27 / 27
連載
番外編 マリエルと問題児
しおりを挟む
その日はよく晴れていた。
午後に予定されていた公爵夫人の教育が急遽なくなり、私は無性にお出かけがしたかった。最近は座学ばかりであまり身体を動かせていないのも気になる。
あまり太ってジル様に嫌われたら大変だし…。
そう思った私は、久しぶりに騎士団を訪ねてみることにした。前々から副団長にいつでも遊びにおいで、と言ってもらっているし、少し訓練にも参加させてもらえたらいいな、と思う。差し入れを料理長に言って準備してもらい、午後の訓練が行われている時間に合わせていく。
ジル様には言っていないけれど、きっと大丈夫よね…?
私は少しドキドキしながらも馬車に乗って、元職場へ足を運んだ。慣れ親しんだ場所だから、と侍女のマリーの反対を押し切り、馬車を一人降りる。馬車からは目と鼻の先だしね。
訓練所へ着くと、変わらないメンバーが打ち合いをしているのが見える。その一方で新人たちがヒィヒィ言いながら、素振りをしていた。
その姿を見て、思わず呟く。
「…懐かしいな。」
一抹の寂しさを抱えながらも訓練所を眺めていると、一人駆け寄ってくる騎士がいた。アランだ。
「マリエルさん!」
「アラン!久しぶり!元気にしてた?」
私も思わず笑顔になる。アランも満面の笑みだ。
「はい!団長にガッツリしごいていただいてます。お陰でまた一段と強くなりましたよ?そのうち、団長より強くなっちゃうかもしれません!」
確かにアランは以前より体格も良くなったし、顔つきも精悍だ。気安さは変わらないが、そこに嫌なものは感じられなかった。
「ふふっ。それは頼もしいわね!
でも、私の旦那様は強いからそう簡単に越えられないと思うわよ?」
「高い壁の方が燃えますね!」
「流石ね。頑張って。応援してる。」
「はい!
、ところで今日はどうしたんすか?」
アランが不思議そうに尋ねる。
ジル様に言っていない手前、少し居心地が悪い。
「ちょっと時間が出来たから差し入れに。あと、久しぶりに身体を動かしたいなーって。…大丈夫かな?」
「勿論です!みんな喜ぶと思います!
じゃあ、まずは指揮官室ですかね?」
「えぇ。実は何も言わないで来ちゃってるから、最初に顔出しておかなきゃね。」
「じゃあ、俺が指揮官室まで案内しますよ。」
そう言って、アランは私の荷物を持とうと手を伸ばした。それを私はひょいっと避ける。
「いいわよ、一人で行ける。」
まだ辞めてから、そう長くも経っていないのに、完全に部外者扱いされているようで、少し胸がモヤモヤする。
「移動中にマリエルさんに何かあったら、俺が団長に殺されるんで。俺のためにも一緒に行ってください。」
アランは深く頭を下げて、私に頼む。訓練の邪魔をして申し訳ないな、と思ったが、確かに私に何かが起こると、確実にアランに迷惑をかけることになるだろうから素直に従うことにした。
「分かったわ。宜しく。」
こうして、私とアランは二人で指揮官室に向かった。
◆ ◇ ◆
「そう言えば、最近新人が入ってきたのよね?
どう今年の子達は?」
「なかなか見込みありそうっすよ。
…まぁ、問題児もいますけど。」
「問題児…?」
その時、少し先に見えた指揮官室の扉が開き、中から女の子が出て来た。その子は開いた扉に向かって、叫んだ。
「ジルの分からず屋!!」
ジ、ジル?!
…私だってジル『様』呼びなのに、あの子はジル様のことをジルって呼び捨てに出来る間柄なの?
見ちゃいけない場面に遭遇したような気がして、急に足が重くなる。髪を靡かせながら、その子はズンズンとこちらに歩いてきた。一つに纏められた長く茶色い髪はよく手入れをされているようでキラキラと輝いている。顔も少し冷たい印象を与えるクールな顔立ちだが、よく整っていた。その子は私に気付き、足を止めた。
…すごい睨んでくる。
緊張して、固まっていると、その子は私に舌打ちをしたと思ったら、口を開いた。
「みんな…こんな女のどこがいいのか、さっぱりわかんない!」
そう私に告げると、その子は走り去ってしまった。
私は呆然とする。その私に追い討ちをかけるようにその子を追って来たジル様が扉から出て来て、叫んだ。
「シエラ!!」
そこでジル様はわたしを見つけた。シエラと呼ばれたその子はもうすでに廊下から消えていた。
「ジ、ジル様…。」
「マ、マリエル…なんでここに…」
ジル様は目を丸くして、私を見つめる。
…歓迎されてないんだと思った。
「……来ちゃいけませんでしたか?」
イライラする。いつもだったら、マリエル!って駆け寄って来て、笑顔で抱きしめてくれるのに…まずいところを見られたみたいな顔しちゃって。
「そ、そんなことはー」
「ジル様の馬鹿!!」
私はアランに差し入れのバスケットを押しつけて、その場から逃げ出した。こんなところで駆けるなんてはしたない真似だと…次期公爵夫人としてあり得ないことだと分かっているのに、耐えられなかった。
「マリエル!!」
ジル様の呼びかけも無視して、廊下をクネクネと曲がって、追ってくるジル様を撒いた。私だって、長年ここに勤めてきたんだ、道や部屋は把握している。マリエルは以前から空き部屋として使われている部屋に入った。部屋の中にあるソファに腰掛けて、一息つく。
今こんな状態で馬車に戻る事は出来ないわ…
予想外に早く戻ったら、馬車で待たせているマリーが何事かと心配してしまうだろうし。少しここで休もう。
先程の女の子を思い出しながら、考える。
…一体あの子は誰なんだろう。すごい綺麗な子だった。それに、騎士服を着てた…もしかして新人団員?
でも、ジル様はあの子を追い掛けていたし、あの子はジルって呼んでたし…かなり親しい間柄なのは確実だよね。
ジル様と只ならぬ関係だったり…いや、流石にあの子はせいぜい十五歳だし、それは流石にないか。あ…でも、ジル様が私を好きになったのって、私が十二歳の時だから…無いわけでもない…?
そこまで考えて、私は首を大きく横に振った。
ジル様が私を裏切るなんてあり得ない!今まで何度も愛してるって言ってくれたもの。…なのに、私ったらカッとしてしまって…。
つい驚いて走り出して来てしまったことを後悔する。なんであの時にちゃんと聞かなかったんだろう。ジル様は聞いたら、きっとちゃんと教えてくれたのに…そうだよね?
両手で顔を覆う。不安と後悔が胸に押し寄せてきて、少し涙が滲む。
ここで少し休んだら、指揮官室に戻って、ちゃんとジル様に謝ろう。それで、あの子は誰なのか、ちゃんと聞こう。
…うん、少し休んだら…。
そう思って、私は目を閉じた。
◆ ◇ ◆
「……大変なことになったわ。」
起きたら、予想もしなかった事態に陥っていた。
私が勤めていた頃は、この部屋はいつも施錠されていなかったはずなのに、起きたら外から鍵が掛かっていた。しかも、内鍵は壊れているのかクルクルと回るだけで開く気配がない。
ここは二階だから、外の窓から出るわけにもいかない。いや、窓の外に木が見えるからそこに飛び移ればなんとか…と思うが、さすがに公爵夫人になる私がそんなことをするわけにはいかない…。
「うー、どうしようー。」
外はもうすぐ陽が落ちる。きっとマリーも心配している。それに、きっとジル様も…。
扉を叩いて助けを呼んでみるが、反応はない。私は思わず大きく溜息を吐いた。
「ジルさま…。」
その時、窓の外から声がした。
「あんた…そんなところで何やってんの?」
へ?
