えっちな短編集

はるみさ

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媚薬×初恋

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 「……最悪……っ」

 じんじんと疼く身体を抱えて、カレンはどさっとベッドに倒れ込んだ。なんの刺激も与えられていないというのに、息も浅く、熱くなってくる。

 「う……っ。パーティの初っ端から媚薬を盛るなんて、とんだゲス野郎がいたもんだわ」

 彼女はロープス伯爵家の長女・カレン。
 蜂蜜を溶かしたような輝く金髪に、夕陽を彷彿とさせるオレンジの瞳、メリハリのついた肉感的な身体。彼女は人目を引く派手な容姿のせいで、よく男性に絡まれるだけでなく、下品な罠に狙われることも少なくなかった。

 そのため、パーティ中は自分で選んだものしか口にしないと決めているカレンだったが、今回媚薬が入っていたのは最初の乾杯のグラスだった。ウェイターがランダムに配る上に、最初の一杯なので、このタイミングで誰かが媚薬を入れるなんて考えていなかったのだ。

 「お願いだから……。早く、早く来て……」

 彼女は一口飲んで、媚薬が入っていることに気付いた。そこから毅然と背筋を伸ばし、誰にも悟られぬようこの休憩室まで来たのだが、その前に王宮の使用人にある人への伝言を頼んでおいた。「薔薇園に一番近い休憩室に至急来てほしい」と。

 きっと媚薬を盛った犯人も今頃カレンを探している。いくつかある休憩室の中でも、一番遠い休憩室を選んだから、すぐには見つけられないはず、とカレンは必死に自分を励ました。

 それでも、犯人が先に自分を見つけたら……と思うと、この震える身体でどこまで抵抗できるだろうかとカレンは不安で堪らなかった。人前でほとんど泣くことなんてないのに、今は感情と身体の昂りからか瞳が潤んでしまう。

 その時、部屋の前で誰かの足音が止まった。

 カレンは恐ろしさのあまり、シーツを被り、その身を隠した。身体の震えが止まらない。

 静かに扉が開く。

 その足音の主は、ゆっくりとカレンに向かって歩いた。彼女は必死に息を殺しているつもりだったが、媚薬のせいで静かな室内に熱っぽい吐息が漏れていた。

 「カレンお嬢様……ですか?」

 聞き馴染んだその優しい声にカレンの身体の震えは止まる。握りしめていたシーツを離せば、ゆっくりとシーツが取り払われた。

 「アース様……。おまちして……おりましたわ」

 カレンの前に現れたのはロイロアナ・アース子爵……カレンの想い人その人だった。

 安堵感からボロボロとカレンは涙を流し、彼に抱きついた。

 アースは、いつも勝気な彼女の初めて見る涙に驚きを隠せなかった。それでも、辛いことがあったであろうカレンを慰めようと、優しく彼女を抱きしめ返した。しかしーー

 「……んぅ」

 彼女の初めて聴く艶かしい吐息に危険を感じた彼はバッと身体を離し、ベッドから離れた。

 見れば、カレンの潤んだ瞳はトロンとして、頬は赤い。大きく開いた胸元はじんわりと汗が滲み、まるで花のような甘い香りがアースを誘うように香った。

 「まさか……お嬢様、媚薬を盛られたのですか?」

 コクンとカレンは微笑みながら頷いた。

 媚薬を盛られたというのに笑っていられるなんて、普通の精神状態ではない、とアースは焦った。しかし、眉間に皺を寄せた彼を見て、カレンは少し寂しそうに笑う。

 「もう……限界、なんです。おねがい、アース様、私を抱いて?」

 アースは、カレンから目を離せなかった。子供の頃からずっと見守ってきた彼女と繋がるなんてとんでもないことだとわかっているのに、月明かりが差し込むこの部屋で一人微笑む彼女はまるで月の遣いのように美しかった。

