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連載
番外編 ウィンタール家の人々(2)
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その後、和やかにジル様とご両親とのお話を楽しんだ後、私はジル様に案内されて、私の部屋になる場所へ来ていた。
「うわぁ……素敵……!」
そこは本当に私好みの可愛らしさを残しながらも、上品に纏められた部屋だった。私の実家の部屋によく似ているが、どの家具もより上質な物が使われていることが一目で分かる。壁紙も私が好きなモチーフが使われている。副団長と兄様にアドバイスを貰ったとは言ってたけど……これはすごい。
「気に入ってくれたか?」
そう言いながら、ジル様は扉を閉めると、後ろから私の腰に手を回し、抱きしめる。私は顔をジル様に向けて、微笑んだ。
「はい! もちろん! 本当にありがとうございます!
私の好みがすごく反映されてて、びっくりしました。壁紙も大好きなモチーフだし、家具も好みにぴったり!
……あっ! でもこの椅子だけは私が実家で使ってた物と同じです。座り心地と独特なデザインが気に入ってて……」
「あぁ! それはフィリップから聞いたんだ。この椅子が大好きで、ずっと使い続けていると。でも、もう、どこにも売ってないと聞いてな。どんな物か聞いたんだが、上手く説明が出来ないと言うので、直接見せてもらってーー」
「え? 直接見せてもらった……?
まさか……私の実家の自室に入ったんですか?」
私はジル様から離れて、下からじっとジル様を見つめた。ジル様はあからさまに気まずい顔をしている。
「い、いや……悪いとは思ったんだが、フィリップもご両親も別に構わないと言うので……」
私が尚もじーっと見つめると、ジル様は小さく唸り、謝った。
「……勝手に入って、すまない」
「私の部屋、見ただけですか?」
「……少しの間、部屋に一人にしてもらった」
「私の部屋で何しました?」
「な、何もしてない!! あまりあれこれ触るのも悪いと思って、椅子に座って観察させてもらっただけだ!」
「本当に?」
私が疑いの目を向けると、ジル様はしっかりと頷いた。
「……ほ、本当だ」
「ふーん。ジル様ならベッドに寝っ転がって、私を思い出しながら一人で慰めるくらいするかと思ったのに」
私がそう言って、背を向けると、ジル様は私の肩を掴んで、振り向かせた。
「そんなことはしない!! ベッドには横になったが、枕を抱きしめて、匂いを確認したくらいだ!」
「やっぱり見ただけじゃなかった。
……ジル様の変態」
ジル様は言葉も出ないようだ。
……ふふっ。面白い。別にあんまり帰ってない実家の部屋を見られたって、構わない。だけど、やっぱり自分の知らないうちに部屋に入られるのは良い気分ではないので、少し意地悪をしてみたのだった。
それにしても、ジル様は他の人には平気で嘘をつけるのに、私に嘘をつくのが下手よね……。私には正直でいたいってことなのかな……なんて、考えていた。
ジル様は怒られた子供のようにシュンとしている。
可愛い。
「……す、すまなかった」
ちょっといじめ過ぎちゃったかな。私は少し反省して、ジル様にギュッと抱きついた。
「へへ。ちょっと悪戯が過ぎましたね。そんなに怒ってないですよ。あんまり帰ってない部屋だし、綺麗にもしてたから、全然平気です」
私はそう言うと、ジル様に笑いかけた。
ジル様はホッとしたように微笑んだ。
「良かった……
マリエルに嫌われたら生きていけない」
「また大袈裟な」
「大袈裟なんかじゃない。真実だ」
ジル様は私の頭に頬を擦り付けるようにする。
「ふふっ。でも、私も同じです。ジル様に嫌われたら生きていけない。」
私もジル様の胸に頬を擦り付ける。
「俺がマリエルを嫌うことなどあるはずない」
「じゃあ、私がジル様を嫌うこともあるはずないと信じてください」
私がじっと見つめると、ジル様はフッと笑い、微笑んだ。
「そうだな」
そして、私にキスを落とした。
ゆっくりと、じっとりと、私を味わうようなキスだった。私の歯列を確かめるように舌が這ったと思ったら、より深く舌を差し込むと口内をぐるりと舐めた。
「ふぁ……ぁん。」
「……俺らの寝室も確認してみるか?」
「……うん」
熱くなった顔のまま小さくコクリと頷くと、ジル様は私を軽々と抱き上げ、部屋の奥にあるもう一つの扉を開いた。
そこには三、四人なら平気で寝れるような天蓋付きの大きなベッドが置いてあった。
……ここで……ジル様と一緒に……
ジル様は私をそこに優しく降ろすと、トンと私を押し倒した。
「ここが俺とマリエルの愛の巣……だな」
ジル様が私の首筋を舐める。
「はぁ……ん」
舌はどんどんと下がっていき、胸の谷間へ到着した。
「少し見えるこの柔らかそうな双丘を今日ずっと食べたいと思っていた」
そう言って、ドレスを少しずらした。乳首が露になる。ジル様はチュウと、乳首に優しく吸いつかれる。
「ぁんっ……ジル様、だめだよぉ……っ!