外に目をやると、窓の外の木に先程の子がいた。
「シ、エラ…さん?」
彼女はぴょんとこちらの部屋に入ってくる。
「こんなところに隠れてたんだ。」
…隠れる?
隠れるっていうか…閉じ込められてるんですけど。
呆然と私は彼女を見つめる。
「騎士団総出で、あんたのこと探してるよ。ジルが訓練だって称して。隠れたあんたを探すのが、今日の訓練なんだってさ。
みんなマリエルマリエルって必死になっちゃって…馬鹿みたい。」
彼女は呆れたようにすると、私の向かいのソファに座った。
「ご、ごめんなさい…。」
まさか私の軽率な行動で、そんなことになっていたとは思わず、咄嗟に謝ってしまう。謝罪する私にシエラさんは目を丸くする。
「…随分と素直なんだ…。
その感じじゃ隠れてたわけじゃないのか。ジルが堂々とあんたを探す名目、だったわけね。
そっか…ここの部屋、鍵壊れてたっけ。
窓から出たら良かったのに。」
「スカートだし…これでも次期公爵夫人だもの…。
そんなはしたないこと出来ないわ。」
「ま、それもそうか。
今、ジルを呼んできてあげるよ。待ってて。」
シエラさんはそう言うと、ソファから立ち上がろうとする。
…え?意外に親切…。
ハッとして私は彼女を呼び止めた。
「ま、待って!
…さ、さっきからジル、ジルって呼び捨てにしてるけど、貴女はジル様の何なの?」
心なしか口調がキツくなってしまう。子ども相手に何をムキになっているかと思うが、答え次第ではジル様と話し合いが必要だ。
「…いとこだけど?」
「…いと、こ?」
ポカンとする私を見て、クスクス笑うと、シエラさんは再びソファに腰掛ける。
「うん。そっか…結婚式は丁度体調を崩して参加できなかったんだよね。会うのは初めてだっけ。こっちはよくあんたを見てるから、初めてのような気がしなくて。」
「私をよく見てる…?」
私が首を傾げると、シエラさんは頷いた。
「うん。折角だし、ちょっと話をしよっか?
シエラ・ジャロー…って言えばどこの人間か分かる?」
ジャロー侯爵家と言えば、お義母様の生家だ。
「うん。ジャロー侯爵家の方だったのね…。
初めまして。私はマリエル・ウィンタールでー」
「うん、知ってる。
こっちのことはシエラって気軽に呼んでよ。
あ、マリエルって呼んでもいい?」
「え、えぇ。構わないけど…。
でも、私のこと…好きじゃないのよね?」
「え?そんなことないよ?ジルが結婚できて良かったと思ってる。幸せそうだしね。
ただ嫉妬してるだけ。」
「嫉妬…。
あの…シエラ。シエラはジル様が好きなの?」
シエラは上を向いて考える素振りをしている。
「んー。まぁ、別に嫌いじゃ無いけど、好きってほどでもない。歳も離れてるし、時々しかジルとは会わないから。」
んん?ど、どういうことだろう?
「で、でも…ジルって…。」
「あぁ。それは、小さい頃、ジルベルトって言いにくくて、勝手にジルって呼んでるだけ。色々と勘違いしてるようだけど、マリエルが思うような関係じゃないよ。大体こっちはまだ十四だよ?それにいとこだし。大体さ、いい大人がこの年齢の子に興奮してたらやばい奴だよ。」
…十二歳の私に恋をした二十歳のジル様もやばい奴に該当するのかな、と頭の片隅では思うが、絶対に口には出せない。
「そ、そっか…。」
一人ドキドキして、目を泳がせていると、シエラは真剣な表情をして、私をじっと見つめ、頭を下げた。
「さっきはごめんなさい。
モヤモヤして…八つ当たりした。」
「八つ当たり?」
「うん…。色々上手くいかなくて、偶々通りかかったマリエルに当たっちゃった。
それに…マリエルはトリスタン様に気に入られてるでしょう?」
トリスタン様はトリスタン様で、ジル様はジルって…随分と対応に差があるのね…。私は不思議に思いながらも、問いに答える。
「気に入られてる…のかしら?」
すると、シエラはドンっと机を叩いた。
「絶対に気に入られてる!最近、トリスタンが題材にするのは女騎士とか、強い女性とか、マリエルを連想して作っているとしか思えない!ジル様にはバレてないけど、マリエルのスケッチだって、こっそり沢山描いてるんだから!」
…おぉ、それはまた見つかったら、ジル様に破り捨てられるやつだ。流石にもう可哀想だから、黙っていてあげよう。
「そ、そうなんだ。
…シエラは随分とトリスタン様に詳しいのね。」
「毎日のように出入りしてるからね。」
お屋敷にいるが、全然気付かなかった私は驚く。
「そうなの?!」
「えぇ。騎士団に入ろうと思ったきっかけの一つでもあるし。
侯爵領からだと、毎日トリスタン様には会えないけど、騎士寮に住めば、トリスタン様に会いに行きやすくなるから。」
「そんなにトリスタン様に会いたいの?」
シエラはキラキラとした瞳で語り出した。
「勿論!!
あの溢れ出る才能…本当に惚れ惚れしちゃうよ!好きすぎて、ずっとトリスタン様にモデルとして使ってもらうことを夢みてるくらいなんだから!
だから、騎士になることはトリスタン様へも会いに行きやすくなるし、モデルとしての取っ掛かりを作る手立てとしても良いと思ったんだ。
なのに、ジルったら侯爵領に帰れ!の一点張りで。訓練にも参加させてもらえないんだ。本当に騎士としても活躍したいと思ってるのに。」
「侯爵様は騎士になることをなんておっしゃってるの?」
「…お前には無理だ、って。…実はお父様の許可は取らずに勝手にこっちに来たんだ。」
しょんぼりと肩を落とす姿は年相応だ。
さっきまでは生意気な感じだったのに、今では少し可愛い…ジル様を異性として慕っているわけじゃ無いと確認出来たからかもしれないが。
「そう…。きっと心配されているのね…。」
「違う…信用されてないだけ。」
シエラは俯き、首を横に振る。
「そんなことない。心配してるのよ。
それをうまく伝えられないだけなの。
シエラが本当に騎士になりたいのは、トリスタン様の近くにいたいという理由だけなの?」
シエラは俯き黙ったままだ。
「…他に理由があるのね?」
私はシエラの言葉を待つ。暫くすると観念したようにシエラは話し出した。
「…昔、王都の騎士団がうちの侯爵領に来たことがあってね。うちもお抱えの騎士団がいるんだけど、その時の手合わせを見たんだ。王都の騎士団の人達はすごく強くて…その圧倒的な強さに憧れた。
いつか…あんな風に強くなりたいと思った。」
「素敵ね。」
「本当に?…ほんとにそう思う?
