呪われ侍女の逆後宮

はるみさ

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3.初夜(1)

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 皆で和やかに夕食を食べた後に、私は入念な湯浴みを終えた。

 いつのまにか処女ではなくなったらしいが、記憶のある状態という意味では今晩が私の初体験なのだ。

 お相手は、令嬢の憧れ……アレス団長。

 あれだけ美しければ、団長さんにその気がなくても女性が放っておかなかっただろうし、そういう意味では安心して身を任せることが出来る。ただ……団長さんのことだ、きっと今まで抱いてきたのは美しい女性ばかりだろうに……私のような女で勃つのだろうか? その点だけが心配だ。

 それでも、呪いのせいか私の身体には小さな熱が燻り始めていた。早く触れてもらいたいし……この熱を分け合いたい……。

 付き合っていないのに身体を重ねることに何の抵抗感も感じない。それが私には必要なんだもの……なんて、そう考えてしまうのも呪いのせいなのだろう。

 その時、コンコンっと扉を叩く音がして、私は反射的に立ち上がる。

 「ど、どうぞ。開いています」

 キィと遠慮がちな扉の音と共に、バスローブ姿の団長さんが入ってきた。その髪はまだ少し濡れていて、薄暗い部屋の中でも窓から差し込む月明かりに照らされてキラキラと光る。

 団長さんは、少し驚いたように目を見開いた後、微笑んでくれた。

 「こんばんわ」

 「こ、こんばんわ……」

 私がポソっと呟くと、団長さんは一歩一歩ゆっくり近付いてくる。目の前に来ると、私の髪を一房取って、キスを落とした。

 「いつも凛として綺麗な方だとは思っていましたが、こんなに変わるとは……なんて、美しく可愛いらしいんでしょう。まるで妖精のようだ」

 今は眼鏡も外して化粧もしていないし、髪も下ろしているから、印象が違うのは分かるが、いくらなんでも褒めすぎだ……。そう言う団長さんの方がずっと美しい。目を細めて、私を見つめる瞳の奥にジリジリとした熱を感じる。なんだか気恥ずかしくて、私は目を逸らした。

 団長さんが私の頬にスッと手を伸ばし、輪郭を優しくなぞる。
 くいっと顎を上げ、視線を合わせられる。その紫色の瞳は、本当に綺麗で私の心臓は魔法をかけられたように高鳴った。

 「ん……団長、さん……」

 「アレス、と。夜の逢瀬の時間だけでも、君の恋人でいたい……。
 クレア……も、そうして欲しいんだ。……いいかな?」

 「はい……。アレス……様」

 「ありがとう」

 私たちの視線は絡まり合い、どちらからともなく二人の唇が重なる。

 キスだって私の記憶上じゃファーストキスのはずなのに、ごく自然に唇を交わしている。心も身体もアレス様を求めているのが分かる。その甘い誘惑に抵抗する気になどなれなかった。命をつなぐためのきっと本能なのだ。

 最初はただ唇の柔らかさを確かめるだけの優しいキスだったのが、アレス様の舌が遠慮がちに私の口内に入ってきた。私はそれを受け入れるようにアレス様の舌に自らの舌を擦り付けた。

 ……気持ちいい……。お腹の奥がきゅんきゅんする。

 お互いの味を確かめるように、ゆっくり優しく舌を絡ませる。
 唇が離れると私たちの間には銀糸がかかった。

 「ん……はぁ、アレス、さまぁ……」

 「クレア……キスだけでそんな蕩けた顔しちゃって。可愛い……」

 キスですっかり腰が抜けてしまった私は、アレス様に寄りかかった。

 「なんだか、身体があつい……」

 「効果が出始めたんだね。大丈夫、私に任せて」

 「ひゃっ!」

 アレス様は私を軽々と抱き上げるとベッドの上にそっと横たわらせてくれた。そして、私に覆い被さると、愛おしい者を見るような目つきで私の髪を撫でる。

 「クレア……。綺麗だ」

 アレス様のキスが顔中に落ちてくる。優しく触れる羽のようなキスは私の心をくすぐった。

 そうしている間にもアレス様の手は私の身体をまさぐる。

 腰のラインを撫で……脇腹を通って……柔らかな双丘に辿り着く。
 優しくゆっくりと揉みしだかれるが、頂には触ってもらえず、快感が溜まっていく。それでも触って……と言えなくて、少しでも快感を逃そうと微かな声が漏れる。