今日は、ごあいさつに、きたのにぃ……」
今度は舌先で器用に乳輪を舐める。反対側は大きく揉みしだかれ、時折思い出したように乳首を弾く。
「また後でゆっくり話せば良い。
今は休憩時間だ」
「でも、ドレスがぁ……」
「侍女を呼べば良いだろう」
ジル様は尚も乳房を可愛がる。どんどんと身体中に快感が広がって、子宮がキュンキュンする。
「ほんとにだめだってばぁ……っ!」
「そうか……? じゃあ、こっちに聞いてみるか」
ジル様はドレスの裾から手を入れ、重いドレスを持ち上げ、下着に触れようとした。
私の蜜口が触れてもらえる悦びに愛液を滲ませた時、コンコンコンとジル様の部屋の方から扉をノックする音がした。
初めジル様は無視したが、ノックする音は止まないどころか、急かすように激しく叩かれる。
「……くそっ!誰だ!?
……ここでマリエルは待ってろ」
そう言うと、ジル様は寝室を出て行く。
そこで、ふと我に返った。
……ご挨拶に来てるのに何やってるんだ、私は。
急いで、衣服の乱れを整えていく。
それと同時に触ってもらえなかった蜜壺が疼いているのが分かる。駄目なのに、私の身体はジル様が与えてくれる快感を期待してしまっていた。
「うー……だめだぁ……」
一人、熱くなった顔を両手で隠す。
その時、ジル様の部屋で何か言い争うような声が聞こえた。
……何かあったのかな?
気になった私はジル様の部屋に続く扉を少し開け、中を伺ってみた。そこには金髪で、ジル様と同じコバルトブルーの瞳をした美丈夫が立っていた。
「あ! 出てきた!!」
その人は満面の笑みを浮かべながら、私の方に歩いてきた。
「おいっ! トリスタン!!」
ジル様は素早く移動し私を自らの背後に隠した。
トリスタン……?
もしかして、この人がジル様の弟さんなの?
その人は髪色こそ違うが、ジル様によく似ていた。鍛えているわけでは無さそうなので、ジル様より線は細いが、身長は高い。
トリスタン様が口を開いた。ジル様の背後に隠された私をジロジロと観察するように見る。
「へぇ……この子が兄さんのお嫁さんかぁ。
.…いいね、すごくいい。
ははっ! 瞳も潤んでるし、顔が赤いよ?
二人で何してたの?」
トリスタン様はにっこりと笑う。
私は恥ずかしくなって、思わず下を向く。
ジル様は厳しい声で言う。
「お前には関係ない。
トリスタン。俺はいいが、マリエルは駄目だ。
興味を持つな。」
トリスタン様は声を出して、笑う。
「マリエルちゃんって言うんだね。
無理だよ、兄さん。
こういうのはインスピレーションなんだ!