強さを追い求めるなんて、馬鹿馬鹿しいと思わない?」
シエラは私の様子を伺うように、下から見つめる。
本当に綺麗な顔をしている。
可愛らしい仕草につい頬が緩む。
「思わないわ。
それをご家族の誰かに話したことはないの?」
シエラは首を横に振る。
「ない。人を助けたいとか、誰かの役に立ちたいとかそんな高尚な理由じゃないから。ただ強くなりたいだけ。」
「いいじゃない。強くなったら、結果的に人のためにもなるんだし。
私だってちょっとしたきっかけで騎士になっただけよ。そんなに人に誇れるようなものじゃない。」
「そうなの?」
「えぇ。ある人に憧れたの。」
ジル様と再会したあの日のことを思い出し、私は微笑んだ。それをシエラはまた呆れたような顔をして見た。
「…それ、ジルでしょ?」
「え?!な、なんで?」
話してないのに、バレた?!
ププっとシエラは吹き出す。
「分かりやすすぎー。
二人って愛し合ってるのを隠す気が全く無いよね。こっちが恥ずかしくなるくらい。ダダ漏れ。」
「そ、そんなこと…」
「マリエルったら、顔が真っ赤!
可愛いー!!」
「か、からかわないで!シエラ!!」
私が声を張り上げたその時、外からジル様の声がした。
「マリエル?!マリエルなのかっ?!」
「あ、ジル様。はい、マリエルでー」
次の瞬間、扉が蹴破られた。
部屋に入ってきたジル様の表情は険しい。
ジル様は、私とシエラを交互に見ると、シエラの胸ぐらを掴み、壁に押し付けると、拳を振り上げた。
「ジル様っ!!」
ドゴォンッ!
気付いた時には、ジル様の拳がシエラの顔の真横の壁にめり込んでいた。
ジル様はシエラを今にも殴りかからんとばかりに睨みつける。
「マリエルを傷付けるなら、例えお前でも許さない。」
一瞬の静寂の後、ジル様の手が離され、シエラがヘナヘナと床に崩れ落ちる。そして…
「…うっ、うっ…グスッ。」
シエラが俯いて、泣き出した。
ジル様は私の方に歩み寄ってくるが、私は慌ててシエラに駆け寄る。
「シエラ!!」
「…マリエル?」
静かに泣くシエラを抱きしめながら、私はキッとジル様を睨みつける。
「ジル様!事情も聞かないで、あんなことして、酷いです!シエラは何も悪くありません!!」
「マ、マリエル…。でも、シエラはー」
何かを言わんとするジル様を遮って、私は続ける。
「シエラはここに閉じ込められてしまった私をたまたま見つけてくれただけです!私を見つけてジル様に知らせに行こうとしたところを私が止めて、話を聞いたんです!
シエラは悪くありません!!」
「…ふっ。グスッ…マリエルぅ…。」
シエラはそう言って、より強く私に抱きついて来て、胸に顔を埋めている。
「こんなに怖がって、可哀想に…。
騎士候補とは言え、女の子にこんなことするなんて…!」
「マリエル、そいつはー」
その時、シエラが顔を上げて、私の右頬にキスをした。
「…へ?」
「シエラ!!」
顔を上げたシエラは涙ひとつ流していなかった。
シエラは私を見つめると言った。
「僕は男だよ♪
楽しい時間をありがと、マリエル。
これ以上ここにいたら、今度こそ殺されそうだから行くね!」
シエラはそう言うと、窓から再び木に飛び移った。
「シエラ!戻ってこい!」
ジル様が鬼のような形相で、窓の外のシエラに言う。
「ジルー!僕、今日から一週間お休み貰うからー。
またねー!!」
そう言い残し、シエラは去っていった。
呆然とする私にジル様は近寄り、私をギュッと抱きしめる。
「…マリエル。怪我はなかったか?
すまなかったな…。」
そう言って、ジル様は私の顔を覗き込む。
…悪いのは話も聞かずに逃げた私なのに。
目に涙が滲み、ジル様の顔がぼやける。
「グスッ…。ジル、様。ごめんなさい…っ!
わ、私、勘違いしちゃって…。」
私がそう言うと、ジル様は流れた涙を拭って、微笑んでくれた。
「いいんだ。マリエルが無事なら、それで。
今日はもう仕事も終わりだ。一緒に帰ろう?」
私がコクンと頷くと、ジル様は優しくキスをくれた。
ジル様の手は私の右頬をしっかりと拭いていたが。
…他の男性にキスされちゃってごめんなさい、ジル様。
◆ ◇ ◆
お屋敷に戻った私たちは夕食と湯浴みを終え、寝室に来ていた。ベッドの背もたれに身体を預けながら話す。いつもの通り私たちの手はしっかりと絡んでいた。
「シエラが男の子だったなんて、全く気付きませんでした。」
「確かに一眼では分からないよな。髪も長いし、顔つきも女みたいだし。
マリエルが気付かなかったとしても仕方ないさ。俺が事前に紹介しておけば良かったんだ、すまなかったな。」
私はジル様の腕に擦り寄った。
「ジル様…謝らないで。今回のことは私が悪いです。
でも、なんで今までシエラを紹介してくれなかったんですか?トリスタン様に会いにきてたなら、話そうとすればタイミングはあったはずなのに。」
ジル様はバツが悪そうだ。
「…あぁ。それは…。
シエラはトリスタンのことを神のように崇拝しているが、逆に俺のことはジルなんて呼ぶし、生意気にもからかってくるばかりで。俺も幼い頃から知っているから、どうも強く叱れないんだ。その結果、舐められるばかりでな。
…なんだか、情けないだろう?」
困ったようにジル様が笑う。私の声は思わず大きくなる。
「情けなくなんかないです!!ジル様がお優しいから、シエラも甘えているだけですよ!」
「そう、か?
でも、マリエルにそう言ってもらえて安心した。情けない姿を見て、愛想を尽かされたらと思うとー」
「ジル様に愛想を尽かすことなんてあり得ません!」
全くジル様はなんてことを言うんだ。好きで好きで堪らなくて、毎日胸がいっぱいなくらいなのに。
ジル様は目を細めて、頭を撫でてくれた。
「ありがとう。
…まぁ、愛されてるよな。シエラからジルって呼ばれてるのを聞いただけで動揺して逃げるくらいだもんな。」
「そ、それはー」
「嫉妬、してくれたんだろう?」
ジル様が今度は少し意地悪な顔をする。
私は観念して、正直な気持ちを告げた。
「……はい。
私だって、ジル様って呼んでるのにって。」
「マリエルには、ジルと呼んでほしいと言ってるだろ?」
ジル様は私の頭を抱き寄せて、キスを落とした。
「な、なんだか、恥ずかしくて。」
「くくっ。じゃあ、ジルって呼ばせてやる。」
そう言って、ガウンの紐を解いた。
「え?…な、なんで脱がすの?」
「マリエルはベッドの中で余裕がなくなると、ジルって呼ぶ。」
「…そうなの?」
「あぁ。」
「……知らなかった。」
「じゃあ、存分に確認してみるといい…」
そう言って、ジル様は私の胸に舌を這わせた。
「あっ…ん。」
数時間後。
「はぁあああん…っ!!ジルぅ…っ!!」
「…ん。マリエル…。」
私たちの結合部は中に入りきらない白濁と、愛液と、汗で泡立っていて、ジルの大きな陰茎が出入りする度にグジュグジュと卑猥な音を立てる。ジルの腿も私の腿もぐっしょりと濡れている。
「ジルっ…も、やぁ…んっ!むりぃ…!!」
「はっ…でも、マリエルのここはもっとって言ってる。ますます俺のに絡みついてくる…。」
ジルは膣壁全体を刺激するようにゆっくりと腰を回し、陰茎を私の中に擦り付けた。またゾワゾワと快感が腰に満ちていく。
「やぁ…あっ!ジル、ジルっ!!
