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後悔⑶
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「んっ……ここは……?」
目を覚ますと、私は見知らぬ部屋の大きなベッドの上にいた。ベッドの上の手すりに手首が固定されていて、動けそうもない。しかし、服は乱れていない。寝ている間に妙なことはされていないようだった。
自分を落ち着かせるために、大きく深呼吸をする。落ち着け、私。
その時、扉が開いた。入って来たのは、やはりガイ・オーター。
そう……私はこいつに攫われて……
「お、ようやくお目覚めか。気の強い女当主と言っても、寝ていれば他の女となんら変わりないな。いや……他の女よりはるかに上玉か」
「お前……こんなことをして、どうなるかわかっているのか……?」
私はガイを思いきり睨みつける。だが、ガイはニタァと嬉しそうに笑っただけだった。
「わかっているさ。だが、俺に失うものは何もない。オーター伯爵家の中で俺に残された出世の道は、あの剣術大会で優勝することだったのに、それをお前の義弟が潰してくれたからな?
だから……だから、俺はあいつの大事にしているものを奪ってやろうと思ったんだ」
「大事にしているもの……?」
「あぁ、お前だよ。考えるまでもなく、すぐにわかったさ。剣術大会のあの日、俺が少しお前を使って挑発しただけで、あいつはすぐに怖い顔をしていたからな。しかも、最後に俺に剣を突き付けたあいつはこう言ったんだ。
『彼女に手を出したら許さない。その時は、今度こそ息の根を止めてやる』ってな」
「リル……」
そんなことを言っていたなんて。
「とは言え、その義弟も来なかったがな。お前も男と渡り合うなんて言われていながら、こんなにあっさりと攫われるんだから、ざまぁないな。父上も口喧嘩ばかりしてないで、さっさと身体にわからせてやれば良かったんだ」
腐りきったその思考に私は顔を歪ませた。
「オーター伯爵は嫌な奴だが、お前みたいに馬鹿ではない。ちゃんと貴族としての誇りを持っている。
お前はそれでもオーター家の息子なのか?」
そう、オーター伯爵は嫌な奴だし、男尊女卑は激しいし、嫌がらせのような主張はするけれども、犯罪を犯したりはしない。自分の領地を、領民をしっかり守る当主であり、貴族としての誇りがある。
「うるせぇっ! 俺だって必死に父上に認められようとしたよっ! でも、父上は兄上のことばかりで……あの、剣術大会が俺に残された唯一のチャンスだったのに……っ。それを、それをお前たちが潰したんだ」
ふーっ、ふーっと鼻息荒くしているが、一体こいつはいくつなのか。自分の不甲斐なさを人のせいにしてしか生きていけない愚か者。
「お前の実力不足を私たちのせいにするな。お前が伯爵に認められないのは、お前自身の問題でーー」
「あぁ、そうだよ……だから、父上を認めさせるんだ……!
俺がお前の婿になって、プレスコット家の実権を握れば、きっと俺を認めて……!」
なに、馬鹿なことを言っているのか。
「私はお前を婿なんかに選ばない」
「それはどうかな?」
「な、何を……」
ガイはギシッとベッドに腰掛けた。さっきまで私を遠くから見ていただけだったのに、距離を縮められて焦る。
それに感づかれたくないのに、声がわずかに震えた。
「たとえ、お前が俺を認めなくても、その腹に俺の子供がいたら、どうなると思う?」
「そ、そんなことにはならない……っ」
私は、必死に身を縮こませる。しかし、ガイの視線が私の身体を這っているのがわかる。
「義弟が勝ったからって忘れているかもしれないが……俺は確実にそこらへんの騎士より強い。お前一人を組み敷くことなど、容易いことなんだよ」
「た、たとえ……お前にここで犯され、子を身篭ろうとも、お前を婿などとは認めない」
「まぁ、時間はたっぷりある。しっかり誰が主人がわからせてやるよ。飽きるほどお前を犯し、孕ませ、産ませたら、お前は用済みだ。お前がいなくなれば……俺はプレスコット伯爵家の後継者である子供の唯一の親。
子供には親が必要だろう……?」
「下劣な……っ」
「ははっ、なんとでも言え。所詮死人に口なしだ。それにしても、男を抱かなきゃいけないのかとうんざりしていたが、お前がこんな良い身体だったとは、嬉しい誤算だよ。お前が孕むまでせいぜい楽しませてもらうとしよう」
「さ……触るな!」
「ふふっ。声が震えて可愛いじゃないか。こんなに男をそそる身体をしてるのに、触るななんて無理な話だが」
ガイは私の足首をグッと掴んだ。必死に足を引こうとしても、びくともしない。
「足首も細くて……こんな身体で本当に俺に抵抗できると思ってるのか? さっさと俺に身を任せたほうが悦い思いができるぜ?」
「お前なんかに触られたところで気持ち悪いだけだっ!」
「そうか……じゃあ、確かめてみるか」
ガイが私に覆い被さり、顔を背ける私にこれほどかというほど近寄ってくる。
怖い。嫌だ……。私に触れようとするガイの手がやけに大きく真っ黒に見える。
やっぱり、無理だ。私は、やっぱりーー……!
