騎士団長と秘密のレッスン

はるみさ

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1巻

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「取り乱してすまない……。それでは、改めて失礼する」

 団長の喉仏がごくっと動く。男らしく太い首に大きな喉仏。喉仏の右斜め下にはホクロが一つ……なんだかすごくセクシーだ。
 団長の手が今度こそ確実に私の胸に触れた。

「や、柔らかいな。それにしっかりと膨らみも感じられる。……とても可愛い」

 そう言って団長はふにふにと私の胸を押したり、軽く撫でたりする。
 気持ち良いというかくすぐったいし、なんだかもどかしい。

「……ん。もう少し強く……あの、揉んで、ください」
「あ、あぁ。揉むんだったな。慣れてなくて……悪い」
「い、いえ。私も可愛い反応もできなくて」
「いや、マリエルは可愛い。先程の息遣いだけで、おかしくなりそうだった。それにどんな反応をするかは、私の力量の問題だろう」

 団長は、私の胸を大きな手で覆うと、優しく揉みはじめた。私は目を閉じて団長の手の感触に集中する。
 団長の手の温かさがしみこんでくるように、胸がじんわりとしていく。私の鼓動も速くなっている気がする。このドキドキが団長にも伝わってしまいそうで恥ずかしい。団長は優しく丁寧に、時々強弱をつけながら、私の胸を揉む。
 こうやって男性に胸を揉まれるなんて初めての経験だが、身体がゾクゾクする……けど、不思議と嫌ではなかった。

「くすぐったいけど、なんだか気持ちいい……」
「それは良かった。あぁ、本当に柔らかい。素晴らしいな。いくらでも触っていられそうだ」

 団長はどこかうっとりしたように言う。

「ありがとう、ございます。団長に、気に入ってもらえて、うれしい……」
「最高だよ。なんて、可愛いんだ。しかも、マリエルは敏感なんだな。ほら、真ん中の可愛いつぼみが立ってきた。こっちも可愛がってほしいのか?」

 そう言って団長は、私の乳首の周りをカリカリと刺激した。

「んっ! あぁ、だめぇ!」

 自分のものとは思えないような甘ったるい声が出て、驚きと同時にひどい羞恥心に襲われる。でも、団長はそれを楽しんでいるかのようにあやしく笑った。

「ダメじゃないだろう? しっかり立ち上がって、俺からの刺激を待ちわびているようだが?」

 団長は私の乳首の周りをいまだに刺激している。ちゃんと、真ん中を触ってほしい。

「あんっ! お、おねがい、です……真ん中にさわって」

 私は涙目で団長にお願いする。団長は獣のような熱い眼差しで私を見つめて、ニヤッと笑った。

「……初回からおねだりができるなんてマリエルはいい子だな」

 乳首をキュッと挟まれる。

「あぁ‼」

 気持ちいいっ……こんなの初めて。おっぱいを触ってもらうのってこんなにいいものなの? それとも……団長だから?

「だんちょう! すごくいいよぉ……!」
「……くっ! マリエル、俺を試しているのか?」

 そう言って団長は先ほどよりも強く胸を揉み、乳首を弾く。指揮官室の中には私と団長の熱い息遣いが響く。
 頭がぼーっとして身体が熱い。いつも険しい顔を崩さない団長なのに、今は欲情の炎を瞳に宿し、少し荒い息遣いで……そうさせているのが私だと思うと、堪らなく嬉しくなる。何故だか下腹部もキュンキュンとうずく。

「んっ! 団長、なんかっ、なんかおかしいよぉ……」
「はぁ、マリエル……。これは、かなり辛いな」

 団長が呟いたその時だった。


 コンコン。
 誰かが扉をノックした。団長と私の動きが止まる。身体の熱がスッと引いていく。

「団長ー。今日の夜食は食べますかー?」

 今日の当直担当のダニエルだ。

「い、いや。今日はもう帰るから遠慮しておこう」
「了解でーす」

 ダニエルはそれだけ確認すると、扉の前から去っていったようだ。私たちは息を潜めて、ダニエルの足音が遠ざかるのを聴いていた。
 足音が全く聞こえなくなって、私と団長は揃って、大きく息を吐いた。

