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22.嘘
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手紙を読みながら、シーラ様は泣いていた。読み終わると同時に手紙に残された温もりを探すように文字を辿っていく。
「…ロイ…。」
私とエアロはその姿をただ見つめていた。
少しすると、エアロが新しいお茶を淹れてくれた。
その時に私も手紙を読ませてもらった。
私が読み終えたのを確認して、エアロが話し出す。
「母上。その手紙を読んで分かったと思いますが、父上は心の底から母上を愛していました。国王となった後もどんなに臣下が勧めても、絶対に妃は置かなかったそうです。妃の代わりは妹であるアンヌ様が務めていたと。
ついでに今の国王は、アンヌ様の息子であるロキ様です。」
「そう…。」
シーラ様は力なく返事をする。
エアロは心配そうにシーラ様を見つめる。
「母上…大丈夫ですか?」
「えぇ…。ありがとう。
結果はどうあれ、真実が分かって良かった。もし会えるなら言いたいことは沢山あるけど…。
でも、楽になったわ…これ以上、大好きだったあの人を憎まなくていいんだって。」
シーラ様はまた一つ涙を流し、微かに笑った。
エアロが口を開く。
「母上。実はこの話には一つ事実とは違うことが書いてあります。」
シーラ様は眉を顰めて、エアロを見る。
「……父上は薬で自分がお祖母様を殺したと思っていますが、お祖母様は持病をお持ちでした。…それをずっと母上に隠していたのです。」
「まさか…うそ……」
目を丸くして驚くシーラ様の言葉にエアロが首を横に振る。
「本当なんです。
母上はお祖母様の日記をどこまで読みましたか?」
「……紫の瞳を持つ一族が魔女の力を狙っていて、ロイが記憶喪失なんて嘘だというページまで…。
そこで辛くなって…それ以上は怖くて読み進められなかったわ…。」
エアロは少し俯きがちに口を開いた。
「日記を読み進めていくと、亡くなる一ヶ月前から持病が悪化していく様子が綴られていました。お祖母様は父上が薬を仕込んでいることには気付いていましたが、あれは毒薬ではなく本当に薬だったのです。薬のお陰でなんとか頭痛を抑えられて、母上との残り少ない日常を過ごせると日記の中で感謝していました。そして、母上と父上、二人で幸せになって欲しいと。…お祖母様は、父上のことを認めていたんです。」
シーラ様は唖然とする。
「じゃあ…この手紙には、なんで…。」
「恐らく父上も知らなかったんでしょう。あれが本当に薬であったと。手紙に出て来るギャリーという人が父上を国に戻す為に嘘を吐いたのだと思います。
…母上。母上は父上を助け、愛し合っただけです。それでお祖母様が死んだわけでも、私やアクアが不幸になったわけでもありません。
母上は、堂々と父上を愛していいんです。母上が父上を愛したことは間違っていません。」
部屋の中にはそこから暫くシーラ様の啜り泣く音が響いた。
涙は落ち着いたようで、私と目を合わせたシーラ様は恥ずかしそうに笑った。目が少し腫れていたが、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
シーラ様が口を開く。
「エアロ、本当にありがとう。過去に囚われた私を救ってくれて。これからはロイと過ごしたあの時間を幸せな思い出として抱いていけるわ。
ねぇ、今、アクアはどこにいるの?生きているなら会いたいわ。」
エアロは笑顔で答える。
「アクアは今、この国の王宮にいます。」
シーラ様は不思議そうにエアロを見つめる。
「え?どういうこと?」
「では、アクアと無事に会ったところから話を進めましょうか。」
そう言うと、エアロは紅茶を一口飲み、話し始めた。
「自己紹介をお互いにした私達は知っている情報を擦り合わせ、両親の真実に辿り着きました。
そして、その時に私はアクアに言いました。
