有名ダンジョン配信者に逆恨みで突き落とされた【最弱の風スキル】使いの俺、奈落の底で覚醒して生還したら一躍時の人に!

くろの

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第35話 世界会議

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 フレアの飛行スキルで大穴を抜け、俺たちは地上へと戻った。
 道中でエリクサーを1本使ったため燃費の良いスキルではないのだろうが、楽に登れただけでもお釣りが来る。
 正直行きは途中で面倒になって最低限の数しかピックを打ち込んでなかったしな。

「これが勇者の世界……? ず、随分と殺風景ね」

 ダンジョンの出口である新宿は、未だ破壊の跡が残る更地だらけである。
 フレアがこういう感想を抱いても無理はない。

「ここはダンジョン崩壊で破壊された跡なんだよ。本当の新宿は日本でも有数の都市だ」

 言いながら、俺はスマホで美咲さんに連絡を入れる。
 フレアがめちゃくちゃ興味深そうにこちらを見ているが、一々説明していてはキリがないのでだんまりを決め込んだ。
 
 さて、8日ぶりの地上はどうなっていることやら。


***


「……思ったよりだいぶ酷いな」

 ダンジョン省へと向かい、留守中の被害報告を受けた俺は苦々し気に呟いた。

 俺がいない間にダンジョン崩壊現象は世界中で起こるようになり、1億人近い被害者が出ていた。
 主要都市壊滅やインフラ崩壊など、幾つかの国では壊滅的な被害が出ている。
 各国共にモンスターの処理自体は出来ているが、どうしても対応が後手に回ってしまっている。
 
 ……まあ、この狭い日本ですら駆けつけるまでに被害が出ているからな。広い国なら尚更対処は遅れるのだろう。
 

 状況確認を終えた俺は、その足で室井大臣の下へと向かった。
 
「や、やあ古瀬君。久しぶりだね」

 一月ぶりに見た大臣は随分と老け込んでいた。
 まあこれだけの事態が起きていれば無理もない。

 が、俺は大臣の体調を無視してフレアを紹介。
 そのままこの世界が神々からの侵略を受けている事、その手段こそがダンジョンであったこと、そしてフレアの世界でも同じ争いが行われ、その果てに彼女がこの世界を助けに来てくれたこと……などを一気に説明した。

「異世界……? 賢者……? ダンジョンが卵で神様が来る……?」

 流石に情報量が多すぎたのか室井大臣は困惑していたが、最終的には話を理解してくれた。
 まあ、いい加減ダンジョンが人類に有害だっていうのは分かり切っている。実は本当に神様がいて人類を侵攻してきてるってのと、フレアが異世界人であること以外は、室井大臣なら理解できるだろう。

「ってわけで、フレアを首相とかに会わせられないですかね。出来れば主要国まとめて」

 この世界の王、それもなるべく多くと話したい、とのフレアの頼みを実現すべく俺は尋ねる。

「そうだね……ちょうど明日、ここ最近の問題について非公式な主要国同士の会議があるんだ。そこに出席できるよう、総理に頼んでみるよ」

 そう言って室井大臣は何やら電話をかけ始めた。


***


 というわけで翌日。
 俺たちは高速ジェット機に乗せられ、某国の海上人工島へとやって来ていた。
 
 何故そんなところで会議が行われるのかというと、ダンジョンを研究した結果、人の多い場所にしか発生しないことが分かったかららしい。
 これにはフレアも同意していて、どうやらダンジョンは人のエネルギーを微量に吸収して成長しているんだとか。
  
 因みにジェットの席は総理の隣。めちゃくちゃ緊張した。

 滑走路に降り立つと、既に見た事ある顔がちらほらあった。
 
「アメリカ大統領に、中国の首席、それに……」
 
 テレビでしか見た事のない各国の首相が次々にやって来ている。
 だがそれより目を引くのが、

「あれは、アメリカ最強のジョージ・スティーブン……あっちはイタリアの至宝レオナルド・アルディーノ……!」

 各国の要人の傍らには、その国のトップ冒険者が控えていたのだ。
 世界のトップとその護衛。それがそぞろと歩く様は、リアルワン〇-スの世界会議《レヴェリー》みたいでオタクとしてはテンションが上がる。

 というか、俺たちが説明の為に呼ばれたのは分かるが……一体どういうことだ? 
 いつダンジョン崩壊が起こるか分からない今、彼らが国を離れれば文字通りの国防の危機となるだろうに。
 因みに俺はまた猫宮さんに全部押し付けて来たのだが。 

「古瀬君、フレア君、行くよ」

 考え込む俺と、辺りを物珍しそうに見回していたフレアに同行していた室井大臣が声を掛ける。

 そうして俺たちが案内されたのは、アニメとかでスパイの幹部とかが集まっていそうな黒い壁に囲まれた円卓の会議室。
 そこに、主要国のトップとトップ冒険者がそれぞれ並んで座っている。

「さあ、始めようか」

 アメリカ大統領の掛け声で、全員が一斉に立ち上がる。
 
 こうして世界の命運を決める会議が始まった。
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