 それでも、アースは唇を強く噛み締め、必死に理性を繋ぎ止めた。少しでも正気が保てるように、彼女を見ないよう目を伏せた。

 「……お嬢様。冗談はいけません。今は媚薬のせいで正常な判断ができなくなっています。迎えの馬車を呼んで来ますので、すぐにお屋敷に帰るべきかとーー」

 その時、プチッと何かを外す音がした。その後も静かな室内には衣擦れの音が響く。そしてーー

 パサっとアースの目の前にドレスが脱ぎ捨てられ、彼は言葉に詰まった。

 アースは顔を上げることができない。そうすれば、下着姿のカレンを目に映してしまうことになる。

 「私を女として見れないのは、わかってます。でも、今回だけ……お願いです。もう身体が熱くて、たまらないんです」

 アースは痛いくらいに拳を握りしめた。

 カレンを女として見れないなど、そんなことはあり得なかった。

 むしろ一線をいつか越えてしまいそうで、彼女のそばにいると常に試されているようだった。

 彼女を女性と認識したのはいつだったか分からないが、気付いたらいつも彼女を見つめていた。少し勝気で、でも根は素直で可愛らしい彼女は年々美しく育っていった。

 今だって許されるならば、今すぐその身体をかき抱き、深く自分を刻みつけたい。一晩中、耳元で彼女への愛を囁きたい。

 しかし、アースにとってそれは許されないことだった。

 カレンはアースの恩人であるロープス伯爵の娘だからだ。命を救ってもらってから、家族のように可愛がってくれた伯爵を裏切りたくはなかった。

 それにカレンはアースより十五も下だ。彼女のことは生まれた時から知っているし、アースの娘でもおかしくない年齢差だ。美しい伯爵令嬢である彼女にはこれから沢山の若く有能な男との出逢いが待っている。自分が縛り付けて良い存在であるはずがない。

 それでも、部屋の中には苦しそうなカレンの熱い吐息が響いていた。少し体勢を変えるだけでもそれさえ刺激になるようで、彼女は小さく声を上げた。辛そうな彼女を助けてあげたかった。

 そう……これは、彼女を助けるため……

 アースはそう自分に言い聞かせる。

 挿入せずとも彼女の欲を発散させれば、少しは症状が軽くなるはず……。アースは彼女への奉仕を決めた。

 自分の理性のたがが外れないよう、大きく息を吸って呼吸を整える。意を決して、顔を上げると、そこには下着だけを身につけたカレンがいた。アースは美しさに息を呑む。

 自分をじっと見つめるアースの視線にカレンは言いようもない悦びを感じていた。今までどんなにアースへ想いを伝えても「それは単なる大人への憧れです」などと誤魔化され、逃げられてきた。

 それなのに、今、アースはその紫の瞳にカレンの身体の隅から隅まで目に焼き付けるように見つめている。いつも兄のように優しく見つめる彼とは違う……その視線は確実に獲物を見つめる熱い雄の視線だった。

 カレンはその視線だけで気持ちよかった。彼を挑発するように脚を開けば、彼の視線はカレンの中央に向けられる。

 既に媚薬の効果もあり、カレンのそこは濡れていた。濡れて下着は秘部に張りつき、彼女の雌の香りはますますアースを逃すまいと強く香った。

 「アース様……きて」

 カレンにそう声をかけられて、アースはハッとした。

 つい、カレンの美しさに目を奪われてしまったが、アースのやることは彼女の欲を発散させること。あくまでも、医療行為としての奉仕だ。アースは自分に強くそれを言い聞かせ、彼女の足元に移動した。

 「アース、様?」

 アースがこれから何をやろうとしているのか、検討がつかないカレンは首を傾げる。

 「カレンお嬢様、少し発散すれば症状も軽くなると思いますので……失礼します」

 アースはそう告げるとカレンの足の間に顔を突っ込んだ。

 「な、なにをっ……ーーああっ!!」

 アースはカレンの陰核を優しく舐めた。しかし、媚薬の効いたカレンの身体にはあまりにも大きく未知な快感だった。

 次から次へと溢れてくる愛液を舐めとるようにアースは、カレンの秘部を丁寧に舐めた。ぷっくり膨らんだ陰核を嬲るように舐められるのが特に好きらしく、カレンはその度に身体を強く震わせた。

