一話完結SP

壬玄風

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蒼い顔の付与術師を追放した勇者は破滅する

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「ええい、辛気くせえなあいつ!」
「もっと早く歩きなさいよね」
「いつも蒼白い顔してキモい……」

 僕は付与術師のガンドル。
 勇者達一行の後をついて歩いていたら、突然罵倒の嵐が降り注いできた。

 赤茶けた板金鎧を身にまとう勇者。折れた聖剣デュランダルをものともせずに戦い続けている。
 魔術師の女の杖は折れて魔法が使えず振り回すだけの棒と化している。布製のローブは大きく破れ、下着も露わになっているが、彼女はそれを気にとめる様子はない。
 ひび割れ手直しもせず放置された挙句、斜めにすっぱりと割れたメイスを持つ僧侶らしい男は回復術を使うわけでもなく、やはり威力皆無なメイスを振り回し続けている。
 そんな異様な姿も、人里離れた魔物の森の中では見咎める者などいるはずもない。

「お前ら、そろそろあいつクビにしていいか?」
「賛成」
「そうですね、もっとマトモな付与術師を誘いましょう」
「そうか、僕はもうお役御免というわけか」
「そういうことだ。おっと、荷物は置いていけよ」
「いいけど、意味はないと思うよ」
「どういう意味だ?」
「さあね……」



 ある日僕は、魔物の森で彼らの遺体を見つけた。
 どうやらシルバーウルフの群れに襲われたのだろう。

 勇者一行は、魔王退治の任を受け王宮から旅立った。
 しかしどの街に行っても有り余る歓待を受けまくった彼らは少しずつ歯車が狂っていった。
 いつしか、人を助けることを忘れ、魔王城を目指すことも忘れ、ただ威張り散らし暴れるだけの勇者に国民は辟易していた。
 やがてその醜態は王宮の知るところとなり、勇者資格剥奪の危機にまで陥った。
 勇者達は今の立場とデュランダルを失いたくない一心で態度を改めて魔王討伐に向かった。

 だけど魔物の森にこもり修業していた僕は旅立った後の出来事はまるで知らなかった。
 勇者が道半ばで倒れたことを気の毒に思った僕は、彼らを魔王と戦わせるために、パーティの一員になりすまし、付与術で生命力を与え続けた。歩みが遅いのも顔面蒼白なのも三人分の生命力を担っているためだ。



 僕はパーティをクビになったため付与術を解除した。
 生命力付与を失った彼らの身体は砂山のように崩れおち、何の役にもたたない武具だけがその場に残された。



「やれやれ、ろくでもない勇者もいたものだ。だけど、なんか楽しかったな」

 とはいえ、孤独感を忘れさせてくれた勇者には感謝の想いもあった。
 僕は勇者がいた場所を後にして、新たな人間の遺体を探しに行くことにした。



――かつて、王都には強力な生命付与術を使い死体を蘇生させ操る迷惑な男がいた。
 国王は悪意のない彼を罰することをよしとせず、師匠のもと指導を受けることを命じた。
 師匠は修行という名目のもと、その男を魔物の森に放逐した……
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