呪われ侍女の逆後宮

はるみさ

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9.お風呂で

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 なんだかおかしなことが起こっている。

 アレス様は相変わらず私に甘いのだが、最近はルゥ君までおかしいのだ。

 まず、あからさまに後宮内にいることが多くなった。今まではどこかに寄ってから後宮に帰ることが多かったのに、最近は後宮と騎士団の往復のみとなってしまったようだ。何かあったのだろうか。

 それに、ルゥ君は先日の庭園での行為に味を占めたのか、みんながいる前で私にスキンシップを取ってくるようになった。朝食の時に隣の席に座ればこっそり机の下で手を握って来たり、夕食の手伝いをするフリをして私の背後に来てお尻を触ったり……。そして、一番おかしいのが、愛の言葉まがいのことを甘く囁いてくるようになったことだった。

 「クレアとずっと一緒にいたい」とか「世界一可愛い僕のクレア」だとか……もう意味がわからない。ルゥ君になら「ヤろう」と言われた方がまだ受け入れられる。優しく甘く囁かれても意図が分からず固まってしまうのだ。絶対からかっているだけだと頭では思うのに、そんな言葉を何回も言われればドキドキもする。

 こうして私はアレス様とルゥ君のドキドキ攻撃を日々受けているのだが、その二人に対してたった一人機嫌の悪い人がいる……そう、ゼノアだ。

 ゼノアは私がアレス様やルゥ君と楽しそうに話していると機嫌が悪い。

 「はぁ……」

 私は鏡に向かって、大きく溜息を吐いた。

 「まぁ、いいや。大浴場に行こうっと」

 私はタオルを用意して、大浴場に向かう。大浴場は男性陣が使うので、私は普段部屋にある浴室を使うが、今日は男性陣が夜勤やら遅番やらで帰りが遅い日だった。そのような時は今までも大浴場を使ってきた。まだ誰も帰ってきていないはずだし、今日も問題ないだろうと、私は大浴場に向かった。

「ふぁ~。やっぱり大浴場は気持ちいいなぁ」

 お湯に浸かりながら、私はゼノアと出会った時のことを思い出していた。

 ゼノアと出会った頃、私は駆け出しの侍女だった。十五で王宮侍女として働き始めた私は、何もかもが上手くいっていなかった。

 十八くらいになれば他の令嬢のように父が決めた相手と結婚すると漠然と思っていた私が侍女として働くことになったのは、父の再婚がきっかけだった。

 母は私が十二の時に亡くなり、父はその翌年に再婚相手を連れてきた。再婚相手は父よりも十以上も若い華やかな令嬢だった。そんなに若い継母が私の母親になれるはずもなく、彼女は私を疎ましく思っているようだった。
 そんな中、継母の妊娠が発覚した。継母はそれからより私に強く当たり出した。お父様に「私の存在がストレスだ」と言いつけ、私は部屋に閉じ込められるようになった。

 そして、翌年に継母が念願の男児を産むと、私は用済みとばかりに王宮侍女としての紹介状を持たされ、王都に送られた。

 侍女になるつもりなんて全くなく育ってきた私にとって、それは青天の霹靂だった。右も左も分からず何も出来ない私は先輩からいびられた。周りの男性だけは優しかったが、そのうち慰めてあげると言って、寝所に誘ってくるようになった。誰を信じていいのか……どうしたらいいのか分からず、毎日休憩時間になると庭園の隅で一人泣いていた私を見つけてくれたのがゼノアだった。

 ゼノアは「どうしたんだ?」と、木の上から降りてきて、少し面倒そうに話しかけてくれた。ゼノアとはその時初めて会ったのだが、私の顔も見ようともしないその態度に逆に安心した。

 そして、もういっぱいいっぱいだった私は全てを彼にぶつけた。

 家から追い出され帰る場所がないこと、侍女の仕事なんてわからないこと、先輩にいびられること、男性の下心が恐ろしいこと……もう、どうしたらいいか分からないこと。

 ゼノアはただひたすらに聞いてくれて、最後に頭をポンと撫でてくれた。そして、ポケットから眼鏡を出すと、私にプレゼントしてくれたのだ。「これ街で拾ったから、やる」と言って。

 ゼノアがくれたのは伊達眼鏡だった。しかも、流行遅れの眼鏡でお世辞にもオシャレとは言えなかった。それを掛けると、顔立ちがキツく見えるのも問題だった。今思えばあれは嫌がらせだったのだろう。

 でも、当時の私は意図が分からなくて「何でこんなもの?」と聞くと、ゼノアは言った。

 「今のままで出来ないと思うなら、違う自分になったらいい。居場所がないなら、作ればいい。泣いても何も変わらないぞ」と。

 眼鏡は不思議と私にぴったりで……それに運命を感じた私は、それから本当に変わった。

 涙を流すことをやめ、一日も早く自分の居場所を作るために一心不乱に頑張った。不器用な分、誰よりも仕事量をこなした。すると先輩たちにも認められるようになったのか、小言が少なくなった。