また、おかっ…しくなるよぉ…ジルぅ…!」
ジルはフッと笑う。
「快楽でおかしくなった、マリエルも好きだ。」
「あっ、はぁん…っ!ジルぅ…。」
ジルは依然としてゆっくり陰茎を出し入れしたり、中をゆっくり刺激するだけだ。一番奥までは挿れてくれない…もどかしい。
「ほら、どうしてほしい?」
「やぁ…ん。はやくぅ…。」
「早く…?」
「いっぱい…いっぱい奥突いて…っ!
ジル…ジルの子種をっ…一番奥に出してぇ…!」
「あぁ、分かった。」
またジルは腰を振り始めた。容赦のない突きに身体が揺さぶられる。ふるんふるんと勢いよく揺れる胸をジルが揉みしだき、キュッと乳首を摘む。
「はぁぁあんっ!」
気持ちよさに、ジルの陰茎をぎゅっと蜜壺で抱きしめれば、ジルが顔を歪ませる。
「マリエル…受け取れ…!!」
「ジルっ…!!」
ジルはドクドクとまた新たな白濁を吐き出す。
今日何度目か分からない絶頂に導かれた私は、少しでも空気を取り込もうと大きく胸を上下させる。
その間もジルは陰茎を挿れたまま、私の全身にキスを落とす。所々にピリッとした痛みが走る。
「やぁん…っ、またやってる…」
「マリエルのこの白く滑らかな肌に跡を付けられるのが俺だけだと思うと堪らなくて、な。あぁ…美しい。」
ジルは満足したように、うっとりと私の身体を見つめる。
…また、私の中のジルが力を取り戻す。
それにギクリと身体を硬くしたのがバレたようで、ジルがニヤッと妖しく笑う。
「ま、待って…ジル。今日はもう十分よね…?」
「こんな状態じゃ寝れない。あと一回…な?」
ジルはそう言って、私に濃厚なキスをくれる。
「ふっ…ぁ…ジルぅ…。」
「マリエル…愛してる。」
「…はぁ…ん、私も…」
こうして、夜はまだ続いた。
◆ ◇ ◆
一週間後、シエラは帰ってきた。
驚いたことにあの長かった髪は短く切られ、すっかり男の子になっていた。
今はお屋敷でジル様と一緒にシエラの話を聞いている。
この一週間、シエラは実家の侯爵領に帰り、ご両親と話し合ってきたらしい。シエラは元々身体が弱いこともあって、両親から騎士になることを反対されていたらしいが、今回しっかりと話し合い、騎士見習いとなることを認めてもらったとのことだった。
「と言うわけで、また今週から正式に宜しくお願いします。」
シエラは真剣な表情で、ジル様に頭を下げた。
「ちゃんと叔父上の許可が取れているなら構わん。
だが、従兄弟だからといって容赦はしない。それだけは覚悟しておけよ。」
ジル様も真剣だ。シエラもしっかりと頷いた。
「分かってる。僕だって本気で強くなりたいんだ。
…守りたいものもあるしね。」
ジル様は軽く息を吐くと、呆れたように言う。
「はぁ。トリスタンとトリスタンの作品だろ?」
シエラはこくりと頷いた後に不敵に笑った。
「それだけじゃないよ。あと…マリエル。」
「「は?」」
私とジル様は唖然とする。
シエラは綺麗な笑顔で私を見つめる。
「僕、マリエルのこと、気に入っちゃったんだ。優しいし、可愛いし、いい匂いはするし…おっぱいが大きくて、抱き心地は最高だし?」
ジル様が怖い顔をしている。
「シエラ!」
シエラはジル様の声にも動じずにより熱心に私のことを見つめる。
「マリエル!ジルに飽きたら、僕のところにおいでよ♪
八歳も上のジルより、五歳下の僕の方が長く満足させてあげられるよ?」
ウィンクまで送られる。十四歳とは思えない色気だ。
「い、いや…。」
私が返事に困っていると、大人のように微笑む。
「ま、今はまだ子供だけどね。
見てて、必ず強くなるから!」
ジル様が恐ろしい顔でシエラを見ている。
「シエラ!マリエルは俺のー」
「うわっ、こわ。また殴られたら堪んないし、今日はもう帰るね!バイバーイ!!」
シエラはまたしても、素早くいなくなってしまった。
「…くそっ!明日、あいつの記憶からマリエルと接触した記憶を消してやる…!」
…固く握りしめられた拳を見て、マリエルは少し不安になる。
「ら、乱暴は止めてください…ね?」
ジル様は少し表情を柔らかくして、答えた。
「大丈夫だ、少し訓練を厳しくするだけだ。
他の新人からも遅れているし、丁度いい。
…それにしても、マリエルに惚れる奴が多くて困る。こんなに可愛いから仕方ないことだとは分かっているが、騎士団の奴らもマリエルは最近どうだとよく聞いてくるし…。
もう俺と結婚してるのにどう言うことだ!」
「あはは…。皆さん冗談で言ってるだけですよ。」
ジル様は首を横に振る。
「…いや、俺は男だから分かる。シエラも騎士団の奴らも完全にはマリエルを諦めていない。」
私はジル様の手をギュッと握る。
「大丈夫ですよ、私が好きなのはジル様だけです。」
ジル様も手を握り返してくれる。
「分かってる。
でも、マリエル気をつけるんだぞ?何があっても大丈夫なように剣の腕と体力は落とさないようにな。」
「はい。あ、じゃあ、今から打ち合いします?」
最近、剣の鍛錬が出来てなかったから、丁度いいと思い、私は提案する。
「んー。それより体力維持のための運動がいいな。」
ジル様は走りたい気分なのかしら?
「じゃあ、どこか行きますか?」
「いや、家の中でできる。」
私が首を傾げると、ジル様は笑う。
「どうやって?」
「こうやって。」
そう言うとジル様はソファに私を押し倒して、耳を舐めた。
「ひゃ、もう…ジル様、まだお昼!」
ジタバタと私が足を動かせば、スカートの隙間からジル様の手が侵入する。
「たまにはいいだろう?」
そう言って太腿をすぅーっと撫でる。
「はぁ…ん、もう。ジル様ったら。」
「ジル…だろ?」
ジル様はそう言って、パンティの隙間から指を入れ、陰核をぐっと押し潰した。
「あぁんっ!ジル!!」
「沢山運動しような?」
…これは運動になるのかな、と私は頭の片隅で思いながら、また快楽に飲み込まれて行った。
午後に予定されていた公爵夫人の教育が急遽なくなり、私は無性にお出かけがしたかった。最近は座学ばかりであまり身体を動かせていないのも気になる。
あまり太ってジル様に嫌われたら大変だし…。
そう思った私は、久しぶりに騎士団を訪ねてみることにした。前々から副団長にいつでも遊びにおいで、と言ってもらっているし、少し訓練にも参加させてもらえたらいいな、と思う。差し入れを料理長に言って準備してもらい、午後の訓練が行われている時間に合わせていく。
ジル様には言っていないけれど、きっと大丈夫よね…?