「すまない。今日、夜食は食べないと伝えるのを忘れていた」
「い、いえ。びっくりしましたけど、大丈夫です。私も確認のこと、忘れてました……」

 団長はいつも遅くまで仕事をしている。そのため、当直の騎士と一緒に夜食を食べることがあるのだ。夜食を作り始める前に当直担当の誰かが聞きにいくか、団長が事前に騎士まで伝えることになっている。私も当直担当になることがあるくせに、すっかり忘れてしまっていた。

「あー……と、とりあえず今日はこのくらいにしておくか?」

 団長は私の胸から手を離した。
 急に胸のあたりが寒くなり、寂しい。もっと団長の熱を感じたかったな……とは思っても、わがままは言えない。

「そう、ですね。どうもありがとうございました。あの……すごく良かったです。これなら大きくなるような気がします」
「それは良かった……!」

 そう言って、団長は嬉しそうに笑った。
 ……そんなに無防備な笑顔を見せないでほしい。勘違いしそうになる。でも――

「あ、あの。次もお願いしていいですか?」
「……あぁ。ぜひ」

 こうして一回目のレッスンは終わった。


 次のレッスンは五日後の夜にやってきた。
 私は前回のレッスンの後、あの気持ち良さを再現できないものかと自分でも触ってみたが、全く気持ち良くなかった。それに、窓ガラスに映る自分の姿があまりにも恥ずかしかったからすぐにやめた。
 団長が触ると、なんであんなに気持ち良いんだろう? レッスン時の団長は、騎士団にいる厳しい団長と全然違って……まるで壊れ物に触れるような優しい手つきで私の胸を包んでくれた。団長の大きな手は気持ち良くて、ずっと触れていてほしくなるほどだ。

「あんなに上手なんて、やっぱり慣れてるんだろうなぁ……」

 複雑だが、初めての私があんなに気持ち良くなってしまうなんて、それしか考えられない。でも、訓練場では常に険しい顔をしているあの団長が、ベッドの上ではあんな風に女性にあやしく笑いかけていたなんて予想外だった。想像もできない……いや、そんなの想像したくない。あの夜私にしたことを他の人にもしているかもと考えただけで、何故だか胸が詰まるのだ。
 そんなことを考えているうちに、指揮官室の前に来ていた。

「マリエルです」
「入れ」

 いつもの団長の声が響く。
 指揮官室の中に入ると、団長は紅茶をれようとしていた。

「お茶の時間でしたか。タイミングが悪く、申し訳ありません。また出直しましょうか?」
「いや、これはマリエルのためにれたんだ」

 団長は手を止めて、私に微笑みかけた。その笑みを見ていると、やっぱり胸がきゅっとなる。

「私のため、ですか? そんな団長に手ずかられていただくなんて、恐れ多いです」
「マリエルに飲んでほしくてれたんだ。今回は少し話をしてから、始めたい」
「……わかりました。では、お言葉に甘えさせていただきます」

 団長のれる紅茶の香りが漂ってくる。良いその香りに肩の力が抜けて、緊張がほぐれていく。
 入団して五年になるが、団長と二人でゆっくり過ごしたことなんてなかった。だから、団長が自分で紅茶をれることも知らなかったし、仕事以外では割と表情豊かなことも最近知った。団長が私の前にカップを置く。

「ありがとうございます」
「人にれたことはほとんどないんだ。口に合うかわからんが」

 一口紅茶を飲むと、口の中にはフルーツのような甘い香りが広がる。

「……おいしい! なんだか甘い香りがします」
「そうだろう? これは我が公爵領の名産品なんだ。果物のラキィの香りがするだろう? フレーバーティーといってな、幼い頃からよく飲んでいた。マリエルの口にも合ったようで嬉しいよ」