魔女の力を受け継ぐには、先代の魔女が亡くなる前に契約をしておく必要があり、契約を交わしていない状態だと魔力の移譲は行われない。だから、今の状態の貴女に魔力が宿ることはない。自由に外で生活することが出来る、と。アクアはそれを聞いて泣いていました。」
「…私がロイにちゃんと説明していれば、アクアはもっと自由に生きられたのに。」
俯くシーラ様に私は言う。
「シーラ様は何も悪くないです。まさかロイ様とアクア様がいなくなってしまうなんて、予測できたことじゃありません。」
エアロも私の言葉に頷く。
「そうです、母上。
すぐに自分の責任だと背負い込まないで下さい。
アクアも誰も責めてはいませんでしたよ。
その後、アクアは共に王宮へ行き、アンヌ様とロキ様に一緒に事情を説明してほしいと言われました。私はお二人に会う前にシルヴィのことやストラ国との一連の騒動について話しました。すると、アクアは交渉してみせる、と。
実際にアンヌ様とロキ様にお会いし、真実を全て話しました。お二人ともアクアが自由に外へ出れることを本当に喜んでいました。そして、アクアはどうか自分をチューニヤ国に嫁がせてほしい、とお二人に提案しました。お二人は、アクアを止めようとしましたが、アクアは王家としての役目を果たしたい…と。
実は父上が亡くなってから、アクアに対する不満の声が国内貴族から上がっていたそうです。王宮の隣に専用の家を作っているという待遇や、王族としての公務を行わないこと、そして何より貴族や他国の王族からの婚姻を全て拒否していること。隠されていると言っても、人の目につくことはあります。アクアの美しさに魅せられた者から大量の縁談が舞い込むのは必然でした。
しかし、事情を知るのはアンヌ様とロキ様、そしてごく限られた側近のみで、アクアを守るのが段々と厳しくなっていたようなのです。だからと言って、魔女の力について公にするわけにはいきませんでした。
だから、今回アクアが第二王子殿下に嫁ぐ話はアクアにとっても、コティーズ国にとっても良い話だったのです。また、当国の主要産物がコティーズ国で輸入を強化したいと思っていた物だということも幸いしました。
ロキ様は頑なに許可しようとしませんでしたが、アンヌ様とアクアに説得され、最後には認めて下さいました。」
私は尋ねる。
「なんで、ロキ様はすぐに許可してくださらなかったのかしら?」
エアロは少し躊躇いながら口を開いた。
「あー……。
ロキ様はどうもアクアを好いていたらしいのです。」
「そ、そうなんだ…。」
エアロは苦笑いだ。
「でも、アクアは母上のいるこの国で暮らしたい、そして、今後魔女の力を継ぐかどうかしっかり考えたい、と言っていました。魔獣を生み出す強大すぎる力だけど、人を救うことも出来る力だから…と。」
シーラ様はそれをじっと聞いて、ゆっくりと口を開いた。
「魔女は私の代で絶えると思っていたわ…。
こんなことがあるなんて…ね。」
エアロが言う。
「私も考えていたのですが…魔女の力はもっと有用に使えると思うのです。人の生死に直接関わるものでなければ、魔獣もそこまで強くなることはありません。私やシルヴィがいれば問題なく対処できるでしょう。騎士団が力を貸してくれるなら、それでもいいかもしれません。
アクアと話して、国が受け入れてくれるならば、そのあたりも整えていきたいと言っていました。」
私は少し考えて、口を開く。
「騎士団が魔獣を管理する…いいかもしれないわね。森での任務は訓練にもなるし。
それに何より世間の魔女様のイメージが大きく変わると思う!」
エアロが頷く。
「私たちにとって…そして、この国にとって、アクアが第二王子殿下と婚約・結婚することは、大きなメリットがあると思うのです。
あとは国が婚約を承認するか…ですが、胡椒の件もあるし、問題ないでしょう。魔女の血が王家に入るのを嫌がるか、王子殿下より六歳も上のアクアを娶るのを嫌がることがなければ。」