私は少しドキドキしながらも馬車に乗って、元職場へ足を運んだ。慣れ親しんだ場所だから、と侍女のマリーの反対を押し切り、馬車を一人降りる。馬車からは目と鼻の先だしね。
訓練所へ着くと、変わらないメンバーが打ち合いをしているのが見える。その一方で新人たちがヒィヒィ言いながら、素振りをしていた。
その姿を見て、思わず呟く。
「…懐かしいな。」
一抹の寂しさを抱えながらも訓練所を眺めていると、一人駆け寄ってくる騎士がいた。アランだ。
「マリエルさん!」
「アラン!久しぶり!元気にしてた?」
私も思わず笑顔になる。アランも満面の笑みだ。
「はい!団長にガッツリしごいていただいてます。お陰でまた一段と強くなりましたよ?そのうち、団長より強くなっちゃうかもしれません!」
確かにアランは以前より体格も良くなったし、顔つきも精悍だ。気安さは変わらないが、そこに嫌なものは感じられなかった。
「ふふっ。それは頼もしいわね!
でも、私の旦那様は強いからそう簡単に越えられないと思うわよ?」
「高い壁の方が燃えますね!」
「流石ね。頑張って。応援してる。」
「はい!
、ところで今日はどうしたんすか?」
アランが不思議そうに尋ねる。
ジル様に言っていない手前、少し居心地が悪い。
「ちょっと時間が出来たから差し入れに。あと、久しぶりに身体を動かしたいなーって。…大丈夫かな?」
「勿論です!みんな喜ぶと思います!
じゃあ、まずは指揮官室ですかね?」
「えぇ。実は何も言わないで来ちゃってるから、最初に顔出しておかなきゃね。」
「じゃあ、俺が指揮官室まで案内しますよ。」
そう言って、アランは私の荷物を持とうと手を伸ばした。それを私はひょいっと避ける。
「いいわよ、一人で行ける。」
まだ辞めてから、そう長くも経っていないのに、完全に部外者扱いされているようで、少し胸がモヤモヤする。
「移動中にマリエルさんに何かあったら、俺が団長に殺されるんで。俺のためにも一緒に行ってください。」
アランは深く頭を下げて、私に頼む。訓練の邪魔をして申し訳ないな、と思ったが、確かに私に何かが起こると、確実にアランに迷惑をかけることになるだろうから素直に従うことにした。
「分かったわ。宜しく。」
こうして、私とアランは二人で指揮官室に向かった。
◆ ◇ ◆
「そう言えば、最近新人が入ってきたのよね?
どう今年の子達は?」
「なかなか見込みありそうっすよ。
…まぁ、問題児もいますけど。」
「問題児…?」
その時、少し先に見えた指揮官室の扉が開き、中から女の子が出て来た。その子は開いた扉に向かって、叫んだ。
「ジルの分からず屋!!」
ジ、ジル?!
…私だってジル『様』呼びなのに、あの子はジル様のことをジルって呼び捨てに出来る間柄なの?
見ちゃいけない場面に遭遇したような気がして、急に足が重くなる。髪を靡かせながら、その子はズンズンとこちらに歩いてきた。一つに纏められた長く茶色い髪はよく手入れをされているようでキラキラと輝いている。顔も少し冷たい印象を与えるクールな顔立ちだが、よく整っていた。その子は私に気付き、足を止めた。
…すごい睨んでくる。
緊張して、固まっていると、その子は私に舌打ちをしたと思ったら、口を開いた。
「みんな…こんな女のどこがいいのか、さっぱりわかんない!」
そう私に告げると、その子は走り去ってしまった。
私は呆然とする。その私に追い討ちをかけるようにその子を追って来たジル様が扉から出て来て、叫んだ。
「シエラ!!」
そこでジル様はわたしを見つけた。シエラと呼ばれたその子はもうすでに廊下から消えていた。
「ジ、ジル様…。」
「マ、マリエル…なんでここに…」
ジル様は目を丸くして、私を見つめる。
…歓迎されてないんだと思った。
「……来ちゃいけませんでしたか?」
イライラする。いつもだったら、マリエル!って駆け寄って来て、笑顔で抱きしめてくれるのに…まずいところを見られたみたいな顔しちゃって。
「そ、そんなことはー」
「ジル様の馬鹿!!」
私はアランに差し入れのバスケットを押しつけて、その場から逃げ出した。こんなところで駆けるなんてはしたない真似だと…次期公爵夫人としてあり得ないことだと分かっているのに、耐えられなかった。
「マリエル!!」
ジル様の呼びかけも無視して、廊下をクネクネと曲がって、追ってくるジル様を撒いた。私だって、長年ここに勤めてきたんだ、道や部屋は把握している。マリエルは以前から空き部屋として使われている部屋に入った。部屋の中にあるソファに腰掛けて、一息つく。
今こんな状態で馬車に戻る事は出来ないわ…
予想外に早く戻ったら、馬車で待たせているマリーが何事かと心配してしまうだろうし。少しここで休もう。
先程の女の子を思い出しながら、考える。
…一体あの子は誰なんだろう。すごい綺麗な子だった。それに、騎士服を着てた…もしかして新人団員?
でも、ジル様はあの子を追い掛けていたし、あの子はジルって呼んでたし…かなり親しい間柄なのは確実だよね。
ジル様と只ならぬ関係だったり…いや、流石にあの子はせいぜい十五歳だし、それは流石にないか。あ…でも、ジル様が私を好きになったのって、私が十二歳の時だから…無いわけでもない…?
そこまで考えて、私は首を大きく横に振った。
ジル様が私を裏切るなんてあり得ない!今まで何度も愛してるって言ってくれたもの。…なのに、私ったらカッとしてしまって…。
つい驚いて走り出して来てしまったことを後悔する。なんであの時にちゃんと聞かなかったんだろう。ジル様は聞いたら、きっとちゃんと教えてくれたのに…そうだよね?
両手で顔を覆う。不安と後悔が胸に押し寄せてきて、少し涙が滲む。
ここで少し休んだら、指揮官室に戻って、ちゃんとジル様に謝ろう。それで、あの子は誰なのか、ちゃんと聞こう。
…うん、少し休んだら…。
そう思って、私は目を閉じた。
◆ ◇ ◆
「……大変なことになったわ。」
起きたら、予想もしなかった事態に陥っていた。
私が勤めていた頃は、この部屋はいつも施錠されていなかったはずなのに、起きたら外から鍵が掛かっていた。しかも、内鍵は壊れているのかクルクルと回るだけで開く気配がない。
ここは二階だから、外の窓から出るわけにもいかない。いや、窓の外に木が見えるからそこに飛び移ればなんとか…と思うが、さすがに公爵夫人になる私がそんなことをするわけにはいかない…。
「うー、どうしようー。」
外はもうすぐ陽が落ちる。きっとマリーも心配している。それに、きっとジル様も…。
扉を叩いて助けを呼んでみるが、反応はない。私は思わず大きく溜息を吐いた。
「ジルさま…。」
その時、窓の外から声がした。
「あんた…そんなところで何やってんの?」
へ?
外に目をやると、窓の外の木に先程の子がいた。
「シ、エラ…さん?」
彼女はぴょんとこちらの部屋に入ってくる。
「こんなところに隠れてたんだ。」
…隠れる?
