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第六章
6-7♡
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「アヴィスさま……っ、ん……っ」
彼は口づけをしたまま、ゆっくりと私をベッドに押し倒した。しかし、そのキスは浅くて。もっともっと奥まで挿入ってきてほしいのに、彼は優しく唇を食むばかりで、いつものように口内に侵入してきてくれない。
遊ぶようにチュっ、チュっと軽いキスをしては、楽しむように私を見つめている。
「なんで……いつもみたいなキス、してくれないの……?」
「この幸せな時間をゆっくりと味わっている。もう私を待つ仕事はない。メロディアの照れた顔も、欲しがる顔も、蕩けた顔も余すことなく、この眼に焼き付けたいんだ」
そういえば、私たちはいつもどこか焦りながら、身体を重ねていたような気がする。アヴィス様の気持ちが分からず不安な思いに駆られながら交わった夜、嫌な記憶を上書きするように彼を求めた夜、一緒に生きていくと決めて熱く交わった夜……色んな夜を超えてきたけれど、こんなにも満たされた気持ちで彼の眼差しを受けたことはなかった。
私は、アヴィス様の顔に手を伸ばし、両手で包んだ。
「私も……これからは色んなアヴィス様を見たいです。ゆっくりでもいいから……隅々までアヴィス様を感じさせて」
「あぁ、頭も身体も私でいっぱいにしてやる。ゆっくり、な」
アヴィス様の唇がまた降ってくる。しかし、今度は首筋にキスを落とした。何度も何度もキスを落とされ、ぞくぞくとした気持ち良い予感が身体に広がっていく。彼の顔は徐々に下がっていき、私の谷間まで到着するとドレスを下ろそうとしているのか、胸元に手を掛けた。
「あっ、待って。その……後ろで硬く結んであるから……」
まさか怪我人のアヴィス様とそのまま情事に突入するだなんて思っていなかったから、今は普段着のドレス。このままだと彼が何かと動きにくいだろうと思った私は、先にドレスを脱いでしまおうと思った。なのに、彼はクスっと笑った。
「な、何がおかしいんですか?」
「いや、可愛いと思っただけだ、私に抱かれやすいように提案するメロディアがな」
そんな言い方ずるい! それじゃまるで私がアヴィス様に抱かれたがっているみたいじゃない!
……否定はできないけど、なんだか悔しい。私はぷぅと頬を膨らませて、向きを変えてうつぶせになった。意地悪するアヴィス様には顔を見せてあげないんだから。
「私はただアヴィス様のことを思って、そう言っただけですっ!」
「くくっ、ありがとな。で、今も私が脱がせやすいようにうつぶせになってくれたのか」
「えっ、ちが――……んぅっ」
背中にちりっとした痛みが走る。どうやらまたアヴィス様は背中にもキスマークを付けたらしい。しかも、それだけではなく、背中を温かい舌でレロっと舐めた。
「ひゃ……やらぁ……」
彼は背中をぺろぺろと舐めながら、ドレスの紐を解いていく。紐が緩くなり、ドレスが開かれ、彼に大きく背中を見せるような形になる。
「メロディアは後ろ姿まで綺麗だよな……。パーティーで背中が大きく開いた大胆なドレスを初めて見た時はその美しさに卒倒するかと思った」
背中にまた一つ紅い花が刻まれ、熱い嬌声が枕に吸収された。アヴィス様は淡々と話し続ける。
「真っ白くて、陶器のような滑らかな背中が、シャンデリアの光を浴びて神々しいほどだった。それと同時に華奢な背中がとても妖艶で……こうやって後ろから抱きしめて、胸も可愛がりながら、飽きるほどキスをしたいと思っていた」
そう言いながら、アヴィス様は背中に舌を滑らせ、脇から手を入れ、直接、胸を触った。
「あっ……はぁんっ」
「あの夜、ダンスでこの背中に触れた侯爵家の次男の手を事故に見せかけて使い物にならないようにしてやろうかと思ったほどだよ。本当にあの時は嫉妬で頭が焼き切れそうだった。頼むから、もう二度と私以外の者にこの素肌を触れさせないでくれ……」
切実なその声にどろっとした愛情を感じられて嬉しくなる。知れば知るほど、どれだけアヴィス様に深く愛されているか実感する。
しかも、その夜のことはよく覚えていた。首都で露出の高いドレスが流行ったことがあり、大人っぽい服装をすれば年上のアヴィス様の目を引けるかと思って、思い切って着てみたのだけれど……
やたら人の視線は集めるし、ダンスの時にダンス相手の手が肌に触れて気持ち悪いしで、いいことは全くなかった。肝心のアヴィス様は、目を引けるどころか、いつもより厳しい視線を向けてくるから、二度と背中の開いたドレスは着ないと思っていたのに、彼がそんな風に思ってくれていたなんて……
「あんっ……。もう……アヴィス様としか、踊らない、です……んっ」
「約束するか?」
アヴィス様が懇願するように、指先で私の胸の蕾の周りをすりすりする。
「あっ、それだめぇ……。ぞくぞく、しちゃう……ぅ」
「気持ちいいか聞いているんじゃない。他の奴と踊らないと約束するか聞いている」
そんなことを言いながら、彼は指を止めてくれない。微かな快感が溜まっていって、私の蕾は勃ってしまう。それでも彼は強く刺激はしてくれなくて、私はもどかしさに身体を震わせた。