もうその子を暴きたくて仕方ない!!
ねぇ、とりあえず一日だけでいいから、貸してくれない?」
さ、さっきから何を言っているの?!
インスピレーション?
暴きたい? 貸してくれ?
しかも、ジル様は俺はいいけど……って言ってた……。
どういうことなの?!
もう私は軽くパニックだった。
「ふざけるな!! 今まで身内だと思って協力してやったが、マリエルだけは駄目だ。指一本触れさせない!」
「兄さんのケチ! 別にいいじゃないか! 寝取るわけでもあるまいし!! より美しく僕の手で生まれ変わるんだよ? 素晴らしいことなんだよ?
ね? マリエルちゃん、いいよね?」
何のことだかさっぱり分からない私は、ギュッとジル様の背中にしがみ付く。もう何がなんだか……!
その時、扉が開き、お義父様とお義母様が入って来た。
「トリスタン! 邪魔するなって言っただろう!」
「そうよ、トリスタン!
マリエルちゃんが怖がってるじゃない!!」
「えー? 父さんと母さんまで兄さんの味方なの?」
ジル様はひどく怖い顔で、トリスタン様を睨んでいる。トリスタン様は気にも留めず、平気な顔をしている。
「とりあえずこの部屋から出て行け。
……話は応接間でしよう」
「もう仕方ないなぁ」
そう言って、トリスタン様もご両親も一旦出て行った。それを確認したジル様は大きくため息を吐き、私の方に向き直ると、「ごめんな」と謝って、ぎゅっと抱きしめてくれた。
◆◇◆
応接間に全員が集まる。
ジル様はトリスタン様を睨みつけ、トリスタン様はニコニコと私を見ている。……なんだかこわい。大型動物に狙われる小動物の気分だ。
結論から言うと、トリスタン様は彫刻家であった。私は芸術に疎いので知らなかったのだが、今人気の彫刻家らしく、王宮の庭にも作品が飾られるほどの腕前とのことだった。また気に入った人がいれば、その人を元に作品を作ることで有名で、トリスタン様に作品を作って貰いたい人は今や多くいるらしいが、トリスタン様は作りたい人しか彫らないと言っていた。
「マリエルちゃんも彫られたいでしょ?」
「駄目だ。絶対に許さない」
トリスタン様は頬をぷくっと膨らませる。
「僕は兄さんじゃなくて、マリエルちゃんに聞いてるのー!」
「い、いえ、私は……結構です」
なんかこの独特なノリが苦手だし、何をされるか分からなくて怖い。
「えー! でも、マリエルちゃん、今までにないモデルなんだよ! 僕、すごい刺激されちゃって!
ねぇ、すごいの作るよ?
マリエルちゃんの美しさも可愛さも、その滲み出るエロスも表現してあげられる!」
滲み出るエロス?! なんなの、それ……。
もう絶対お断りしよう。
「ほ、本当に結構ですから……!」
お義父様も私に加勢してくれる。
「ほら、トリスタン、マリエルさんもこう言ってることだし、無理強いは良くない。今回は諦めなさい」
「んー、ちょっと触るだけでも駄目? 腕と脚のラインを確認させてもらうだけで我慢する!」
トリスタン様は私におねだりするように、上目遣いでこちらを見た。……トリスタン様は自分の美貌を理解しているんだろう、普通の御令嬢ならコロっと騙されてしまいそうだ。
もちろん私には通用しないけど。
私が否定するよりも先にジル様が断った。
「駄目に決まっているだろう! お前にはマリエルに指一本触れさせない。なんでも自分の思い通りになると思うなよ」
ジル様がトリスタン様を睨みつける。怖い。
「うわっ……兄さんってば本気なんだぁ。
ますます興味沸いちゃうなー♪」
ヘラヘラと笑うトリスタン様にジル様は詰め寄り、襟首を掴む。お義父様もお義母様も立ち上がり、ヒヤヒヤしながら様子を見ている
