呪われ侍女の逆後宮

はるみさ

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12.溶け合う

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 令嬢が去ったのを確認すると、気が抜け、私はよろめいた。
 それをアレス様が支えてくれる。彼は私をすぐさま抱き上げ、スタスタと寝室まで連れていき、ベッドに横たわらせると、濡れたタオルで頬を冷やしてくれた。その間の抗議は全て却下され、私はされるがままだ。

 横たわる私の隣で、アレス様がベッドに腰掛ける。

 「もう……アレス様、大袈裟です。もう頬は痛くないですし……」

 「まだ冷やしておいたほうがいい。腫れたらいけない。
 ……こんなことになって、本当にすまない」

 「そんな! アレス様のせいじゃないです!」

 私はブンブンと首を横に振った。

 「いや、俺がクレアを巻き込んだ。まさか、ルーナが今になって私の所に来るとは思ってなかった。だが……可能性は考慮すべきだった」

 「でも、令嬢は結婚されたってーー」

 「あぁ。私もつい最近知ったんだが、離縁したらしいんだ。どうやら婿入りした男が愛人にのめり込んで逃げ出したらしい」

 「そうだったんですか……」

 「二人の間に子供は居なかった。だから、再婚をすると噂は聞いていたんだ。しかし……その相手候補がまさか自分だとは思わなかった。すっかり彼女は私を見限ったと思ってたから」

 アレス様は俯く。婚約解消したとはいえ、元々は想い合っていた相手だ。腹は立つだろうが、もしかしたら今でも気持ちが残っているかもしれない。
 それに結婚ともなれば、アレス様自身の問題だけではなくなる。
 令嬢は、アレス様のお父様も喜んでいると話していたし……

 アレス様がもしかしたらここを去るのかと思うと、息が苦しくなった。一度止まったはずの涙がじわっと溢れ、目尻から流れた。
 私はそれを隠すようにそっと布団をかぶった。

