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乙女の誘惑
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「…今、何と?」
「ですから…!
貴女は乙女ではないので、王太子妃に相応しくないという判断がなされました。よって、王太子妃はルナ・コルスティン嬢に決定致しました。」
私は王家からの使者の言葉が信じられなくて唖然とする。私だけじゃない。両親もお兄様も信じられない様子だ。
少しの沈黙の後、鋭い目をしたお父様が立ち上がって使者に詰め寄る。
「ジュリアが乙女でないなんて…そんなことあるはずがない!!この子は幼い頃からずっと王太子妃になるべく努力してきたんだ!遊びたい盛りにも我慢して、その目標に向かって必死に学んできたんだぞ!
それに、そんなことをすれば、私の耳に入っているはずだ。娘にはそんな素振りもなかったし、そんな相手もいない。二人きりになったことのある男なんて、王太子殿下だけだ!
それなのに…なんでこんなことに…っ!」
使者も困ったような顔をしている。そうだろう。彼はただ書簡を持ってきただけで、実際の王太子妃選考には全く関わっていないのだから。
お父様は頭を抱えて、ソファに沈み込んだ。
お母様はこの現状に未だ唖然としている。
そして、お兄様は何かをじっと考えているようだった。
誰も口を開かないため、使者がどうしたものかと困っている。この人を困らせてどうこうなる問題じゃないし、すでに書簡で届いたということは結果は決定しているのだろう。私はその書簡を謹んで受け取り、使用人達と使者の方々をお送りした。
応接間に戻ると、家族の視線が私に集まる。
「私は誓って乙女です。ハルト様以外に身体を開くなど断じてありません。」
私のその言葉を聞いて、お父様とお兄様は同時に「そうだよな…」とため息を吐いた。親子とはいえ、行動がシンクロし過ぎていて可笑しい。それをクスクスと笑ったら、「笑い事じゃない」とお父様に思いきり睨まれてしまった。
でも、仕方ないじゃない。笑ったりしていないと、上手く立っていられないくらい辛いんだもの。
◆ ◇ ◆
私、ラスティ公爵家長女ジュリア・ラスティは生まれた時から王太子妃候補だった。この国唯一の公爵家であるにも関わらず、ここ何代も王家は当家と繋がりを持てていない。関係が希薄になることを王家は恐れていた。
そんな時、王太子から三年遅れて、私が産まれたものだから、私が赤ん坊の頃から「王太子妃はジュリア嬢に決まりだな」と言われてきた。そう言われて育ったせいもあって、幼い頃から私は王太子妃にならなきゃ!と思っていた。とは言っても、人から与えられた目標とはモチベーションの上がらないもので、七歳にして私はもう王太子妃になることを諦めかけていた。
しかし、七歳で私は衝撃の出会いを果たした。
王太子であるハルト様にお会いしたのだ。当時十歳だったハルト様は、子供から大人への境界線をゆらゆらしている感じで、まだ可愛さの中にも凛とした格好良さがあった。キラキラと光を纏う金髪に、青空を閉じ込めたような真っ青な瞳。王子様とはこういう方のことを言うんだ…と思った。その上、ハルト様は私の視線に気付くと、私に近寄ってきた。ハルト様に見惚れて挨拶も出来ない駄目な私の手を取り、手の甲にキスをした。
「僕の可愛いジュリア…待っているよ。」
それだけ言い残すと、ハルト様は去っていった。私は顔を火照らせて、恥ずかしさと嬉しさと情けなさでその場にしゃがみ込んだ。そして、その時に決意した。
必ず王太子妃になる!と。
それから私は誰よりも努力した。お父様に頼み、最高の講師陣を取り揃えてもらい、勉強に、マナーに、ダンス、ある程度の護身術までマスターした。勿論美しさも大事なので、自分磨きも欠かさなかった。ハルト様とは十歳になった頃から二ヶ月に一度、欠かさずお茶会を開き、親交も深めてきた。
こうして、私は自他共に認める国一番の王太子妃候補として成長したのである。
この国の王太子妃は、基本的に国内の高位貴族の娘から選ばれる。王太子の年齢に近い娘は基本的に全て候補となる。その後、いくつもの試験をパスして、王太子妃候補は二名まで絞られる。
私もそこまでは順調に選考に残った。
最後の選考に残ったのは私の親友であるルナだった。
ルナは侯爵家の出身だが、気取ったところのない明るい子で、我が公爵家にも何度も遊びに来てくれているほどの仲だ。その上、ルナは他に好きな人がいるらしく、王太子妃には全く興味がなかった。頑張って最終選考に残ってくれたのは、今後の婚約に有利だからと話していたが、本当は私を側でサポートし、王太子妃にしてあげたいという友情のためだった。
最終選考は、乙女の儀式と国母の誓いの二つ。
乙女の儀式とは処女であることを証明する儀式。
国母の誓いとは王太子妃になる決意を宣誓する儀式。
国母の誓いの直前に乙女の儀式の選考結果が発表され、その後宣誓に入る。
その二つで決まらなければ、最終的には王太子に選択権がある。
ここまで来れば、何も心配することはなかった。
医師に乙女であることを証明してもらい、その数日後に皆の前で宣誓を済ませれば良いだけ。ルナは宣誓で権利を放棄すると言っていたし。ハルト様には国母の誓いで待ってるよ、と言ってもらっている。
ようやくハルト様の隣に立てる…と思ったのに。
「乙女じゃないって、どういうことよー!!」
あの後、お父様は苛立ちを隠し切れず、ガシガシと頭を掻いていた。公爵家にとっても今回の縁談は王家への忠誠を示す大きなチャンスだっただけに悔しいのだろう。いや…もしかしたら単純に私の恋を応援してくれていたからかもしれない。
ハルト様のことも「あの方は素晴らしい主君になる」と高く評価していて、お兄様には側近として、私には妻としてハルト様をよく支えるように…と酔う度に語っていたほどだった。お父様の期待に応えられないことも辛かった。
私はベッドの上で泣き崩れる。
乙女だと証明したくても手段がない。破瓜の血が確認出来たところで、その時にはもう乙女ではないから王太子妃にはなれない。もう私にできることはなかった。
国母の誓い記念式典は、三日後に迫っていた。
◆ ◇ ◆
式典当日、私はお兄様のエスコートで会場に入った。会場がざわめくがいつものことだから、気にはならない。周囲からは「今日もジュリア様はお綺麗ね」とか「ロイド様も本当に格好良いわぁ」とか「さすが未来の国母だわ」とか私やお兄様を褒める声が聞こえる。…国母にはなれないんだけどね…と内心一人で毒吐けば、自分で自分を傷つけることになった。じわっと涙が滲むのを必死に堪える。それを察してか、お兄様が周囲からの盾になってくれた。その隙に涙を拭う。
その時、「ジュリア!」と呼ぶ声がした。振り向けば、そこには真っ白なロングドレスを纏ったルナがいた。真っ黒な髪がサラサラと靡き、黒く大きな瞳は、吸い込まれそうになるほど神秘的で美しい。
お互い常識的な範囲の早足で駆け寄り、両手をギュッと繋ぎ合わせた。ライバル令嬢同士が仲良く両手を繋ぎ、見つめ合うなど、周りから見たら可笑しな状況だろう。しかし、そんなのを気にする余裕はなかった。
「ルナぁ~!」
先ほど抑えたはずの涙がまたぶり返してくる。
「未来の国母がこんなとこで泣くんじゃないの!」
ルナに促され、他の人がいないところへ行く。
「ルナ…私、王太子妃になれない。
乙女じゃないって言われたの…。」
ルナのドレスをキュッと掴みながら話すと、ルナは眉を下げる。私の頭を優しく撫でてくれる。
「うん。使者から聞いて知ってる。
でも、そんなことないんでしょう?」
私は顔を上げ、答える。
「勿論よ!ハルト様以外には触れさせたりしない!」
ルナは私の瞳をじっと覗き込んで言う。
「なら、まだ諦めちゃダメ。
というか、私のためにも諦めないで。
私は自分の好きな人と結婚したいの。」
そうだった。そこでようやくルナにとんでもない迷惑をかけていることを改めて思い出した。
「そうだよね…私のせいで本当にごめん。
私、自分のことばっかり…。」
ルナは微笑んでくれる。
「いいのよ。きっと今回のことは誰かに嵌められたに違いないわ。どこかで情報が捻じ曲げられてる。でも、流石にそれを暴く時間はないから、強硬策で行くわよ。」
「強硬策?」
私が首を傾げると、ルナは力強く頷いた。
「えぇ。今日、国母の誓いが行われるまでに殿下とヤりなさい。
殿下が自ら処女を散らしたとなれば責任を取らなきゃいけないし、その場で破瓜の血が確認できれば乙女だったことも証明できるしで一石二鳥よ。」
…デンカトヤリナサイ?