「トリスタン……!!」
「別に殴ってもいいよ。
殴ったら、マリエルちゃん触らせてね♪」
ジル様はトリスタン様を離した。
「そんなことするか。
そんなのが意味ないことくらい分かってる」
トリスタン様は唇を尖らせる。
「なんだぁ。殴られるくらいで、マリエルちゃん触れるならって思ったのにぃ」
ジル様は私の隣に戻り、椅子に座った。
落ち着いた様子で話し出す。
「トリスタン……俺はもうお前に協力しない」
「……え?」
トリスタン様はポカンとする。
「もう俺の身体は金輪際触らせないし、見せない」
「え……え?」
トリスタン様が焦っている。
「俺が今まで協力して作った作品を壊す。お前のアトリエにあるやつも、王宮に設置してあるやつも、全部だ」
「に、兄さん、嘘だよね?」
ジル様はニヤリと笑う。
「嘘じゃない。
俺にはそれが出来ると知っているだろう? それとも、もう何年も彫刻刀しか持ってないお前に止められるのか?」
「そ、それは……」
「無理だろうな。
マリエルに触るということは、俺にお前の全てである作品を壊されることだと思え。マリエルに手を出せば、容赦しない」
トリスタン様の顔からは血の気が引いている。
「そ、そんな……!! 僕の可愛い子たちが……!!
父さん、母さん! なんとか言ってよ!!」
お義父様もお義母様も首を振る。
「トリスタン……今回はジルベルトが正しいわ。
諦めなさい」
「……僕よりも兄さんの意見が優先されるなんて!」
ショックを受けている様子のトリスタン様にジル様は追い討ちをかける。
「トリスタン。さっき言ったことは冗談じゃない。今後、マリエルに指一本触れたら、本気で壊すからな。マリエルを元に作品を作ることも許さない」
トリスタン様はガクッと、肩を落とした。
「………分かった」
こうしてトリスタン様が私に彫刻のモデルをお願いすることは無くなった。
しかし、後日。
「兄さん、ごめん! もうしないよぉ!!
だから止めてぇぇー!!」
挨拶の最後で、私と握手した時に感じたインスピレーションで、私の像を作っていたことがバレたトリスタン様は、容赦なく作成途中の像を破壊されることとなった。
「これからは定期的にトリスタンのアトリエを確認することにしないとな」
ジル様は、ものすごく良い笑顔で私に言った。
私は壊れた像を抱きながら泣くトリスタン様を見て、苦笑しながらそれを聞いたのだった。
「うわぁ……素敵……!」
そこは本当に私好みの可愛らしさを残しながらも、上品に纏められた部屋だった。私の実家の部屋によく似ているが、どの家具もより上質な物が使われていることが一目で分かる。壁紙も私が好きなモチーフが使われている。副団長と兄様にアドバイスを貰ったとは言ってたけど……これはすごい。
「気に入ってくれたか?」
そう言いながら、ジル様は扉を閉めると、後ろから私の腰に手を回し、抱きしめる。私は顔をジル様に向けて、微笑んだ。
「はい! もちろん! 本当にありがとうございます!
私の好みがすごく反映されてて、びっくりしました。壁紙も大好きなモチーフだし、家具も好みにぴったり!
……あっ! でもこの椅子だけは私が実家で使ってた物と同じです。座り心地と独特なデザインが気に入ってて……」
「あぁ! それはフィリップから聞いたんだ。この椅子が大好きで、ずっと使い続けていると。でも、もう、どこにも売ってないと聞いてな。どんな物か聞いたんだが、上手く説明が出来ないと言うので、直接見せてもらってーー」
「え? 直接見せてもらった……?