…セレク王子殿下がアクア様が歳上だからって嫌がることはないと思った。私を側室にしようとしたくらいだし…それに、きっと殿下はすでにアクア様に惹かれている。そして、アクア様も。お二人ならきっと良いご夫妻になられるだろう。
エアロは話を続ける。
「そんなわけで、私達はアクアの侍従だけ連れて、チューニヤ国に来たのです。私がいるから護衛も必要ないですしね。ロキ様が信書を書いてくださったので、面会は出来そうだったのですが、陛下は他国と会談中だと聞き、嫌な予感がしました。
そこで私は第二王子殿下と先に面会させてもらい、話をさせてもらうことにしました。シルヴィから話を聞き、まぁ…良くは思っていませんでしたが、信用できる人物だとは思っていたので。」
少しムッとしながら、嫉妬してるエアロが可愛くて、私はフフッと笑った。
「そこからはシルヴィも同席していたので知っていますが、ストラ国王と姫の醜聞を明らかにし、婚約破棄を認めさせました。アクアは、姫のために醜聞を晒したくなかったようですが…。
そこからはアクアと陛下と殿下三人の話し合いになったでしょうが、私達は先に出てきたのでどうなったか分かりません。
でも、そろそろ…ですかね。」
その時、近くで鴉の鳴き声がした。
「あ、イルですね。
ちょっと待っていて下さい。」
エアロはそう言うと、窓を開け、鴉の姿で飛び立って行った。
「どうしたんでしょう?それにイルって…。」
シーラ様はクスクスと笑った。
「イルは、あの子の友達鴉の一羽よ。きっと王都から何かしらの情報を持ってきたのでしょう。」
「へぇ…じゃあ、お城の中に入れてあげたらいいのに。」
「魔力があるからね。大事なお友達が万が一にも魔獣になったら大変だからとほとんど城には近寄らせないのよ。何かあると、いつもあぁやって呼ばれているわ。」
私は、エアロの秘密に圧倒されるばかりだ。
すると、エアロが戻ってきた。
「アクアから連絡がありました。
無事に婚約が決まったそうです。
暫く王宮に滞在することになりますが、その前に母上に会いたい、と。」
シーラ様は満面の笑みで頷いた。
「えぇ。勿論。会えるのが楽しみだわ。」
そう言ったシーラ様の顔は、本当に美しかった。
「…ロイ…。」
私とエアロはその姿をただ見つめていた。
少しすると、エアロが新しいお茶を淹れてくれた。
その時に私も手紙を読ませてもらった。
私が読み終えたのを確認して、エアロが話し出す。
「母上。その手紙を読んで分かったと思いますが、父上は心の底から母上を愛していました。国王となった後もどんなに臣下が勧めても、絶対に妃は置かなかったそうです。妃の代わりは妹であるアンヌ様が務めていたと。
ついでに今の国王は、アンヌ様の息子であるロキ様です。」
「そう…。」
シーラ様は力なく返事をする。
エアロは心配そうにシーラ様を見つめる。
「母上…大丈夫ですか?」
「えぇ…。ありがとう。
結果はどうあれ、真実が分かって良かった。もし会えるなら言いたいことは沢山あるけど…。
でも、楽になったわ…これ以上、大好きだったあの人を憎まなくていいんだって。」
シーラ様はまた一つ涙を流し、微かに笑った。
エアロが口を開く。
「母上。実はこの話には一つ事実とは違うことが書いてあります。」
シーラ様は眉を顰めて、エアロを見る。
「……父上は薬で自分がお祖母様を殺したと思っていますが、お祖母様は持病をお持ちでした。…それをずっと母上に隠していたのです。」
「まさか…うそ……」
目を丸くして驚くシーラ様の言葉にエアロが首を横に振る。
「本当なんです。
母上はお祖母様の日記をどこまで読みましたか?」
「……紫の瞳を持つ一族が魔女の力を狙っていて、ロイが記憶喪失なんて嘘だというページまで…。
そこで辛くなって…それ以上は怖くて読み進められなかったわ…。」
エアロは少し俯きがちに口を開いた。