「えぇ?!」
ようやく脳内処理が追いつき、私は驚きの声を上げた。驚く様子の私をよそにルナは話を続ける。
「国母の誓いが行われるのが、夜九時。今から三時間。三十分後には殿下も入場されるはずだから、そしたらタイミングを見計らって誘い出すのよ。いい?」
「う、嘘でしょ?ルナ、ほ、ほ、本気なの?」
信じられない作戦に足も手も声まで震えてくる。
「ふふっ。ジュリアったら動揺し過ぎ。王太子妃になったら、一年もせずに結婚でしょ?初夜が少し早くなっただけだと思えばいいのよ。
それとも、王太子妃になるのを諦める?」
ルナに挑発されるように言われ、私は咄嗟に答えていた。
「やる!!
可能性が少しでも残ってるなら、私…頑張る!!」
ルナはニヤッと笑う。
「いいわ、その意気よ。
ついでに私も処女を捨てるわ。」
「え?…えええぇー!!」
これまた信じられない話にはしたない声を上げてしまう。
「煩いわね。仕方ないでしょ。ジュリアが失敗したり、乙女だと認められなかったりすれば、王太子妃にされちゃうもの。乙女じゃ無くなれば、王太子妃にはなれない。」
「だ、誰に頼むの…?」
「分かんない。一番は好きな人に貰ってほしいけど…断られちゃうかも…。」
珍しくルナが弱気だ。
目を伏せると睫毛の長さがより際立つ。
「そうなの?ルナはこんなに綺麗なのに、靡かない人なんている?」
「ふふっ。ありがとう。でも、その人の近くにはいつもお人形さんみたいな可愛い子がいるから…私なんて可愛く見えないのよ。」
「そんなことあり得ないわ!
ルナはこの国の中の令嬢で一番綺麗だもの!
大丈夫よ!自信を持って!!」
「ありがとう、ジュリア…。私、貴女が大好きよ。」
「私もよ、ルナ。大好き!」
私たちは顔を見合わせ、決意を新たに会場に戻った。
ルナとばかり話してもいられないので、他の人の相手もするが、いつも以上に疲れる。私の頭の中はどうやって誘えばいいのか、という疑問でいっぱいだ。
予定より少し早くハルト様が会場に入られた。ここ最近は王太子妃選考でなかなか会えなかったから、久しぶりに見るハルト様だ。
…少し痩せられたかしら。それになんだか元気がないようにも見える。昨日はあまり寝れなかったのかもしれない…うっすらと隈が。ハルト様は寝付きの良い方だとおっしゃっていたのに。お仕事が忙しいのかしら?
そんなことを思いながら、ハルト様を見つめていたら、パチっと目が合った。が、すぐに逸らされてしまった。
前までなら、あぁやって目が合ったら必ず微笑みかけてくれたのに…。きっとハルト様は結果を聞いて、私が乙女じゃないと思ってるのね…。
今すぐにでも踵を返して馬車に戻りたくなった。
…けれど、ハルト様に誤解されたままは嫌だし、やっぱりハルト様の妻になりたい。それにここで私が諦めたら、ルナに迷惑がかかる。
絶対にハルト様とヤるんだ!!
私は気合を入れ直して、ゆっくりと優雅に見えるようハルト様に近付いて行った。今日の主役はハルト様と私とルナだから、邪魔する者はいない。
ハルト様の前に立ち、礼を取る。
「殿下、ご無沙汰しております。」
「あぁ、ジュリア。
久しぶりだね。元気にしていた?」
「はい。」
微笑みながら答える。
本当は全然元気じゃなかった。あの日から毎日泣いていたし、食事も喉を通らなくて、ただでさえ細いのにより細くなってしまった。「少し柔らかい方が僕は好きだよ」と前にハルト様は言っていたのに…そういう意味では私のコンディションは最悪だ。
けれど、今日を逃したらチャンスはない。なんとしても私の処女をもらってもらわなければ。
「ハルト様、何処かで少しお話をしませんか?」
「うん、構わないよ。」
「ありがとうございます。では…」
次の瞬間、王子の手が腰に添えられた。
「ひゃっ!」
こんなに密着するのは滅多にないし、突然すぎるし、みんなの前で恥ずかしい。
「殿下…っ!」
ハルト様はわたしの耳元で、「二人っきりになれるところに行こうね」と今まで聞いたこともない色っぽい声で囁いた。私は半ば連れ去られるようにして、私は会場を去った。
…あれ?…私から誘うんじゃなかったっけ?
◆ ◇ ◆
ハルト様が連れて来て下さったのは、なんとハルト様の自室だった。誘おうと思ってたから、とても有難いんだけど、なんでこんなことになっているのか…。
でも、ハルト様の自室に入るのが初めてだった私は、少しテンションが上がってしまっていた。失礼だと思いつつも、ハルト様の部屋の匂いを吸い込み、チラチラと周りを確認してしまう。ハルト様の部屋に入れてもらえているというその事実が嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。
それに…部屋の所々に私からの贈り物がある。机の上にあるペンは去年の誕生日プレゼントだし、ベッドサイドに置いてある時計は三年前の誕生日プレゼント。私が初めて刺繍をしてハルト様にあげた不恰好なライオンのモチーフのハンカチは、なんと額に入れて壁に飾ってあった。
「これ…。」
その額の前で驚く私の背後にハルト様が回り込む。後ろから腰に腕を回されて、肩に顔を置かれる。ハルト様の匂いがフワッと香る。
ひゃー!きゃー!
な、な、なんでこんなに今日は距離が近いの?!
嬉しいけど、嬉しいけど!!
私がパニックに陥っていると、ハルト様は囁くように耳元で話し始めた。
「このハンカチ…覚えてる?ジュリアが初めて刺繍をしたと言って僕にくれたんだ。真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに僕に渡して来てさ。本当に可愛かった…。
それから、いくつもハンカチを貰ったけど、どうもこの最初のハンカチが好きでね。ずーっと飾っているんだ。王太子妃になって、正式に僕の部屋に来たら見せてあげようと思ってたんだけどー」
ハルト様の手が下に伸びてきて、私の下腹部で止まった。次に言われることが分かって、私の瞳には涙が滲む。
「まさか…乙女じゃないなんて。」
私はギュッと唇を噛み締めた。
「…正真正銘、乙女です!
なんで、あぁいう結果になったのか私にも分かりません。本当に、本当なんです…信じてもらえないかもしれないけど…。」
「本当に?僕の知らないところで、誰かと通じてたんじゃないの?」
「あり得ませんっ!!」
私は振り向いて、潤んだ瞳でハルト様を睨み付けた。
ハルト様は微笑んでいるが、どこか怖いようなー。
「そう?この前の舞踏会でも、何人もの令息に言い寄られてたでしょ?中には手を握ろうとする奴もいたし、肩に手を添えようとした奴もいたよね?その後、バルコニーにも誘われてたろう?」
「触られてません!すぐに離れましたし、やめて下さいと言いました!バルコニーにも行ってません!!」
ハルト様はぐっと私を抱き寄せると耳元にキスを落とした。
「ん…。」
「ほら。大体さ、ジュリアは隙が多いんだよ。ジュリアが乙女だと思ってるだけで、本当はどこかで薬でも盛られて、知らないうちに処女を散らされちゃったんじゃないの?」
「そ…そんな…っ。」
「こうやってノコノコ俺の部屋までついて来ちゃうのも危機感が足りないんじゃないの?そんなんだから、今回みたいなことになるんだ。」
「ぐすっ…でもっ、本当にわたし、乙女で…っ!
こんな距離を許すのも、ハルト様だけで…。」
私がそう言うと、ハルト様は私からスッと離れた。
「ふーん。
でも、もう結果は出ちゃってるもんね。
僕も残念だけど、あと二時間もすれば、ルナが王太子妃として発表される。」
「それは…っ。」
「この部屋にももう二度と入れないし、このベッドで僕が抱くのもジュリアではなく…ルナー」
「嫌っ!!」
私はそのままハルト様をベッドに押し倒そうと体当たりをする。が、鍛えているハルト様はびくともせず、私をただ抱き止めただけだった。私は背中に腕を回し、ギュッと身体を押し付ける。
「ハルト様が…。ハルト様が、乙女かどうか…確かめて…くだ、さい。」
震える声で何とか伝えると頭の上でフッと笑うのが聞こえた。
「随分といやらしいお願いだね。
でも、僕も王太子だ。そう簡単に抱くわけにはいかないけど、どうする?」
「…そっ、その気にさせてみせます!!」
「へぇ。それは楽しみだ。」
国母の誓いでは、昔からの慣習で王太子妃候補の二人は真っ白なロングドレスで参加することになっている。シンプルなその装いは、王太子妃候補そのものの本来の美しさを周りに知らしめる意味もあった。
それが今日はありがたかった。ワンピースは背中にファスナーが付いているだけ。いつものドレスじゃとてもじゃないけど、一人で脱ぎ着はできない。
私は、ベッドに腰掛けて微笑みを浮かべたハルト様を見つめた。恥ずかしさで目が潤む。顔も火照る…きっとハルト様から見たら私の顔は真っ赤だろう。
でも、ここで諦めるわけにはいかない。
私は意を決して、ハルト様に背中を向けた。
「脱ぐから…待ってて、下さい…。」
両手を背中に回し、少しずつファスナーを下ろしていく。
ジジッ…ジーッ。
ファスナーを下ろしていく音が室内に響く。
背中から、腰、お尻の上の方までのファスナーを下せば、すぐにでも脱げるようになる。背中にハルト様の視線を感じて、熱いくらいだった。
私は正面を向き、ハルト様の綺麗な空色の瞳を見つめた。
「ハルト様…見て…。」
ストンとワンピースを落とせば、私が身に纏うのは真っ白な胸当てとパンティだけだ。
ハルト様がゴクッと喉を鳴らすのが聞こえた。
少し手応えを感じた私は、ゆっくりとハルト様に近づく。少しでも恥ずかしい部分を隠そうと、自分をギュッと抱きしめる。
…ちゃんと誘惑、できてるのかな?