リルじゃないと駄目だ!
私は腹の底から声を出した。
「誰か、助けてくれ! ガイ・オーターに襲われているっ!」
「うるせぇ! 叫ぶな!!」
私は足をばたつかせた。
ガイは私の足を掴もうとするけれど、何度も彼の手を顔を蹴り飛ばす。力は強いが、こう暴れられれば、すんなりとはいかないはずだ。本当は怖い、いつ叩かれて、殴られて、犯されてしまうかわからない。
恐怖で声を出すのも辛いけれど、リルに一生会えないことのほうがずっと辛い。
どんなにみっともなくてもいい、この場を切り抜けて、絶対にリルを探しに行くんだ。
そしたら、もう二度とリルを離したりしない。そして、私から言うんだ……
「結婚しよう」って。
「黙れっ!」
ガイが私の頬を叩く。唇が切れて、血が出る。
こんなの痛くない。私はキッとガイを睨みつけた。
その視線に一瞬ガイが怯んだその隙、私は彼に蹴りを食らわせた。
「いってぇっ!!」
ガイはベッドの上で丸くなり、震えている。私は続いて彼の後頭部にかかと落としを食らわせた。
かかとが割れそうなほど痛いが、その十分な対価として、ガイにもそれなりのダメージを与えられたようで、彼は悶絶している。
「この……くそ、女……っ!」
「あぁ、私をただの女だと思うなよ。プレスコット伯爵家を一人で今まで守ってきた女当主だ。お前みたいに文句ばっか言ってる子供とは覚悟が違うんだよっ! それに私が当主でありながら、なんの護身術も習っていないと思うのか? 私は人間の急所を全て把握しているが、暴れる私を犯す最中にその箇所を全て守ることができるのか? 別にさっきより痛い思いをしたいなら構わないが、どうする……?」
ガイは、私を睨みつけながら考えているようだ。さっきの抵抗が効いているのか、彼はなかなか動こうとしない。
半分以上ははったりだが……これで今日引き下がってくれれば、どうするか考える時間もある。
しかし、私の願いもむなしく、少し経って、ガイはまた動き出した。
「……そうやって煙に巻く気だろ? お前の思い通りには動いてやらねぇよ。それにお前のこの細い足で護身術をやったところで、何ができるっていうんだ? せいぜい時間稼ぎだろうよ。それにーー」
ガイはベッドから降りると、部屋の隅に置いてあった剣を取って来た。
「どうしても抵抗するなら、痛みで躾けるまでだ」
「……っ!」
剣を持ち出されては、私もそう簡単に動くことができない。……これ以上、抵抗できないのか?
私はぎゅっと目を瞑った。脳裏にはリルの満面の笑顔が浮かぶ。
こんなことになるなら早くリルへの気持ちを認めればよかった。
そうすれば、リルと幸せに暮らす未来もあったはずなのに。
リルに好きと言って、キスを贈り合って、抱きしめ合って、結婚して、いつかリルによく似た子供を抱く……
そんな未来が。
リルに会いたい……
リル、お願い……
助けて……っ!!
