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僕と幼馴染
僕は守れない約束をする
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サクリファス・オブ・ヒーロー通称【SOH】のシナリオを思い出したのは『自然迷宮』に入り浸り意味もなく使える魔法の効率化を目指して試行錯誤を繰り返している時であった。
唐突に思い浮かぶ謎の名称は不思議と懐かしみを感じる程度の認識でしかなかった。けれども徐々に思い出す魔物の姿と【SOH】に存在する『自然迷宮』という単語。その一つ一つに導かれるように頭の中でこの世界=【SOH】ではないかと仮定を生み出していた。
自分が調べていたこの世界のことについて大きく知ることが出来るのではないかと期待に胸を膨らませた。仮定が出来たならそれについて調べることが出来る。僕が知っている情報源からこの世界に関する物をごく僅かだが得た。その結果、この世界は【SOH】の世界に限りなく近い世界であることがわかった。
それがわかった時、僕は凄く嬉しかったのだと思う。何故だかわからない興奮する気持ちが湧き上がって抑えきれなかった。だが、それは少しだけの余韻でしかなかく僕はすぐさまほんの僅かに思い出した今後のシナリオに感情は一変と怒りに変化した。
【SOH】は前世に人気があった戦略型オンラインゲームである。プレイヤーは主人公"リヴェル"を操り莫大なシナリオが変わる選択肢の中から一つを選び苦難と困難を乗り越えてながらその世界に存在する"魔女"の危機から世界を救い出す物語だ。
【SOH】の世界でリヴェルに待ち受ける最初の選択肢は『戦う』か『逃げる』の二選択だ。『戦う』のを選択すると数人の命が無くなりマリナが魔女に連れ去れる。『逃げる』のを選択すると魔女たちは村の人々はマリナとリヴェル以外は一人残らず虐殺される。
前者は少人数の犠牲、後者は大人数の犠牲。どちらにしても犠牲が伴い救える命が救えなくなる。数的に考えると『戦う』を選ぶのが最善の選択であるが今後に起こるイベントで多くの人々が犠牲になり守ってきた民から裏切られて処刑される。だからと言って『逃げる』に選択すると魔女を倒しても魔女への憎しみが消えず、死んでも亡霊として世界を彷徨い続ける。どちらにしてもBADEND。何とも言えない極めて悪質な選択肢であった。
『犠牲の上に幸福が存在する。彼らの犠牲が全ての幸福となった』と全部の最終エンドにそれが表示されたことに前世の僕は腹を立てていたのかもしれない。ふざけるな!とそれらのエンドに怒りをぶつけていたのかもしれない。今の僕が怒りの気持ちを孕ませている様に。
もし、この世界が【SOH】の世界線ならこの世界のリヴェルも同じような事が起こり得る。最悪な結末がリヴェルを待ち受けている。僕はそれがどうしても許せない。このような結末を僕は望まない。僕がこの世界を変える。リヴェルの最悪な結末を未然に防ぐために。
だが、力無き者がその目的を立てても机上の空論に過ぎない。大きく運命を変える力が無ければこの目的は成立しない。もし此処までに何も得なかったら僕はそれを成し得えず後悔をしていただろう。けれど今の僕には"魔法"がある。大きく運命を変える力が僕の手の中に既にあったのだ。誰も犠牲にせず、誰もが幸福になれるそんな世界にすると僕はその時に決意をした。
綺麗に光る無数の星空の下で人が賑やかに騒ぐ。何百年経っても枯れないと言われている神樹の根元付近でテーブルと椅子を並べ、中央に薪をくべてキャンプファイヤーが燃えている。テーブルの上には沢山の豪華な料理が並べられ隅に何年もの倉庫で保管して熟成させたこの村の名産物である酒が入った樽をある分だけ積んで村の住人で円を囲むように椅子に座り、村一番の行事である『生誕祭』の宴会は賑やに満ちていた。ある者は沢山の料理を口に頬張り、ある者は自分の仲間と一緒に酔い潰れるまで酒の飲み対決を行い、ある者は中央で歌や踊りを村の人々に披露している。
僕はこんなに人が賑わい密集している所はあまり好きでは無い。どちらかと言うと嫌いであった。此処に居るだけで僕は人に酔ってしまいそうであった。