「日記を読み進めていくと、亡くなる一ヶ月前から持病が悪化していく様子が綴られていました。お祖母様は父上が薬を仕込んでいることには気付いていましたが、あれは毒薬ではなく本当に薬だったのです。薬のお陰でなんとか頭痛を抑えられて、母上との残り少ない日常を過ごせると日記の中で感謝していました。そして、母上と父上、二人で幸せになって欲しいと。…お祖母様は、父上のことを認めていたんです。」
シーラ様は唖然とする。
「じゃあ…この手紙には、なんで…。」
「恐らく父上も知らなかったんでしょう。あれが本当に薬であったと。手紙に出て来るギャリーという人が父上を国に戻す為に嘘を吐いたのだと思います。
…母上。母上は父上を助け、愛し合っただけです。それでお祖母様が死んだわけでも、私やアクアが不幸になったわけでもありません。
母上は、堂々と父上を愛していいんです。母上が父上を愛したことは間違っていません。」
部屋の中にはそこから暫くシーラ様の啜り泣く音が響いた。
涙は落ち着いたようで、私と目を合わせたシーラ様は恥ずかしそうに笑った。目が少し腫れていたが、その顔はどこか晴れ晴れとしていた。
シーラ様が口を開く。
「エアロ、本当にありがとう。過去に囚われた私を救ってくれて。これからはロイと過ごしたあの時間を幸せな思い出として抱いていけるわ。
ねぇ、今、アクアはどこにいるの?生きているなら会いたいわ。」
エアロは笑顔で答える。
「アクアは今、この国の王宮にいます。」
シーラ様は不思議そうにエアロを見つめる。
「え?どういうこと?」
「では、アクアと無事に会ったところから話を進めましょうか。」
そう言うと、エアロは紅茶を一口飲み、話し始めた。
「自己紹介をお互いにした私達は知っている情報を擦り合わせ、両親の真実に辿り着きました。
そして、その時に私はアクアに言いました。
魔女の力を受け継ぐには、先代の魔女が亡くなる前に契約をしておく必要があり、契約を交わしていない状態だと魔力の移譲は行われない。だから、今の状態の貴女に魔力が宿ることはない。自由に外で生活することが出来る、と。アクアはそれを聞いて泣いていました。」
「…私がロイにちゃんと説明していれば、アクアはもっと自由に生きられたのに。」
俯くシーラ様に私は言う。
「シーラ様は何も悪くないです。まさかロイ様とアクア様がいなくなってしまうなんて、予測できたことじゃありません。」
エアロも私の言葉に頷く。
「そうです、母上。
すぐに自分の責任だと背負い込まないで下さい。
アクアも誰も責めてはいませんでしたよ。
その後、アクアは共に王宮へ行き、アンヌ様とロキ様に一緒に事情を説明してほしいと言われました。私はお二人に会う前にシルヴィのことやストラ国との一連の騒動について話しました。すると、アクアは交渉してみせる、と。
実際にアンヌ様とロキ様にお会いし、真実を全て話しました。お二人ともアクアが自由に外へ出れることを本当に喜んでいました。そして、アクアはどうか自分をチューニヤ国に嫁がせてほしい、とお二人に提案しました。お二人は、アクアを止めようとしましたが、アクアは王家としての役目を果たしたい…と。
実は父上が亡くなってから、アクアに対する不満の声が国内貴族から上がっていたそうです。王宮の隣に専用の家を作っているという待遇や、王族としての公務を行わないこと、そして何より貴族や他国の王族からの婚姻を全て拒否していること。隠されていると言っても、人の目につくことはあります。アクアの美しさに魅せられた者から大量の縁談が舞い込むのは必然でした。
しかし、事情を知るのはアンヌ様とロキ様、そしてごく限られた側近のみで、アクアを守るのが段々と厳しくなっていたようなのです。だからと言って、魔女の力について公にするわけにはいきませんでした。
だから、今回アクアが第二王子殿下に嫁ぐ話はアクアにとっても、コティーズ国にとっても良い話だったのです。また、当国の主要産物がコティーズ国で輸入を強化したいと思っていた物だということも幸いしました。
ロキ様は頑なに許可しようとしませんでしたが、アンヌ様とアクアに説得され、最後には認めて下さいました。」