隠れるっていうか…閉じ込められてるんですけど。
呆然と私は彼女を見つめる。
「騎士団総出で、あんたのこと探してるよ。ジルが訓練だって称して。隠れたあんたを探すのが、今日の訓練なんだってさ。
みんなマリエルマリエルって必死になっちゃって…馬鹿みたい。」
彼女は呆れたようにすると、私の向かいのソファに座った。
「ご、ごめんなさい…。」
まさか私の軽率な行動で、そんなことになっていたとは思わず、咄嗟に謝ってしまう。謝罪する私にシエラさんは目を丸くする。
「…随分と素直なんだ…。
その感じじゃ隠れてたわけじゃないのか。ジルが堂々とあんたを探す名目、だったわけね。
そっか…ここの部屋、鍵壊れてたっけ。
窓から出たら良かったのに。」
「スカートだし…これでも次期公爵夫人だもの…。
そんなはしたないこと出来ないわ。」
「ま、それもそうか。
今、ジルを呼んできてあげるよ。待ってて。」
シエラさんはそう言うと、ソファから立ち上がろうとする。
…え?意外に親切…。
ハッとして私は彼女を呼び止めた。
「ま、待って!
…さ、さっきからジル、ジルって呼び捨てにしてるけど、貴女はジル様の何なの?」
心なしか口調がキツくなってしまう。子ども相手に何をムキになっているかと思うが、答え次第ではジル様と話し合いが必要だ。
「…いとこだけど?」
「…いと、こ?」
ポカンとする私を見て、クスクス笑うと、シエラさんは再びソファに腰掛ける。
「うん。そっか…結婚式は丁度体調を崩して参加できなかったんだよね。会うのは初めてだっけ。こっちはよくあんたを見てるから、初めてのような気がしなくて。」
「私をよく見てる…?」
私が首を傾げると、シエラさんは頷いた。
「うん。折角だし、ちょっと話をしよっか?
シエラ・ジャロー…って言えばどこの人間か分かる?」
ジャロー侯爵家と言えば、お義母様の生家だ。
「うん。ジャロー侯爵家の方だったのね…。
初めまして。私はマリエル・ウィンタールでー」
「うん、知ってる。
こっちのことはシエラって気軽に呼んでよ。
あ、マリエルって呼んでもいい?」
「え、えぇ。構わないけど…。
でも、私のこと…好きじゃないのよね?」
「え?そんなことないよ?ジルが結婚できて良かったと思ってる。幸せそうだしね。
ただ嫉妬してるだけ。」
「嫉妬…。
あの…シエラ。シエラはジル様が好きなの?」
シエラは上を向いて考える素振りをしている。
「んー。まぁ、別に嫌いじゃ無いけど、好きってほどでもない。歳も離れてるし、時々しかジルとは会わないから。」
んん?ど、どういうことだろう?
「で、でも…ジルって…。」
「あぁ。それは、小さい頃、ジルベルトって言いにくくて、勝手にジルって呼んでるだけ。色々と勘違いしてるようだけど、マリエルが思うような関係じゃないよ。大体こっちはまだ十四だよ?それにいとこだし。大体さ、いい大人がこの年齢の子に興奮してたらやばい奴だよ。」
…十二歳の私に恋をした二十歳のジル様もやばい奴に該当するのかな、と頭の片隅では思うが、絶対に口には出せない。
「そ、そっか…。」
一人ドキドキして、目を泳がせていると、シエラは真剣な表情をして、私をじっと見つめ、頭を下げた。
「さっきはごめんなさい。
モヤモヤして…八つ当たりした。」
「八つ当たり?」
「うん…。色々上手くいかなくて、偶々通りかかったマリエルに当たっちゃった。
それに…マリエルはトリスタン様に気に入られてるでしょう?」
トリスタン様はトリスタン様で、ジル様はジルって…随分と対応に差があるのね…。私は不思議に思いながらも、問いに答える。
「気に入られてる…のかしら?」
すると、シエラはドンっと机を叩いた。
「絶対に気に入られてる!最近、トリスタンが題材にするのは女騎士とか、強い女性とか、マリエルを連想して作っているとしか思えない!ジル様にはバレてないけど、マリエルのスケッチだって、こっそり沢山描いてるんだから!」
…おぉ、それはまた見つかったら、ジル様に破り捨てられるやつだ。流石にもう可哀想だから、黙っていてあげよう。
「そ、そうなんだ。
…シエラは随分とトリスタン様に詳しいのね。」
「毎日のように出入りしてるからね。」
お屋敷にいるが、全然気付かなかった私は驚く。
「そうなの?!」
「えぇ。騎士団に入ろうと思ったきっかけの一つでもあるし。
侯爵領からだと、毎日トリスタン様には会えないけど、騎士寮に住めば、トリスタン様に会いに行きやすくなるから。」
「そんなにトリスタン様に会いたいの?」
シエラはキラキラとした瞳で語り出した。
「勿論!!
あの溢れ出る才能…本当に惚れ惚れしちゃうよ!好きすぎて、ずっとトリスタン様にモデルとして使ってもらうことを夢みてるくらいなんだから!
だから、騎士になることはトリスタン様へも会いに行きやすくなるし、モデルとしての取っ掛かりを作る手立てとしても良いと思ったんだ。
なのに、ジルったら侯爵領に帰れ!の一点張りで。訓練にも参加させてもらえないんだ。本当に騎士としても活躍したいと思ってるのに。」
「侯爵様は騎士になることをなんておっしゃってるの?」
「…お前には無理だ、って。…実はお父様の許可は取らずに勝手にこっちに来たんだ。」
しょんぼりと肩を落とす姿は年相応だ。
さっきまでは生意気な感じだったのに、今では少し可愛い…ジル様を異性として慕っているわけじゃ無いと確認出来たからかもしれないが。
「そう…。きっと心配されているのね…。」
「違う…信用されてないだけ。」
シエラは俯き、首を横に振る。
「そんなことない。心配してるのよ。
それをうまく伝えられないだけなの。
シエラが本当に騎士になりたいのは、トリスタン様の近くにいたいという理由だけなの?」
シエラは俯き黙ったままだ。
「…他に理由があるのね?」
私はシエラの言葉を待つ。暫くすると観念したようにシエラは話し出した。
「…昔、王都の騎士団がうちの侯爵領に来たことがあってね。うちもお抱えの騎士団がいるんだけど、その時の手合わせを見たんだ。王都の騎士団の人達はすごく強くて…その圧倒的な強さに憧れた。
いつか…あんな風に強くなりたいと思った。」
「素敵ね。」
「本当に?…ほんとにそう思う?
強さを追い求めるなんて、馬鹿馬鹿しいと思わない?」
シエラは私の様子を伺うように、下から見つめる。
本当に綺麗な顔をしている。
可愛らしい仕草につい頬が緩む。
「思わないわ。
それをご家族の誰かに話したことはないの?」
シエラは首を横に振る。
「ない。人を助けたいとか、誰かの役に立ちたいとかそんな高尚な理由じゃないから。ただ強くなりたいだけ。」
「いいじゃない。強くなったら、結果的に人のためにもなるんだし。
私だってちょっとしたきっかけで騎士になっただけよ。そんなに人に誇れるようなものじゃない。」
「そうなの?」
「えぇ。ある人に憧れたの。」
ジル様と再会したあの日のことを思い出し、私は微笑んだ。それをシエラはまた呆れたような顔をして見た。
「…それ、ジルでしょ?」
「え?!な、なんで?」
話してないのに、バレた?!
ププっとシエラは吹き出す。
「分かりやすすぎー。
二人って愛し合ってるのを隠す気が全く無いよね。こっちが恥ずかしくなるくらい。ダダ漏れ。」
「そ、そんなこと…」
「マリエルったら、顔が真っ赤!