 「やっ、あぁんっ! だめぇ、アースさま、そんなとこっ……だめぇ!」

 そう言いながらもカレンは秘部をアースに差し出すかのように腰を上げる。

 それを肯定と捉えたアースはカレンの小さな腰を抱え込み、舌を早く動かした。部屋の中には卑猥な水音が絶えず響く。

 幾度となく細かい波に飲まれていたカレンだが、アースの止まらぬ舌技にとうとう彼女は限界を迎える。

 「ひゃっ、やっ! な、なんかくる……っ!
 ああっ、アースしゃまぁぁあっ!!」

 次の瞬間、プシュッとカレンの秘部から愛液が散った。
 アースは、身体をしならせて、自分の愛撫に溺れる彼女が愛おしくて堪らなかった。ずっと自身のものが痛いほど張り詰めて、彼女の中に挿入りたいと主張していた。

 しかし、これ以上は彼女に触れるつもりはなかった。もう一度彼女に触れたら、もう止めることは出来ない。それこそ彼女が壊れるまで抱いてしまうかもしれない。

 クタッとしているカレンをベッドの上に横たわらせ、シーツを丁寧に掛ける。はぁ……はぁ……とまだ浅い呼吸を繰り返してはいるが初めて深く達したせいだろう。アースは彼女を落ち着かせようと頭を撫でた。

 しかし、カレンは頭を撫でるアースの手を止め、起き上がった。

 「……カレンお嬢様?」

 カレンは先ほどと変わらぬ潤んだ瞳のままで、アースを見つめた。

 おかしい。彼女の手が熱く、心なしか先ほどより呼吸が速くなっている気がする。性欲が落ち着くところが、これじゃまるでーー

 そうアースが思った時には、カレンの小さな唇は彼に押し付けられていた。

 不慣れながらもカレンは必死にアースの唇に自分の唇を押し付けた。

 「ん、ちゅっ……アース、さま、すきっ。ちゅっ、ちゅっ……」

 カレンは火照った身体をアースに押し付けながら、彼にキスを繰り返した。身体に満ちるこの熱をどうしたらいいか分からない。でも、より近くにアースを感じたくて……アースの熱でこの身体を満たしてほしくてカレンは必死だった。

 一方でアースはカレンのされるがままになっていた。

 チュッチュッと小鳥のように自身の唇を求めるカレンが可愛い。

 彼女にこんな風に求められて、断れる男などいるだろうか。
 いや、そんなことを考えるのはもはや意味のないことだ。

 ……彼女がこの一生で求める男は俺だけになるのだから。

 どれだけ若く有能だろうが、関係ない。俺はカレンを、カレンは俺を愛している。二人が繋がるのに……それ以上の理由があるだろうか?

 そう思った瞬間、アースの理性ははち切れた。

 アースはカレンの後頭部に手を回し、お遊びのようなキスを繰り返すカレンに大人のキスを与えた。

 カレンの小さな口内に自分の舌をグッとねじ込み、逃げ惑う彼女の舌を捕食するかのように絡ませた。彼女の唾液はまるで唾液のように甘く、アースの頭も身体も痺れさせた。

 彼女の口内を唇を散々味わい、唇を離すと二人の間にはつぅーっと銀糸がかかる。

 カレンは目をトロンっとさせ、その唇からはどちらのものかわからない唾液が垂れる。

 「ん……アース、しゃまぁ。わたし、とけてしまいそう……」

 「本当にカレン様は可愛いらしいですね」

 アースはクスッと笑った後、カレンをベッドに押し倒し、蜜口に手を伸ばした。

 蜜口はグズグズに濡れそぼっていて、その愛液を塗り広げるようにアースは彼女の陰核を優しく捏ねた。

 カレンは甲高い声を上げながら、アースの指に翻弄される。

 アースは陰核を刺激しながらも、その長い指を蜜口に挿入した。ぐちょぐちょに濡れたそこは、アースの指を難なく飲み込む。入り口こそ狭いもののその膣内は温かく蠢いて、その指を締め付けた。