 団長は柔らかく微笑む。その笑顔からご実家である公爵領のことを大事に思っているのだと伝わってきた。……同時に改めて団長が次期公爵という高貴な身分なのだと思い知らされる。
 本当はこんな風に並んでお茶を飲むことなんて叶わない人なんだよなぁ……
 私はカップを強く握り締めて、笑顔を作った。

「……きっと団長は、将来素晴らしい領主様になりますね」
「ありがとう……。そうありたいと思う」

 それからしばらく私たちは他愛もない会話を楽しんだ。好きな食べ物やよく行くお店……尊敬する団長のプライベートな部分に触れることができて、純粋に嬉しかった。

「もうこんな時間か。すっかり話に夢中になってしまったな」
「ほんとですね。遅くまですみません。あの……日を改めましょうか?」
「いや、私は問題ないが。マリエルは大丈夫か?」

 私は首を縦に振る。

「はい。明日は休みなので、夜が遅くなっても特に問題ありませんが」

 すると、団長は照れたように私から目線を外した。

「そうか、じゃあ、予定通り……その、やるか?」
「は、はい。ぜひお願いします……」

 私と向かい合わせに座っていた団長は席を立ち、私の隣に座った。今にも肩が触れそうな近い距離だ。私はこの間、団長から与えられた気持ち良さを思い出して、キュッと身を固くした。気をしっかり保たないと……とろけてしまいそうになるから。

「マリエル?」
「は、はい!」
「緊張しているのか?」

 団長は、私の頬を指で軽く撫でた。

「そ、それはもちろん……」
「そうか、大丈夫。この前はとても上手だった。リラックスして、俺に身を任せてくれないか?」

 団長は私の髪を一房、指に巻きつけて、そこに唇を落とした。上目遣いで見つめられて……私はその色気にあてられて、固まった。

「ふっ。一人じゃ難しいようだな、手伝ってやろう」

 団長はどこか楽しそうに、私の腰に手を回す。指先が腰からわき腹を通り、つつつ……と背中に上がってくる。

「ふっ……、団長くすぐったいです」
「くすぐったいのは良い兆候だ。無駄な力が抜けるだろう?」

 団長の指先は何度か背中を滑る。そして、指先は腰に戻ってきたと思ったら、今度は掌で腰とでんを撫でている。

「だ、団長! そこはちがいます……っ」
「違わないさ。気持ち良く揉むことが大事なんだろ。今は気持ち良くなるための準備だ」

 団長は腰とでんを撫でることをやめない。無意識のうちに腰が動いてしまう。私は、くすぐったさの中に確かに気持ち良さを感じていた。
 身体から力が抜けて崩れそう。団長の胸に顔を埋めるようにしがみつく。
 ふんわりと団長の匂いに包まれて、前回のレッスンと同じように下腹部のうずきを感じた。

「も、もう準備できましたからぁ。はやく、触って」
「本当にマリエルはおねだりが上手だな……」

 そう言って、団長は私をソファに押し倒し、服の上から私の胸を触った。

「今日も何も着けないで来たのか」
「……はい。団長がすごくいいって言ってくれたから。ダ、ダメでしたか?」
「いや、やはり素晴らしい触り心地だよ」

 団長は前回よりも手慣れた様子で胸を揉む。ゆっくり丁寧に、徐々に官能を引き出していく。待ちわびていた団長の手の感触に私の身体はよろこんだ。

「あっ、んぅ。やっぱり団長のが熱くておっきくて、いいです……」
「はっ!? まさか、他の誰かに触ってもらったのか?」

 次の瞬間、団長がちょっと強めに乳首を摘んだ。

「きゃっ……ぁん! ち、ちがうっ! 自分でも揉んでみたけど、気持ち良くなかったから、やっぱり団長の大きい手がいいなって――」
「なんだ……そういうことか。シルヴィも自分で触ったら意味ないって言ってただろ」