 「ん……ふぅ…………っん」

 「可愛い……バスローブの上からなのに、しっかりと勃ってるのが分かるよ。……我慢出来ないんだね?」

 アレス様はクルクルと焦らすように乳首の周りを人差し指でなぞったーー

 次の瞬間、頂をキュッと摘まれる。

 「ひゃあぁん……っ♡」

 「いい声。もっと聴かせて……」

 アレス様は私のバスローブを暴き、心許ない夜着の紐を解いて、直接頂を摘んでクリクリと刺激した。

 「あっ、ひゃ……ん♡ んっ、やぁ♡」

 「蕾はピンク色で可愛いのに、こんなに硬く勃たせて……なんていやらしいんだろう」

 すると、アレス様は頂をパクリと口に含んだ。

 「あんっ♡」

 ペロペロ。
 ジュプジュプ。

 卑猥な音を立てながら、アレス様は右の頂を蹂躙していく。左の乳房への愛撫も忘れることなく、アレス様の手の中で形を変えていく。

 「あっ、はぁ……ん♡ おっぱい、やらぁ……♡」

 もう我慢できなかった。胸だけでなく、もっと触ってほしいところがあることを……私は涙目で訴えた。

 「ふふっ、そんな蕩けた顔してやだなんて信じるはずないでしょ? クレアは素直じゃないね。本当に嫌かどうかはこっちに聞いてみようか」

 アレス様の手が私の下着の中に入ってくる。あ、やっと……

 ぷちゅ。

 アレス様の指が私の蜜口のあたりを少し彷徨った後、ぬかるみに指が挿れられる。
 そして、十分に濡れてることを確認した後、私の浅いところとその少し上にある粒を擦り始めた。

 「……すごいな。
 こんなに濡れるんだね……それに毛がない……?」

 「あっ、うんっ♡ あっ、あっ、やっ、あぁ……♡」

 アレス様が与えてくれる刺激が気持ちよくて、返事ができない。
 気持ち良さに頭にモヤがかかっていく。

 早く、早く、アレス様の陰茎が欲しい……
 それしか考えられない。なのに、アレス様の手は止まってくれない。

 「ふふっ、気持ちよさそう。一回イっておく?」

 挿れて欲しいのに……
 アレス様のその問いに悲しくなって、涙が溢れる。

 「いやだぁ……ぐすっ……」

 私の泣き顔に驚いたのか、アレス様が手を止めた。

 「ご、ごめん、クレア! 何が嫌だった?!
 わ、私は何か失敗をしてしまったかい?!」

 今まで私を余裕顔で責めてた人とは思えない。
 その焦る姿がなんだか可愛らしく見えた。

 「すごく……気持ちいいの……。だから……もう限界でーー
 アレス様の……欲しいよぉ」

 私がアレス様の股の間に目を向けると、そこはもうローブを高く持ち上げていた。

 「そうだったんだ。ごめんよ……
 本当は、もう私も痛いくらいなんだ。
 クレアの中に入って……いいかな?」

 「うん……」

 アレス様はバスローブを取り去った。
 細身ながら引き締まった肉体は美しく、腹筋は綺麗に六つに割れている。

 そして、その腹筋の下には、ビクビクとして解放を待ちわびるアレス様の分身がいた。先っぽからは先走り汁が出て、こちらも限界なのがよく分かった。

 挿れたいと思ってたのは私だけじゃないことに、嬉しくなる。

 アレス様は私に覆い被さり、また深いキスをくれた。
 その間、陰茎を私の粒に擦り付けてくる。

 ズチュズチュ。
 くりくり。

 「はっ……♡ ん、あ、あ、やぁん♡」

 「もう十分、濡れてるね。……挿れるよ」

 「ん……♡」

 私の愛液を纏わせた陰茎は、テラテラと光っている。アレス様が陰茎に手をやり、私の蜜口に焦点を合わせるが、滑るからなのか、なかなか挿入ってこない……。それが逆に焦らされているようで……私の蜜口からはダラダラとだらしなく愛液が流れた。