 この膣内に入ったら……と想像するだけで、アースの先端は濡れた。それでも、まだこの狭さでは挿入れた時に痛みが出てしまうはずだと、念入りにゆっくりと彼女の入り口を広げていく。大切な彼女を傷つけたくはない。

 しかし、カレンにとってはより快感が身体に溜まるばかりで、頭がおかしくなりそうだった。

 「あっ、おなかの、奥が……せつないよぉ……っ。ゆび、だけじゃ……やらぁ」

 「……わかってます。けれど……初めてですから、慣らしてからじゃないと、痛みがーー」

 カレンはスッとアースの頬に手を添えた。

 「アースさまと繋がれるなら……痛くてもいい……。アースさまとなら……どんな痛みだって嬉しいの」

 「カレン、様……」

 切なげに微笑む彼女にアースの胸はぐっと苦しくなった。

 少し前まで子供だった彼女がこんなことを言うなんて、思ってもみなかった。彼女は自分との婚姻が難しいことを知っていながらも、自分を想い続けてくれていたんだと、ようやくアースは気付いた。

 アースは頬に添えられた彼女の手に自分の手を重ね、愛おしそうに彼女の手にちゅっと自らの唇を押し付けた。そして、カレンの美しいオレンジの瞳を見つめ、愛しさの溶けた瞳で愛を乞う。