 団長の声色が優しくなり、乳首をいたわるように撫でる。

「そ、そうですけど。団長に迷惑かけたくなかったからぁ……」
「迷惑なんかじゃない。俺に、俺だけにやらせてくれ」

 コバルトブルーの瞳が私を捉え、魔法にかけられたように動けない。団長の瞳は綺麗で、まっすぐで、その奥には確かに熱情が見てとれて……それが徐々に近づいて――
 え? 私……団長とキス、してる?
 団長はついばむようなキスを私に何回か贈ると、最後に私の唇をぺろっと舐めた。

「え……なんでキス……?」
「嫌か?」
「嫌じゃ……ない、です」
「マリエルをもっと気持ち良くしたい」

 団長は私に覆い被さってより深い口付けをくれる。団長の舌が入ってくる。息ができない。
 団長の胸のあたりを叩き、ようやく解放される。

「ぷはっ! 息が――」
「鼻で息を吸うんだ。舌は絡ませて」

 団長はまた舌を挿し入れてきた。私は言われた通り、必死に舌を絡ませる。息はできるようになったけど、なんか身体が変。流れ込んでくる団長の唾液をこくん……とえんすると、それがまるで媚薬のように私を熱くさせる。
 キスをしながらも、団長はいつからか胸へのあいも再開させていて、私は恥ずかしい声を上げた。

「ん……はぁ! あっ、だんちょお……なんかおかしくなっちゃうっ!」
「マリエル、それでいいんだ。上手にできているぞ」
「ほんと……っ?」
「あぁ、本当だ。いい子だ、マリエル」
「んああっ!」

 もっと……もっと、団長に触ってほしい。直接団長の熱を感じたい。団長と私を隔てるこの薄い布が邪魔だ……。気付いたら、私は口走っていた。

「だんちょ……服脱がせて?」

 その瞬間、団長が目を見開く。そして、目の奥が光った気がした。

「わかった」

 団長は私のシャツのボタンに手をかける。今日の私の服装は柔らかいスカイブルーのシャツと紺のスカートだ。
 団長は片手で器用に上から一つ一つボタンを外していく。その間もずっと私の唇や額、頬にキスを落としながら。

「ん、はぁ……だんちょう」
「マリエル、今だけは俺のマリエルでいてくれ……」

 団長のものになれたら、どんなに幸せだろう。団長が全てを奪ってくれたなら……と、ありもしないことをぼんやりと思う。
 全てのボタンが外れて、私の上半身が露わになる。団長の熱い視線が私に注がれる。

「綺麗だ。……このまま全てを奪ってしまいたいほどに――」

 団長はそう言って、苦しそうに笑った。なんだか団長が辛そうだと私も苦しくなる。

「……だんちょう?」
「マリエルは何も気にせず感じていてくれ」

 団長は再びあいを始めた。私は団長の与える快感にただただあえぐ。

「マリエルの肌は吸い付くようだな。ずっと触っていたい」

 大きくて、温かい手が私の胸を優しく揉みしだく。時々焦らすように乳首の周りをカリカリしたと思ったら、乳首を摘んだり、弾いたりする。

「胸も最高だ。感度が良くて、白くて綺麗で……真ん中のつぼみはピンク色でなんとも美味しそうで、感じるとツンっと主張してくる」

 団長は私の胸を丁寧にあいする。寝転んで横に流れた胸を中心に集めて、揉みしだいたり、乳首を人差し指と中指の根元で挟み、それを親指でつぶしたり、弾いたりしている。

「手足もすらっと長く、このきゃしゃな腰は男女問わず目を奪われる曲線だ。でんは柔らかさがありつつも、キュッと上を向いて愛らしい。きっとこちらも真っ白で、瑞々しい果実のようなのだろう」

 そう言って、今度はウエストからでんを撫で回し、時折、優しく揉む。

「亜麻色のこの柔らかくサラサラとした髪はいつも風と遊び、甘い匂いを周りに振りく。太陽の光を浴びた髪は光り輝き、本当に美しい」

 今度は私の髪の毛を優しく撫で、一房取った髪の毛をサラサラと落としていく。そして、私の頭に顔を埋め、息を吸い込んだ。

「クリクリとしたこのはく色の大きな瞳には常に愛らしさがあふれ、妖精のようだ。しかし、剣を振るう時には瞳の中に芯の強さが現れ、戦乙女となる。そして今は妖艶な光を覗かせる」