可愛いー!!」
「か、からかわないで!シエラ!!」
私が声を張り上げたその時、外からジル様の声がした。
「マリエル?!マリエルなのかっ?!」
「あ、ジル様。はい、マリエルでー」
次の瞬間、扉が蹴破られた。
部屋に入ってきたジル様の表情は険しい。
ジル様は、私とシエラを交互に見ると、シエラの胸ぐらを掴み、壁に押し付けると、拳を振り上げた。
「ジル様っ!!」
ドゴォンッ!
気付いた時には、ジル様の拳がシエラの顔の真横の壁にめり込んでいた。
ジル様はシエラを今にも殴りかからんとばかりに睨みつける。
「マリエルを傷付けるなら、例えお前でも許さない。」
一瞬の静寂の後、ジル様の手が離され、シエラがヘナヘナと床に崩れ落ちる。そして…
「…うっ、うっ…グスッ。」
シエラが俯いて、泣き出した。
ジル様は私の方に歩み寄ってくるが、私は慌ててシエラに駆け寄る。
「シエラ!!」
「…マリエル?」
静かに泣くシエラを抱きしめながら、私はキッとジル様を睨みつける。
「ジル様!事情も聞かないで、あんなことして、酷いです!シエラは何も悪くありません!!」
「マ、マリエル…。でも、シエラはー」
何かを言わんとするジル様を遮って、私は続ける。
「シエラはここに閉じ込められてしまった私をたまたま見つけてくれただけです!私を見つけてジル様に知らせに行こうとしたところを私が止めて、話を聞いたんです!
シエラは悪くありません!!」
「…ふっ。グスッ…マリエルぅ…。」
シエラはそう言って、より強く私に抱きついて来て、胸に顔を埋めている。
「こんなに怖がって、可哀想に…。
騎士候補とは言え、女の子にこんなことするなんて…!」
「マリエル、そいつはー」
その時、シエラが顔を上げて、私の右頬にキスをした。
「…へ?」
「シエラ!!」
顔を上げたシエラは涙ひとつ流していなかった。
シエラは私を見つめると言った。
「僕は男だよ♪
楽しい時間をありがと、マリエル。
これ以上ここにいたら、今度こそ殺されそうだから行くね!」
シエラはそう言うと、窓から再び木に飛び移った。
「シエラ!戻ってこい!」
ジル様が鬼のような形相で、窓の外のシエラに言う。
「ジルー!僕、今日から一週間お休み貰うからー。
またねー!!」
そう言い残し、シエラは去っていった。
呆然とする私にジル様は近寄り、私をギュッと抱きしめる。
「…マリエル。怪我はなかったか?
すまなかったな…。」
そう言って、ジル様は私の顔を覗き込む。
…悪いのは話も聞かずに逃げた私なのに。
目に涙が滲み、ジル様の顔がぼやける。
「グスッ…。ジル、様。ごめんなさい…っ!
わ、私、勘違いしちゃって…。」
私がそう言うと、ジル様は流れた涙を拭って、微笑んでくれた。
「いいんだ。マリエルが無事なら、それで。
今日はもう仕事も終わりだ。一緒に帰ろう?」
私がコクンと頷くと、ジル様は優しくキスをくれた。
ジル様の手は私の右頬をしっかりと拭いていたが。
…他の男性にキスされちゃってごめんなさい、ジル様。
◆ ◇ ◆
お屋敷に戻った私たちは夕食と湯浴みを終え、寝室に来ていた。ベッドの背もたれに身体を預けながら話す。いつもの通り私たちの手はしっかりと絡んでいた。
「シエラが男の子だったなんて、全く気付きませんでした。」
「確かに一眼では分からないよな。髪も長いし、顔つきも女みたいだし。
マリエルが気付かなかったとしても仕方ないさ。俺が事前に紹介しておけば良かったんだ、すまなかったな。」
私はジル様の腕に擦り寄った。
「ジル様…謝らないで。今回のことは私が悪いです。
でも、なんで今までシエラを紹介してくれなかったんですか?トリスタン様に会いにきてたなら、話そうとすればタイミングはあったはずなのに。」
ジル様はバツが悪そうだ。
「…あぁ。それは…。
シエラはトリスタンのことを神のように崇拝しているが、逆に俺のことはジルなんて呼ぶし、生意気にもからかってくるばかりで。俺も幼い頃から知っているから、どうも強く叱れないんだ。その結果、舐められるばかりでな。
…なんだか、情けないだろう?」
困ったようにジル様が笑う。私の声は思わず大きくなる。
「情けなくなんかないです!!ジル様がお優しいから、シエラも甘えているだけですよ!」
「そう、か?
でも、マリエルにそう言ってもらえて安心した。情けない姿を見て、愛想を尽かされたらと思うとー」
「ジル様に愛想を尽かすことなんてあり得ません!」
全くジル様はなんてことを言うんだ。好きで好きで堪らなくて、毎日胸がいっぱいなくらいなのに。
ジル様は目を細めて、頭を撫でてくれた。
「ありがとう。
…まぁ、愛されてるよな。シエラからジルって呼ばれてるのを聞いただけで動揺して逃げるくらいだもんな。」
「そ、それはー」
「嫉妬、してくれたんだろう?」
ジル様が今度は少し意地悪な顔をする。
私は観念して、正直な気持ちを告げた。
「……はい。
私だって、ジル様って呼んでるのにって。」
「マリエルには、ジルと呼んでほしいと言ってるだろ?」
ジル様は私の頭を抱き寄せて、キスを落とした。
「な、なんだか、恥ずかしくて。」
「くくっ。じゃあ、ジルって呼ばせてやる。」
そう言って、ガウンの紐を解いた。
「え?…な、なんで脱がすの?」
「マリエルはベッドの中で余裕がなくなると、ジルって呼ぶ。」
「…そうなの?」
「あぁ。」
「……知らなかった。」
「じゃあ、存分に確認してみるといい…」
そう言って、ジル様は私の胸に舌を這わせた。
「あっ…ん。」
数時間後。
「はぁあああん…っ!!ジルぅ…っ!!」
「…ん。マリエル…。」
私たちの結合部は中に入りきらない白濁と、愛液と、汗で泡立っていて、ジルの大きな陰茎が出入りする度にグジュグジュと卑猥な音を立てる。ジルの腿も私の腿もぐっしょりと濡れている。
「ジルっ…も、やぁ…んっ!むりぃ…!!」
「はっ…でも、マリエルのここはもっとって言ってる。ますます俺のに絡みついてくる…。」
ジルは膣壁全体を刺激するようにゆっくりと腰を回し、陰茎を私の中に擦り付けた。またゾワゾワと快感が腰に満ちていく。
「やぁ…あっ!ジル、ジルっ!!
また、おかっ…しくなるよぉ…ジルぅ…!」
ジルはフッと笑う。
「快楽でおかしくなった、マリエルも好きだ。」
「あっ、はぁん…っ!ジルぅ…。」
ジルは依然としてゆっくり陰茎を出し入れしたり、中をゆっくり刺激するだけだ。一番奥までは挿れてくれない…もどかしい。
「ほら、どうしてほしい?」
「やぁ…ん。はやくぅ…。」
「早く…?」
「いっぱい…いっぱい奥突いて…っ!