 寂しくても……私に引き止める権利なんて、ない。

 令嬢が言っていたように、アレス様は責任を感じて私に協力してくれてるだけで、私はアレス様を利用しているだけなんだから……

 「……クレア。顔を見せて」
 そっと布団を捲り、アレス様は私の額にキスを落とした。
 私の潤んだ瞳を見て、アレス様は嬉しそうに目を細める。

 「私のために泣いてくれたのかな?」

 アレス様は目尻から流れた涙を拭ってくれる。

 ……離れたくない。ずっとそばにいてほしい。

 でも、そんなことはできない。
 私はアレス様だけのものになれないから……
 そんな私が彼を縛って良いはずがないもの……

 「……どう、するんですか?」

 私がようやく口を開くと、今度は瞼にそっとキスをくれた。
 
 「さっき『私には愛する人がいる』って言ったでしょ?
 クレア、私はーー」

 聞いちゃダメだ、と頭の中で警鐘が鳴る。
 そんな目で見つめて、言われたら、もう離れられない。

 けれど……
 私はその瞳から逃げられなかった。

 「君を愛してる」

 美しい紫の瞳に囚われて、私は息をするのを忘れた。
 アレス様の手が私の頬を滑る。

 「どんな形でもいい。たとえ一番になれなくても。
 ……ずっと一緒にいたいんだ」

 あぁ……
 この気持ちに真っ直ぐに応えられたら、どんなに幸せだろう。

 「アレス様……。でも、私はーー」

 私の唇にトン……とアレス様の人差し指が置かれる。

 「何も言わないで。ただ私にクレアを愛させてほしい。
 ……いい?」

 私は嬉しくて、切なくて、申し訳なくて……
 涙と共にただ頷いた。

 「ありがとう。クレアが許す限り、私はずっとそばにいる」

 私たちは優しい優しいキスをした。
 ただ「言葉」をもらっただけなのに……
 そのキスは今までのどのキスよりも満たされたものだった。

 アレス様は私に覆い被さると、私の首筋に顔を埋めた。

 「……っ!」

 チュウッと強く吸いつかれ、少しピリッとした痛みが走る。

 胸を揉まれ、服の上から乳首をクリクリと刺激されるが、布が厚く、まるで焦らされているような気分になる。

 いつもならこのままされるがままだっただろう……
 でも、今日はアレス様をちゃんと感じたかった。

 一秒でも早く、その肌に触れ、アレス様を確かめたかった。
 肌を重ねて、言葉にできない分まで、アレス様に伝えたかった。

 ……私も、アレス様が好きです……って。

 「アレス様……、服を脱がせて。
 もっと全身でアレス様を感じたいの……
 二人で境目なんてないくらい、一緒に溶け合いたい」

 「私もおんなじ気持ちだ」

 アレス様は、一枚一枚、私の肌を優しく愛撫しながら、脱がしていく。

 「はぁ……♡ん♡アレスさまぁ……♡」

 アレス様の指先が私をほどいていく。
 優しいその手つきからは、アレス様の気持ちがじんわりと伝わってきて……確実に私の中を染めていった。

 いつの間にか私もアレス様も生まれたままの姿となっていた。

 肌を合わせ、相手の熱を感じる。アレス様の身体はとても熱くて、それが私に興奮している証拠のようで嬉しい。

 何度も何度も口付けを交わした。

 上顎をくすぐられるように舐められ、体を捩れば、逃がさないとばかりに強く腰を掴まれる。押し付けられた身体からはアレス様の陰茎が痛いくらいに張り詰めているのが分かった。

 その時、あの本の挿絵と「これやって欲しいなぁ」と言っていたアレス様の声が頭によぎった。

 ……私に出来ることなら……なんだってしてあげたい……

 私はアレス様の右肩を押して仰向けにさせた。

 「……クレア?」

 アレス様は不思議そうな顔をする。
 本当は恥ずかしくて堪らない……

 でも、私がアレス様にあげられるものがあるなら、してあげたいと思ってしまったのだ。

 「アレス、様……舐め……合いますか?
 ………本に、書いてあったーー」

 アレス様は目を見開く。

 「クレア、聞いてたの?」

 私はコクンと頷いた。

 「そっか……恥ずかしいこと知られちゃったな。
 確かにしたいとは言ったけど、いいんだよ、無理しなくて。
 ふふっ、顔が真っ赤だ。恥ずかしいでしょう?」

 「アレス様がしたいなら……私も、したい……」

 アレス様に喜んで欲しいもの……
 私は鍛えられた胸に頬を擦り付けた。

 「あぁ……本当にクレアはどこまで私をおかしくさせるつもりなの? そんなこと言われたら、我慢できなくなるよ?」

 「我慢……しないで? アレス様がしたいこと……全部して?」

 「……分かった。
 クレア、私の顔を跨ぐように膝をついて」

 「……うん」

 私は身体の向きを変え、アレス様の顔を跨いだ。

 「そのまま腰を落として……そう。
 上半身は私の身体に重ねるようにして……」

 私の眼前には、アレス様の陰茎が天を向いてピクピクと動いていた。先っぽには雫がぷくっと溢れていた。

 「すごいよ、クレア……」

 「……んぅ♡」

 アレス様がそう話すだけで蜜口に息がかかって微かな刺激になる。舌を伸ばせば触れられる距離に自ら蜜口を差し出している状況にとんでもない羞恥と……どこか気持ち良さを感じていた。

 「今にも愛液が垂れてきそうだよ。
 ヒクヒクして……あぁ、すごく興奮しているんだね。
 クリも真っ赤でツンって勃ってる。もう剥かなくても顔を出してきちゃって……まるで舐めてって言ってるみたい」