 団長は私の瞼に口付けをした。

「どこを取っても、素晴らしい。マリエル、君は美しく、可愛く、妖艶で――君以上の女性に私は一生涯出会うことはないだろう」

 団長は私の身体の至るところを触りながら、私を褒めてくれた。
 気付けば目尻からは涙があふれていた。感じすぎたのかもしれないが、きっと嬉しかったんだと思う。憎からず想っていた婚約者に公衆の面前で振られ、たないと言われ、怒りで誤魔化していたけれど、本当は傷ついていたのだろう。
 けれど、今……団長が与えてくれる言葉と快感で、その傷は癒やされた気がした。たとえお世辞でもここまで肯定してくれる人がいる。その思い出があれば、前に進んでいける。

「はぁ……んっ、ありがとう、ございます……っ」

 あえぎながらも必死に団長に感謝を伝える。
 団長は微笑むと、私の脚の間に膝を割り入れた。

「じゃあ……ご褒美をもらってもいいか?」
「え?」

 私が答えないうちに団長は私の乳首を口に含んだ。

「きゃっ! ぁあぁん‼」
「本当に良い声で鳴いてくれるな……堪らない」

 そう言って乳首を舐めまわしたり、吸ったり、舌でしごいたりする。今までとは比べ物にならないほどの快感が私を襲う。私の口からはもはや嬌声きょうせいしか出なかった。
 それに加えて、団長は先程割り入れた膝を私の陰部にグリグリと押し当ててきた。完全にスカートがめくれて、下着が露わになる。
 あいですっかりとろけた私は、下着を濡らしていた。ヌチュヌチュと水音が室内に響いているし、きっと団長の膝も愛液で汚してしまっているだろう。

「マリエルのいやらしい匂いがするな。いつからこんなに濡らしていたんだ?」
「あっ……はっん! そんなの、わかんな……ぁあ!」
「俺のズボンまで濡らすとはいけない子だ」

 団長はそう言って激しくキスをし、乳首をキュッと摘み、膝を強く陰部に擦り付けた。

「……ぁあああ‼」

 目の前が真っ白になり、全身を今まで感じたことがない快感が走った。
 熱くて、息が苦しくて、でも全身に気持ちの良い充足感が満ちる。
 団長ってすごい、な……
 私はそんなことを思いながら、意識を手放した。


「ん……あれ……?」
「起きたか? 今、水を持ってこよう」

 私はソファの上に横たわり、団長は向かいのソファに座っていた。衣服は整っている……団長が整えてくれたんだろう、紳士だ。

「すみません……私、寝てました?」
「いや……寝てたと言うか、気を失ったんだ。多分イッたんじゃないかと、思う」
「イッた……」

 団長は申し訳なさそうな顔をして、軽く頭を下げた。

「す、すまない。調子に乗りすぎた。マリエルが可愛くて、いろいろとたかぶってしまって――」
「い、いえ! ……お、お上手で、した。ありがとうございます」

 大丈夫だとわかってほしくて感想を伝えたが、自分が乱れたことを認めているようで恥ずかしい。

「……安心した。やり過ぎて嫌われたんじゃないかと、この短い時間であれこれ考えてしまった」

 団長が眉を下げて、少し笑った。

「団長を嫌うなんてあり得ません‼」
「ありがとう」

 団長の笑顔は心臓に悪い。私は自分を落ち着けるために、目線を逸らし、時計を見つめて尋ねた。

「そういえば、私が気を失ってたのってどれくらいですか?」
「ほんの五分くらいだ」

 団長は、時計をいちべつして答える。

「それにしても、イッて気を失うなんてことあるんですね。団員達の話も聞いてましたが、彼らの妄想だと思っていました」
「本当だな」
「え、団長も初めてなんですか!?」