目を覚ますと、私は見知らぬ部屋の大きなベッドの上にいた。ベッドの上の手すりに手首が固定されていて、動けそうもない。しかし、服は乱れていない。寝ている間に妙なことはされていないようだった。
自分を落ち着かせるために、大きく深呼吸をする。落ち着け、私。
その時、扉が開いた。入って来たのは、やはりガイ・オーター。
そう……私はこいつに攫われて……
「お、ようやくお目覚めか。気の強い女当主と言っても、寝ていれば他の女となんら変わりないな。いや……他の女よりはるかに上玉か」
「お前……こんなことをして、どうなるかわかっているのか……?」
私はガイを思いきり睨みつける。だが、ガイはニタァと嬉しそうに笑っただけだった。
「わかっているさ。だが、俺に失うものは何もない。オーター伯爵家の中で俺に残された出世の道は、あの剣術大会で優勝することだったのに、それをお前の義弟が潰してくれたからな?
だから……だから、俺はあいつの大事にしているものを奪ってやろうと思ったんだ」
「大事にしているもの……?」
「あぁ、お前だよ。考えるまでもなく、すぐにわかったさ。剣術大会のあの日、俺が少しお前を使って挑発しただけで、あいつはすぐに怖い顔をしていたからな。しかも、最後に俺に剣を突き付けたあいつはこう言ったんだ。
『彼女に手を出したら許さない。その時は、今度こそ息の根を止めてやる』ってな」
「リル……」
そんなことを言っていたなんて。
「とは言え、その義弟も来なかったがな。お前も男と渡り合うなんて言われていながら、こんなにあっさりと攫われるんだから、ざまぁないな。父上も口喧嘩ばかりしてないで、さっさと身体にわからせてやれば良かったんだ」
腐りきったその思考に私は顔を歪ませた。
「オーター伯爵は嫌な奴だが、お前みたいに馬鹿ではない。ちゃんと貴族としての誇りを持っている。
お前はそれでもオーター家の息子なのか?」
そう、オーター伯爵は嫌な奴だし、男尊女卑は激しいし、嫌がらせのような主張はするけれども、犯罪を犯したりはしない。自分の領地を、領民をしっかり守る当主であり、貴族としての誇りがある。
「うるせぇっ! 俺だって必死に父上に認められようとしたよっ! でも、父上は兄上のことばかりで……あの、剣術大会が俺に残された唯一のチャンスだったのに……っ。それを、それをお前たちが潰したんだ」
ふーっ、ふーっと鼻息荒くしているが、一体こいつはいくつなのか。自分の不甲斐なさを人のせいにしてしか生きていけない愚か者。
「お前の実力不足を私たちのせいにするな。お前が伯爵に認められないのは、お前自身の問題でーー」
「あぁ、そうだよ……だから、父上を認めさせるんだ……!
俺がお前の婿になって、プレスコット家の実権を握れば、きっと俺を認めて……!」
なに、馬鹿なことを言っているのか。
「私はお前を婿なんかに選ばない」
「それはどうかな?」
「な、何を……」
ガイはギシッとベッドに腰掛けた。さっきまで私を遠くから見ていただけだったのに、距離を縮められて焦る。
それに感づかれたくないのに、声がわずかに震えた。
「たとえ、お前が俺を認めなくても、その腹に俺の子供がいたら、どうなると思う?」
「そ、そんなことにはならない……っ」
私は、必死に身を縮こませる。しかし、ガイの視線が私の身体を這っているのがわかる。
「義弟が勝ったからって忘れているかもしれないが……俺は確実にそこらへんの騎士より強い。お前一人を組み敷くことなど、容易いことなんだよ」
「た、たとえ……お前にここで犯され、子を身篭ろうとも、お前を婿などとは認めない」
「まぁ、時間はたっぷりある。しっかり誰が主人がわからせてやるよ。飽きるほどお前を犯し、孕ませ、産ませたら、お前は用済みだ。お前がいなくなれば……俺はプレスコット伯爵家の後継者である子供の唯一の親。
子供には親が必要だろう……?」
「下劣な……っ」
「ははっ、なんとでも言え。所詮死人に口なしだ。それにしても、男を抱かなきゃいけないのかとうんざりしていたが、お前がこんな良い身体だったとは、嬉しい誤算だよ。お前が孕むまでせいぜい楽しませてもらうとしよう」
「さ……触るな!」
「ふふっ。声が震えて可愛いじゃないか。こんなに男をそそる身体をしてるのに、触るななんて無理な話だが」
ガイは私の足首をグッと掴んだ。必死に足を引こうとしても、びくともしない。
「足首も細くて……こんな身体で本当に俺に抵抗できると思ってるのか? さっさと俺に身を任せたほうが悦い思いができるぜ?」
「お前なんかに触られたところで気持ち悪いだけだっ!」
「そうか……じゃあ、確かめてみるか」
ガイが私に覆い被さり、顔を背ける私にこれほどかというほど近寄ってくる。
怖い。嫌だ……。私に触れようとするガイの手がやけに大きく真っ黒に見える。
やっぱり、無理だ。私は、やっぱりーー……!