「おど、らないっ……からっ。あっ……乳首、触ってよう……っ!」
「いい子だ」
彼は口づけをしたまま、ゆっくりと私をベッドに押し倒した。しかし、そのキスは浅くて。もっともっと奥まで挿入ってきてほしいのに、彼は優しく唇を食むばかりで、いつものように口内に侵入してきてくれない。
遊ぶようにチュっ、チュっと軽いキスをしては、楽しむように私を見つめている。
「なんで……いつもみたいなキス、してくれないの……?」
「この幸せな時間をゆっくりと味わっている。もう私を待つ仕事はない。メロディアの照れた顔も、欲しがる顔も、蕩けた顔も余すことなく、この眼に焼き付けたいんだ」
そういえば、私たちはいつもどこか焦りながら、身体を重ねていたような気がする。アヴィス様の気持ちが分からず不安な思いに駆られながら交わった夜、嫌な記憶を上書きするように彼を求めた夜、一緒に生きていくと決めて熱く交わった夜……色んな夜を超えてきたけれど、こんなにも満たされた気持ちで彼の眼差しを受けたことはなかった。
私は、アヴィス様の顔に手を伸ばし、両手で包んだ。
「私も……これからは色んなアヴィス様を見たいです。ゆっくりでもいいから……隅々までアヴィス様を感じさせて」
「あぁ、頭も身体も私でいっぱいにしてやる。ゆっくり、な」
アヴィス様の唇がまた降ってくる。しかし、今度は首筋にキスを落とした。何度も何度もキスを落とされ、ぞくぞくとした気持ち良い予感が身体に広がっていく。彼の顔は徐々に下がっていき、私の谷間まで到着するとドレスを下ろそうとしているのか、胸元に手を掛けた。
「あっ、待って。その……後ろで硬く結んであるから……」
まさか怪我人のアヴィス様とそのまま情事に突入するだなんて思っていなかったから、今は普段着のドレス。このままだと彼が何かと動きにくいだろうと思った私は、先にドレスを脱いでしまおうと思った。なのに、彼はクスっと笑った。
「な、何がおかしいんですか?」
「いや、可愛いと思っただけだ、私に抱かれやすいように提案するメロディアがな」
そんな言い方ずるい! それじゃまるで私がアヴィス様に抱かれたがっているみたいじゃない!
……否定はできないけど、なんだか悔しい。私はぷぅと頬を膨らませて、向きを変えてうつぶせになった。意地悪するアヴィス様には顔を見せてあげないんだから。
「私はただアヴィス様のことを思って、そう言っただけですっ!」
「くくっ、ありがとな。で、今も私が脱がせやすいようにうつぶせになってくれたのか」
「えっ、ちが――……んぅっ」
背中にちりっとした痛みが走る。どうやらまたアヴィス様は背中にもキスマークを付けたらしい。しかも、それだけではなく、背中を温かい舌でレロっと舐めた。
「ひゃ……やらぁ……」
彼は背中をぺろぺろと舐めながら、ドレスの紐を解いていく。紐が緩くなり、ドレスが開かれ、彼に大きく背中を見せるような形になる。
「メロディアは後ろ姿まで綺麗だよな……。パーティーで背中が大きく開いた大胆なドレスを初めて見た時はその美しさに卒倒するかと思った」
背中にまた一つ紅い花が刻まれ、熱い嬌声が枕に吸収された。アヴィス様は淡々と話し続ける。
「真っ白くて、陶器のような滑らかな背中が、シャンデリアの光を浴びて神々しいほどだった。それと同時に華奢な背中がとても妖艶で……こうやって後ろから抱きしめて、胸も可愛がりながら、飽きるほどキスをしたいと思っていた」
そう言いながら、アヴィス様は背中に舌を滑らせ、脇から手を入れ、直接、胸を触った。
「あっ……はぁんっ」
「あの夜、ダンスでこの背中に触れた侯爵家の次男の手を事故に見せかけて使い物にならないようにしてやろうかと思ったほどだよ。本当にあの時は嫉妬で頭が焼き切れそうだった。頼むから、もう二度と私以外の者にこの素肌を触れさせないでくれ……」
切実なその声にどろっとした愛情を感じられて嬉しくなる。知れば知るほど、どれだけアヴィス様に深く愛されているか実感する。
しかも、その夜のことはよく覚えていた。首都で露出の高いドレスが流行ったことがあり、大人っぽい服装をすれば年上のアヴィス様の目を引けるかと思って、思い切って着てみたのだけれど……
やたら人の視線は集めるし、ダンスの時にダンス相手の手が肌に触れて気持ち悪いしで、いいことは全くなかった。肝心のアヴィス様は、目を引けるどころか、いつもより厳しい視線を向けてくるから、二度と背中の開いたドレスは着ないと思っていたのに、彼がそんな風に思ってくれていたなんて……
「あんっ……。もう……アヴィス様としか、踊らない、です……んっ」
「約束するか?」
アヴィス様が懇願するように、指先で私の胸の蕾の周りをすりすりする。
「あっ、それだめぇ……。ぞくぞく、しちゃう……ぅ」
「気持ちいいか聞いているんじゃない。他の奴と踊らないと約束するか聞いている」
そんなことを言いながら、彼は指を止めてくれない。微かな快感が溜まっていって、私の蕾は勃ってしまう。それでも彼は強く刺激はしてくれなくて、私はもどかしさに身体を震わせた。
「おど、らないっ……からっ。あっ……乳首、触ってよう……っ!」
「いい子だ」
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