 「焦らしちゃ……いやぁ……っ♡」

 「そ、そういうわけじゃ……あっ」

 その時、大きいものがぐっ……と私の浅いところに入ってきた。

 「はぁあんっ♡」

 「ここ……だね?」

 ようやく、陰茎がみちみちとゆっくり私の膣道をこじ開けていく。アレス様は顔を歪ませながら、進んでいく。

 「ふぅ……ん♡」

 「くっ……。やばい、な……っ」

 痛みなどなく、細かな快感と共に身体の中が満たされていく。

 焦らされるように進み、ようやく奥までアレス様の陰茎が届く。しかし、アレス様は私に遠慮しているのか、奥まで突き刺したまま動かない。

 でも、もう待てなかった。
 私は拙いながらも、自ら腰を揺すった。

 「ん……♡ はぁ♡」

 「あっ! ……あっ、だめ……だめだ……!
 今動いたら……!!」

 ドピュッドピュ……。

 ……え?

 お腹の中があったかい。
 ……驚きに私の動きは止まる。

 ドサっとアレス様は私の胸に顔を埋めたが、耳まで真っ赤だ。

 「……アレス様、もしかしてーー」

 「ごめん。イっちゃった……」

 まさかとは思ったが、こんなに早いとは……。
 アレス様って……早漏……? それともーー

 「ごめん……。実は私、初めてなんだ」

 衝撃の事実に固まる。

 婚前交渉がそう珍しくもないこの国において、アレス様のような家柄も良く、騎士団長という地位もあって、容姿端麗で非の打ち所がないような人が……まさかの童貞?!

 「やっぱり……引いたよね?」

 私の胸から顔を上げて、上目遣いでアレス様が見つめてくる。
 ……目が潤み、顔が上気している。その顔は今にも泣いてしまいそうだ。アレス様に耳が生えていたら、きっと可愛らしく垂れ下がっているだろう。いつもと違う弱気なアレス様の様子にドキドキする。

 「い、いえ! 引いてなんていません!!
 大体私も初めてみたいなものですし……」

 「引いてない? 私のこと……嫌いになってない?」

 アレス様は眉をハの字にして、私に尋ねる。
 どう考えたら、そんなことで嫌われることになるんだろう?