 アレス様が私の様子を話すのを聞いて、恥ずかしいのに……やけに興奮している自分がいた。奥からまた愛液が溢れ出す。

 「ぁ……はぁ♡」

 「前から思ってたけど……真面目なのに、ここはこんなにツルツルとか、エロすぎるんだけど」

 この国では陰毛の処理をする人はまずいない。性産業に携わる人間か、パートナーがそういう趣味を持った場合だけだ。

 そんな中で私の陰部に毛がないのは、王妃様の影響だ。陛下のために毛を処理したいと言い出した王妃様に言われ、除毛薬を手に入れたことがあった。しかし、王妃様が不安だと言うので、事前に私が使い、安全性を確かめたのだ。
 ……その時はこんなところを誰かに見られることがあるなんて、微塵も想像していなかったから。
 
 「そ、それは……王妃様の使う薬を事前に試したから……
 こういうことをするためじゃ……っ、ひゃっ♡」

 「そっか。じゃあ、王妃様に感謝しなきゃね。お陰で私は隅から隅までクレアのおまんこを直接味わえる」

 アレス様は秘芽を掠めるように周りからチロチロと舐めていく。
 その微かな刺激だけでも、嬌声が止まらない。

 「あ、はぁっ♡あっ♡あっ♡」

 いつものように湯浴みの後じゃないからきっと多少匂いもあるはずなのに、アレス様はそんなのは気にならないようで、まさに言葉の通り、隅々まで舌先を伸ばし、私を味わった。

 「ん♡アレスさまぁ……♡ふっ……はぁ♡」

 「ふふっ♡美味しい……♡クレアも気持ちよさそうだね。
 ……でも、私も気持ちよくして欲しいな」

 「ご、ごめんなさい……! 私ばっかり気持ちよくて……。
 ….舐め、ますね?」

 「あぁ……」

 私は、アレス様の陰茎に舌を伸ばす。
 ぷくっと血管が浮き出ている……凶暴なそれを優しく優しく舐めていく。カリのところも余すことなくゆっくり丁寧に……

 「ん……気持ちいいよ……。じゃあ、私も再開だ」

 アレス様は私の秘芽を再び責め始めた。

 「んっ♡やっ……舐められると上手くできないぃ……♡」

 「だーめ♡私は舐め合いたいんだから、頑張って」

 「ひゃっ♡わ、わかったからっ……少し、ゆっくりにしてぇ♡」

 アレス様は、ゆっくり……ねっとりと私の蜜口を舐める。
 それでも腰が空いてしまうほどの気持ち良さだが、何とか私も陰茎への愛撫を再開した。

 口に唾液を溜めて、アレス様の陰茎を口に含む。

 ぴちゃぴちゃ……
 じゅぼじゅぼ……

 互いの性器を舐め合う音が静かな室内に響く。
 その音は私の耳を犯し、正常な思考を奪っていく。

 「……っう」

 「んっ♡ふぁ……っ♡♡」

 時々気持ち良すぎて、私の口が疎かになる。
 すると、アレス様は催促をするように、私の秘芽にキスをするのだ。それがなんだか愛おしくて、一緒に気持ちよくなりたくて……私は必死に口を動かし続けた。

 しかし、アレス様が私の腿を抱えて、激しく蜜口を啜り始めたら、なす術もなかった。

 「やっ……らめっ♡はげしっ、あっ、やぁ♡♡
 舐め、られないよぉ….っは♡♡」

 それでも、アレス様は止まってくれなかった。

 「あっ……あっ……♡イく……っ♡♡♡」

 私は身体を大きく震わせた後に、アレス様の上に倒れ込んだ。目の前には大きく張り詰めた陰茎がある。

 ……私も気持ちよく、しなきゃ……と思い、手を伸ばすが、アレス様は身体をずらすと今度は私に覆い被さってきた。性急に激しいキスを与えられる。

 「んっ……はぁっ♡
 アレスさま……私、ちゃんとイかせてあげられてないーー」

 「ごめん。私がもう我慢できない。もっと深いところで繋がりたい……クレアのこの真っ白なお腹に私の子種を注ぎたい」

 アレス様は私の下腹部に優しく手を添える。
 嬉しい……余裕なく私を求めてくるアレス様が堪らなく愛おしい。

 「うん……たくさん注いで♡」

 「クレア……」

 ぬちゅ……

 私たちの性器が触れ合った瞬間、生々しく水音が響く。

 アレス様はゆっくり……まるで陰茎の形を私の膣壁に覚え込ませるように徐々に挿し入れていく。

 それはいつもより大きくて、いつもより気持ちよくて……

 「アレス……さまぁ♡はぁ……♡」

 アレス様は、私を味わうようにねっとりと首筋を舐める。
 その間も陰茎はゆっくり進んでいき、私は焦らされているようなのに、身体に甘い快感がじわじわと広がっていくのを感じていた。