 それに男性に声を掛けられることもぐっと減った。伊達眼鏡のせいかと思っていたが、それは裏でゼノアが私がキツイだとか、怖いだとか言っていたからだと後々知った。

 そうして、仕事に打ち込んだ私は、三年前から王妃様付きの侍女となり、自分の居場所を見つけたのだった。

 「なんだかんだ、ゼノアのおかげなのよね……」

 そう言ってみたが、恥ずかしくなって、私はブクブクと顔半分を浴槽に沈めた。

 その時、大浴場の扉が開かれた。

 「え?!」
 「は?!」

 私の目の前には裸のゼノアが立っていた。

 「きゃあっ!! な、なんでゼノアが……っ!」

 私は自分の身体を抱えて、ゼノアに背を向けた。

 「いや、仕事が早く終わったんで帰ってきたんだ。今日は森で害獣狩りだったから、血を早く流したくて」

 「血っ?! 怪我したの?!」

 私はゼノアの方を向いた。

 「俺じゃねぇよ。害獣の血だ」

 ゼノアは私にそう言い放つと、洗い場に座り、ガシガシ身体を洗い出した。身体を洗う姿をお湯に浸かりながら、ぼーっと見る。

 いつも薄暗いところで行為に及ぶので、こんなにしっかりと身体を見たことはなかった。ゼノアの全身には沢山の傷があって……きっと痛かっただろうな、とそれを付けられた時のことを思い、ぐっと喉が詰まった。