「大丈夫かしらセルス君。」
「大丈夫、セルス君。」
顔に出ていたのか心配して僕を挟むように幼馴染であるマリナとリヴェルが席に座る。
「大丈夫だよ。ただ、人混みが少し苦手なだけ。」
そう言って僕はテーブルに置いてあるコップの中の水を飲み干した。
「そう、昔からセルス君は人混みが苦手でしたもね。」
相変わらず無表情のポーカーフェイスな彼女は隣で優雅に食事をしていた。
「……………。」
「……………。」
そしてリヴェルとは何の会話もなく長い沈黙を貫いていた。
「ねぇ、一週間前からセルス君とリヴェル君よそよそしくなったているのだけど、前に何かあったのかしら。」
この空気に流石のマリナでも疑問に思えたのか前に何かあったのかと聞いてきた。
「あはは、何もありませんでしたよ。」
リヴェルは乾き切った笑顔を振り舞えてそう答えた。誰にでも分からないその笑顔は長年の付き合いであったマリナは誤魔化しきれないかった。何かを察したマリナは「そう。」とこれ以上追求はして来なかった。
再び流れるように沈黙が訪れる。けれど再び流れた沈黙は長くは続かなかった。
「………ねぇ、セルス君。」
冷たく流れた沈黙はリヴェルの勇気が籠った声により掻き消されていった。
「ごめんなさい。前に僕が言ったのはあくまで"友達"として居てくれるかなと聞いただけでだからその……。」
言葉を必死に選びながら前に言った言葉の誤解を解いている。けれどその続きの言葉が繋がらなかったがしっかりと思いは僕に伝わった。
「リヴェルの言いたいことは何となく分かったよ。それなら尚更の事僕の方こそ謝らせ。ごめん"友達"として君を傷付けてしまった。だから責めても償いとして、」
僕は小指を立ててリヴェルに向ける。意図がわかず、僕と同じようにリヴェルは小指を立てて僕はその小指に絡めた。
「これはその永遠に消えない約束。僕たちは遠く離れても心はずっと一緒だよ。」
「うん!」
前世の記憶の中にあった子供の頃に喧嘩した友達との仲直りの方法。硬く守れる友達の証。僕とリヴェルだけのなくならない口約束であった。
だが、これは守れない約束だと僕は知っていた。知っていながら僕はリヴェルとかの繋がりを少しだけ保つ為に約束の嘘をついたことに僕は後悔はしていない。
唐突に思い浮かぶ謎の名称は不思議と懐かしみを感じる程度の認識でしかなかった。けれども徐々に思い出す魔物の姿と【SOH】に存在する『自然迷宮』という単語。その一つ一つに導かれるように頭の中でこの世界=【SOH】ではないかと仮定を生み出していた。
自分が調べていたこの世界のことについて大きく知ることが出来るのではないかと期待に胸を膨らませた。仮定が出来たならそれについて調べることが出来る。僕が知っている情報源からこの世界に関する物をごく僅かだが得た。その結果、この世界は【SOH】の世界に限りなく近い世界であることがわかった。
それがわかった時、僕は凄く嬉しかったのだと思う。何故だかわからない興奮する気持ちが湧き上がって抑えきれなかった。だが、それは少しだけの余韻でしかなかく僕はすぐさまほんの僅かに思い出した今後のシナリオに感情は一変と怒りに変化した。
【SOH】は前世に人気があった戦略型オンラインゲームである。プレイヤーは主人公"リヴェル"を操り莫大なシナリオが変わる選択肢の中から一つを選び苦難と困難を乗り越えてながらその世界に存在する"魔女"の危機から世界を救い出す物語だ。
【SOH】の世界でリヴェルに待ち受ける最初の選択肢は『戦う』か『逃げる』の二選択だ。『戦う』のを選択すると数人の命が無くなりマリナが魔女に連れ去れる。『逃げる』のを選択すると魔女たちは村の人々はマリナとリヴェル以外は一人残らず虐殺される。
前者は少人数の犠牲、後者は大人数の犠牲。どちらにしても犠牲が伴い救える命が救えなくなる。数的に考えると『戦う』を選ぶのが最善の選択であるが今後に起こるイベントで多くの人々が犠牲になり守ってきた民から裏切られて処刑される。だからと言って『逃げる』に選択すると魔女を倒しても魔女への憎しみが消えず、死んでも亡霊として世界を彷徨い続ける。どちらにしてもBADEND。何とも言えない極めて悪質な選択肢であった。