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「い、いや……悪いとは思ったんだが、フィリップもご両親も別に構わないと言うので……」
私が尚もじーっと見つめると、ジル様は小さく唸り、謝った。
「……勝手に入って、すまない」
「私の部屋、見ただけですか?」
「……少しの間、部屋に一人にしてもらった」
「私の部屋で何しました?」
「な、何もしてない!! あまりあれこれ触るのも悪いと思って、椅子に座って観察させてもらっただけだ!」
「本当に?」
私が疑いの目を向けると、ジル様はしっかりと頷いた。
「……ほ、本当だ」
「ふーん。ジル様ならベッドに寝っ転がって、私を思い出しながら一人で慰めるくらいするかと思ったのに」
私がそう言って、背を向けると、ジル様は私の肩を掴んで、振り向かせた。
「そんなことはしない!! ベッドには横になったが、枕を抱きしめて、匂いを確認したくらいだ!」
「やっぱり見ただけじゃなかった。
……ジル様の変態」
ジル様は言葉も出ないようだ。
……ふふっ。面白い。別にあんまり帰ってない実家の部屋を見られたって、構わない。だけど、やっぱり自分の知らないうちに部屋に入られるのは良い気分ではないので、少し意地悪をしてみたのだった。
それにしても、ジル様は他の人には平気で嘘をつけるのに、私に嘘をつくのが下手よね……。私には正直でいたいってことなのかな……なんて、考えていた。
ジル様は怒られた子供のようにシュンとしている。
可愛い。
「……す、すまなかった」
ちょっといじめ過ぎちゃったかな。私は少し反省して、ジル様にギュッと抱きついた。
「へへ。ちょっと悪戯が過ぎましたね。そんなに怒ってないですよ。あんまり帰ってない部屋だし、綺麗にもしてたから、全然平気です」
私はそう言うと、ジル様に笑いかけた。
ジル様はホッとしたように微笑んだ。
「良かった……
マリエルに嫌われたら生きていけない」
「また大袈裟な」
「大袈裟なんかじゃない。真実だ」
ジル様は私の頭に頬を擦り付けるようにする。
「ふふっ。でも、私も同じです。ジル様に嫌われたら生きていけない。」
私もジル様の胸に頬を擦り付ける。
「俺がマリエルを嫌うことなどあるはずない」
「じゃあ、私がジル様を嫌うこともあるはずないと信じてください」
私がじっと見つめると、ジル様はフッと笑い、微笑んだ。
「そうだな」
そして、私にキスを落とした。
ゆっくりと、じっとりと、私を味わうようなキスだった。私の歯列を確かめるように舌が這ったと思ったら、より深く舌を差し込むと口内をぐるりと舐めた。
「ふぁ……ぁん。」
「……俺らの寝室も確認してみるか?」
「……うん」
熱くなった顔のまま小さくコクリと頷くと、ジル様は私を軽々と抱き上げ、部屋の奥にあるもう一つの扉を開いた。
そこには三、四人なら平気で寝れるような天蓋付きの大きなベッドが置いてあった。
……ここで……ジル様と一緒に……
ジル様は私をそこに優しく降ろすと、トンと私を押し倒した。
「ここが俺とマリエルの愛の巣……だな」
ジル様が私の首筋を舐める。
「はぁ……ん」
舌はどんどんと下がっていき、胸の谷間へ到着した。
「少し見えるこの柔らかそうな双丘を今日ずっと食べたいと思っていた」
そう言って、ドレスを少しずらした。乳首が露になる。ジル様はチュウと、乳首に優しく吸いつかれる。
「ぁんっ……ジル様、だめだよぉ……っ!
今日は、ごあいさつに、きたのにぃ……」
今度は舌先で器用に乳輪を舐める。反対側は大きく揉みしだかれ、時折思い出したように乳首を弾く。
「また後でゆっくり話せば良い。
今は休憩時間だ」
「でも、ドレスがぁ……」
「侍女を呼べば良いだろう」
ジル様は尚も乳房を可愛がる。どんどんと身体中に快感が広がって、子宮がキュンキュンする。
「ほんとにだめだってばぁ……っ!」
「そうか……? じゃあ、こっちに聞いてみるか」
ジル様はドレスの裾から手を入れ、重いドレスを持ち上げ、下着に触れようとした。
私の蜜口が触れてもらえる悦びに愛液を滲ませた時、コンコンコンとジル様の部屋の方から扉をノックする音がした。
初めジル様は無視したが、ノックする音は止まないどころか、急かすように激しく叩かれる。
「……くそっ!誰だ!?
