呪われ侍女の逆後宮

はるみさ

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24.おかえり

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 「クレア嬢!!」

 私は伯爵が制止する声も聞かず、馬車を飛び出した。
 執事のような人にゼノアの部屋はどこだと詰め寄る。彼は伯爵へ目配せをして頷くと、早足で部屋の前まで案内してくれた。

 「こちらがゼノア坊ちゃまのお部屋でございます」

 私はノックもせずに部屋の扉を乱暴に開けた。
 なんたって私はゼノアに怒っていた。今すぐ文句を言ってやらなきゃ気が済まない……!

 バンッと大きな音で開けた扉にゼノアはビクッと身体を震わせた。

 「誰だ?! ノックぐらいしろよ! ……親父か?」

 そう言って、眉間に皺を寄せて、こちらに顔を向ける彼を見つめる。しかし、涙で前が滲んで、うまく見えない。

 言いたいことはたくさんあったはずなのに、ゼノアの顔を見たら、やはり最初に込み上げるのは言いようもない愛おしさで。

 彼の目を横切るようにつけられた三本線の痛々しい傷なんて……私の気持ちが変わる理由になんてならなかった。ただどれだけ痛かっただろう……と思ったら、胸が苦しくて、それが大粒の涙となって床を濡らした。

 「はぁ……こっちは目が見えないんだ。
 ちゃんと名をーー……っ!」

 ドンっ!!

 身体をぶつけるように、その大きな身体に抱きつく。
 私が全力でぶつかっても、その鍛え抜かれた肉体は、びくともしない。私は、恥ずかしげもなく大声で彼に文句を言った。

 「……ばか! ばかゼノア!!」

 「…………クレア……なのか? なんで、ここに?」

 彼の手は困ったように宙に浮いて、いつものように強く私を抱きしめてはくれない……。それが悲しくて、私はより強く腕に力を込めた。

 「ゼノが会いに来てくれないからでしょ!!
 ずっと……ずっと待ってたのに!!」

 「わ……悪かった。でも、こんな顔でどんな顔して、クレアに会いに行けるって言うんだ……会って、わかっただろう?
 もう俺は……目が、見えない」

 ゼノアは、騎士団の任務中に目を負傷したとのことだった。相手は恐ろしい熊のような魔獣で、その鋭い爪で目元を抉るように切り裂いたのだと言う。それからゼノアは騎士団を休んでいるが、治る見込みはないらしかった。

 「俺、心配かけたくなかったんだ……
 それに……もし、クレアに憐れまれたらと思うとーー」

 「酷いっ!! 私がそんな傷一つでゼノのことを憐れむと思ったの?! 私のことをそんな人間だと思ってたの?!」

 「そういうわけじゃない!! ……ただ怖かったんだ。クレアに拒否されるのが」

 「するわけないでしょ!! なんでそうやっていつもいつもかっこつけようとするのよ?! 私はゼノに散々情けなく泣いてるところを見られて、いつもいつも助けられてるのに……

