呪われ侍女の逆後宮

はるみさ

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27.覚醒

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 しかし、いつまで経っても、覚悟したはずの痛みは訪れなかった。

 代わりに私の首元にポツリと水滴が落ちる。

 上を見上げると、剣を高く掲げたまま止まったアレス様が泣いていた。

 「良かった……クレ、ア……」

 アレス様はそう呟くと、うっすらと微笑んだまま、横に倒れていく。まるでスローモーションのように倒れる彼の脇腹からは大量の血が流れていた。

 そして……その脇腹を斬った剣の先にいたのは、ルゥ君だった。
 ルゥ君は私を助けようとアレス様を……

 「アレス様っ!!!」

 私は急いでアレス様に駆け寄った。脇腹から出る血は、一向に止まる気配はなくて、どうしたらいいか分からない。なんとか血を止めようと脇腹に手を添えるが、ただ手や洋服が赤く染まるばかりだった。
 こんなにたくさん血が出ているのなんて、見たことがない。

 このままじゃアレス様がーー

 目の前に迫った愛する人の死は、自分が死ぬよりもずっとずっと恐ろしかった。

 「アレス様っ、アレス様!!」

 アレス様はゆっくりと手を伸ばし、私の頬に手を当てる。

 「ごめ……ん。クレア、を……危険な、目に……」

 「そんなのいい! 喋らないでっ!! 血が……
 血が止まらないのっ!!」

 涙で前が見えない。なんとかしたいのに、なんともできない自分がもどかしくて、たまらない。

 私の後ろでは、ルゥ君が泣いていた。

 「だん、ちょう……っ」

 私が何も考えずに行動したせいでルゥ君に酷いことをさせてしまった。あんなにアレス様を慕ってたルゥ君にアレス様を斬らせてしまうなんて……
 でも、ルゥ君が動かなかったら、私がきっと斬られていた。
 ルゥ君のその涙からそれがどれだけ辛い判断だったか、伝わってくる。それでも、ルゥ君は私を助けてくれたんだ……

 アレス様は微笑んでルゥ君に語りかける。

 「ルゥ……シャ、泣く……な。……ありが、と……な。
 止めて…………くれ、て。……クレ、ア……をーー」

 アレス様の目からフッと光が無くなり、手が力なくパタっと落ちる。嘘……こんなの嘘だ……

 「いや……嫌よ……。アレスさまぁ……っ!!」

 私は彼に覆い被さった。

 アレス様は温かった。だから、死んでるはずない。
 怪我が治ったら、また笑って優しく笑いかけてくれるはず。

 そう思うのに、私の下に血の海は広がっていくばかりで……
 それはじわじわと心まで侵食し、私を絶望の淵に追い詰めていく。

 「誰か……誰か、アレス様を助けてよぉ……!!」

 周りの音なんて、聞こえなかった。
 今は、確かに感じるアレス様の体温にしがみついていたかった。

 その時、泣き声が聞こえた。
 甲高い、私を求めるような、可愛い泣き声が……

 「レティ、シア……」

 私は立ち上がり、隣室まで走った。

 アレス様をレティシアに会わせてあげなきゃ!!
 アレス様だってレティシアを見たら、元気になるはず!!

 私は自分が血だらけであることなど忘れて、レティシアを迎えに行った。扉を勢いよく開けた瞬間、カミラが唖然としていたが、そんなことは気にしていられなかった。

 今はとにかく、レティシアと一緒にアレス様のところに早く戻らなければという考えで、頭がいっぱいだった。

 レティシアを抱いて、私は再びアレス様の横に戻った。
 血に濡れた手でレティシアをアレス様に見せた。

 「アレス様? ほら、レティシアですよ?
 起きてください、レティシアもアレス様の顔を見たくて泣いてるんです。早く、いつもの笑顔を見せてあげてください」

 そうアレス様に話しかける私を、ゼノアが止めようとする。

 「クレア……。団長は、もうーー」

 「早くっ!! アレス様、起きてください!!
 レティシアが……レティシアが泣き止まないじゃない……。
 早く……抱っこして……。お願い……おねがいだからぁ……っ」

