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第14話 奇跡の高校生、古瀬伴治
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「──こちらが今話題の先日ダンジョンから生還した奇跡の高校生、古瀬伴治君です!」
「ど、どうも~」
美人のアナウンサーさんから紹介を受け、俺は若干引きつった笑みを浮かべながら壇上へと上がる。
「彼については、皆さんもうご存知ですよね。一月前、旧歌舞伎町ダンジョンの大穴に落下した悲劇の高校生。そんな風に死亡が確実視されていた彼がなんと先日、自力でダンジョンを登り生還してきたのです! まさに悲劇が一転、奇跡の高校生となったわけですね!」
白を基調とした報道特番のセット。
周囲の雛壇には、有識者や芸能人が数人座っている。
「しかも、彼の持つスキルはハズレと名高いあの風系統。落下時の登録レベルは3! 果たして、一体どうやって登ってきたのか。彼が大穴の底で見たものとは!? 本日はそんなところを掘り下げていこうと思います。でははじめに──」
なんだかまるでアマゾンの奥地で珍獣を追っているかのような高いテンションに、俺は苦笑しながらも応対する。
一体なぜ、こんな事になっているのかというと──
「き、君……本当に古瀬伴治君なのか!?」
ダンジョンから生還した俺は、タブレットをぶっ壊した管理官のお兄さんによって通報され、そのままダンジョン省へと連行された。
そこで身元確認やら、ダンジョンから生還した経緯やらを根掘り葉掘り聞かれ、殆ど休みも無しに半日ほど拘束された。
そして、ようやく解放されたと思ったら、ダンジョン省の前は無数のマスコミに取り囲まれていた。
だが、疲労も限界だった俺はその人たちに、
「すみません、今すぐぶっ倒れそうなくらい疲れているので後日適当にそういう場を設けてもらっていいですか?」
と言い放ち、ダンジョン省の人が容易してくれた車に逃げ込んだ。
流石のマスコミも死にかけの少年を追い回せば炎上すると思ったのか、それ以上は追ってこなかった。
その結果として、さっきの報道特番に出演することになったのである。
因みに特番を組むにあたっては、各メディアで熾烈な利権争いが繰り広げられたんだとか。
「まあ、疲れはしたけどマスコミより先にダンジョン省の人たちに連れてかれたのはよかったな。……あの時の俺、酷い見た目してたし」
ダンジョンから帰還した直後の俺は、髪は伸び放題に髭もじゃの顔、果てはファッションにしては行きすぎている程に服が穴だらけだった。
まあエリクサーがあれば怪我も病気もしないが、見た目や服までは直らないからな。
体臭も相当だったようで、ダンジョン省のシャワー室を丸々2時間も占拠してしまった。
道理で、ゴブリン・スパイダーから助けた女の子が逃げ出したはずだ。
ダンジョンの中で出くわしたら新種のモンスターにしか見えないだろうし。
「しかしまぁ……疲れた」
一通りの撮影が終わり、俺は楽屋として割り振られた一室ため息をついた。
テレビの撮影というのは、なんだか場違いな気がしてとても気を張ってしまう。
「まあなんにせよ、うまく誤魔化せてよかった」
ダンジョン省の人にもテレビの取材にも、俺は嘘をついていた。
ダンジョンからはあの羽でか蝙蝠を倒してレベルを上げ、偶然手に入れた深秘の宝剣の能力を駆使してここまで上がってきたのだ、と。
そう、俺は〈神滅の黒風奏〉のことを丸々黙っているのである。
「……ま、これがバレたら復讐がやりづらくなるもんな」
というか復讐だけではなく、こんなスキルがバレたら行方不明事件の度に俺が疑われかねない。
幸いあの服装のせいかマスコミもダンジョン省の人も同情的で、強制鑑定なんて事もされなかったしな。
「古瀬君、お迎えに来ました。開けますよ。着替えていたらご褒美なので是非そうしていてくださいね」
色々考えながらしばらくぼけっとしていると、楽屋のドアがノックされる。
「……ちぇ」
既に着替えを終えていた俺を見て露骨に落胆する、スーツ姿の美人なお姉さん。
「美咲さん、事あるごとに覗こうとするのやめてくれません……?」
俺は若干げんなりした様子で言う。
この人は園田美咲さん。
何やらマスコミ以外にも俺の存在は地上でちょっとした物議を呼んでいるらしく、俺の身の回りのお世話と警備をしてくれている。
こう見えて高いステータスを持つダンジョン省のエリートだ。
「男子高校生、二人きり、何も起きないはずがなく……♡」
「マジで起きないから。ほら、行きますよ」
俺は適当にあしらいつつ、楽屋を後にする。
この人、見た目は美人だし非常に優秀なのだが、なんというか頭の中がとても残念なのだ。
この前本気で下のお世話も担当です!とか言い出した時は流石に引いた。
見てくれが美人でも中身があれな人はちょっとなぁ……
俺は用意された車でしばらく進み、豪華なマンションへと到着する。
「はぁ……ようやく帰ってきた」
俺は深い息を漏らしながら、シンクで水を飲む。
ここは、ダンジョン省が俺のために用意してくれたセーフハウスだ。
マスコミやらその他面倒な連中を避ける為、ありがたく使わせてもらっている。
因みに美咲さんは同室ではなく隣の別の部屋だ。
「……眠い」
精神の疲労はどんなにステータスが上がってもなくならない。
まだ時間は早いが、もう寝てしまおう。