 「カレン様……貴女の最初で最後の男になることを、お許しいただけますか?」

 カレンは目を大きく見開いた後、その瞳から大粒の涙を流した。

 「……もちろんですわ。アース様しか、欲しくありません」

 アースはカレンの目元にキスをした。目尻から流れるその滴さえ愛おしくてたまらない。

 そして、アースは自身の前をくつろげると、その硬く張り詰めたモノを取り出した。こんなに硬くなるのは初めてで、いかに自分がカレンに魅了されているかを改めて思い知る。

 その陰茎の先をカレンの蜜口にあてると、蜜口はそれを飲み込もうとヒクヒクと吸い付いてくる。それだけでも気持ち良くて、アースは大きく熱い吐息を吐いた。

 「はぁっ……アースさま、もう我慢できません」

 そう言って、カレンはその豊満な身体をくねらせた。

 「私もです。……愛しています、カレン」

 「あ……あぁんっ!!」

 ぐぐぐっとアースがその反り返った陰茎をカレンに突き刺す。入り口こそきついものの、膣内は嬉々としてアースのモノを締め付けた。

 カレンが想像していたような痛みなどなく、身体を支配するのはアースの陰茎によってもたらされた快感と、アースと繋がれた喜びだけだった。

 アースはじっとカレンの奥まで突き刺し、自身のモノがカレンに馴染むのを待ったが、カレンはそんなことも露知らず、アースの下でより大きな快感を求めて、身体を捩った。

 「くっ……カレン、そんなに誘惑しないでください」

 「あっ、もぉっ、我慢できないのぉ。アース様の、いっぱいズボズボしてよぉ!」

 「……もう手加減できないですからね……っ」

 アースは若く滑らかな身体を抱きしめ、本能のままに腰を振った。

 「あっ、はぁっ! んぅ、アースしゃまぁ!!」

 「カレン……っ! あぁ、想像していたよりも……ずっと、悦くて……溺れてしまいそうですっ」

 「ひゃっ、あっ、わたし……っ、わたしも、れすぅ!!」

 アースとカレンは、また一つ濃厚なキスをする。カレンの口内も、膣内も、頭の中も……全てがアースに支配されていて、もう離れることはできないとカレンは悟った。

 熱い熱い二人の身体は一つになって溶けてしまいそうだと、頭の隅でアースは思う。そして、そうなれたらどんなに幸せだろう、とも。

 「ひゃあんっ!! あっ、はぁんっ! 気持ちいいよぉっ」

 アースが奥を思いきり突き上げると、カレンはより甲高く啼いた。その度に頭が痺れるような快感に何度も支配され、身体を震わせる。

 「カレンは……っ、奥が好きなんですね」

 ズンズンと奥を重点的に責めれば、彼女の口から漏れるのはもはや嬌声だけだった。

 カレンは何度も細かく達しているが、アースは一向に止まる気配がない。もう快感で全身が沸騰しそうだった。

 「あっ、はぁっ! やっ、らっ、らめぇっ!!」

 「う……すごい締め付けです……っ。あぁ……っ、カレンっ!」

 「あぁあっ、またイくぅっ!!」

 二人は同時に果てた。

 カレンの子宮の中には、溢れんばかりのアースの子種が吐き出され、その温かさは彼女の心を満たした。

 クタッとした彼女の額にアースはキスを落とすと、優しく優しくその頭を撫でた。二人で目を合わせれば、その間には確かに愛情が溶けていて、どちらからともなくキスをする。

 「……アース様、大好き」

 「私もですよ、カレン。もう……貴女を誰かに譲るなんて考えられない」

 「……責任を、取ろうとしてるんですか?」

 トロンとした瞳で、カレンはアースに尋ねる。その奥には僅かな不安が揺れていた。しかし、それをアースは否定した。

 「まさか。……ずっとカレンを一人の女性として愛していました。ただ若く美しい貴女を私が縛っていいのか自信がなかった……」

 「アース様……」

 カレンの不安を溶かすようにアースはその瞳をしっかりと見つめて、笑いかけた。

 「でも、ようやく気付きました。私はカレンしか愛せないのだと。それに、カレンも私しか愛せない……そうでしょう?」

 「……っ! もちろんですっ! 私にはアース様だけですわ!」

 カレンはアースの首に腕を回し、キスをした。先ほどアースがしてくれたように、今度はカレンがアースの口内に舌を挿入れ、たどたどしくもくすぐるようにアースの舌に絡ませる。

 「あっ、カレン……っ。そんなに可愛いことをしては、また……」

 カレンにはアースが何を言いたいか分かっていた。キスの最中に挿入れたままの陰茎がまた硬くなったから。

 カレンはニコッと笑ってーー

 「アース様、私は朝までだって……ね?」

 「……悪い女性ひとですね、まだパーティは始まったばかりだというのに、こんなところで情事に耽るなんて。でもーー」

 「あぁっ!」

 再び硬度を取り戻した陰茎を奥深く差し込み、カレンの弱いところをぐりぐりと刺激する。先程はあまり堪能できなかった胸にも手を伸ばし、指を沈み込ませる。

 「私も悪い大人ですから。今晩は二人でこのまま……」

 「あぁ……アース様……」

 こうして、二人の嬌声はバラ園の闇に溶けていった。

   ◆ ◇ ◆

 後日、アースとカレンの婚約は無事に成立した。

 アースの予想に反して、ロープス伯爵から大きな反対はなかった。伯爵は、娘のカレンの気持ちにも、アースの気持ちにも気付いていたのだ。「君じゃないとカレンは幸せになれないからな」と、少し切なそうに微笑んだ。

 そして、カレンに媚薬を盛った者は……

 「陛下。この者たちは、陛下主催のパーティで品位を落とす行動をしました。裏は私が全て取っております。是非厳正な処分を」

 「……この者の王都への出入りを今後一切禁止する。また、一段階の降爵とし、一部領地も剥奪する」

 「そ、そんな……陛下! どうか、どうかご慈悲をっ!!」

 「相手が悪かったな。下がれ」

 「へ、陛下!!」

 媚薬を盛った者はズルズルと引き摺られ、謁見室から退場した。
 もう社交界で活動できない彼は、まともな婚姻は望めないだろう。

 陛下はふぅっと背もたれに身体を預ける。

 「お疲れ様でございました。素晴らしい判断だったかと」

 「ああやって言うしかないだろう。厳正な処分をしなければ、お前が側近を辞めると言うのだから」

 「陛下なら正しい判断を下してくれると思っておりましたので」

 非常に優秀なアースは、今や陛下の最側近であった。そんな彼がカレンを害そうとした者を野放しにしているはずがなかったのだ。

 「まったく……お前に愛されるカレン嬢も大変だな」

 「ふっ。そうかもしれませんね」

 アースは、そう言いながら今日も自身の下で乱れるであろう彼女の姿を想像して、密かに微笑んだのだった。

 
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