リルじゃないと駄目だ!
私は腹の底から声を出した。
「誰か、助けてくれ! ガイ・オーターに襲われているっ!」
「うるせぇ! 叫ぶな!!」
私は足をばたつかせた。
ガイは私の足を掴もうとするけれど、何度も彼の手を顔を蹴り飛ばす。力は強いが、こう暴れられれば、すんなりとはいかないはずだ。本当は怖い、いつ叩かれて、殴られて、犯されてしまうかわからない。
恐怖で声を出すのも辛いけれど、リルに一生会えないことのほうがずっと辛い。
どんなにみっともなくてもいい、この場を切り抜けて、絶対にリルを探しに行くんだ。
そしたら、もう二度とリルを離したりしない。そして、私から言うんだ……
「結婚しよう」って。
「黙れっ!」
ガイが私の頬を叩く。唇が切れて、血が出る。
こんなの痛くない。私はキッとガイを睨みつけた。
その視線に一瞬ガイが怯んだその隙、私は彼に蹴りを食らわせた。
「いってぇっ!!」
ガイはベッドの上で丸くなり、震えている。私は続いて彼の後頭部にかかと落としを食らわせた。
かかとが割れそうなほど痛いが、その十分な対価として、ガイにもそれなりのダメージを与えられたようで、彼は悶絶している。
「この……くそ、女……っ!」
「あぁ、私をただの女だと思うなよ。プレスコット伯爵家を一人で今まで守ってきた女当主だ。お前みたいに文句ばっか言ってる子供とは覚悟が違うんだよっ! それに私が当主でありながら、なんの護身術も習っていないと思うのか? 私は人間の急所を全て把握しているが、暴れる私を犯す最中にその箇所を全て守ることができるのか? 別にさっきより痛い思いをしたいなら構わないが、どうする……?」
ガイは、私を睨みつけながら考えているようだ。さっきの抵抗が効いているのか、彼はなかなか動こうとしない。
半分以上ははったりだが……これで今日引き下がってくれれば、どうするか考える時間もある。
しかし、私の願いもむなしく、少し経って、ガイはまた動き出した。
「……そうやって煙に巻く気だろ? お前の思い通りには動いてやらねぇよ。それにお前のこの細い足で護身術をやったところで、何ができるっていうんだ? せいぜい時間稼ぎだろうよ。それにーー」
ガイはベッドから降りると、部屋の隅に置いてあった剣を取って来た。
「どうしても抵抗するなら、痛みで躾けるまでだ」
「……っ!」
剣を持ち出されては、私もそう簡単に動くことができない。……これ以上、抵抗できないのか?
私はぎゅっと目を瞑った。脳裏にはリルの満面の笑顔が浮かぶ。
こんなことになるなら早くリルへの気持ちを認めればよかった。
そうすれば、リルと幸せに暮らす未来もあったはずなのに。
リルに好きと言って、キスを贈り合って、抱きしめ合って、結婚して、いつかリルによく似た子供を抱く……
そんな未来が。
リルに会いたい……
リル、お願い……
助けて……っ!!
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