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男爵令嬢はいじめられてたらしい
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「メイビア・トラッコン!お前との婚約は破棄する!」
私の婚約者のアグニス・フェンスタ第三王子が高らかに宣言した。
そして私の反応は。
(あーはいはい。どうせこうなると思ってた)
「そして、私は新たにジュディ・リュイソンと婚約する」
(どうぞどうぞ)
ジュディは、このアグニス王子を含む数々の令息を手玉に取る悪女として名を馳せている男爵令嬢だ。
そのせいで一方的に婚約破棄された令嬢の数はすでに両手の指に収まらないという。
当然ながら、男女問わず反発も大きかったが、ジュディに骨抜きにされた男どもは手段を問わなくなり、ジュディや自分たちに歯向かう者やその家の悪評を広めたり、命がけで襲い掛かったりもするため誰も手を出せなくなっていった。
と同時に彼らの異常なまでの執着ぶりに、魔法で洗脳しているのではないかと噂が立っていた。
こうして着々と味方を増やしまくった彼女が最後に目をつけたのが、このバカ王子であった。
「私メイビア様にいじめられていたんです」
「なんだって!ああ可哀想なジュディよ」
「メイビア様が私の教科書を破ったんです」
「なんて酷い奴だ」
「メイビア様に大切なネックレスを奪われました」
「なんだと、許せん」
「メイビア様に夜の墓場に連れていかれました」
ジュディは私の悪行を次々と披露していた。
全く身に覚えはないけど。
あ、一つだけある。あれは肝試しイベントでペアになったときに怖がって動けないジュディを引っ張っていったんだっけ。
「メイビア様の掘った落とし穴に落ちて大怪我をしました。深さ十メートルはありました」
「なんて奴だ。もはや婚約破棄だけでは足りないな」
マジかよく生きてたな。
「……なんて言うと思ったか?ジュディ」
「え?」
アグニス王子の言葉に、私もジュディも周りの人々も固まりました。
そして、ジュディは駆けつけてきた衛兵に取り囲まれた。
「残念だったな。お前の魅了魔法は看破していたんだ」
「そんな!どうして」
ジュディは抵抗を試みるが、結局おとなしく連行されていった。
第一級の禁忌魔法を行使した以上、一番ヌルくても結審後即処刑だろうか。
「メイビア、それに他の皆も巻き込んですまなかったな」
「いえ、お見事でございました。ですが、婚約破棄は承りますね」
「え?待ってくれ、今のは演技で」
「アグニス王子殿下……魅了を看破したことは素晴らしいですが、そもそもジュディに心を寄せて付き従っていたのは事実でございましょう」
「あ、いや、その」
「そうだな。今回の功績と帳消しにはできぬ。それはそれ、これはこれだ」
国王陛下も残念そうに私の意を汲んでいただき、私は意気揚々と婚約破棄を成立させたのだった。
魅了魔法をかけられていた令息達も正気に戻ったものの、おしなべてアグニス王子同様元サヤに収まることはなかったという。
「それにしてもよくあの王子が禁忌魔法なんて看破できたものね」
私は自宅のガゼボで親友のセーラとお茶を楽しんでいた。
「あ、それちょっと噂になってるみたいよ」
「噂?」
セーラの気になる情報に私は全力で耳を傾ける。
「普通、貴族は魅了魔法にかからないように対策しているでしょう?」
「ええ。そういえば、元から気があったとしても王子以外あっさり魅了に落ちたのも不思議だったのよね……」
「あの子、コトの最中にかけていたらしいのよ」
「はあ」
純情な私には理解が追い付かなかった。
……本当だよ?
「要するに魅了をかけられていると気づいて離れようにも離れられない状況にされていたわけ」
「ああ……それで王子が看破できたのはどうして?そんなに意志強そうには思えないんだけど……」
意志が強かったら後先考えず婚約者放り出して男爵令嬢に走ったりはしないわね。
「多分だけど、あの王子……早すぎたんじゃないかって……」
「つまり魅了が完成するまでに……」
「ええ」
良かった!