ハルト様の目の前に来ると、私はハルト様に跨り、首に腕を回した。ハルト様の重いジャケットを脱がせて、瞳をぐっと覗き込む。
「ハルト様、好き。」
そう言って、そっと唇を重ねた。私からのキスは初めてだから、どうもぎこちなくなってしまう。
二秒ほどくっ付けて離そうとしたら、ぐっと後頭部を掴まれ、より深く口付けられた。
「んんっ!!」
逃げられない…!と思っていると、今度は口の中に舌まで入ってきた。
な、な、何なの、このキスー!!
今までハルト様とは二回しかキスをしたことがない。東屋で隠れて一回。デートに行った帰りの馬車で一回。
どちらもそっと触れるだけの綿菓子のような甘く優しいキスだった。
こんなキスがあるなんて知らなかった。苦しくなって、ハルト様の胸をドンドンと叩くと、ようやく唇を離してくれた。
「はぁ…はぁ…ハルト様…。今のはー」
「ジュリア、鼻で息を。」
それだけ言うと、ハルト様はまた唇を押し付けて来た。舌も侵入して来て、逃げ惑う私の舌を追いかけてくる。もうどうしたらいいか分からず諦めると、ハルト様は舌を擦るように絡ませてきた。
「んっ…ふぅ…。」
私からは今まで聞いたこともない、なんだか妙な声が出てしまう。けれど、どうも抑えられなかった。
頭がぼんやりとして来て、ハルト様とのキスのことしか考えられない。気付けば、私からもハルト様を求めるように舌を絡ませていた。
身体がじんじんと熱くなってきて、ハルト様ともっとくっつきたくて仕方なかった。私は胸が潰れるほどギュッと身体を押し付けた。すると、乳首が下着越しに擦れて気持ち良くて、身体を小刻みに動かす。
ハルト様は名残惜しそうに私の唇を軽く食んでから、唇を離した。
「全く…いつこんなの覚えたの?」
ハルト様は私を鋭く見つめ、唇を舐めた。
その表情は妖艶で、まるで飢えた獣のようだった。
こんなハルト様…見たことない。
ハルト様はいつでも優しくて、穏やかで…。
でも、もっと…もっとこのハルト様を見たい。
私は胸当てを外した。ふるんっとまろびでた私の胸にハルト様は釘付けだ。ハルト様の手を取って、その手を乳房に持って行った。
「ハルト様の、です。…いっぱい触って…。」
ハルト様は大きさや手触りを確かめるようにゆっくりと胸を揉む。時々、ハルト様の指が乳首を掠めれば自分でも驚くような声が出る。
「はっ、あんっ!…ハル、トさまぁ…んっ。」
「あぁ…ジュリア…っ!
なんて…なんて美しく…卑猥な…。」
ハルト様は私の乳首をペロッと舐める。
「ひゃ…ああんっ!」
それだけで身体に甘い痺れが走る。
ハルト様は右の乳首を口に含み、乳輪をなぞるようにクルクルと舌を動かす。左の乳房はハルト様の手の中で自由自在に形を変える。
「あぁ…ハルト様…ぁ。」
快感が溜まる先っぽにも触れて欲しくて、懇願するように名前を呼ぶ。ハルト様は乳首を咥えたまま、笑った。
「本当にジュリアはおねだりが上手だね。」
次の瞬間、ハルト様は私の乳首をキュッと甘噛みした。
「あぁんっ!」
そこからハルト様の胸への愛撫は更に激しくなった。
こんなにハルト様がおっぱいが好きだったなんて、知らなかった…。それなりに大きくて良かった…。
嬌声を上げることしか出来ない私は、頭の隅でそんなことを思っていた。
存分に胸を舐めて、齧って、揉んでー
私も…そして、きっとハルト様も…もう我慢ができなかった。
さっきから私の下着は濡れているようだし、その下にあるハルト様のものは熱く大きくなっていた。私はぐっと腰を落として、ハルト様のものに私の秘部を擦り付けた。
「ねぇ、ハルト様…確認して?」
「…あぁ。」
ハルト様はベッドの中央に私を横たわらせると、パンティをゆっくり引き抜いた。私は一糸纏わぬ姿になる。
「…ジュリア、綺麗だ。
この姿を他の男が見たと思うとー
…殺したくなる。」
一瞬、ハルト様が恐ろしい顔をする。
「誰も見てない…ハルト様だけ。
私はずっと…ハルト様だけの、ジュリアです。」
そう言うとハルト様の表情は少し柔らかくなった。
「じゃあ、ちゃんと奥の奥まで確認しないとな。」
ハルト様はそう言って、下を脱ぎ捨て、大きなモノを取り出した。私は初めて見るそれに唖然とする。
あ、あんなのが本当に入る…の?
さっきまで蕩けていた身体も緊張で強張る。
ハルト様は私の視線に気付くと、笑った。
「そんなに見ないの。
大丈夫だよ、ちゃんと入るから。」
ハルト様はそう言って私に覆い被さると、あの蕩けそうなキスをまた私にくれた。一瞬冷めかけた身体はあっという間に熱を取り戻し、再び快感に沈んでいく。
キスをしながらもハルト様の手は私の身体を這い回る。その手つきは、官能的ながらも優しくて、あたたかでハルト様の愛情が私の身体に染み込んでいくようだった。
ハルト様の手は徐々に下に伸ばされ、ようやく私の蜜口に辿り着く。軽く指を沈ませただけなのに、そこからはヌチャと水音がする。恥ずかしくて両手で顔を隠すと、ハルト様に手をどかされてしまった。
「恥ずかしがってる顔も見たい。ジュリアの全部を俺に見せて?隠さないで?」
そう言われたら隠せるはずもなかった。ベッドのシーツをギュッと握りしめる。
ハルト様の指が一本ゆっくりと私の中に入ってくる。
…違和感がすごい。
「ゔぅ…。」
「やっぱり、狭いな…。
ジュリア、一回イっておこうか?」
「イく?」
「そうだよ。リラックスして…僕に全部任せて。」
ハルト様は一旦指を抜くと、その少し上の部分をそっと触った。
「ひゃぁんっ!」
今のは…なに?痛いような、気持ちいいような…変な感覚。
「優しく触っていくけど、痛かったりしたら言うんだよ?」
「…はい。」
ハルト様はさっきの部分に再び触る。指の腹で優しく優しく撫でてくれる。と思ったら、少し押すようにして押し込んでみたり、リズミカルに優しくトントンと、刺激をしたりする。どれも気持ち良くて、細かな嬌声が抑えられない。
けれど、クルクルと刺激されると今までにない快感が身体にビリビリと走る。
「やっ、あっ、あっ…ハルト様ぁ…!
それっ、やっ、だめ…っ!!」
「そっか。これが好きなんだね。」
落ち着いたように聞こえるけれど、ハルト様の声には喜色が混じっていた。
ハルト様は休むことなく、クルクルと私の突起を刺激する。
「ひゃ…やっ、あっん。ハル、ハルトさま…っ!」
尿意にも似たような感覚が溜まっていき、どうしたらいいのか分からない私は、悲しくもないのに泣いていた。気持ち良くて、おかしくなりそうで、こわい。
「だめっ、やっ、はっ、あ、あっ!」
「ジュリア…イくんだ…。」
「やああぁぁんっ!!!」
目の前が真っ白になった。快感が弾けて、身体中を支配した。私ははぁはぁ…と息を整えるのがやっとだ。
ハルト様はとても楽しそうに上から私を見下ろす。
そして、私の下腹部にあるハルト様のモノはとても元気だった。
ハルト様は再び私の蜜口に手を伸ばす。
「随分力が抜けて柔らかくなったね。
…これなら何とか入るかな。」
ハルト様の指をグポッっと私の蜜壺が飲み込む。
先ほどよりも違和感が薄れている。時折気持ちよささえ感じるほどだ。
それでも、ハルト様は念入りに私の蜜口をほぐしてくれた。指が一本から二本、二本から三本に増えたところで、ようやく私の願いが叶えられることとなった。途中、何度も挿れて欲しいと懇願したのだが、「出来るだけジュリアに痛い思いをさせたくないから…」と三本受け入れられるようになるまで挿入を許してくれなかった。
「はぁ…あん、ハルト様…もう、お願い…っ。」
「あぁ、ジュリア挿れるよ…。」
ハルト様のモノが蜜口に添えられたと思ったら、グッと押し込まれる。十分に愛液が溢れたそこは、ハルト様のモノを飲み込もうと、吸い付く。
少しずつ少しずつ、ハルト様が私の中に入ってくる。蜜口はミシミシと音が聞こえそうなほど苦しいのに、私の胸に広がるのは紛れもなく喜びだった。
ずっとずっと想い続けたハルト様と繋がっているという事実がどうしようもなく嬉しくて、涙が溢れた。ハルト様は目尻から溢れた私の涙を舐め、顔中にキスを落とす。
ハルト様の動きが止まる。
「奥まで…入った…?」
「いや。最後は少し痛いかもしれない。
…ジュリア、大丈夫?」
「はい。ハルト様と繋がれて嬉しいから…。
私の全部をハルト様のものにして。」
「あぁ…。僕の…僕だけのジュリアだ…!」
そう言って、ハルト様はグッと私を貫いた。
「あ゛ぁ!!!」
すっっごく痛かった…
痛かったけど、涙が出るほど幸せな痛みだった。
「ぅ…、全部…入ったよ…。」
「はぁ…ぁ…嬉しい、です。」
「あぁ、俺もだ。」
私達は強く抱きしめ合った。その間もハルト様のモノがビクビクと私の中で震えている。ハルト様の腰が時折揺れて、ハルト様は苦しそうに声を漏らしていた。
「ハルト様、動いて。いっぱい突いて、赤ちゃんのもと…ジュリアの中に注いで?」
そう私がハルト様の耳元で囁き、キスを落とすと、私の中に突き刺したモノがビクンっと震えた。
「…ごめん、もう無理だ…っ!」
ハルト様は激しく腰を振り出した。
「ひゃっ、あん、あっ!ふっ、うんっ…あっ!」
痛い…けど、微かに気持ち良くて、声が漏れる。
「ジュリア、ジュリア、好きだ…っ!ずっと。」
「あっ、はっ、わた、しもっ…
ハルトさまをっ…ぁん、愛して、るぅ…っ!」
「ジュリア…!誰にも渡さない…っ!