 なんで……なんで、私には心配の一つもさせてくれないのよ……」

 思いきりその胸を叩くが、彼は黙って、されるがままだ。

 「ゼノが……っ、呪いを受けた私を受け入れてくれたように……私だってどんなゼノでも受け入れられる……

 私を最初に助けてくれたのは……貴方、でしょう?」

 「クレア、覚えてたのか……?」

 「思い出したの……。私たち、何度も名前を呼び合って、愛を交わした。私、ずっと貴方が好きだった……

 ゼノ……お願い、私を離さないで。

 目が見えないなら、私がいつも隣にいて、色を、景色をゼノに教えるから……! だから……だから、私のそばにいてよ……」

 私は頭をゼノアの胸に預けた。
 ……ぽつっと頭に一雫、涙が落ちた。

 「いいのか……こんな姿なのに」

 「ゼノは、ゼノだもの。たとえ目が見えなくても……愛してるの。ゼノが……好きで、好きで、たまらないの。

 私、ゼノがいないと……生きていけない。
 ……お願いだから、捨てないでーー」

 「クレア……!」

 ようやく彼は私を抱きしめてくれた。痛いくらいの抱擁だった。

 「俺がクレアを捨てるなんて、そんなことあるはずないっ!!
 でも……目が見えない俺は何もできない。そんな俺がクレアのそばにいていいのか自信がなかったんだ……」

 「何もできないなんて嘘だわ。現に私はゼノがいないと生きられないんだから……。私を愛して、それだけでいいの」

 「俺で……いいのか?」

 私はスッと身体を離して、ゼノアの顔を両手で包んだ。

 「……ゼノじゃなきゃダメなの」

 そう告げて、私はひとつキスを贈った。チュッ……とリップ音が室内に響く。
 ゼノは、開かない両眼から涙を流していた。

 「クレア……愛してる」

 すると、ゼノが私の後頭部を押さえて、貪るようなキスをくれた。私もそれに応えたくて、ゼノの首に腕を回す。

 唇から一緒に溶けてしまいそうな熱い、熱いキス。
 私たちは夢中で互いを求め合った。

 気付けば、私の服は乱れ、胸が露わになり、下着まで取り払われていた。私は座っているゼノを跨ぐような形で座り、抱き合いながら、その温もりを感じていた。

 私が胸を突き出すようにすると、ゼノはそれに吸い付いた。ツンと既に勃ち上がった蕾は、歓喜に震えた。

 「甘い、な」

 「あっ♡んっ♡母乳が、出ちゃうのぉっ♡」

 「そうだったな……。早く、会いたいな。俺の子に」

 そう言ってまた私の蕾に吸い付けば、容赦なくおっぱいを吸っていく。レティシアが飲んでる時には何とも思わないのに、今は信じられないくらい気持ちよくて、私は愛液を滴らせた。

 それにレティシアを「俺の子」と言ってくれたのが、嬉しかった。早くゼノアにレティシアを会わせてあげたい。レティシアがどんな様子か、隣に立って全て伝えてあげよう。それに、抱いてもらおう。姿を見ることが出来なくても、抱きしめて感じるものは多いはずだから……

 ゼノアは母乳が気に入ったのか、とても美味しそうにそれを飲んで、また一段と陰茎を硬くした。私の下にあるそれは私の愛液で、服の上からもうぐっしょりと濡れていた。早く欲しくて、私も愛液を擦り付けるように腰を動かす。

 「はんっ♡んっ♡あぁんっ♡とまんない♡」
 
 腰が止まらない。ゼノアも興奮していた。熱い吐息を吐きながら、変わらず私を求めてくれた。

 蜜口にゼノアの熱を感じ、吸われている蕾の先まで快感が満ち満ちて、私はそれだけでイった。それでも、私もゼノアも止まれなかった。止まりたくなかった。

 性急な手つきでゼノアは、陰茎を取り出すと、私の腰を持った。

 ズププッ!!

 「はぁあんっ♡♡♡」

 蜜口への愛撫も何もない、乱暴な挿入だった。
 なのに、私はまたイって、悦びに身体を震わせた。

 ゼノアは、私を離さないとばかりに強く強く抱きしめて、容赦なく下から突いた。奥を突かれる度に、まるで雷に打たれたかのように全身に快楽が駆け巡り、私をおかしくさせた。

 「あっ♡ひゃん♡あ♡は♡らめっ♡♡ゼノ♡♡♡」

 「クレア、クレア!!」

 「ゼノ♡あっ♡ふぁっ♡♡」

 ゼノアは何度も私の名前を呼んだ。
 私も何度もゼノアの名前を呼んだ。

 それは私たちの初めての交わりを彷彿とさせた。
 まだゼノアはイってないのに、私たちの結合部からは恥ずかしいくらいの愛液が溢れて、部屋中にはぬちゃぬちゃといやらしい水音と、私たちの熱い吐息が響いていた。

 「はっ……っ。やばい、クレア」

 「あっ♡もっ♡わたしっ、なんども♡あぁんっ♡♡」

 「だな……っ。クレア、子宮降りてきてる」

 「ふぇっ♡あっ♡そんなの、わかんにゃいよぉ♡♡」

 ゼノアはフッと笑った。

 「また、ほしいか? 俺の子」

 「うんっ♡あっ♡また♡また産むっ♡
 ゼノアの子、ほしいよぉ♡♡♡」

 私はゼノアの上で跳ねながら、その悦びに胸を震わせた。

 「じゃ、つぎは俺にそっくりな赤髪な……っ?」

 「あっ♡うんっ♡♡あっ♡♡イく、イっちゃう♡♡♡」

 「……っ、受け取れ」

 ビュルビューッ!!