 コツン……

 私の感触をゆっくり確かめながら進んだ陰茎は、最奥に辿り着いた。アレス様は額に汗を滲ませながら、私に蕩けるような笑顔をくれた。

 「クレア、好きだよ……。大好きだ」

 ……胸がキュウっとなる。

 アレス様のこの笑顔で、この言葉を贈られて、堕ちない人など居ないだろう。

 アレス様の手が私の手に重なる。
 私達は指を絡ませ、強く強く手を握りあった。

 アレス様が奥をトントンと刺激する。その度に頭がチカチカして、真っ白になる。

 「はぁっん♡あっ♡アレスさまっ……♡
 私も……っ、んっ♡あ♡わたしも同じ……だからぁっ♡♡」

 「あぁ……分かってるっ。んっ……それだけで十分だ」

 手を繋いで、甘い甘いキスをして、最奥で繋がって……
 身体が燃えるように熱くて、気持ちよくて、まるでアレス様の一部になったようで、幸せだ、と思った。

 私は気づいたら泣いていた。

 感じ過ぎて泣いたのか……
 アレス様の気持ちが嬉しくて泣いたのか……
 堂々とその気持ちを返せなくて泣いたのか……

 自分でも分からなかった。

 でも、今はただただアレス様を感じたかった。

 ぱちゅんぱちゅんぱちゅん……!

 「アレスさまっ、気持ちいっ♡♡あっ、はぁん♡♡
 すごいっ♡アレス様のっ、おっきいの奥までっ♡きてるぅ♡♡」

 「あぁ、クレアのぐちょぐちょまんこが……
 きゅうきゅう締まって、気持ちいいからだよっ♡」

 「おくっ……あんっ♡奥に、いっぱい……ほしいっ♡あんっ♡♡」

 「もちろん……っ!ぜんぶ、ぜんぶ……
 私ので真っ白に染め上げて、種付けしてあげるっ!」

 「してぇ♡♡アレス様のっ、せーえきっ♡
 いっぱい……っ、ビュッビュッしてっ♡♡種付けしてぇ♡♡♡」

 「クレアッ!」

 ドピューーーッ。

 「……んーっ♡♡♡」

 名前を呼ばれ、アレス様に唇を塞がれる。
 と同時に、お腹が熱くなり、その衝撃とともに私もイった。

 ぴちゃぴちゃと口内を舐め合い、舌を擦り合わせると、アレス様はゆっくりと唇を離した。

 コツンと額を合わせて、私の瞳を見つめる。
 紫色のその瞳は本当に美しくて、少し濡れていた。

 「クレア……愛してる。
 こんなに誰かを愛しく想ったことなんてない。
 だからこそ……君を失うのがこわい……」

 私は精液で命を繋ぐだけの弱い存在だから……

 アレス様の背中に腕を回して、キュッと彼を抱きしめた。

 「不安にさせて、ごめんなさい。でも、アレス様たちが愛してくれる限り、私はここにいます。
 だから……ずっと一緒にいてくれますか?」

 卑怯なことは分かっていた。

 私と違って、三人はどこにだって行ける。
 なのに、いつまでか分からないのに私のためにここで生きてほしいなんて……全く酷いお願いだ。彼らの気持ちを利用してーー

 でも、もう私から手放すことなんて出来なかった。

 「あぁ……約束する」

 アレス様と私は、再びキスを贈り合うと、二人で身体も心も絡ませて、夜に溶けていった。
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