なんだ?」
「ヤるのはいい。俺もしたし。だけど、兄ちゃんを傷つけるのは絶対に駄目。もしこれを破ったらジャックのこと殺すから」
「俺が言えたことじゃないがヤるのはいいのかよ...ま、安心しろ、主従契約を結んだからには俺にも責任があるしな」
「...ジャックったら、立派になって...お父さん嬉しいよ」
「お前は親父じゃなくて弟だろうが」
「ま、関係ないよ。っていうか俺たちって結構やばい関係よね...」
「そうだな。血の繋がりはないが遺伝子的には兄弟みたいなもんだしな」
「その長男と末っ子が敵対してるって事実、怖いねー。真ん中の兄ちゃん可哀想」
そういえばこれジャックと兄ちゃんが出会ったからこんな感じになったんだよね?
元凶ジャックじゃん。
まじで兄ちゃん可哀想。
「そうだな...だが、これからどうするんだ?」
「どうって?」
「トモヤの立ち位置、かなり危険だ。俺につくのかお前につくのか決めとかないと命を狙われるぞ」
...
確かにそうだね。
少なくともジャックに付かれたらまじで命が危ない。
俺についてくれたら丸く収ま...らないね。
ジャックと戦わないといけないことになる。
どっち道辛い選択になる。
「そもそも兄ちゃんのことだからどっちか片方なんて選べないと思う」
「確かに」
「はー...なんかいい案ない?兄ちゃんが不幸にならない選択は...」
「...しょうがない俺が陰陽師に入る」
「そうだよね。あるわけ無いか...は?」
何いってんのこの吸血鬼。
「俺が陰陽師に入れば争う理由もなくなる。そうなれば必然的にトモヤを狙う理由がなくなる」
「正気?」
「お前たちは俺という危険な存在と争う理由がなくなる。俺はトモヤを危険に晒すことがなくなる。いい案じゃないか?」
「...一理あるかもしれない。ちょっと上司に掛け合ってみる」
「ありがとう。ただしこれを俺が許可するには条件がある」
何いってんだこいつ。
いや、まあここで下手に刺激してこの話はなかったことにが一番困るから大人しく聞こう。
「言ってみてよ?」
「一ヶ月トモヤを貸せ」
「はぁ!?無理に決まってんだろ!」
「じゃあ俺が陰陽師に入るのを辞めるが?」
「くっ...」
それは困る。
ぶっちゃけみんなが幸せになる方法がそれ以外に思い浮かばない。
それ以外だとどうしても兄ちゃんが不幸になる。
それだけは断じて認められない。
「...くそ、わかったよ」
「ありがとな」
あら爽やかな笑顔。
その笑顔に拳をめり込ませたいと思う今日このごろ。
その後、口約束だとあとが大変だからと紙の証拠を用意した。
流石に約束は破らないっての。
「それじゃあもう寝るか。テツオも学校があるんだろ?」
「親みたいな事言うじゃん。ってもうこんな時間か」
「トモヤと一緒に寝たいか?流石にずっと離すのは可愛そうだしな」
「ジャック...」
優しいねー。
裏がありそうで怖いねー。
断っておこう。
そもそも三人も入るくらい広くないし。
「ありがたいけど遠慮しとくよ」
「そうか?それじゃおやすみ。早く寝ろよ」
「ん」
そう言ってジャックは先に上に行ってしまった。
はぁ、めんどいことになっちゃった。
だけど自分たちの撒いた種だし自業自得なのかな。
さてと、俺も寝るか。
電気を消して二階に登る。
ふと階段のところにある窓から外を覗くときれいな夜空が見えた。
ふふ。
このきれいな夜空を兄ちゃんとずっと一緒に見るためにも我慢しなきゃね。
それじゃあおやすみ。
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