はぁ…っ…君は僕の妃だっ!」
ハルト様の執着が嬉しかった。私の膣壁はハルト様のモノを強く抱きしめた。
「あっ、あっ、ハルトさまぁっ!」
「ジュリア…っ、孕め。僕の子を。」
「孕むぅ…っ!!」
「…はぁ、っ、出るっ…!!」
「あああぁぁあーっ!!!」
私達は同時に果てた。
…初めては痛いと聞いていたんだけど…途中からは初めてだとは思えないほど、気持ちよかった。
私達は暫く抱き合っていた。ハルト様は落ち着いたようでズルッとモノを私の中から抜き出した。そして、言った。
「あ、赤いね。…本当に乙女だったね。」
驚きも何も含まれていないその声に、私はつい文句を言う。
「…ハルト様、知ってたでしょう?」
「勿論。ジュリアには七歳の頃から常に監視を付けてるんだ。処女なんて、捨てられるはずない。」
「なっ!!」
ハルト様はモノについた色んな液体を拭き取る。その後、水差しから水をコップに注いで、勢いよく飲み干した。
「あの頃からジュリアが王太子妃になることは僕の中で決定事項だった。監視をつけるのも当たり前だろう?」
全然当たり前じゃない気がするが、それは別の機会に追求することとして、今回の話に戻る。
ハルト様はもう一杯水を注ぐと、ベッド端に座り、私に差し出してくれた。それを受け取って一口飲む。
「だっ、だったら、今回の件もそう反論して下されば良かったのに。」
「国母の誓いが終わるまで僕が直接関与できないだろ
?だったら、ジュリアともう契っちゃおう!ってなったわけ。俺の子がお腹にいるかもしれない状態じゃジュリアを王太子妃に任命するしかないだろう?」
『俺の子』と言われ、少し照れる。いつか来てほしいその時を想像して、私は再び顔が熱くなる。
「そ、そうですけど…。」
「選考の間は会えないことになってるし、手紙も出しちゃいけないし、チャンスは今日しかなかった。急なことになったけど、これで行き着くのは最高の結果なんだからいいだろう?」
「でも、最初は抱く気ないみたいなこと言ってたじゃないですか!」
「あぁ、あれはちょっとした意地悪だよ。ロイドにジュリアはどうしてるか聞いたらただ泣いて過ごしてるって言うから。
俺とロイドは必死にどうやったらジュリアを王太子妃に出来るか考えたり、根回ししてたっていうのに、泣いて諦められる程度の気持ちなのかと思って。」
「私もどうにかならないかって何度も考えはしたんです。でも、何も思いつかなくて…ごめんなさい。」
「いいんだ。一番傷付いたのはジュリアだもんね。意地悪をして、悪かった。こんなこと慣れてないのに一生懸命僕を誘惑する姿を見て、ジュリアの気持ちを改めて確認できたから。」
ハルト様はそう言って、私の頬を撫でた。
「それにしても、お兄様がそんなに必死になってくれていたなんて驚きです。」
「くくっ…。いつも冷静なあいつも今回は必死だったと思うよ。何たって意中の相手が王太子妃になっちゃうところだったんだから。」
「え…それって。」
信じられない…まさか…。
「…本当に気付いてなかったの?
ロイドの好きな人はルナだよ。それにルナもロイドが好きだ。ま、お互い気付いてないようだけど。」
「えぇぇー!!」
色々とパニックだ。お兄様がルナを好きで、ルナはお兄様を好き?というか、なんでハルト様は知ってるの?!そして、私はなんで気付かなかったの?!
三人で過ごすことも少なからずあったのに…!!
呆然として言葉も出ない。
そんな私をハルト様は呆れた顔で見ている。
「はいはい。驚いたのは分かったけど、それより今は急がなくちゃ。
国母の誓いまで時間がない。それまでに乙女であったことを医師に確認させて、式典に参加しなきゃ。」
◆ ◇ ◆
そこからは、ハルト様の思惑通り進んだ。
乙女の儀式で最初に私の処女を確認した時の医師ではなく別の医師が呼ばれ、事後の様子を見て、私が先程まで処女だったと証明してくれた。
シーツに付いたハルト様の精液と私の破瓜の血が交ざり、ピンク色になっていたのを、まじまじと見られて、顔から火が出るくらい恥ずかしかったけど…。
再び白のワンピースを着て、上手く歩けない私がハルト様に抱かれて、会場に戻るとすぐに式典が始まった。ルナと話す機会がなかったので、お兄様とどうなったのかソワソワしていたが、会場に戻った時にお兄様がピッタリとルナの隣に付いていたので、上手くいったのかもしれない…と思った。
そして、乙女の儀式の結果が発表された。
「ジュリア・ラスティのみ国母の誓いに進むことを許可する。」
そう発表された時は会場がざわめいたが、恥ずかしそうに俯くルナの元にお兄様が駆け寄り、その肩を抱くと、会場に向かって「ルナは私の恋人だ」と宣言し、ルナを連れ去ってしまった。
唖然とする進行役を急かして、ハルト様が式典を進めさせ、その後は無事に私が国母の誓いで、王太子妃になる意思を表明し、式典は終了した。
その日は帰ろうとしたのだが、どうもお兄様が馬車を乗って帰ってしまったらしく、ハルト様の勧めで私は王宮に泊まることになった。
豪華な風呂に入れられ、身体を磨かれ、ヒラヒラの夜着を着せられ、案内されたのは、何故かハルト様の部屋だった。ニコニコのハルト様にどういうわけか聞くと、急なことで部屋が用意できなかった、と。そんなわけない、とは思ったが、私もハルト様といられるのは嬉しかったので、二人一緒にベッドに入った。
その結果、再び身体を弄られ、グズグズに溶かされ、あまりにも感じすぎて辛くて、私は自ら挿入を強請る羽目になったのだった。
数日後には全ての真実が明らかになった。
ある侯爵家が医師を脅し、私が乙女ではないと嘘の証言をするよう脅したということだった。
ハルト様とお兄様は、その医師が嘘をついていることや侯爵が黒幕だと見破ってはいた。しかし、確実な証言が得られず、式典までに捕まえることができなかった。結局式典の間にお兄様がその医師を説得して、証言を得ることに成功し、侯爵は罪に問われることとなった。
侯爵の狙いは、王太子妃となれなかった私を息子の嫁として娶ることだったらしい。公爵家との血の繋がりと莫大な持参金が欲しかった、それに息子の恋を叶えてやりたかったと侯爵は話した。
◆ ◇ ◆
数ヶ月後、私とルナは王宮の庭園でお茶を飲んでいた。
「ルナ、あの時は本当にありがとう…。貴女が背中を押してくれなかったら、私はこうしてここに座っていられなかったかもしれない。」
「ふふっ。そんなことないわ。ハルト様が貴女を諦めるはずないもの。」
「もう…ルナったら。」
「私こそあんなことがあったから、気持ちを伝える勇気が出たんだわ。ずっと見ているだけで終わってたかもしれない。」
「どうでしょうね。今のお兄様の溺愛ぶりから見るに、かなり貴女には執着してるみたいだから…。お兄様にこんな一面があるなんて思ってもみなかったわ。」
「そ、そうね…。
私もまさか、こんなに情熱的な人だとは…。」
「…安定期に入りはしたけど、お互い気をつけましょうね。」
「え、えぇ。」
そう言って私達は大きくなったお腹を見つめて、微笑み合った。
「ですから…!