私は尋ねる。
「なんで、ロキ様はすぐに許可してくださらなかったのかしら?」
エアロは少し躊躇いながら口を開いた。
「あー……。
ロキ様はどうもアクアを好いていたらしいのです。」
「そ、そうなんだ…。」
エアロは苦笑いだ。
「でも、アクアは母上のいるこの国で暮らしたい、そして、今後魔女の力を継ぐかどうかしっかり考えたい、と言っていました。魔獣を生み出す強大すぎる力だけど、人を救うことも出来る力だから…と。」
シーラ様はそれをじっと聞いて、ゆっくりと口を開いた。
「魔女は私の代で絶えると思っていたわ…。
こんなことがあるなんて…ね。」
エアロが言う。
「私も考えていたのですが…魔女の力はもっと有用に使えると思うのです。人の生死に直接関わるものでなければ、魔獣もそこまで強くなることはありません。私やシルヴィがいれば問題なく対処できるでしょう。騎士団が力を貸してくれるなら、それでもいいかもしれません。
アクアと話して、国が受け入れてくれるならば、そのあたりも整えていきたいと言っていました。」
私は少し考えて、口を開く。
「騎士団が魔獣を管理する…いいかもしれないわね。森での任務は訓練にもなるし。
それに何より世間の魔女様のイメージが大きく変わると思う!」
エアロが頷く。
「私たちにとって…そして、この国にとって、アクアが第二王子殿下と婚約・結婚することは、大きなメリットがあると思うのです。
あとは国が婚約を承認するか…ですが、胡椒の件もあるし、問題ないでしょう。魔女の血が王家に入るのを嫌がるか、王子殿下より六歳も上のアクアを娶るのを嫌がることがなければ。」
…セレク王子殿下がアクア様が歳上だからって嫌がることはないと思った。私を側室にしようとしたくらいだし…それに、きっと殿下はすでにアクア様に惹かれている。そして、アクア様も。お二人ならきっと良いご夫妻になられるだろう。
エアロは話を続ける。
「そんなわけで、私達はアクアの侍従だけ連れて、チューニヤ国に来たのです。私がいるから護衛も必要ないですしね。ロキ様が信書を書いてくださったので、面会は出来そうだったのですが、陛下は他国と会談中だと聞き、嫌な予感がしました。
そこで私は第二王子殿下と先に面会させてもらい、話をさせてもらうことにしました。シルヴィから話を聞き、まぁ…良くは思っていませんでしたが、信用できる人物だとは思っていたので。」
少しムッとしながら、嫉妬してるエアロが可愛くて、私はフフッと笑った。
「そこからはシルヴィも同席していたので知っていますが、ストラ国王と姫の醜聞を明らかにし、婚約破棄を認めさせました。アクアは、姫のために醜聞を晒したくなかったようですが…。
そこからはアクアと陛下と殿下三人の話し合いになったでしょうが、私達は先に出てきたのでどうなったか分かりません。
でも、そろそろ…ですかね。」
その時、近くで鴉の鳴き声がした。
「あ、イルですね。
ちょっと待っていて下さい。」
エアロはそう言うと、窓を開け、鴉の姿で飛び立って行った。
「どうしたんでしょう?それにイルって…。」
シーラ様はクスクスと笑った。
「イルは、あの子の友達鴉の一羽よ。きっと王都から何かしらの情報を持ってきたのでしょう。」
「へぇ…じゃあ、お城の中に入れてあげたらいいのに。」
「魔力があるからね。大事なお友達が万が一にも魔獣になったら大変だからとほとんど城には近寄らせないのよ。何かあると、いつもあぁやって呼ばれているわ。」
私は、エアロの秘密に圧倒されるばかりだ。
すると、エアロが戻ってきた。
「アクアから連絡がありました。
無事に婚約が決まったそうです。
暫く王宮に滞在することになりますが、その前に母上に会いたい、と。」
シーラ様は満面の笑みで頷いた。
「えぇ。勿論。会えるのが楽しみだわ。」
そう言ったシーラ様の顔は、本当に美しかった。
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