 「そんな理由で嫌ったりしませんよ」

 なんだか不安がる姿が少し可愛くて、私はアレス様を安心させるように微笑みながら優しく頭を撫でた。

 「……本当に……?」

 「本当です。さっきまでは経験がないなんて気付かなかったくらいだし……。すごく、上手で……」

 私がそう言うと、アレス様はフニャッと笑った。

 「……へへっ。嬉しい。……やっぱりクレアは優しいね。

 ねぇ……もう一回、いいかな?」

 「……あっ♡」

 アレス様は、グッと腰を押し付けた。中に挿れたままの陰茎はいつのまにか元気を取り戻したようだ。

 「いいみたいだね。
 今度はちゃんと気持ち良くするから……さっ!」

 アレス様は腰を振り始める。

 「あんっ♡ あっ、あっ、んっ♡」

 グチュングチュン……

 アレス様が先程出した白濁のせいで、より滑りが良くなっている。
 アレス様が腰を打ち付ける度に水音が聴こえる。その音ですら、私の官能を掻き立てた。

 あぁ……こんなに気持ち良いことがあったなんて……♡

 「はっ……すごいな……。
 こんなに私のを締めつけて、いくらでも出せそうだ」

 もうすっかりアレス様は慣れたようで、私に覆い被さり、腰を激しく動かす。

 時折、熱を灯した瞳で私を見つめて、キスを落とす。私達は互いの唾液を啜るように、舌を絡ませた。

 頭の中はアレス様と与えられる刺激で埋め尽くされていた。

 「あっ♡いっぱい、いっぱい擦って……
 おまんこっ、ぐちゃぐちゃにしてぇ♡
 アレス様の精液、いっぱい欲しいの……っ♡♡」

 「くっ……普段真面目な貴女がそんなことを言うなんて….っ」

 「あっ♡ ひゃっ♡ あ、あん、あんっ♡」

 アレス様の抽送がどんどん早くなる。
 それに加え、アレス様は私の粒までクリクリと攻め出した。

 「あっ、やっ、なんかっ……なんかキちゃうっ♡♡」

 「うん……っ、今度こそイかせてあげる……!」

 ぶちゅんぶちゅんぶちゅん!

 「ア、アレスさまあっ♡ らめぇっ♡♡ 
 ひゃ♡ やっ♡♡ あ、あ、あ、あぁーーっ♡♡♡」

 「あっ、クレア! そんなにっ……! くっ!」

 びゅっびゅっ!

 目の前がチカチカして、頭の先から指の先までビリビリとした快感が走る。

 ……お腹があったかい。
 一緒に気持ち良くなれるのってこんなに気持ちいいんだ……♡

 「クレア……ありがとう。ゆっくり休んで……」

 アレス様が頭を撫でて、瞼にキスを落としてくれる。

 ふわふわとして気持ち良くて……私はそのまま眠ってしまった。


   ◆ ◇ ◆


 「……ん」

 自分のではない誰かの寝息で目が覚める。
 まだ外は薄暗い。早朝なのだろうか……まだ空気が冷たい。

 しかし、私の身体は暖かい。抱き枕のように私はアレス様に後ろから抱きしめられているからだ。

 アレス様はまだ寝ているようでスゥスゥと規則正しく寝息を立てている。その息がちょうど首元に当たり、少しくすぐったい。

 すごい……夜だった。アレス様も経験がないと言うのは驚いたが、ほぼ初めて同士だったのに、とても気持ちよくて……。普段の自分ならありえない言葉まで口走ってしまったような気がする。アレス様は終始優しかったし、意外にも可愛い一面があることに気付いた。
 それに、一緒に気持ちよくなってくれたのが何よりも嬉しかった。つい数日前までは想像もできない素敵な夜だった。

 私の胸のあたりに回された腕に手を掛ける。
 騎士らしい逞しい腕だ。この腕が私を抱いたのかと思うと、やけにドキドキする。

 「アレス様とは、上手くやっていけそう……」

 率直な感想がぽろっと口から溢れると、腕がより強く私を抱きしめて、背後から声がした。

 「私は合格、かな?」

 「お、起きてたんですか?!」

 「クレアが私の腕を優しく撫でるから、くすぐったくて。

 おはよう……クレア」

 その声には昨日とは違う甘さが含まれているのを感じる。
 私は恥ずかしくなって、「おはようございます」だけ言うともぞもぞと毛布を被った。

 それをアレス様はクスクスと笑ったと思ったら、同じように毛布の中へ入ってきてしまった。

 「な……っ!」

 「ここなら、クレアの赤い顔もよく見えないからいいでしょ?」

 そう言いながらも私の頬に手を遣る。やっぱり見えていると思うのだけれど……

 「クレア……昨日の夜は最高だったよ。ありがとう」

 「こ、こちらこそありがとうございました」

 「あいつらもクレアを抱くと思うと少し妬けちゃうけど……
 次の夜、楽しみにしてるね」

 「んっ……♡」

 アレス様はそう言うと、目覚めのキスにしては濃厚すぎるキスを私にくれた。
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