貴女は乙女ではないので、王太子妃に相応しくないという判断がなされました。よって、王太子妃はルナ・コルスティン嬢に決定致しました。」
私は王家からの使者の言葉が信じられなくて唖然とする。私だけじゃない。両親もお兄様も信じられない様子だ。
少しの沈黙の後、鋭い目をしたお父様が立ち上がって使者に詰め寄る。
「ジュリアが乙女でないなんて…そんなことあるはずがない!!この子は幼い頃からずっと王太子妃になるべく努力してきたんだ!遊びたい盛りにも我慢して、その目標に向かって必死に学んできたんだぞ!
それに、そんなことをすれば、私の耳に入っているはずだ。娘にはそんな素振りもなかったし、そんな相手もいない。二人きりになったことのある男なんて、王太子殿下だけだ!
それなのに…なんでこんなことに…っ!」
使者も困ったような顔をしている。そうだろう。彼はただ書簡を持ってきただけで、実際の王太子妃選考には全く関わっていないのだから。
お父様は頭を抱えて、ソファに沈み込んだ。
お母様はこの現状に未だ唖然としている。
そして、お兄様は何かをじっと考えているようだった。
誰も口を開かないため、使者がどうしたものかと困っている。この人を困らせてどうこうなる問題じゃないし、すでに書簡で届いたということは結果は決定しているのだろう。私はその書簡を謹んで受け取り、使用人達と使者の方々をお送りした。
応接間に戻ると、家族の視線が私に集まる。
「私は誓って乙女です。ハルト様以外に身体を開くなど断じてありません。」
私のその言葉を聞いて、お父様とお兄様は同時に「そうだよな…」とため息を吐いた。親子とはいえ、行動がシンクロし過ぎていて可笑しい。それをクスクスと笑ったら、「笑い事じゃない」とお父様に思いきり睨まれてしまった。
でも、仕方ないじゃない。笑ったりしていないと、上手く立っていられないくらい辛いんだもの。
◆ ◇ ◆
私、ラスティ公爵家長女ジュリア・ラスティは生まれた時から王太子妃候補だった。この国唯一の公爵家であるにも関わらず、ここ何代も王家は当家と繋がりを持てていない。関係が希薄になることを王家は恐れていた。
そんな時、王太子から三年遅れて、私が産まれたものだから、私が赤ん坊の頃から「王太子妃はジュリア嬢に決まりだな」と言われてきた。そう言われて育ったせいもあって、幼い頃から私は王太子妃にならなきゃ!と思っていた。とは言っても、人から与えられた目標とはモチベーションの上がらないもので、七歳にして私はもう王太子妃になることを諦めかけていた。
しかし、七歳で私は衝撃の出会いを果たした。
王太子であるハルト様にお会いしたのだ。当時十歳だったハルト様は、子供から大人への境界線をゆらゆらしている感じで、まだ可愛さの中にも凛とした格好良さがあった。キラキラと光を纏う金髪に、青空を閉じ込めたような真っ青な瞳。王子様とはこういう方のことを言うんだ…と思った。その上、ハルト様は私の視線に気付くと、私に近寄ってきた。ハルト様に見惚れて挨拶も出来ない駄目な私の手を取り、手の甲にキスをした。
「僕の可愛いジュリア…待っているよ。」
それだけ言い残すと、ハルト様は去っていった。私は顔を火照らせて、恥ずかしさと嬉しさと情けなさでその場にしゃがみ込んだ。そして、その時に決意した。
必ず王太子妃になる!と。
それから私は誰よりも努力した。お父様に頼み、最高の講師陣を取り揃えてもらい、勉強に、マナーに、ダンス、ある程度の護身術までマスターした。勿論美しさも大事なので、自分磨きも欠かさなかった。ハルト様とは十歳になった頃から二ヶ月に一度、欠かさずお茶会を開き、親交も深めてきた。
こうして、私は自他共に認める国一番の王太子妃候補として成長したのである。
この国の王太子妃は、基本的に国内の高位貴族の娘から選ばれる。王太子の年齢に近い娘は基本的に全て候補となる。その後、いくつもの試験をパスして、王太子妃候補は二名まで絞られる。
私もそこまでは順調に選考に残った。
最後の選考に残ったのは私の親友であるルナだった。
ルナは侯爵家の出身だが、気取ったところのない明るい子で、我が公爵家にも何度も遊びに来てくれているほどの仲だ。その上、ルナは他に好きな人がいるらしく、王太子妃には全く興味がなかった。頑張って最終選考に残ってくれたのは、今後の婚約に有利だからと話していたが、本当は私を側でサポートし、王太子妃にしてあげたいという友情のためだった。
最終選考は、乙女の儀式と国母の誓いの二つ。
乙女の儀式とは処女であることを証明する儀式。
国母の誓いとは王太子妃になる決意を宣誓する儀式。
国母の誓いの直前に乙女の儀式の選考結果が発表され、その後宣誓に入る。
その二つで決まらなければ、最終的には王太子に選択権がある。
ここまで来れば、何も心配することはなかった。
医師に乙女であることを証明してもらい、その数日後に皆の前で宣誓を済ませれば良いだけ。ルナは宣誓で権利を放棄すると言っていたし。ハルト様には国母の誓いで待ってるよ、と言ってもらっている。
ようやくハルト様の隣に立てる…と思ったのに。
「乙女じゃないって、どういうことよー!!」
あの後、お父様は苛立ちを隠し切れず、ガシガシと頭を掻いていた。公爵家にとっても今回の縁談は王家への忠誠を示す大きなチャンスだっただけに悔しいのだろう。いや…もしかしたら単純に私の恋を応援してくれていたからかもしれない。
ハルト様のことも「あの方は素晴らしい主君になる」と高く評価していて、お兄様には側近として、私には妻としてハルト様をよく支えるように…と酔う度に語っていたほどだった。お父様の期待に応えられないことも辛かった。
私はベッドの上で泣き崩れる。
乙女だと証明したくても手段がない。破瓜の血が確認出来たところで、その時にはもう乙女ではないから王太子妃にはなれない。もう私にできることはなかった。
国母の誓い記念式典は、三日後に迫っていた。
◆ ◇ ◆
式典当日、私はお兄様のエスコートで会場に入った。会場がざわめくがいつものことだから、気にはならない。周囲からは「今日もジュリア様はお綺麗ね」とか「ロイド様も本当に格好良いわぁ」とか「さすが未来の国母だわ」とか私やお兄様を褒める声が聞こえる。…国母にはなれないんだけどね…と内心一人で毒吐けば、自分で自分を傷つけることになった。じわっと涙が滲むのを必死に堪える。それを察してか、お兄様が周囲からの盾になってくれた。その隙に涙を拭う。
その時、「ジュリア!」と呼ぶ声がした。振り向けば、そこには真っ白なロングドレスを纏ったルナがいた。真っ黒な髪がサラサラと靡き、黒く大きな瞳は、吸い込まれそうになるほど神秘的で美しい。
お互い常識的な範囲の早足で駆け寄り、両手をギュッと繋ぎ合わせた。ライバル令嬢同士が仲良く両手を繋ぎ、見つめ合うなど、周りから見たら可笑しな状況だろう。しかし、そんなのを気にする余裕はなかった。
「ルナぁ~!」
先ほど抑えたはずの涙がまたぶり返してくる。
「未来の国母がこんなとこで泣くんじゃないの!」
ルナに促され、他の人がいないところへ行く。
「ルナ…私、王太子妃になれない。
乙女じゃないって言われたの…。」
ルナのドレスをキュッと掴みながら話すと、ルナは眉を下げる。私の頭を優しく撫でてくれる。
「うん。使者から聞いて知ってる。
でも、そんなことないんでしょう?」
私は顔を上げ、答える。
「勿論よ!ハルト様以外には触れさせたりしない!」
ルナは私の瞳をじっと覗き込んで言う。
「なら、まだ諦めちゃダメ。
というか、私のためにも諦めないで。
私は自分の好きな人と結婚したいの。」
そうだった。そこでようやくルナにとんでもない迷惑をかけていることを改めて思い出した。
「そうだよね…私のせいで本当にごめん。
私、自分のことばっかり…。」
ルナは微笑んでくれる。
「いいのよ。きっと今回のことは誰かに嵌められたに違いないわ。どこかで情報が捻じ曲げられてる。でも、流石にそれを暴く時間はないから、強硬策で行くわよ。」
「強硬策?」
私が首を傾げると、ルナは力強く頷いた。
「えぇ。今日、国母の誓いが行われるまでに殿下とヤりなさい。
殿下が自ら処女を散らしたとなれば責任を取らなきゃいけないし、その場で破瓜の血が確認できれば乙女だったことも証明できるしで一石二鳥よ。」
…デンカトヤリナサイ?
「えぇ?!」
ようやく脳内処理が追いつき、私は驚きの声を上げた。驚く様子の私をよそにルナは話を続ける。
「国母の誓いが行われるのが、夜九時。今から三時間。三十分後には殿下も入場されるはずだから、そしたらタイミングを見計らって誘い出すのよ。いい?」
「う、嘘でしょ?ルナ、ほ、ほ、本気なの?」
信じられない作戦に足も手も声まで震えてくる。
「ふふっ。ジュリアったら動揺し過ぎ。王太子妃になったら、一年もせずに結婚でしょ?初夜が少し早くなっただけだと思えばいいのよ。
それとも、王太子妃になるのを諦める?」
ルナに挑発されるように言われ、私は咄嗟に答えていた。
「やる!!