結婚しないで本当に良かったぁ!
私の婚約者のアグニス・フェンスタ第三王子が高らかに宣言した。
そして私の反応は。
(あーはいはい。どうせこうなると思ってた)
「そして、私は新たにジュディ・リュイソンと婚約する」
(どうぞどうぞ)
ジュディは、このアグニス王子を含む数々の令息を手玉に取る悪女として名を馳せている男爵令嬢だ。
そのせいで一方的に婚約破棄された令嬢の数はすでに両手の指に収まらないという。
当然ながら、男女問わず反発も大きかったが、ジュディに骨抜きにされた男どもは手段を問わなくなり、ジュディや自分たちに歯向かう者やその家の悪評を広めたり、命がけで襲い掛かったりもするため誰も手を出せなくなっていった。
と同時に彼らの異常なまでの執着ぶりに、魔法で洗脳しているのではないかと噂が立っていた。
こうして着々と味方を増やしまくった彼女が最後に目をつけたのが、このバカ王子であった。
「私メイビア様にいじめられていたんです」
「なんだって!ああ可哀想なジュディよ」
「メイビア様が私の教科書を破ったんです」
「なんて酷い奴だ」
「メイビア様に大切なネックレスを奪われました」
「なんだと、許せん」
「メイビア様に夜の墓場に連れていかれました」
ジュディは私の悪行を次々と披露していた。
全く身に覚えはないけど。
あ、一つだけある。あれは肝試しイベントでペアになったときに怖がって動けないジュディを引っ張っていったんだっけ。
「メイビア様の掘った落とし穴に落ちて大怪我をしました。深さ十メートルはありました」
「なんて奴だ。もはや婚約破棄だけでは足りないな」
マジかよく生きてたな。
「……なんて言うと思ったか?ジュディ」
「え?」
アグニス王子の言葉に、私もジュディも周りの人々も固まりました。
そして、ジュディは駆けつけてきた衛兵に取り囲まれた。
「残念だったな。お前の魅了魔法は看破していたんだ」
「そんな!どうして」
ジュディは抵抗を試みるが、結局おとなしく連行されていった。
第一級の禁忌魔法を行使した以上、一番ヌルくても結審後即処刑だろうか。
「メイビア、それに他の皆も巻き込んですまなかったな」
「いえ、お見事でございました。ですが、婚約破棄は承りますね」
「え?待ってくれ、今のは演技で」
「アグニス王子殿下……魅了を看破したことは素晴らしいですが、そもそもジュディに心を寄せて付き従っていたのは事実でございましょう」
「あ、いや、その」
「そうだな。今回の功績と帳消しにはできぬ。それはそれ、これはこれだ」
国王陛下も残念そうに私の意を汲んでいただき、私は意気揚々と婚約破棄を成立させたのだった。
魅了魔法をかけられていた令息達も正気に戻ったものの、おしなべてアグニス王子同様元サヤに収まることはなかったという。
「それにしてもよくあの王子が禁忌魔法なんて看破できたものね」
私は自宅のガゼボで親友のセーラとお茶を楽しんでいた。
「あ、それちょっと噂になってるみたいよ」
「噂?」
セーラの気になる情報に私は全力で耳を傾ける。
「普通、貴族は魅了魔法にかからないように対策しているでしょう?」
「ええ。そういえば、元から気があったとしても王子以外あっさり魅了に落ちたのも不思議だったのよね……」
「あの子、コトの最中にかけていたらしいのよ」
「はあ」
純情な私には理解が追い付かなかった。
……本当だよ?
「要するに魅了をかけられていると気づいて離れようにも離れられない状況にされていたわけ」
「ああ……それで王子が看破できたのはどうして?そんなに意志強そうには思えないんだけど……」
意志が強かったら後先考えず婚約者放り出して男爵令嬢に走ったりはしないわね。
「多分だけど、あの王子……早すぎたんじゃないかって……」
「つまり魅了が完成するまでに……」
「ええ」
良かった!
結婚しないで本当に良かったぁ!
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