ジル…ジルの子種をっ…一番奥に出してぇ…!」
「あぁ、分かった。」
またジルは腰を振り始めた。容赦のない突きに身体が揺さぶられる。ふるんふるんと勢いよく揺れる胸をジルが揉みしだき、キュッと乳首を摘む。
「はぁぁあんっ!」
気持ちよさに、ジルの陰茎をぎゅっと蜜壺で抱きしめれば、ジルが顔を歪ませる。
「マリエル…受け取れ…!!」
「ジルっ…!!」
ジルはドクドクとまた新たな白濁を吐き出す。
今日何度目か分からない絶頂に導かれた私は、少しでも空気を取り込もうと大きく胸を上下させる。
その間もジルは陰茎を挿れたまま、私の全身にキスを落とす。所々にピリッとした痛みが走る。
「やぁん…っ、またやってる…」
「マリエルのこの白く滑らかな肌に跡を付けられるのが俺だけだと思うと堪らなくて、な。あぁ…美しい。」
ジルは満足したように、うっとりと私の身体を見つめる。
…また、私の中のジルが力を取り戻す。
それにギクリと身体を硬くしたのがバレたようで、ジルがニヤッと妖しく笑う。
「ま、待って…ジル。今日はもう十分よね…?」
「こんな状態じゃ寝れない。あと一回…な?」
ジルはそう言って、私に濃厚なキスをくれる。
「ふっ…ぁ…ジルぅ…。」
「マリエル…愛してる。」
「…はぁ…ん、私も…」
こうして、夜はまだ続いた。
◆ ◇ ◆
一週間後、シエラは帰ってきた。
驚いたことにあの長かった髪は短く切られ、すっかり男の子になっていた。
今はお屋敷でジル様と一緒にシエラの話を聞いている。
この一週間、シエラは実家の侯爵領に帰り、ご両親と話し合ってきたらしい。シエラは元々身体が弱いこともあって、両親から騎士になることを反対されていたらしいが、今回しっかりと話し合い、騎士見習いとなることを認めてもらったとのことだった。
「と言うわけで、また今週から正式に宜しくお願いします。」
シエラは真剣な表情で、ジル様に頭を下げた。
「ちゃんと叔父上の許可が取れているなら構わん。
だが、従兄弟だからといって容赦はしない。それだけは覚悟しておけよ。」
ジル様も真剣だ。シエラもしっかりと頷いた。
「分かってる。僕だって本気で強くなりたいんだ。
…守りたいものもあるしね。」
ジル様は軽く息を吐くと、呆れたように言う。
「はぁ。トリスタンとトリスタンの作品だろ?」
シエラはこくりと頷いた後に不敵に笑った。
「それだけじゃないよ。あと…マリエル。」
「「は?」」
私とジル様は唖然とする。
シエラは綺麗な笑顔で私を見つめる。
「僕、マリエルのこと、気に入っちゃったんだ。優しいし、可愛いし、いい匂いはするし…おっぱいが大きくて、抱き心地は最高だし?」
ジル様が怖い顔をしている。
「シエラ!」
シエラはジル様の声にも動じずにより熱心に私のことを見つめる。
「マリエル!ジルに飽きたら、僕のところにおいでよ♪
八歳も上のジルより、五歳下の僕の方が長く満足させてあげられるよ?」
ウィンクまで送られる。十四歳とは思えない色気だ。
「い、いや…。」
私が返事に困っていると、大人のように微笑む。
「ま、今はまだ子供だけどね。
見てて、必ず強くなるから!」
ジル様が恐ろしい顔でシエラを見ている。
「シエラ!マリエルは俺のー」
「うわっ、こわ。また殴られたら堪んないし、今日はもう帰るね!バイバーイ!!」
シエラはまたしても、素早くいなくなってしまった。
「…くそっ!明日、あいつの記憶からマリエルと接触した記憶を消してやる…!」
…固く握りしめられた拳を見て、マリエルは少し不安になる。
「ら、乱暴は止めてください…ね?」
ジル様は少し表情を柔らかくして、答えた。
「大丈夫だ、少し訓練を厳しくするだけだ。
他の新人からも遅れているし、丁度いい。
…それにしても、マリエルに惚れる奴が多くて困る。こんなに可愛いから仕方ないことだとは分かっているが、騎士団の奴らもマリエルは最近どうだとよく聞いてくるし…。
もう俺と結婚してるのにどう言うことだ!」
「あはは…。皆さん冗談で言ってるだけですよ。」
ジル様は首を横に振る。
「…いや、俺は男だから分かる。シエラも騎士団の奴らも完全にはマリエルを諦めていない。」
私はジル様の手をギュッと握る。
「大丈夫ですよ、私が好きなのはジル様だけです。」
ジル様も手を握り返してくれる。
「分かってる。
でも、マリエル気をつけるんだぞ?何があっても大丈夫なように剣の腕と体力は落とさないようにな。」
「はい。あ、じゃあ、今から打ち合いします?」
最近、剣の鍛錬が出来てなかったから、丁度いいと思い、私は提案する。
「んー。それより体力維持のための運動がいいな。」
ジル様は走りたい気分なのかしら?
「じゃあ、どこか行きますか?」
「いや、家の中でできる。」
私が首を傾げると、ジル様は笑う。
「どうやって?」
「こうやって。」
そう言うとジル様はソファに私を押し倒して、耳を舐めた。
「ひゃ、もう…ジル様、まだお昼!」
ジタバタと私が足を動かせば、スカートの隙間からジル様の手が侵入する。
「たまにはいいだろう?」
そう言って太腿をすぅーっと撫でる。
「はぁ…ん、もう。ジル様ったら。」
「ジル…だろ?」
ジル様はそう言って、パンティの隙間から指を入れ、陰核をぐっと押し潰した。
「あぁんっ!ジル!!」
「沢山運動しような?」
…これは運動になるのかな、と私は頭の片隅で思いながら、また快楽に飲み込まれて行った。
11
お気に入りに追加
2,329
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!
翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。
「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。
そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。
死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。
どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。
その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない!
そして死なない!!
そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、
何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?!
「殿下!私、死にたくありません!」
✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼
※他サイトより転載した作品です。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にノーチェの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、ノーチェのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
本日無事に購入出来ました!
ずっとこれからは手元に置いておけます♪
(*´ω`*)有言実行です(笑)
わーヽ(´▽`)/本当に本当にありがとうございます♪
購入報告、嬉しいです!!どうぞお手元で可愛がってやってください(//∇//)
WEB掲載時との違いも楽しみながら、改めて楽しんでいただければと思います♪
やったー!書籍化ですね!
(人*´∀`)。*゚+応援してました!
絶対に買います♪
おめでとうございます!
ちび様が以前書籍化とコメントくれた時は、まさかお届けできることになるとは夢にも思いませんでしたが……無事に出版できました!
ちび様をはじめ、応援してくださった皆様のおかげです☆本当にありがとうございます!!
しかも、絶対に買ってくださるなんて嬉しすぎるぅ…(泣)
お祝いコメント、ありがとうございました!!
(*´ω`*)はじめまして!素敵なお話をありがとうございます♪
とっても面白くて一気読みしました♪
団長とマリエルのラブラブにキュンキュン♡しました!
見たいとか、やってほしいと思う場面がお話の中にたくさんあって始終ニヤニヤしっぱなしでした!
( ꈍᴗꈍ)書籍化したら手元にずっと置いておきたい作品です♪
楽しい時間をありがとうでした♪
長いのに一気読み!ありがとうございます!!
ラブラブなの良いですよねぇ♪
終始ニヤニヤ…嬉しすぎるコメントです!
書籍化なんて夢のまた夢ですが…万が一実現した際にはよろしくお願いします(笑)