可能性が少しでも残ってるなら、私…頑張る!!」
ルナはニヤッと笑う。
「いいわ、その意気よ。
ついでに私も処女を捨てるわ。」
「え?…えええぇー!!」
これまた信じられない話にはしたない声を上げてしまう。
「煩いわね。仕方ないでしょ。ジュリアが失敗したり、乙女だと認められなかったりすれば、王太子妃にされちゃうもの。乙女じゃ無くなれば、王太子妃にはなれない。」
「だ、誰に頼むの…?」
「分かんない。一番は好きな人に貰ってほしいけど…断られちゃうかも…。」
珍しくルナが弱気だ。
目を伏せると睫毛の長さがより際立つ。
「そうなの?ルナはこんなに綺麗なのに、靡かない人なんている?」
「ふふっ。ありがとう。でも、その人の近くにはいつもお人形さんみたいな可愛い子がいるから…私なんて可愛く見えないのよ。」
「そんなことあり得ないわ!
ルナはこの国の中の令嬢で一番綺麗だもの!
大丈夫よ!自信を持って!!」
「ありがとう、ジュリア…。私、貴女が大好きよ。」
「私もよ、ルナ。大好き!」
私たちは顔を見合わせ、決意を新たに会場に戻った。
ルナとばかり話してもいられないので、他の人の相手もするが、いつも以上に疲れる。私の頭の中はどうやって誘えばいいのか、という疑問でいっぱいだ。
予定より少し早くハルト様が会場に入られた。ここ最近は王太子妃選考でなかなか会えなかったから、久しぶりに見るハルト様だ。
…少し痩せられたかしら。それになんだか元気がないようにも見える。昨日はあまり寝れなかったのかもしれない…うっすらと隈が。ハルト様は寝付きの良い方だとおっしゃっていたのに。お仕事が忙しいのかしら?
そんなことを思いながら、ハルト様を見つめていたら、パチっと目が合った。が、すぐに逸らされてしまった。
前までなら、あぁやって目が合ったら必ず微笑みかけてくれたのに…。きっとハルト様は結果を聞いて、私が乙女じゃないと思ってるのね…。
今すぐにでも踵を返して馬車に戻りたくなった。
…けれど、ハルト様に誤解されたままは嫌だし、やっぱりハルト様の妻になりたい。それにここで私が諦めたら、ルナに迷惑がかかる。
絶対にハルト様とヤるんだ!!
私は気合を入れ直して、ゆっくりと優雅に見えるようハルト様に近付いて行った。今日の主役はハルト様と私とルナだから、邪魔する者はいない。
ハルト様の前に立ち、礼を取る。
「殿下、ご無沙汰しております。」
「あぁ、ジュリア。
久しぶりだね。元気にしていた?」
「はい。」
微笑みながら答える。
本当は全然元気じゃなかった。あの日から毎日泣いていたし、食事も喉を通らなくて、ただでさえ細いのにより細くなってしまった。「少し柔らかい方が僕は好きだよ」と前にハルト様は言っていたのに…そういう意味では私のコンディションは最悪だ。
けれど、今日を逃したらチャンスはない。なんとしても私の処女をもらってもらわなければ。
「ハルト様、何処かで少しお話をしませんか?」
「うん、構わないよ。」
「ありがとうございます。では…」
次の瞬間、王子の手が腰に添えられた。
「ひゃっ!」
こんなに密着するのは滅多にないし、突然すぎるし、みんなの前で恥ずかしい。
「殿下…っ!」
ハルト様はわたしの耳元で、「二人っきりになれるところに行こうね」と今まで聞いたこともない色っぽい声で囁いた。私は半ば連れ去られるようにして、私は会場を去った。
…あれ?…私から誘うんじゃなかったっけ?
◆ ◇ ◆
ハルト様が連れて来て下さったのは、なんとハルト様の自室だった。誘おうと思ってたから、とても有難いんだけど、なんでこんなことになっているのか…。
でも、ハルト様の自室に入るのが初めてだった私は、少しテンションが上がってしまっていた。失礼だと思いつつも、ハルト様の部屋の匂いを吸い込み、チラチラと周りを確認してしまう。ハルト様の部屋に入れてもらえているというその事実が嬉しくて、つい頬が緩んでしまう。
それに…部屋の所々に私からの贈り物がある。机の上にあるペンは去年の誕生日プレゼントだし、ベッドサイドに置いてある時計は三年前の誕生日プレゼント。私が初めて刺繍をしてハルト様にあげた不恰好なライオンのモチーフのハンカチは、なんと額に入れて壁に飾ってあった。
「これ…。」
その額の前で驚く私の背後にハルト様が回り込む。後ろから腰に腕を回されて、肩に顔を置かれる。ハルト様の匂いがフワッと香る。
ひゃー!きゃー!
な、な、なんでこんなに今日は距離が近いの?!
嬉しいけど、嬉しいけど!!
私がパニックに陥っていると、ハルト様は囁くように耳元で話し始めた。
「このハンカチ…覚えてる?ジュリアが初めて刺繍をしたと言って僕にくれたんだ。真っ赤な顔をして、恥ずかしそうに僕に渡して来てさ。本当に可愛かった…。
それから、いくつもハンカチを貰ったけど、どうもこの最初のハンカチが好きでね。ずーっと飾っているんだ。王太子妃になって、正式に僕の部屋に来たら見せてあげようと思ってたんだけどー」
ハルト様の手が下に伸びてきて、私の下腹部で止まった。次に言われることが分かって、私の瞳には涙が滲む。
「まさか…乙女じゃないなんて。」
私はギュッと唇を噛み締めた。
「…正真正銘、乙女です!
なんで、あぁいう結果になったのか私にも分かりません。本当に、本当なんです…信じてもらえないかもしれないけど…。」
「本当に?僕の知らないところで、誰かと通じてたんじゃないの?」
「あり得ませんっ!!」
私は振り向いて、潤んだ瞳でハルト様を睨み付けた。
ハルト様は微笑んでいるが、どこか怖いようなー。
「そう?この前の舞踏会でも、何人もの令息に言い寄られてたでしょ?中には手を握ろうとする奴もいたし、肩に手を添えようとした奴もいたよね?その後、バルコニーにも誘われてたろう?」
「触られてません!すぐに離れましたし、やめて下さいと言いました!バルコニーにも行ってません!!」
ハルト様はぐっと私を抱き寄せると耳元にキスを落とした。
「ん…。」
「ほら。大体さ、ジュリアは隙が多いんだよ。ジュリアが乙女だと思ってるだけで、本当はどこかで薬でも盛られて、知らないうちに処女を散らされちゃったんじゃないの?」
「そ…そんな…っ。」
「こうやってノコノコ俺の部屋までついて来ちゃうのも危機感が足りないんじゃないの?そんなんだから、今回みたいなことになるんだ。」
「ぐすっ…でもっ、本当にわたし、乙女で…っ!
こんな距離を許すのも、ハルト様だけで…。」
私がそう言うと、ハルト様は私からスッと離れた。
「ふーん。
でも、もう結果は出ちゃってるもんね。
僕も残念だけど、あと二時間もすれば、ルナが王太子妃として発表される。」
「それは…っ。」
「この部屋にももう二度と入れないし、このベッドで僕が抱くのもジュリアではなく…ルナー」
「嫌っ!!」
私はそのままハルト様をベッドに押し倒そうと体当たりをする。が、鍛えているハルト様はびくともせず、私をただ抱き止めただけだった。私は背中に腕を回し、ギュッと身体を押し付ける。
「ハルト様が…。ハルト様が、乙女かどうか…確かめて…くだ、さい。」
震える声で何とか伝えると頭の上でフッと笑うのが聞こえた。
「随分といやらしいお願いだね。
でも、僕も王太子だ。そう簡単に抱くわけにはいかないけど、どうする?」
「…そっ、その気にさせてみせます!!」
「へぇ。それは楽しみだ。」
国母の誓いでは、昔からの慣習で王太子妃候補の二人は真っ白なロングドレスで参加することになっている。シンプルなその装いは、王太子妃候補そのものの本来の美しさを周りに知らしめる意味もあった。
それが今日はありがたかった。ワンピースは背中にファスナーが付いているだけ。いつものドレスじゃとてもじゃないけど、一人で脱ぎ着はできない。
私は、ベッドに腰掛けて微笑みを浮かべたハルト様を見つめた。恥ずかしさで目が潤む。顔も火照る…きっとハルト様から見たら私の顔は真っ赤だろう。
でも、ここで諦めるわけにはいかない。
私は意を決して、ハルト様に背中を向けた。
「脱ぐから…待ってて、下さい…。」
両手を背中に回し、少しずつファスナーを下ろしていく。
ジジッ…ジーッ。
ファスナーを下ろしていく音が室内に響く。
背中から、腰、お尻の上の方までのファスナーを下せば、すぐにでも脱げるようになる。背中にハルト様の視線を感じて、熱いくらいだった。
私は正面を向き、ハルト様の綺麗な空色の瞳を見つめた。
「ハルト様…見て…。」
ストンとワンピースを落とせば、私が身に纏うのは真っ白な胸当てとパンティだけだ。
ハルト様がゴクッと喉を鳴らすのが聞こえた。
少し手応えを感じた私は、ゆっくりとハルト様に近づく。少しでも恥ずかしい部分を隠そうと、自分をギュッと抱きしめる。
…ちゃんと誘惑、できてるのかな?