 「ごめん……クレア……。
 団長……、ごめん……ごめんなさい……」

 横ではルゥ君がひたすら謝りながら泣いていた。

 「アレスさまぁ……」

 何かを察知したのか、レティシアはそこでスッと泣き止んだ。
 腕の中から出たそうに、手足をバタバタさせている。

 私は彼女をアレス様の顔に近づけてあげた。

 「アレスお父さん、だよ……今、寝ているの」

 レティシアはペチペチとアレス様の顔を叩いているが、アレス様は一向に反応しない。つい昨日までレティシアを見て、あんなに顔を綻ばせていたのに、今は全く反応してくれない。

 本当に……死んでしまったの?

 認めたくない事実が胸の中に広がっていく。

 ……私はなんでいつもこんなに無力なのだろう。いつも守ってもらってばかりで……何一つみんなの役に立てない。

 今回だってルゥ君が私を守ろうとしたから、アレス様が傷ついた。ゼノアだって私を助けに行こうとしたから、目が見えなくなった。

 力さえあれば、こんなことにはならなかったのに……
 私にみんなを助けられる力があればーー

 そう思った瞬間、お腹のあたりがカアっと熱くなる。

 「うっ!!」

 まるで身体の中から燃やされてるようだった。
 熱くて、痛くて、汗が止まらない。

 「「クレアッ!!」」

 ルゥ君とゼノアの焦る声が聞こえる。
 でも、それもどんどんと遠くなる。

 このまま……死ぬのかもしれない。
 朦朧とする意識の中で、そう思った。ならーー

 『どうか、神様……
 私の命をあげますから、アレス様を助けて……
 彼の傷を、癒やして……』

 そう願ったと同時に、眩い光に包まれて、私は意識を失った。


   ◆ ◇ ◆


 小鳥の囀りで、目が覚めた。
 澄んだ歌うようなその美しい鳴き声は、この世のものとは思えなかった。

 私は死んだのだろうか? ここは天国? それとも夢?

 ゆっくりと目を開けた先には、いつもの天井があった。部屋はほんのりと暗いが、カーテンの隙間から差し込む光は暖かく眩しい。

 その時、誰かが私を抱きしめているのに気付く。

 私の横で、眠るその姿を見て、一瞬の息が止まる。胸がドクドクと煩いくらいに動き出す。

 柔らかな髪に指を通し、感触を確かめる。
 その横顔は少し疲れているようには見えるが、変わらず美しい。
 スゥスゥと子供のように寝息を立てている姿は、なんだか可愛らしいし、レティシアによく似てるような気がした。