 …………すごかった。すごい勢いと量だった。
 ゼノアは耳元で愛の言葉を囁くと、細かいキスを色んなところに落としていく。ぼうっとする頭でそれを受け入れながら、本当に愛する人のところに戻ってこれたことを私は実感した。


   ◆ ◇ ◆


 それから、四日後。

 私は、アレス様とルゥ君と一緒にレティシアのベッドを囲んでいた。

 「日に日に可愛くなってくね。本当に可愛いな、僕の子」

 「本当だな、私の娘は世界一だ」

 「ふふっ。良かったわね、レティシア」

 その小さな手をつつくと、レティシアは私の指をギュッと掴んだ。……はぁ、可愛すぎてため息が出ちゃう。

 その時、扉がノックされ、カミラから声がかかった。

 「お嬢様、ゼノア様がおかえりになりました」

 「え?! 予定よりも早いじゃない!」

 「クレア!! 団長、ルゥシャも! 戻ったぞ!!」

 私の返事も待たず、無遠慮にゼノアが扉を開ける。
 その隣には伯爵がいた。ゼノアの右手は伯爵の肩にかけられ、伯爵自らがここまで連れてきたことがわかる。

 本当に素敵なお父様だわ……

 「ウォルシュタイン伯爵、ようこそおいでくださいました。

 ……それに、ゼノア。おかえりなさい!」

 「おう! ただいま!」

 ゼノアはニカっと口を開けて笑ってくれた。その笑顔に涙が溢れる。すっかり、いつもゼノアだ……

 私はゼノアに近づき、伯爵に場所を代わってもらった。
 伯爵は穏やかな表情で身を引き、私にゼノアの腕を預けてくれた。

 「クレアさん、ゼノアをよろしくお願いします」

 「はい……! ありがとうございます……!」

 その様子をみんな優しい顔で見守ってくれていた。

 私はゆっくりとゼノアをソファに案内して、座らせる。
 そして、ベッドからレティシアを抱き上げて、彼の隣に戻った。

 「腕を前に出してくれる?」

 ぎこちなく腕を出したゼノアの上にそっと、レティシアを置いて、彼女が落ちないように手を添えた。

 「ゼノア、この子はレティシア。私たちの子よ」

 「……あたたかいな。それに、とても……小さい」

 ゼノアの声は震えているように聞こえた。
 ……きっと悔しいだろう。レティシアの姿をどれだけその瞳に映したかっただろうか。

 私はゼノアにレティシアの様子を伝えようと思ったが、先に口を開いたのはアレス様だった。

 「レティシアの髪色は、私より明るくてルゥシャより暗い茶色だ。ルゥシャと同じ癖っ毛でな、ところどころふわふわと髪がはねてるんだ」

 それにルゥ君も続く。

 「そうそう。それで肌はクレアと同じで真っ白。唇は鮮やかなローズピンクで、小ぶりだよ。そこもクレアにそっくり。耳の形は団長に似てるって本人は言ってるけど、そんな気がするって程度かな」

 ゼノアは微笑みを浮かべてうんうんと頷きながら、二人の説明を聞いていた。私はゼノアの手に自らの手を重ねた。

 「そして、レティシアの瞳の色は、私とゼノの色を混ぜたような色なのよ。光の加減では焦茶色にも見えるけど、部屋の中ではゼノアと同じ黒なの。ゼノアと同じで、大きくて、丸くてとっても綺麗な瞳」

 「……そうか。嬉しいな……」

 ゼノアは少し寂しそうに……でも、とても嬉しそうに笑った。
 
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