ハルト様の目の前に来ると、私はハルト様に跨り、首に腕を回した。ハルト様の重いジャケットを脱がせて、瞳をぐっと覗き込む。
「ハルト様、好き。」
そう言って、そっと唇を重ねた。私からのキスは初めてだから、どうもぎこちなくなってしまう。
二秒ほどくっ付けて離そうとしたら、ぐっと後頭部を掴まれ、より深く口付けられた。
「んんっ!!」
逃げられない…!と思っていると、今度は口の中に舌まで入ってきた。
な、な、何なの、このキスー!!
今までハルト様とは二回しかキスをしたことがない。東屋で隠れて一回。デートに行った帰りの馬車で一回。
どちらもそっと触れるだけの綿菓子のような甘く優しいキスだった。
こんなキスがあるなんて知らなかった。苦しくなって、ハルト様の胸をドンドンと叩くと、ようやく唇を離してくれた。
「はぁ…はぁ…ハルト様…。今のはー」
「ジュリア、鼻で息を。」
それだけ言うと、ハルト様はまた唇を押し付けて来た。舌も侵入して来て、逃げ惑う私の舌を追いかけてくる。もうどうしたらいいか分からず諦めると、ハルト様は舌を擦るように絡ませてきた。
「んっ…ふぅ…。」
私からは今まで聞いたこともない、なんだか妙な声が出てしまう。けれど、どうも抑えられなかった。
頭がぼんやりとして来て、ハルト様とのキスのことしか考えられない。気付けば、私からもハルト様を求めるように舌を絡ませていた。
身体がじんじんと熱くなってきて、ハルト様ともっとくっつきたくて仕方なかった。私は胸が潰れるほどギュッと身体を押し付けた。すると、乳首が下着越しに擦れて気持ち良くて、身体を小刻みに動かす。
ハルト様は名残惜しそうに私の唇を軽く食んでから、唇を離した。
「全く…いつこんなの覚えたの?」
ハルト様は私を鋭く見つめ、唇を舐めた。
その表情は妖艶で、まるで飢えた獣のようだった。
こんなハルト様…見たことない。
ハルト様はいつでも優しくて、穏やかで…。
でも、もっと…もっとこのハルト様を見たい。
私は胸当てを外した。ふるんっとまろびでた私の胸にハルト様は釘付けだ。ハルト様の手を取って、その手を乳房に持って行った。
「ハルト様の、です。…いっぱい触って…。」
ハルト様は大きさや手触りを確かめるようにゆっくりと胸を揉む。時々、ハルト様の指が乳首を掠めれば自分でも驚くような声が出る。
「はっ、あんっ!…ハル、トさまぁ…んっ。」
「あぁ…ジュリア…っ!
なんて…なんて美しく…卑猥な…。」
ハルト様は私の乳首をペロッと舐める。
「ひゃ…ああんっ!」
それだけで身体に甘い痺れが走る。
ハルト様は右の乳首を口に含み、乳輪をなぞるようにクルクルと舌を動かす。左の乳房はハルト様の手の中で自由自在に形を変える。
「あぁ…ハルト様…ぁ。」
快感が溜まる先っぽにも触れて欲しくて、懇願するように名前を呼ぶ。ハルト様は乳首を咥えたまま、笑った。
「本当にジュリアはおねだりが上手だね。」
次の瞬間、ハルト様は私の乳首をキュッと甘噛みした。
「あぁんっ!」
そこからハルト様の胸への愛撫は更に激しくなった。
こんなにハルト様がおっぱいが好きだったなんて、知らなかった…。それなりに大きくて良かった…。
嬌声を上げることしか出来ない私は、頭の隅でそんなことを思っていた。
存分に胸を舐めて、齧って、揉んでー
私も…そして、きっとハルト様も…もう我慢ができなかった。
さっきから私の下着は濡れているようだし、その下にあるハルト様のものは熱く大きくなっていた。私はぐっと腰を落として、ハルト様のものに私の秘部を擦り付けた。
「ねぇ、ハルト様…確認して?」
「…あぁ。」
ハルト様はベッドの中央に私を横たわらせると、パンティをゆっくり引き抜いた。私は一糸纏わぬ姿になる。
「…ジュリア、綺麗だ。
この姿を他の男が見たと思うとー
…殺したくなる。」
一瞬、ハルト様が恐ろしい顔をする。
「誰も見てない…ハルト様だけ。
私はずっと…ハルト様だけの、ジュリアです。」
そう言うとハルト様の表情は少し柔らかくなった。
「じゃあ、ちゃんと奥の奥まで確認しないとな。」
ハルト様はそう言って、下を脱ぎ捨て、大きなモノを取り出した。私は初めて見るそれに唖然とする。
あ、あんなのが本当に入る…の?
さっきまで蕩けていた身体も緊張で強張る。
ハルト様は私の視線に気付くと、笑った。
「そんなに見ないの。
大丈夫だよ、ちゃんと入るから。」
ハルト様はそう言って私に覆い被さると、あの蕩けそうなキスをまた私にくれた。一瞬冷めかけた身体はあっという間に熱を取り戻し、再び快感に沈んでいく。
キスをしながらもハルト様の手は私の身体を這い回る。その手つきは、官能的ながらも優しくて、あたたかでハルト様の愛情が私の身体に染み込んでいくようだった。
ハルト様の手は徐々に下に伸ばされ、ようやく私の蜜口に辿り着く。軽く指を沈ませただけなのに、そこからはヌチャと水音がする。恥ずかしくて両手で顔を隠すと、ハルト様に手をどかされてしまった。
「恥ずかしがってる顔も見たい。ジュリアの全部を俺に見せて?隠さないで?」
そう言われたら隠せるはずもなかった。ベッドのシーツをギュッと握りしめる。
ハルト様の指が一本ゆっくりと私の中に入ってくる。
…違和感がすごい。
「ゔぅ…。」
「やっぱり、狭いな…。
ジュリア、一回イっておこうか?」
「イく?」
「そうだよ。リラックスして…僕に全部任せて。」
ハルト様は一旦指を抜くと、その少し上の部分をそっと触った。
「ひゃぁんっ!」
今のは…なに?痛いような、気持ちいいような…変な感覚。
「優しく触っていくけど、痛かったりしたら言うんだよ?」
「…はい。」
ハルト様はさっきの部分に再び触る。指の腹で優しく優しく撫でてくれる。と思ったら、少し押すようにして押し込んでみたり、リズミカルに優しくトントンと、刺激をしたりする。どれも気持ち良くて、細かな嬌声が抑えられない。
けれど、クルクルと刺激されると今までにない快感が身体にビリビリと走る。
「やっ、あっ、あっ…ハルト様ぁ…!
それっ、やっ、だめ…っ!!」
「そっか。これが好きなんだね。」
落ち着いたように聞こえるけれど、ハルト様の声には喜色が混じっていた。
ハルト様は休むことなく、クルクルと私の突起を刺激する。
「ひゃ…やっ、あっん。ハル、ハルトさま…っ!」
尿意にも似たような感覚が溜まっていき、どうしたらいいのか分からない私は、悲しくもないのに泣いていた。気持ち良くて、おかしくなりそうで、こわい。
「だめっ、やっ、はっ、あ、あっ!」
「ジュリア…イくんだ…。」
「やああぁぁんっ!!!」
目の前が真っ白になった。快感が弾けて、身体中を支配した。私ははぁはぁ…と息を整えるのがやっとだ。
ハルト様はとても楽しそうに上から私を見下ろす。
そして、私の下腹部にあるハルト様のモノはとても元気だった。
ハルト様は再び私の蜜口に手を伸ばす。
「随分力が抜けて柔らかくなったね。
…これなら何とか入るかな。」
ハルト様の指をグポッっと私の蜜壺が飲み込む。
先ほどよりも違和感が薄れている。時折気持ちよささえ感じるほどだ。
それでも、ハルト様は念入りに私の蜜口をほぐしてくれた。指が一本から二本、二本から三本に増えたところで、ようやく私の願いが叶えられることとなった。途中、何度も挿れて欲しいと懇願したのだが、「出来るだけジュリアに痛い思いをさせたくないから…」と三本受け入れられるようになるまで挿入を許してくれなかった。
「はぁ…あん、ハルト様…もう、お願い…っ。」
「あぁ、ジュリア挿れるよ…。」
ハルト様のモノが蜜口に添えられたと思ったら、グッと押し込まれる。十分に愛液が溢れたそこは、ハルト様のモノを飲み込もうと、吸い付く。
少しずつ少しずつ、ハルト様が私の中に入ってくる。蜜口はミシミシと音が聞こえそうなほど苦しいのに、私の胸に広がるのは紛れもなく喜びだった。
ずっとずっと想い続けたハルト様と繋がっているという事実がどうしようもなく嬉しくて、涙が溢れた。ハルト様は目尻から溢れた私の涙を舐め、顔中にキスを落とす。
ハルト様の動きが止まる。
「奥まで…入った…?」
「いや。最後は少し痛いかもしれない。
…ジュリア、大丈夫?」
「はい。ハルト様と繋がれて嬉しいから…。
私の全部をハルト様のものにして。」
「あぁ…。僕の…僕だけのジュリアだ…!」
そう言って、ハルト様はグッと私を貫いた。
「あ゛ぁ!!!」
すっっごく痛かった…
痛かったけど、涙が出るほど幸せな痛みだった。
「ぅ…、全部…入ったよ…。」
「はぁ…ぁ…嬉しい、です。」
「あぁ、俺もだ。」
私達は強く抱きしめ合った。その間もハルト様のモノがビクビクと私の中で震えている。ハルト様の腰が時折揺れて、ハルト様は苦しそうに声を漏らしていた。
「ハルト様、動いて。いっぱい突いて、赤ちゃんのもと…ジュリアの中に注いで?」
そう私がハルト様の耳元で囁き、キスを落とすと、私の中に突き刺したモノがビクンっと震えた。
「…ごめん、もう無理だ…っ!」
ハルト様は激しく腰を振り出した。
「ひゃっ、あん、あっ!ふっ、うんっ…あっ!」
痛い…けど、微かに気持ち良くて、声が漏れる。
「ジュリア、ジュリア、好きだ…っ!ずっと。」
「あっ、はっ、わた、しもっ…
ハルトさまをっ…ぁん、愛して、るぅ…っ!」
「ジュリア…!誰にも渡さない…っ!
