親友に彼女を寝取られて死のうとしてたら、異世界の森に飛ばされました。~集団転移からはぐれたけど、最高のエルフ嫁が出来たので平気です~

くろの

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第4章

第61話 流れ着いた先は

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「おにーさん♡ 一人? よかったら私と良いことしない?」

 感想と紫煙に包まれた、薄暗い夜の酒場。
 その隅で一人チビチビとぬるいエールを煽っていると、ハート形に谷間がくり抜かれたクソエロいお姉さんが声をかけてきた。

「おうふ……」

 眼前で揺れる暴力的なおっぱいの圧力、略してパイ圧に思わず感嘆の声を漏らす俺。

「──いだっ!?」

 すると、突然脇腹に鈍痛が走り、慌てて俺はハートのおっぱいから目を逸らした。

「わ、悪い、人を待ってるから」

 俺が言うと、お姉さんは「残念。でもお兄さん好みのタイプだから、いつでも声かけてね♡」と言い残し、新たなる逆ナンへと向かっていった。

『……鴎外さんの裏切り者』

 念話で脳内に響く冷たい声。
 と同時に、俺の足が思いっきり踏み抜かれる。

『ちょ、メアさんそれまじで痛いっ』

 抗議も虚しく、姿が見えないのをいい事に、反応しないように必死で我慢する俺を踏んだり蹴ったり好き放題にするメア。

「……え、葛西何してるの? 遂に頭ぱぁになっちゃった?」

 側から見れば一人で悶絶しているようにしか見てない俺を、ちょうど合流した石紅がドン引きしている。

「ぐっ……ちがっ! お前は事情知ってるだろうが……!」

 必死で声を押し殺しながら石紅を睨む俺。
 当然その間も攻撃は続いている。

「まあ、うん。でっかいおっぱいに見惚れてた葛西が悪いと思うよ。……やっぱり巨乳はこの世から滅びるべきだよね」
「見てたなら助けてくれよ……」

 目からハイライトを消して巨乳への憎悪を呟き始めた石紅に、俺はジト目を向ける。

「やだよ。せっかく面白いものが見えそうなのにそんな勿体無い」

 こいつ良い性格してるなほんと。

「てか浅海は? 一緒じゃなかったのか?」
「奏ちゃんはあんな暗くて人が多いところはコミュ障には無理……って言って宿屋に帰っちゃった」
「あいつの基準はよく分からんな……敵前だと一切物怖じしないのに」

 むしろ俺にその度胸を少し分けて欲しいくらいだ。

「まあいい。それで? 収穫はあったのか? その……手配書は見つかったか?」

 俺は声を潜めて聞く。

「流石に別の大陸だしねぇ。ここまでは回って来てなかったよ。念のため変装くらいはした方がいいと思うけど、ずっと消えてる必要はないんじゃないかな」

 石紅の言葉に、俺は安堵の息を漏らす。

「そっちはどうだったのさ。ダンジョンの情報はあった?」
「……いや、まったくだ。やっぱ、あそこを攻略するしかなさそうだな。一応、中層くらいまではマップも出現情報も普通に売ってたし」

 俺が買ってきた本を見せると、石紅は目を輝かせる。

「おおお! やっぱりあっちに挑むんだね!? いいねいいね……世界最大のダンジョン都市に、その中心で口を開く巨大ダンジョン! ザ・異世界って感じでワクワクしてきたよ!」
「お前、ほんとにそんな理由で付いて来たのか……」
「当然! せっかくの異世界転移だもん。みんなの事はもちろん大事だけど、私は世界を旅せずに死ぬくらいなら今死ぬよ!!」
 
 テンションが上がり過ぎてよく分からないことを言い始めた石紅が、唐突に「ん」と言って手を差し出してくる。

「なんだその手は」
「お財布! ダンジョンに挑むんでしょ? なら、準備は万端にしなくっちゃ!」
「いや待て。これは当面の生活費とか、マジックアイテムを買う為の貯金も込みで――」

 言いかけた所で、俺の懐から勝手に財布が浮き上がり、石紅の手に収まる。

「メアさんありがと! それじゃ、行って来る!!!」

 石紅は満面の笑みで酒場を後にする。

「ちょ、こんな時間から店なんて開いてるわけ……が」

 俺の忠告など聞こえていない。 
 みんなのリーダー。その立場から解き放たれた石紅は、すっかり興味のままに生きる好奇心モンスターになってしまった。

「はぁ……もう、どうにでもなれ」

 重たいため息が酒場の喧騒に溶けていく。



 ノルミナの街から遥か西方。
 海の向こうのギルムッド大陸、その中心で栄える世界最大のダンジョン都市アルメリア。
 流れ流れて辿り着いたこの街で、逃亡犯となった俺たちのダンジョン攻略が……割と雑な感じで始まった。
 
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