 思わず声が大きくなる。団長は納得のいかないような顔をしている。

「あぁ。この手のことは慣れていない」
「……団長ってその顔ですし、女性がほっとかないですよね? てっきり経験豊富かと――」
「顔は関係ないだろう。俺は好きでもない女性をホイホイと抱いたりしない。今回、マリエルに頼まれて、少し情報収集はしたが……」
「……情報収集?」

 私は首を傾げる。団長は軽く咳払いをした。

「まぁ、そんなことはどうでもいい。身体は痛くないか?」
「はい。平気です」
「そうか。でも、ソファはあまり適した場所ではないな。なぁ、指揮官室はやめて、違う場所にしないか?」

 その提案により次があることを約束された私は、密かに胸を躍らせた。それでも、それが悟られないように平静を装いながら、ソファを一撫でして、柔らかさを確かめた。

「寝てしまうことなんて、ほとんどないとは思いますが、確かに賛成です。考えてみれば仕事をする場所でこんなことをするのも不謹慎ですしね」
「不謹慎というか……俺が日中仕事ができなくなりそうでな……」

 団長が呟いた。
 なんでだろう? 私が汚しちゃうのを気にしてるのかな? まぁ、どっちにしろ、場所を変えるのに異論はない。

「どこか良い場所ありますか? 私は女性騎士寮だから、私の部屋は無理だし……団長はご実家の公爵家のお屋敷から通ってますよね? あんまり帰宅されてないようですけど」
「確かに、ほとんど帰ってないな。官舎にはシャワー室も仮眠室もあるから、事足りてしまうんだ。私物はこの部屋に置いているしな。……そうだ。男性騎士寮の空き部屋なんてどうだ?」
「騎士寮の空き部屋? そんなのあるんですか?」
「あぁ、ある。空き部屋の鍵は俺が管理している」

 私は心配になって、思わず聞いた。

「……大丈夫ですか? それ、怒られません?」
「俺が管理している騎士寮なのに誰に怒られるんだ?」

 団長は悪びれもせずに言う。

「確かに」

 こうして次回からの私たちのレッスン場所は、男性騎士寮となった。


 ある日、私は訓練場から官舎へ行く廊下を歩きながら考えていた。
 思い返せば、私は胸を大きくするという目的をほぼ忘れ、いつも快感にあえいでいるだけだ。気持ち良くなることが大切だと副団長は言っていたので、団長はそうしてくれているのだろう。
 一方の私はというと……感じすぎだと思う。次のレッスンを楽しみにしてしまうくらいに、団長のテクニックに溺れている。団長は否定していたが、若い頃に鍛えたテクニックなんだろう。じゃないと、あんなに私が乱れるはずがない。
 ……やっぱり団長が私を愛おしそうに優しく触ってくれるのも、テクニックの一種なのだろうか。あんな風に大切そうに触れてくるから、私はあそこまで無防備な姿を団長に見せてしまうのだ。前回なんて私のことを全身褒めてくれた。今回の婚約解消で私が傷ついていると思って、あんな言葉をかけてくれたんだろう。本当に優しい。
 いつも気持ち良くしてくれて、精神面までフォローしてくれる団長にも気持ち良くなってほしい。お金や物でなにか御礼をしたいと先日のレッスン後に話したら、全力で断られてしまった。それならば、同じように気持ち良くなってもらえばいい。
 私とのレッスン中に団長が処理していることはなかったが、きっと団長にも性欲はあるだろう。息遣いが激しい気がしたし、欲情している眼をしてたような気がするもの。団長の好みではないかもしれないが、きっと私にできることもあるはずだ。
 私にテクニックはないが、団長に気持ち良くなってほしいという気持ちは人一倍ある。団長がしてほしいことがあれば、今までの御礼も兼ねて、積極的に挑戦していきたい。
 でも、もしなにもないとか言われたら悲しい。それは私に魅力がないってことだし。この前はお世辞でたくさん褒めてくれたけど、私みたいな普通の女じゃダメかもしれない……


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