……ここでマリエルは待ってろ」
そう言うと、ジル様は寝室を出て行く。
そこで、ふと我に返った。
……ご挨拶に来てるのに何やってるんだ、私は。
急いで、衣服の乱れを整えていく。
それと同時に触ってもらえなかった蜜壺が疼いているのが分かる。駄目なのに、私の身体はジル様が与えてくれる快感を期待してしまっていた。
「うー……だめだぁ……」
一人、熱くなった顔を両手で隠す。
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……何かあったのかな?
気になった私はジル様の部屋に続く扉を少し開け、中を伺ってみた。そこには金髪で、ジル様と同じコバルトブルーの瞳をした美丈夫が立っていた。
「あ! 出てきた!!」
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「おいっ! トリスタン!!」
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トリスタン……?
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.…いいね、すごくいい。
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二人で何してたの?」
トリスタン様はにっこりと笑う。
私は恥ずかしくなって、思わず下を向く。
ジル様は厳しい声で言う。
「お前には関係ない。
トリスタン。俺はいいが、マリエルは駄目だ。
興味を持つな。」
トリスタン様は声を出して、笑う。
「マリエルちゃんって言うんだね。
無理だよ、兄さん。
こういうのはインスピレーションなんだ!
もうその子を暴きたくて仕方ない!!
ねぇ、とりあえず一日だけでいいから、貸してくれない?」
さ、さっきから何を言っているの?!
インスピレーション?
暴きたい? 貸してくれ?
しかも、ジル様は俺はいいけど……って言ってた……。
どういうことなの?!
もう私は軽くパニックだった。
「ふざけるな!! 今まで身内だと思って協力してやったが、マリエルだけは駄目だ。指一本触れさせない!」
「兄さんのケチ! 別にいいじゃないか! 寝取るわけでもあるまいし!! より美しく僕の手で生まれ変わるんだよ? 素晴らしいことなんだよ?
ね? マリエルちゃん、いいよね?」
何のことだかさっぱり分からない私は、ギュッとジル様の背中にしがみ付く。もう何がなんだか……!
その時、扉が開き、お義父様とお義母様が入って来た。
「トリスタン! 邪魔するなって言っただろう!」
「そうよ、トリスタン!
マリエルちゃんが怖がってるじゃない!!」
「えー? 父さんと母さんまで兄さんの味方なの?」
ジル様はひどく怖い顔で、トリスタン様を睨んでいる。トリスタン様は気にも留めず、平気な顔をしている。
「とりあえずこの部屋から出て行け。
……話は応接間でしよう」
「もう仕方ないなぁ」
そう言って、トリスタン様もご両親も一旦出て行った。それを確認したジル様は大きくため息を吐き、私の方に向き直ると、「ごめんな」と謝って、ぎゅっと抱きしめてくれた。
◆◇◆
応接間に全員が集まる。
ジル様はトリスタン様を睨みつけ、トリスタン様はニコニコと私を見ている。……なんだかこわい。大型動物に狙われる小動物の気分だ。
結論から言うと、トリスタン様は彫刻家であった。私は芸術に疎いので知らなかったのだが、今人気の彫刻家らしく、王宮の庭にも作品が飾られるほどの腕前とのことだった。また気に入った人がいれば、その人を元に作品を作ることで有名で、トリスタン様に作品を作って貰いたい人は今や多くいるらしいが、トリスタン様は作りたい人しか彫らないと言っていた。
「マリエルちゃんも彫られたいでしょ?」
「駄目だ。絶対に許さない」
トリスタン様は頬をぷくっと膨らませる。
「僕は兄さんじゃなくて、マリエルちゃんに聞いてるのー!」
「い、いえ、私は……結構です」
なんかこの独特なノリが苦手だし、何をされるか分からなくて怖い。
「えー! でも、マリエルちゃん、今までにないモデルなんだよ! 僕、すごい刺激されちゃって!
