湖畔の妖精

壬玄風

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ホテルに行こう

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 次の登山を楽しみにしていた正一と奈々だったが、あいにく天候が思わしくなく、安全を考えて登山は中止し、ショッピングモールでデートをすることになった。
 駅前で待ち合わせた二人は軽いハグで再会を喜んだ。


 バスを降りて入口に向かうと、特設ブースが開いていた。
 今日はいくつかのサークルが自主映画の公開をしているらしく、二人でのぞいてみることにした。


「あー、よかったね」

「うんそうだねなかなかいいんじゃないかな」

 正直、内容は面白いと思えなかったが、熱意と努力はとてもよく伝わった。


「ライター、ゲットだぜ!」

 プレイコーナーのクレーンゲームでなぜか奈々はライターをコレクションしていた。アウトドアではよく使うから、らしい。


 そして小腹がすいた二人はフードコートでのんびりと軽食をとっていた。

「ああ、そういえばさ」

 正一はふと思ったことを話す。

「ん、どうしたの?」

「今日は裸で遊べなくて残念だったね」

 奈々は一瞬目を丸くして、それから正一の意図を探ろうとすると彼が微かにニヤリとしているのに気づいた。

「うん、それは由々しきことだけど、できなくはないね」

さらに正一に顔を寄せていく。

「それじゃ、ホテルにでも行こうか」

「え、いや、それは……」

 だが幸いにも正一はすぐに仕返しをされたことに気づき

「コホン……悪くない提案だね」

 とすまして答えるのだった。
 その様子がおかしくて奈々は笑い出し、正一もつられて笑うのだった。


 そのあと二人はショッピングモールの片隅のアウトドアショップを訪れた。

「そろそろ冬用のジャケット新調しようかな。雨の日も対応したいけどやっぱり難しいなあ。ああ、久々にキャンプも行きたいな」

 正一は次々と興味が移り変わる奈々を微笑ましく見つめながら、自身も物色に耽っていく。

「そうだなあ、次はデイキャンプなんてどうかな」

「ほんと?キャンプグッズ買っちゃうよ!」

「二人で一緒に選ぼうな」


 正一は、今度こそこんな幸せな日々が終わらないように、と願いながら二人の時間を楽しんでいた。
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