 「アレス様……」

 愛しい人の名を呼べば、長い睫毛が動き、神秘的な紫色の瞳が露わになった。私を見て、一瞬驚いた表情を見せたものの、すぐに蕩けるような優しい笑顔をくれた。

 私たちは一糸纏わぬ姿で、二人、ベッドで横になっていた。

 「クレア……」

 そうアレス様に呼ばれて、言いようもなく胸が苦しくなる。
 好きで、好きで、この気持ちをどう昇華していいか分からず、私はアレス様に抱きついた。

 あったかくて、気持ちいい。

 私は彼の感触を確かめようと、彼の身体に手を這わせる。
 しっかりとした首から肩……細く見えるけど筋肉で覆われた逞しい背中……柔らかくも引き締まったお尻……

 私がゆっくりとその感触を堪能していると、彼からはくすぐったそうな声が漏れる。それがまた可愛くて、私は嬉々として彼の身体を弄った。

 彼の脇腹を触ってみる。斬られて血が出ていたところは傷の一つもなかった。

 きっとこれは夢ね……いや、もしかしたら天国なのかも。

 でも、アレス様と再び触れ合えることが嬉しくて、私の手はどんどんと彼の中心に侵入していった。

 脇腹を通って、綺麗に割れた腹筋をなぞり、少し下へ進むと、もう大きく主張する彼の陰茎があった。

 人差し指でくるくると先っぽを刺激すると、すぐにアレス様は露を溢れさせた。それを亀頭に塗りつける。それだけなのに、彼からは「ん……っ」と艶やかな声が漏れる。

 私はうっとりと彼の表情を確認しながら、陰茎を弄った。軽く握って、上下に扱けば、彼は苦しそうに嬉しそうに顔を歪ませた。
 彼は私に触ることもせず、されるがままだ。

 私は身体をくっつけ、乳首を彼に擦り付けた。
 それだけでピリピリと甘い快感が走る。

 蕩ける視線を絡ませれば、もっと彼が欲しくてたまらなくなる。

 私が舌を差し出すと、彼も舌を出して、それを互いに舐め合った。キスが深くなり、少し乾いた私の口内を彼の唾液が潤していく。

 全く触られていないのに、私の身体はもう準備万端だった。
 お腹の奥がキュンとして、すぐにでもアレス様の陰茎でいっぱいにしてほしい。

 私は陰茎を握る手を離し、彼に強く抱きついた。

 「奥まで欲しいの……
 私の中、アレス様の子種で染め上げて……」

 「……っ! クレア……!!」

 アレス様は掛けていたものを取り払い、私に覆い被さった。
 大きく私の足を割り広げる。

 私のだらしなく愛液を垂れ流す蜜口は、水音を立てて、ぱっくりと開いた。私はそこに指を添えて、アレス様に奥まで見せつけた。

 「ここ……全部、アレス様のにして……?」

 「くっ……!!」

 ずりゅん……っ

 抵抗もなく、私の蜜口はアレス様の陰茎を嬉々として迎え入れた。幾度となく、彼の陰茎を飲み込んだそこは、悦びで震えていた。

 中も既に一回出されたのかと思うほど潤っていて、アレス様が奥に陰茎を突き刺すたびに、中から愛液が漏れる。

 アレス様は、私の好きなところを容赦なく攻めた。

 「あっ♡はぁっ♡アレスさま、はげしっ♡♡」

 「クレア! クレア……、好きだっ!!」

 「あんっ♡わたしもぉ♡♡アレスさまっ、好きっ♡♡」

 私の弱いところを弄りながらも、胸や陰核も同時に刺激され、私は快感で頭がチカチカしてくる。

 「あっ♡らめっ♡♡イく♡♡イっちゃうっ♡♡♡」

 「何度でもイって……っ。二人で気持ちよく、なろう?」

 「あっん♡はっ♡はっ♡もっ、イくっ♡
 アレスしゃま♡しゃき♡♡しゅき♡♡はぁぁんっ♡♡♡」

 プシャプシャーーッ

 私は潮を噴いた。

 そこで、いつもの優しいアレス様なら一旦止めてくれるのに、今日は止まってくれなかった。

 「あっ♡やっ♡止まって♡♡おねがい♡♡あぁん♡♡
 はっ♡ひんっ♡ほんとに、やぁら♡♡おか、しくなるぅっ♡♡」

 「だめだ……っ! よすぎて……とまれないっ!」

 「あっ♡はっ♡とけりゅ♡とけちゃうっ♡♡」

 アレス様は私のお尻をグイッと上げて、上から叩きつけるように抽送を繰り返した。子宮が潰れそうなほど奥の奥まで犯されて、今までにないアレス様の激しさに驚くと同時に、こんなにも私を求める可愛い彼に愛おしさが込み上げてくる。

 もう頭も身体も全部がアレス様で満たされていた。

 「クレア、かわいい……っ、すきだ……、あい、してるっ」

 「あっ♡ひっ♡も、らめぇぇえ♡♡♡」

 「クレアがいないと……私は……っ」

 「あんっ♡はっ♡♡あぁーっ♡♡♡」

 「イく……っ!!」

 ビュルビュルビュー……

 そして、胎内に吐き出された子種の熱さに、これは夢じゃないのかもしれないと、頭の片隅で私は思ったのだった。

 
 

 

 

 
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