 ……これ以上、傷が付かないといいな。

 そんなのは無理だろうと頭の片隅で思うが、そう思わずにはいられなかった。

 「……見過ぎだ」

 ゼノアにそう言われてハッとする。
 私は慌てて目を逸らした。

 「ち、違うの! 傷が痛そうだなって….」

 身体を洗い終えたゼノアがこちらにヒタヒタと歩いてくる音がする。
 顔が……身体が……熱い。まだのぼせるには早いけど……

 チャプン……

 隣にゼノアが座る。私は背を向けた……が、真後ろにゼノアの熱を感じる。離れようと思うのに、なんだか緊張して動けない。

 「ククッ」

 ゼノアの微かな笑い声が大浴場に響く。
 こっちはこんなに緊張してるのに、笑うなんて……
 意識しているのは私一人だけのような気がして、腹が立つ。

 「な、なによ……!」

 「クレアがこんなに俺を意識してるのかと思うと、気分が良くてな」

 「な、なによ……それ」

 確かにゼノアはここ最近にしては珍しく機嫌が良かった。
 私は思い切ってゼノアに尋ねた。

 「ねぇ……そんなに私がアレス様たちと仲良くするのが嫌?」

 「嫌だ」

 何の迷いもなく答えるゼノアに私の気持ちは重くなる。
 私はみんなで仲良くしたいのに……

 私は口を尖らせ、ゼノアに尋ねた。

 「何でそんなにーー」

 「分からないのか?」

 気付けば、後ろから抱きしめられていた。
 熱いゼノアの身体にすっぽり包まれる。

 「本当に俺が何でクレアとあいつらが仲良くすると機嫌が悪くなるのかわからないのか? ……本当は俺の気持ちに気付いてるんじゃないのか?」

 「そ、それは……」

 私も、ゼノアも何も言えずに大浴場にはお湯が注ぎ込まれる音だけが響く。……苦しい。自分の気持ちも、ゼノアがどうしたいのかも分からない。

 ゼノアが私を抱きしめる力が強くなる。

 「……ごめん。分かってるんだ。俺がやってることはクレアを追い詰めるようなことだって。こんな器の小さいこと……したいわけじゃないのに……。だけど、俺はーー」

 そう話すゼノアの声は弱々しくて……私まで胸がキュッと苦しくなった。

 私はゼノアに向き直り、その大きな身体を抱き締めた。
 バシャッと大きな水音がたつ。

 「……私のせいで辛い想いをしてるのよね?
 ごめん……」

 「クレア……」

 私は身体を離し、ゼノアを真っ直ぐに見つめた。
 キラキラと光る真っ黒な瞳は本当に綺麗で……吸い込まれそうだ。

 私の中にある感情に……どう名前を付けていいのか分からない。
 それに私は三人ともーー

 それでも、目の前の優しくて、本当は少し弱い人を見捨てることなんて出来なかった。卑怯者でもいい……今はただーー

 私とゼノアは、惹かれ合うようにキスをした。

 舌を入れて、このまま唇から溶けてしまうと思うほどに熱い口付けを。ピチャピチャと互いが求め合う音が響き、耳を犯していく。

 「ゼノ……溺れさせて……。何も考えなくていいくらいに」

 「あぁ……」

 ゼノアは、私を貪るようにキスを繰り返す。交換しきれなかった唾液がツーっと顎を伝った。

 私はゼノアの上に跨り、秘芽と陰茎を擦り合わせる。蜜口からはトロトロと愛液が溢れ、いとも簡単に陰茎に愛液を纏わせた。

 「クレア……一つになりたい……」

 「私も……ゼノでいっぱいにして」

 私が腰を浮かせると、ゼノは腰を掴み、ゆっくりとその陰茎を私の中におさめていった。

 「はぁ……♡」

 ただ挿れただけなのに、こんなに気持ちいい……身体中がピタッとくっついて、一つになったような錯覚に陥る。私の膣壁が悦び、ゼノに吸い付いているのが分かる。

 「クレアの……悦んでる。
 俺に吸い付いて、ここにいてって言ってる」

 いつもの私ならきっとここで反論してしまうだろう。でも、そう話すゼノアがあまりにも嬉しそうで……私はそれを肯定するように、ゼノアにキスを贈って言った。

 「うん……そうだよ。
 ゼノと一緒にいたいの……ずっと挿れててほしいの」

 「……俺、頭がおかしくなりそうだ。クレア……っ!!」

 ゼノアは下からズンと繰り返し突き上げる。

 「ひゃあぁんっ♡♡」

 バシャンバシャンと水面が大きく揺れ、水飛沫が上がる。

 それでも私もゼノアも止まることなんて出来なかった。

 「ゼノっ、ゼノ……っ♡♡」

 「クレアっ!!」

 ゼノアはリズム良く私を下から突き上げながらも、私の乳首も口に咥えた。あまりの快感に私は身体を大きく外らせた。

 「あっ……ゼノっ♡おっぱいも、おまんこもっ、気持ちいいっ♡
 おかしくなっちゃう……っ♡」

 「俺もだ……。クレアでおかしくなってる。
 一緒におかしくなろう……っ!」

 「はっ……あん♡なるぅ♡
 ゼノと……ゼノと一緒におかしくなるぅ♡♡」

 私の子宮は下がって、ゼノの子種を欲している。
 ゼノの陰茎が私の子宮内を犯そうと奥を叩く。

 トントントン。
 
 「あ♡はん♡あっ♡あっ♡あ……んっ♡♡」

 「クレア……俺はーー……くっ!」

 「あぁんっ♡♡♡」

 ドピューーッ。

 奥が焼けるように熱い。それに頭も身体も、もうおかしくされてしまったと、思った。私は快感から戻ってくることが出来ず、嬌声が止まらない。

 「ひゃ♡あ……ん♡ゼノぉ……からだがおかし….の♡
 びくびくして……ゼノがふれるとこ、ぜんぶきもちい……♡♡」

 ゼノがスーッと背筋をなぞれば、それと共に快感が走る。
 ゼノがおっぱいを揉めば、舐めて齧ってほしくなる。
 ゼノにキスされれば、頭が真っ白になる。

 ゼノは私の反応を楽しむように優しく愛撫を繰り返す。
 でも、私はもっと激しく、全身でゼノを感じたかった。

 私は足を絡ませるようにして、ギュッとゼノにしがみついた。

 「やらぁ……! 足りないの……もっと! もっと、ゼノのおっきいおちんちんでズブズブしてぇ♡ドロドロ精液で孕ませてよぉ♡♡」

 「……っ。まじでエロすぎんだよ……っ!」

 ゼノは私の足を抱えるようにして、ザバァと浴槽から立ち上がった。私はゼノの首にぶら下がるように腕を回している。

 ゼノが一歩動くたびにその陰茎が私の奥に突き刺さる。
 足もつかなくて、頼れるものがない私は、ただゼノの動きに翻弄された。

 「あっ♡ひゃ♡これ、おく入っちゃうよっ♡」

 ぶちゅんぶちゅん……

 ゼノは立ったまま、私を突き上げる。先ほど出した精液か、私の愛液かもはや分からないが、蜜口から溢れ出した白い液体が水面に波紋を作る。

 頭がチカチカして、身体は快感に支配されていた。ゼノと触れているところから電気が走るように全身気持ちよくて、このまま一つになれたらどんなに幸せだろう、と思えた。

 「孕ませて欲しいんだろっ? 何度でも出してやるよ、子宮を満タンにしてやる。 孕めよ、俺の子を。」

 「はらむっ♡ゼノとの赤ちゃん、つくるぅ♡♡」

 ぷしゃ。

 私は潮を吹いた。けれど、ゼノの攻めは止むことなく、私を追い詰めていく。

 ゼノは私を抱えたまま、歩いては止まり、私をイカせて、また歩いては止まり、私をイカせた。

 「も……むりぃ♡♡ぜの……ぜのぉ♡♡♡」

 「もう一回イこうな、クレア……」

 ゼノアは脱衣所の手前でまた腰を振り始めた。

 「らめぇ! もぅイけなっ♡あっ♡あっ♡はっ♡」

 「イけるよ……クレア。一緒にイこう……っ!」

 ゼノの動きは激しくなり、私は喘ぐことしかできなかった。

 「ゼノーっ♡♡あ……ひんっ♡♡♡」

 ドピュドピュン!

 子宮の奥までゼノの精液が私を染めていく。

 プシャーっ。プシャ、プシャ……

 それはとんでもなく気持ちよくて、私はまた潮を吹いた。

 それから私たちは、部屋に戻って、再び肌を重ね、言葉にできない想いを伝え合った。
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