そう思って俺は寝室の扉を開けたのだが――
「お待ちしておりました。古瀬伴治様」
ようやく使い慣れて来たベッドの上に、超巨乳の巫女さんが正座していた。
「ど、どうも~」
美人のアナウンサーさんから紹介を受け、俺は若干引きつった笑みを浮かべながら壇上へと上がる。
「彼については、皆さんもうご存知ですよね。一月前、旧歌舞伎町ダンジョンの大穴に落下した悲劇の高校生。そんな風に死亡が確実視されていた彼がなんと先日、自力でダンジョンを登り生還してきたのです! まさに悲劇が一転、奇跡の高校生となったわけですね!」
白を基調とした報道特番のセット。
周囲の雛壇には、有識者や芸能人が数人座っている。
「しかも、彼の持つスキルはハズレと名高いあの風系統。落下時の登録レベルは3! 果たして、一体どうやって登ってきたのか。彼が大穴の底で見たものとは!? 本日はそんなところを掘り下げていこうと思います。でははじめに──」
なんだかまるでアマゾンの奥地で珍獣を追っているかのような高いテンションに、俺は苦笑しながらも応対する。
一体なぜ、こんな事になっているのかというと──
「き、君……本当に古瀬伴治君なのか!?」
ダンジョンから生還した俺は、タブレットをぶっ壊した管理官のお兄さんによって通報され、そのままダンジョン省へと連行された。
そこで身元確認やら、ダンジョンから生還した経緯やらを根掘り葉掘り聞かれ、殆ど休みも無しに半日ほど拘束された。
そして、ようやく解放されたと思ったら、ダンジョン省の前は無数のマスコミに取り囲まれていた。
だが、疲労も限界だった俺はその人たちに、
「すみません、今すぐぶっ倒れそうなくらい疲れているので後日適当にそういう場を設けてもらっていいですか?」
と言い放ち、ダンジョン省の人が容易してくれた車に逃げ込んだ。
流石のマスコミも死にかけの少年を追い回せば炎上すると思ったのか、それ以上は追ってこなかった。
その結果として、さっきの報道特番に出演することになったのである。
因みに特番を組むにあたっては、各メディアで熾烈な利権争いが繰り広げられたんだとか。
「まあ、疲れはしたけどマスコミより先にダンジョン省の人たちに連れてかれたのはよかったな。……あの時の俺、酷い見た目してたし」
ダンジョンから帰還した直後の俺は、髪は伸び放題に髭もじゃの顔、果てはファッションにしては行きすぎている程に服が穴だらけだった。
まあエリクサーがあれば怪我も病気もしないが、見た目や服までは直らないからな。
体臭も相当だったようで、ダンジョン省のシャワー室を丸々2時間も占拠してしまった。
道理で、ゴブリン・スパイダーから助けた女の子が逃げ出したはずだ。
ダンジョンの中で出くわしたら新種のモンスターにしか見えないだろうし。
「しかしまぁ……疲れた」
一通りの撮影が終わり、俺は楽屋として割り振られた一室ため息をついた。
テレビの撮影というのは、なんだか場違いな気がしてとても気を張ってしまう。
「まあなんにせよ、うまく誤魔化せてよかった」
ダンジョン省の人にもテレビの取材にも、俺は嘘をついていた。
ダンジョンからはあの羽でか蝙蝠を倒してレベルを上げ、偶然手に入れた深秘の宝剣の能力を駆使してここまで上がってきたのだ、と。
そう、俺は〈神滅の黒風奏〉のことを丸々黙っているのである。
「……ま、これがバレたら復讐がやりづらくなるもんな」
というか復讐だけではなく、こんなスキルがバレたら行方不明事件の度に俺が疑われかねない。
幸いあの服装のせいかマスコミもダンジョン省の人も同情的で、強制鑑定なんて事もされなかったしな。
「古瀬君、お迎えに来ました。開けますよ。着替えていたらご褒美なので是非そうしていてくださいね」
色々考えながらしばらくぼけっとしていると、楽屋のドアがノックされる。
「……ちぇ」
既に着替えを終えていた俺を見て露骨に落胆する、スーツ姿の美人なお姉さん。
「美咲さん、事あるごとに覗こうとするのやめてくれません……?」
俺は若干げんなりした様子で言う。
この人は園田美咲さん。
何やらマスコミ以外にも俺の存在は地上でちょっとした物議を呼んでいるらしく、俺の身の回りのお世話と警備をしてくれている。
こう見えて高いステータスを持つダンジョン省のエリートだ。
「男子高校生、二人きり、何も起きないはずがなく……♡」
「マジで起きないから。ほら、行きますよ」
俺は適当にあしらいつつ、楽屋を後にする。
この人、見た目は美人だし非常に優秀なのだが、なんというか頭の中がとても残念なのだ。
この前本気で下のお世話も担当です!とか言い出した時は流石に引いた。
見てくれが美人でも中身があれな人はちょっとなぁ……
俺は用意された車でしばらく進み、豪華なマンションへと到着する。
「はぁ……ようやく帰ってきた」
俺は深い息を漏らしながら、シンクで水を飲む。
ここは、ダンジョン省が俺のために用意してくれたセーフハウスだ。
マスコミやらその他面倒な連中を避ける為、ありがたく使わせてもらっている。
因みに美咲さんは同室ではなく隣の別の部屋だ。
「……眠い」
精神の疲労はどんなにステータスが上がってもなくならない。
まだ時間は早いが、もう寝てしまおう。
そう思って俺は寝室の扉を開けたのだが――
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