ねぇ、すごいの作るよ?
マリエルちゃんの美しさも可愛さも、その滲み出るエロスも表現してあげられる!」
滲み出るエロス?! なんなの、それ……。
もう絶対お断りしよう。
「ほ、本当に結構ですから……!」
お義父様も私に加勢してくれる。
「ほら、トリスタン、マリエルさんもこう言ってることだし、無理強いは良くない。今回は諦めなさい」
「んー、ちょっと触るだけでも駄目? 腕と脚のラインを確認させてもらうだけで我慢する!」
トリスタン様は私におねだりするように、上目遣いでこちらを見た。……トリスタン様は自分の美貌を理解しているんだろう、普通の御令嬢ならコロっと騙されてしまいそうだ。
もちろん私には通用しないけど。
私が否定するよりも先にジル様が断った。
「駄目に決まっているだろう! お前にはマリエルに指一本触れさせない。なんでも自分の思い通りになると思うなよ」
ジル様がトリスタン様を睨みつける。怖い。
「うわっ……兄さんってば本気なんだぁ。
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ヘラヘラと笑うトリスタン様にジル様は詰め寄り、襟首を掴む。お義父様もお義母様も立ち上がり、ヒヤヒヤしながら様子を見ている
「トリスタン……!!」
「別に殴ってもいいよ。
殴ったら、マリエルちゃん触らせてね♪」
ジル様はトリスタン様を離した。
「そんなことするか。
そんなのが意味ないことくらい分かってる」
トリスタン様は唇を尖らせる。
「なんだぁ。殴られるくらいで、マリエルちゃん触れるならって思ったのにぃ」
ジル様は私の隣に戻り、椅子に座った。
落ち着いた様子で話し出す。
「トリスタン……俺はもうお前に協力しない」
「……え?」
トリスタン様はポカンとする。
「もう俺の身体は金輪際触らせないし、見せない」
「え……え?」
トリスタン様が焦っている。
「俺が今まで協力して作った作品を壊す。お前のアトリエにあるやつも、王宮に設置してあるやつも、全部だ」
「に、兄さん、嘘だよね?」
ジル様はニヤリと笑う。
「嘘じゃない。
俺にはそれが出来ると知っているだろう? それとも、もう何年も彫刻刀しか持ってないお前に止められるのか?」
「そ、それは……」
「無理だろうな。
マリエルに触るということは、俺にお前の全てである作品を壊されることだと思え。マリエルに手を出せば、容赦しない」
トリスタン様の顔からは血の気が引いている。
「そ、そんな……!! 僕の可愛い子たちが……!!
父さん、母さん! なんとか言ってよ!!」
お義父様もお義母様も首を振る。
「トリスタン……今回はジルベルトが正しいわ。
諦めなさい」
「……僕よりも兄さんの意見が優先されるなんて!」
ショックを受けている様子のトリスタン様にジル様は追い討ちをかける。
「トリスタン。さっき言ったことは冗談じゃない。今後、マリエルに指一本触れたら、本気で壊すからな。マリエルを元に作品を作ることも許さない」
トリスタン様はガクッと、肩を落とした。
「………分かった」
こうしてトリスタン様が私に彫刻のモデルをお願いすることは無くなった。
しかし、後日。
「兄さん、ごめん! もうしないよぉ!!
だから止めてぇぇー!!」
挨拶の最後で、私と握手した時に感じたインスピレーションで、私の像を作っていたことがバレたトリスタン様は、容赦なく作成途中の像を破壊されることとなった。
「これからは定期的にトリスタンのアトリエを確認することにしないとな」
ジル様は、ものすごく良い笑顔で私に言った。
私は壊れた像を抱きながら泣くトリスタン様を見て、苦笑しながらそれを聞いたのだった。
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「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
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ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
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