『犠牲の上に幸福が存在する。彼らの犠牲が全ての幸福となった』と全部の最終エンドにそれが表示されたことに前世の僕は腹を立てていたのかもしれない。ふざけるな!とそれらのエンドに怒りをぶつけていたのかもしれない。今の僕が怒りの気持ちを孕ませている様に。
もし、この世界が【SOH】の世界線ならこの世界のリヴェルも同じような事が起こり得る。最悪な結末がリヴェルを待ち受けている。僕はそれがどうしても許せない。このような結末を僕は望まない。僕がこの世界を変える。リヴェルの最悪な結末を未然に防ぐために。
だが、力無き者がその目的を立てても机上の空論に過ぎない。大きく運命を変える力が無ければこの目的は成立しない。もし此処までに何も得なかったら僕はそれを成し得えず後悔をしていただろう。けれど今の僕には"魔法"がある。大きく運命を変える力が僕の手の中に既にあったのだ。誰も犠牲にせず、誰もが幸福になれるそんな世界にすると僕はその時に決意をした。
綺麗に光る無数の星空の下で人が賑やかに騒ぐ。何百年経っても枯れないと言われている神樹の根元付近でテーブルと椅子を並べ、中央に薪をくべてキャンプファイヤーが燃えている。テーブルの上には沢山の豪華な料理が並べられ隅に何年もの倉庫で保管して熟成させたこの村の名産物である酒が入った樽をある分だけ積んで村の住人で円を囲むように椅子に座り、村一番の行事である『生誕祭』の宴会は賑やに満ちていた。ある者は沢山の料理を口に頬張り、ある者は自分の仲間と一緒に酔い潰れるまで酒の飲み対決を行い、ある者は中央で歌や踊りを村の人々に披露している。
僕はこんなに人が賑わい密集している所はあまり好きでは無い。どちらかと言うと嫌いであった。此処に居るだけで僕は人に酔ってしまいそうであった。
「大丈夫かしらセルス君。」
「大丈夫、セルス君。」
顔に出ていたのか心配して僕を挟むように幼馴染であるマリナとリヴェルが席に座る。
「大丈夫だよ。ただ、人混みが少し苦手なだけ。」
そう言って僕はテーブルに置いてあるコップの中の水を飲み干した。
「そう、昔からセルス君は人混みが苦手でしたもね。」
相変わらず無表情のポーカーフェイスな彼女は隣で優雅に食事をしていた。
「……………。」
「……………。」
そしてリヴェルとは何の会話もなく長い沈黙を貫いていた。
「ねぇ、一週間前からセルス君とリヴェル君よそよそしくなったているのだけど、前に何かあったのかしら。」
この空気に流石のマリナでも疑問に思えたのか前に何かあったのかと聞いてきた。
「あはは、何もありませんでしたよ。」
リヴェルは乾き切った笑顔を振り舞えてそう答えた。誰にでも分からないその笑顔は長年の付き合いであったマリナは誤魔化しきれないかった。何かを察したマリナは「そう。」とこれ以上追求はして来なかった。
再び流れるように沈黙が訪れる。けれど再び流れた沈黙は長くは続かなかった。
「………ねぇ、セルス君。」
冷たく流れた沈黙はリヴェルの勇気が籠った声により掻き消されていった。
「ごめんなさい。前に僕が言ったのはあくまで"友達"として居てくれるかなと聞いただけでだからその……。」
言葉を必死に選びながら前に言った言葉の誤解を解いている。けれどその続きの言葉が繋がらなかったがしっかりと思いは僕に伝わった。
「リヴェルの言いたいことは何となく分かったよ。それなら尚更の事僕の方こそ謝らせ。ごめん"友達"として君を傷付けてしまった。だから責めても償いとして、」
僕は小指を立ててリヴェルに向ける。意図がわかず、僕と同じようにリヴェルは小指を立てて僕はその小指に絡めた。
「これはその永遠に消えない約束。僕たちは遠く離れても心はずっと一緒だよ。」
「うん!」
前世の記憶の中にあった子供の頃に喧嘩した友達との仲直りの方法。硬く守れる友達の証。僕とリヴェルだけのなくならない口約束であった。
だが、これは守れない約束だと僕は知っていた。知っていながら僕はリヴェルとかの繋がりを少しだけ保つ為に約束の嘘をついたことに僕は後悔はしていない。
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