救国の英雄カラコフ

壬玄風

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ノーギフト、グッドライフ

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「なんつーギフト渡してくれたんすか!」
俺は死後、女神様に抗議した。
「文句あるの?がんばればなんとかなったでしょ?」
「ええ、まあ国はなんとかなりましたよ。俺の命と引き換えにね」
サイクロプス団のほとんどを消滅させたため、ミリア達が残党を殲滅するのは容易だった。さらに全軍が集結したことでブラックバード戦線も勝利し、国は平和を取り戻した。
「殉じてこその英雄じゃない」
「まあいいです、あの世界には未練もないし。今度はまともなギフトくださいよ」
「今度はギフトなしよ」
「なんでですかー、命を捨てて国を救ったのに!」
「その功績でギフトもらって転生できるから死んでもいいや、なんて思った時点で自己犠牲精神でも何でもないから」
「返す言葉もございません」
「まあでも今回の功績を鑑みてちょっとは計らってあげたからさっさと転生してらっしゃい」



「おい、信が目を覚ましたぞ!」
「信也!」
「あれ?なんで前世の両親がここに」
「なっ、何言ってるの?大丈夫?お医者さん呼ぶ?」
「母さんおちつきなさい、少し混乱しているだけだろう」
どうやら俺はトラックに撥ねられて病院で三日三晩寝ていたらしい。
そうか、ずいぶんと長い夢を見たはずだ。

しばらくすると、病室のドアがノックされた。
「あら、華ちゃん、来てくれてありがとう」
「それじゃ俺達は外してるからな」
両親と入れ替わりに入ってきたのは、高校時代の同級生の山本華。
当時付き合っていた江沢陽子の親友だ。
卒業してからはだんだんと疎遠になってしまった。
「こんにちは、信也くん。元気そうだね」
「華……どうしてここに」
「あの、私ミリアです」
「え?」
「正確にいえば前世がミリア・レーアルで今は山本華です」
「ああ……前世……そうか、あれ、夢じゃなかったんだ」
どうやら女神様がちょっとばかり歴史を修正して、俺は死を回避したことにして再転生する形にして、ついでに華とは二年前から交際中ということになっているようだ。ちょっと無駄に計らいすぎるのやめてください女神様。
あとトラックに撥ねられて無傷だと不自然なので全治四か月程度のケガは避けられなかった。
「でも私的にはいきなり彼氏できた感覚になってるんだよね」
俺なんて前世の記憶というのがまだ夢のようだ。華がいなかったら夢ってことで終わってたんだろうな。
「そうだよな。なんか迷惑かけてすまない……」
「あ、でも私は大丈夫だよ。別に付き合ってる人いないし、このままでも」
「え?いや俺は信也であってカラコフじゃないけど、それでもいいの?」
そのカラコフもギフトで無理やり好かれたようなものなんだけどさ。
「実は私、高校の頃信也くんとお付き合いしたかったんだ」
だからこの子にミリアを憑依させたのか。
「え、知らなかった」
「だけど陽子ちゃんも信也くんのこと好きだって知ってあきらめちゃった」
「そうだったのか……気づかなくてごめんな。こんな俺でよければぜひ」
「ええ、よろしくね」
それからしばらくして俺達は結婚して、そこそこ幸せに暮らし天寿を全うした。

「女神さんや、次の転生先はどこかいのう」
「次は結構平和だけど文明レベルは低い世界よ」
「よしわかった、俺の知識で無双チートしろということだな」
「ごめんなさい。今度は記憶引き継げないのよ……」
「なんでだよ!転生の意味ないじゃん」
「いやあのね転生って本来そういうものだから。がんばって普通に幸せな人生を送りなさいな」
俺は天界に帰ろうとする女神様を引き留める。
「いやだー、そんなの死んだも同然じゃないかー」
「死んでるのよ!私も忙しいんだからあきらめて」
「そこをなんとかー」
「ああもう!強ニュー経験者はこれだから嫌なのよーっ!!」
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