親友のために悪役令嬢やってみようと思います!

はるみさ

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第一章

11.続きは二年後?

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 あれ、さっき帰ったはずなのにどうしたんだろう?
 しかもこんなに息を切らして…急ぐようなことがあったのかな?

 私はライル様に歩み寄り、声を掛けた。

 「ライル様、そんなに息を切らしてどうされましたか?大丈夫ですか?」

 私の問いかけにライル様は答えなかった。
 ライル様はキッと顔を上げて、ユーリを睨みつけた。

 「ユーリ・ラスカシエだな。」

 「あぁ。」

 ……なんだ、ユーリのこの不遜な態度は。こんな風に王子と話すなんて…と、私は唖然とする。

 「さっきアンナの腕に触っただろう。彼女は僕の婚約者だ。僕以外が軽々しく彼女に触れることは許されない。

 今回は見逃してやるが、今度やったら許さない。」

 なんだか、いつも穏やかなライル様が怒っているようだ。しかし、ユーリは動じない。

 「へー。アンナは随分と王子のお気に入りなんだな。ますます興味が湧いてきたぜ。

 まぁ、今すぐの婚約は無理でも、いつか婚約破棄する可能性だってあるもんな?そしたら、俺が引き取ってやるよ。アンナ、我が領は自然が豊かでー」

 「そんなことにはならない!」

 あー、そんなことになりますけどね…

 と思うが、もちろん言わない。というか、何をこの二人は喧嘩しているんだ?ユーリは、ただ冗談で結婚とか言ってるだけなのに。

 二人はどんどんとヒートアップしていく。

 「どうだかな。王子には沢山、女が寄ってくるんだから、アンナ一人くらい良いじゃねぇか。」

 「他の令嬢は勝手にすればいい。
 ……だが、アンナは駄目だ。」

 ライル様はソフィアが得意ではないと言っていたから、私が婚約者でなくなると困るのだろう。

 ユーリは観察するようにライル様をじっと見た後に不敵に笑った。

 「ふーん。ま、お互い子供の言うことだしな。
 もし二年後にまだ俺がアンナのことが忘れられなかったら、この話の続きをするってことで~。

 じゃあな、アンナ。
 寂しくなったら会いに来てもいいぜ。」

 「行くわけないでしょ。」

 「残念。じゃーなー。」

 ユーリは手をひらひらとさせながら、去って行った。

 暫くして、ライル様は大きく息を吐いた。

 「大丈夫だった?アンナ。」

 「はい。特に何もされてませんし…。」

 「いや、腕触られてたでしょ。」

 指摘されて、そうだったっけと思い出す。

 「…す、すみません。でも、すぐに振り解きました。」

 「うん、知ってる。
 でも、アンナが他の奴に触られるのは嫌だ。気を付けてね。」

 「はい…。」

 私の不注意のせいで、ライル様に手間をかけさせてしまった。しかも、声がいつもより固い。私はライル様の怒気を感じて、肩を落とした。

 「別に怒ってるわけじゃないよ。
 なってないのは、あいつの方だ。」

 ライル様は私を励ますように頭をポンポンと撫でた。

 「それにしても、何故ライル様は私がここにユーリといると分かったのですか?」

 「ユーリ?……呼び捨てにしてるのか?」

 ライル様の目線が厳しくなる。

 ユーリを見ていると、つい侑李と重なってしまって、つい言葉が崩れてしまう。

 「え、あ……はい。」

 「婚約者の僕はライル様としか呼ばれてないのに。」

 ライル様は強請るような視線を私に向けた。
 ……え。呼び捨てにしろってこと?

 「さ、流石に無理ですよ…?」

 ライル様はぐいっと顔を近づける。

 「お願い。ライル、と。」

 「そ、そんな…不敬です。」

 顔の近さに耐えられなくて、顔を逸らすが、ライル様は今度は手まで握ってきた。

 「僕がそう呼んで欲しいって言ってるのに…?」

 もう恥ずかしくて目も開けていられなくて、ぎゅっと目を閉じるが、握られた手を指を絡ませるように動くものだから、緊張でおかしくなってしまいそうだ。

 「ねぇ、一度だけでもいいから。」

 もうこの状態から逃げ出したくて堪らない私は、仕方なく名前を呼んだ。

 「ラ、ライル…。」

 「アンナ。
 ふふっ。また顔真っ赤にしてる。可愛い。」

 そう言って、手を解放し、顔も離してくれた。

 ふぅ…これでやっとまともに呼吸ができる…。
 私はジロっとライル様を睨みつけた。

 「か、揶揄うのはやめて下さい!」

 「ごめん、ごめん。」

 「もう。で、なんで気付いたんです?」

 「あぁ。ちょうどあそこで勉強をしててね。アンナとあいつが話してるのが見えて、急いで飛んできたってわけ。」

 それは悪いことをした。私は頭を下げる。

 「申し訳ありません。私のせいで中断させてしまったようで…。」

 「そんなのはいいよ。僕がしたくてしたことだ。
 でも、流石に戻らないと講師が待ってるんだ。アンナももう帰るんだよ。また他の令息に目をつけられたら堪らない。」

 「かしこまりました。」

 「じゃあね。今日は二回もアンナに会えて、幸せな一日だったよ。」

 王子はそう言って王宮に戻って行った。
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