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僕と幼馴染

僕はヒロインの幼馴染(男)

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 僕がこの世界に転生してから約二ヶ月半が経過した。その間僕は人の目を欺きながら『自然迷宮』に入り浸り魔物を標的として沢山の効率の悪い魔法を試しては削ぎ落とせる点を探して魔方式をいじってはまた標的に向かって試し撃ちをするのを繰り返している。一つの魔法を効率よく改良するのに魔物の亡骸は百をも超え、僕が今までで知っている五十以上の魔法を改良し終える頃には亡骸は一万を超えていた。
 それらを全て解体して毎度僕の前に現れる仮面商人に対価を貰わず売りつけた、と言っても僕がこの数の亡骸を処理するのが面倒になったので半ば無理矢理に渡しただけだが。それに別これといって欲しい情報は今のところは無かったからもある。だから今のところ仮面商人は僕に大量のツケだけを渡している。

『少年セルス君、これを貰ってくれないかね。』

 仮面商人から渡されたのは銀色の蝶々が象られたロケット。ロケットの中には『15』と表示されていた。仮面商人曰く、このロケットに魔力を流すといついかなる時でも必要なときにロケットに表示されている数字分だけの情報を提供してくれるらしい。つまり僕は15回分の情報をいつでも入手することが可能になった。魔法の改良と情報源が入手出来たのだ、これこそまさに一石二鳥と言うべきだろう。

 そして今日は久しぶりに町へと向かっていた。
前に町へと出かけた時には母親と一緒であったが今回一緒に町へと出かける人物は僕の母親ではなかった。

「セルス君、これとかはどうかしら。」

 可愛いらしい声が聞こえる方向に視線を移す。視線の先にあったのは町ではよく見かける外売りの雑貨屋。並べられている商品の中から格安で手に入る玩具おもちゃの剣を僕らの年齢の少女は指差していた。

「確か、昔この玩具の剣を振り回していなかったかしら。」
「確かにそうだけど、もう貰っている物を貰っても嬉しいくはないと思うよ。」

 確かにそうね…。と商品から目を離して他の店を渡りながら顎を支えて考えていた少女、"マリナ"は僕の幼馴染であるらしい。
 凛とした顔立ちにアクアマリンのような澄んだ瞳と濃い青いウェーブのかかった髪。まるで何処かのお姫様と思わせる綺麗な彼女とは仲良くなった経緯は分からないが、僕が寝ていた間は毎日もう一人の幼馴染の子と一緒にお見舞いに来ていたらしいのだからそれなりに彼女たちとは親しみがあった。それに今も彼女と誘われて一緒に買い物に付き合っているのだから親友と言うほどまでに仲が良いのは確実であった。

「なかなか彼が好みそうな物は見つけられないものね。」

 市場を周り商品を物色しながら彼女は呟いた。僕と彼女がこの町に一緒に買い物をしているのは僕のもう一人の幼馴染である"リヴェル"の誕生日に用意するプレゼント選ぶ為だ。
 僕はリヴェルに渡すプレゼントはある程度決められはしたが、マリナはリヴェルに送るプレゼントが決まっていないようで彼女曰く、気づいたら彼の誕生日の当日であったらしい。そのため今日はマリナに急遽誘われてリヴェルの誕生日プレゼントを決めている。

「これとかどうかしら、彼に似合うと思うのだけど。」

 そう言ってマリナは並べてある服の中から一着を取り出して僕に見せたのはフリフリの付いた緑色の洋風ドレスであった。

「それは却下で。」 

 市場を歩き、リヴェルが喜びそうな物を見ては互いに意見を交えて悩んで選ぶ。未だに送るプレゼントが決まらず殆どの店を見て回った。
 マリナはフリフリ付きのドレスがピンと来たらしいがアレは却下だ。流石にこのドレスを貰ってリヴェルが喜ぶ顔ではなく、引き立った笑顔で受け取る光景しか浮かび上がらない。貰っても全然着ていなさそうだ。

「あ、コレって確か……」

 アレやコレやと並べられている商品を眺めているとある一つの物に目が止まった。エメラルドみたいな翡翠の宝石が嵌め込まれたペンダント。僅かに目覚えがあるそれには多少ばかり魔力が蓄積されていた。

「セルスくんは何を眺めているのかしら。」
「あ、マリナ。これなんてどうかな?」
「……なかなか良いわね。これにしましょうか。」

 僕が眺めていたペンダントをマリナに見せたら彼女のお気に召したらしく、店主にペンダント分の支払いをすませたようだ。
 これでリヴェルのプレゼントは決まったが何故だかあのペンダントの事が気になって仕方ないが今はそんなことを考えている暇がないほどに今日は忙しい。リヴェルのプレゼントを買ったら次は母に頼まれた誕生日会に必要な食材調達だ。

「本当に今日はありがとうねセルス君。貴方のお陰で彼のプレゼントが買えたわ。」
「別にお礼なんてしなくて良いよ。僕はただマリナの買い物に着いてきただけだし。」
「それでもお礼はしておきたいの。私の固い意思でもあるから。」

 そう言ってマリナは僕の前に行きこちらを向くように立ち止まった。

「ありがとう、セリス君。」

 今日一日の買い物を終えた帰りの夕暮れに照らされた彼女の顔を僕の目が錯覚して捉えたのか、ポーカーフェイスの彼女が一瞬にして見せた笑顔はとてつもなく綺麗で輝いて見えた。
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