はぁ…っ…君は僕の妃だっ!」
ハルト様の執着が嬉しかった。私の膣壁はハルト様のモノを強く抱きしめた。
「あっ、あっ、ハルトさまぁっ!」
「ジュリア…っ、孕め。僕の子を。」
「孕むぅ…っ!!」
「…はぁ、っ、出るっ…!!」
「あああぁぁあーっ!!!」
私達は同時に果てた。
…初めては痛いと聞いていたんだけど…途中からは初めてだとは思えないほど、気持ちよかった。
私達は暫く抱き合っていた。ハルト様は落ち着いたようでズルッとモノを私の中から抜き出した。そして、言った。
「あ、赤いね。…本当に乙女だったね。」
驚きも何も含まれていないその声に、私はつい文句を言う。
「…ハルト様、知ってたでしょう?」
「勿論。ジュリアには七歳の頃から常に監視を付けてるんだ。処女なんて、捨てられるはずない。」
「なっ!!」
ハルト様はモノについた色んな液体を拭き取る。その後、水差しから水をコップに注いで、勢いよく飲み干した。
「あの頃からジュリアが王太子妃になることは僕の中で決定事項だった。監視をつけるのも当たり前だろう?」
全然当たり前じゃない気がするが、それは別の機会に追求することとして、今回の話に戻る。
ハルト様はもう一杯水を注ぐと、ベッド端に座り、私に差し出してくれた。それを受け取って一口飲む。
「だっ、だったら、今回の件もそう反論して下されば良かったのに。」
「国母の誓いが終わるまで僕が直接関与できないだろ
?だったら、ジュリアともう契っちゃおう!ってなったわけ。俺の子がお腹にいるかもしれない状態じゃジュリアを王太子妃に任命するしかないだろう?」
『俺の子』と言われ、少し照れる。いつか来てほしいその時を想像して、私は再び顔が熱くなる。
「そ、そうですけど…。」
「選考の間は会えないことになってるし、手紙も出しちゃいけないし、チャンスは今日しかなかった。急なことになったけど、これで行き着くのは最高の結果なんだからいいだろう?」
「でも、最初は抱く気ないみたいなこと言ってたじゃないですか!」
「あぁ、あれはちょっとした意地悪だよ。ロイドにジュリアはどうしてるか聞いたらただ泣いて過ごしてるって言うから。
俺とロイドは必死にどうやったらジュリアを王太子妃に出来るか考えたり、根回ししてたっていうのに、泣いて諦められる程度の気持ちなのかと思って。」
「私もどうにかならないかって何度も考えはしたんです。でも、何も思いつかなくて…ごめんなさい。」
「いいんだ。一番傷付いたのはジュリアだもんね。意地悪をして、悪かった。こんなこと慣れてないのに一生懸命僕を誘惑する姿を見て、ジュリアの気持ちを改めて確認できたから。」
ハルト様はそう言って、私の頬を撫でた。
「それにしても、お兄様がそんなに必死になってくれていたなんて驚きです。」
「くくっ…。いつも冷静なあいつも今回は必死だったと思うよ。何たって意中の相手が王太子妃になっちゃうところだったんだから。」
「え…それって。」
信じられない…まさか…。
「…本当に気付いてなかったの?
ロイドの好きな人はルナだよ。それにルナもロイドが好きだ。ま、お互い気付いてないようだけど。」
「えぇぇー!!」
色々とパニックだ。お兄様がルナを好きで、ルナはお兄様を好き?というか、なんでハルト様は知ってるの?!そして、私はなんで気付かなかったの?!
三人で過ごすことも少なからずあったのに…!!
呆然として言葉も出ない。
そんな私をハルト様は呆れた顔で見ている。
「はいはい。驚いたのは分かったけど、それより今は急がなくちゃ。
国母の誓いまで時間がない。それまでに乙女であったことを医師に確認させて、式典に参加しなきゃ。」
◆ ◇ ◆
そこからは、ハルト様の思惑通り進んだ。
乙女の儀式で最初に私の処女を確認した時の医師ではなく別の医師が呼ばれ、事後の様子を見て、私が先程まで処女だったと証明してくれた。
シーツに付いたハルト様の精液と私の破瓜の血が交ざり、ピンク色になっていたのを、まじまじと見られて、顔から火が出るくらい恥ずかしかったけど…。
再び白のワンピースを着て、上手く歩けない私がハルト様に抱かれて、会場に戻るとすぐに式典が始まった。ルナと話す機会がなかったので、お兄様とどうなったのかソワソワしていたが、会場に戻った時にお兄様がピッタリとルナの隣に付いていたので、上手くいったのかもしれない…と思った。
そして、乙女の儀式の結果が発表された。
「ジュリア・ラスティのみ国母の誓いに進むことを許可する。」
そう発表された時は会場がざわめいたが、恥ずかしそうに俯くルナの元にお兄様が駆け寄り、その肩を抱くと、会場に向かって「ルナは私の恋人だ」と宣言し、ルナを連れ去ってしまった。
唖然とする進行役を急かして、ハルト様が式典を進めさせ、その後は無事に私が国母の誓いで、王太子妃になる意思を表明し、式典は終了した。
その日は帰ろうとしたのだが、どうもお兄様が馬車を乗って帰ってしまったらしく、ハルト様の勧めで私は王宮に泊まることになった。
豪華な風呂に入れられ、身体を磨かれ、ヒラヒラの夜着を着せられ、案内されたのは、何故かハルト様の部屋だった。ニコニコのハルト様にどういうわけか聞くと、急なことで部屋が用意できなかった、と。そんなわけない、とは思ったが、私もハルト様といられるのは嬉しかったので、二人一緒にベッドに入った。
その結果、再び身体を弄られ、グズグズに溶かされ、あまりにも感じすぎて辛くて、私は自ら挿入を強請る羽目になったのだった。
数日後には全ての真実が明らかになった。
ある侯爵家が医師を脅し、私が乙女ではないと嘘の証言をするよう脅したということだった。
ハルト様とお兄様は、その医師が嘘をついていることや侯爵が黒幕だと見破ってはいた。しかし、確実な証言が得られず、式典までに捕まえることができなかった。結局式典の間にお兄様がその医師を説得して、証言を得ることに成功し、侯爵は罪に問われることとなった。
侯爵の狙いは、王太子妃となれなかった私を息子の嫁として娶ることだったらしい。公爵家との血の繋がりと莫大な持参金が欲しかった、それに息子の恋を叶えてやりたかったと侯爵は話した。
◆ ◇ ◆
数ヶ月後、私とルナは王宮の庭園でお茶を飲んでいた。
「ルナ、あの時は本当にありがとう…。貴女が背中を押してくれなかったら、私はこうしてここに座っていられなかったかもしれない。」
「ふふっ。そんなことないわ。ハルト様が貴女を諦めるはずないもの。」
「もう…ルナったら。」
「私こそあんなことがあったから、気持ちを伝える勇気が出たんだわ。ずっと見ているだけで終わってたかもしれない。」
「どうでしょうね。今のお兄様の溺愛ぶりから見るに、かなり貴女には執着してるみたいだから…。お兄様にこんな一面があるなんて思ってもみなかったわ。」
「そ、そうね…。
私もまさか、こんなに情熱的な人だとは…。」
「…安定期に入りはしたけど、お互い気をつけましょうね。」
「え、えぇ。」
そう言って私達は大きくなったお腹を見つめて、微笑み合った。
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