救国の英雄カラコフ

壬玄風

文字の大きさ
上 下
3 / 3

ノーギフト、グッドライフ

しおりを挟む
「なんつーギフト渡してくれたんすか!」
俺は死後、女神様に抗議した。
「文句あるの?がんばればなんとかなったでしょ?」
「ええ、まあ国はなんとかなりましたよ。俺の命と引き換えにね」
サイクロプス団のほとんどを消滅させたため、ミリア達が残党を殲滅するのは容易だった。さらに全軍が集結したことでブラックバード戦線も勝利し、国は平和を取り戻した。
「殉じてこその英雄じゃない」
「まあいいです、あの世界には未練もないし。今度はまともなギフトくださいよ」
「今度はギフトなしよ」
「なんでですかー、命を捨てて国を救ったのに!」
「その功績でギフトもらって転生できるから死んでもいいや、なんて思った時点で自己犠牲精神でも何でもないから」
「返す言葉もございません」
「まあでも今回の功績を鑑みてちょっとは計らってあげたからさっさと転生してらっしゃい」



「おい、信が目を覚ましたぞ!」
「信也!」
「あれ?なんで前世の両親がここに」
「なっ、何言ってるの?大丈夫?お医者さん呼ぶ?」
「母さんおちつきなさい、少し混乱しているだけだろう」
どうやら俺はトラックに撥ねられて病院で三日三晩寝ていたらしい。
そうか、ずいぶんと長い夢を見たはずだ。

しばらくすると、病室のドアがノックされた。
「あら、華ちゃん、来てくれてありがとう」
「それじゃ俺達は外してるからな」
両親と入れ替わりに入ってきたのは、高校時代の同級生の山本華。
当時付き合っていた江沢陽子の親友だ。
卒業してからはだんだんと疎遠になってしまった。
「こんにちは、信也くん。元気そうだね」
「華……どうしてここに」
「あの、私ミリアです」
「え?」
「正確にいえば前世がミリア・レーアルで今は山本華です」
「ああ……前世……そうか、あれ、夢じゃなかったんだ」
どうやら女神様がちょっとばかり歴史を修正して、俺は死を回避したことにして再転生する形にして、ついでに華とは二年前から交際中ということになっているようだ。ちょっと無駄に計らいすぎるのやめてください女神様。
あとトラックに撥ねられて無傷だと不自然なので全治四か月程度のケガは避けられなかった。
「でも私的にはいきなり彼氏できた感覚になってるんだよね」
俺なんて前世の記憶というのがまだ夢のようだ。華がいなかったら夢ってことで終わってたんだろうな。
「そうだよな。なんか迷惑かけてすまない……」
「あ、でも私は大丈夫だよ。別に付き合ってる人いないし、このままでも」
「え?いや俺は信也であってカラコフじゃないけど、それでもいいの?」
そのカラコフもギフトで無理やり好かれたようなものなんだけどさ。
「実は私、高校の頃信也くんとお付き合いしたかったんだ」
だからこの子にミリアを憑依させたのか。
「え、知らなかった」
「だけど陽子ちゃんも信也くんのこと好きだって知ってあきらめちゃった」
「そうだったのか……気づかなくてごめんな。こんな俺でよければぜひ」
「ええ、よろしくね」
それからしばらくして俺達は結婚して、そこそこ幸せに暮らし天寿を全うした。

「女神さんや、次の転生先はどこかいのう」
「次は結構平和だけど文明レベルは低い世界よ」
「よしわかった、俺の知識で無双チートしろということだな」
「ごめんなさい。今度は記憶引き継げないのよ……」
「なんでだよ!転生の意味ないじゃん」
「いやあのね転生って本来そういうものだから。がんばって普通に幸せな人生を送りなさいな」
俺は天界に帰ろうとする女神様を引き留める。
「いやだー、そんなの死んだも同然じゃないかー」
「死んでるのよ!私も忙しいんだからあきらめて」
「そこをなんとかー」
「ああもう!強ニュー経験者はこれだから嫌なのよーっ!!」
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

転生ギフトでドラゴンを貰いました。

銀狐
ファンタジー
絵を描くのが好きな大学2年生の新崎亮。 バイトへ向かうときに交通事故に合い、死んでしまった。 気づいたら目の前に神様。 そこで転生ギフトがあると言われ、ドラゴンを選びました。 ※『カクヨム』『小説家になろう』で同時掲載をしております。

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

愚者による愚行と愚策の結果……《完結》

アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。 それが転落の始まり……ではなかった。 本当の愚者は誰だったのか。 誰を相手にしていたのか。 後悔は……してもし足りない。 全13話 ‪☆他社でも公開します

母のギフトがすごいんです

江田真芽
ファンタジー
 幼き頃に亡くなった母から毎年届くギフト。 『日本で言えば亡くなった親が子どもの誕生日に先撮りしていたビデオレターでお祝いするとか、そんな感じよ』と母はギフト内で語っていた。  友人らが受け取るギフトは毎年一言。でも俺が受け取るギフトは何時間にも及ぶ内容。   今年のギフトで母は言った。 『実はお母さんもあんたも日本という国から来た異世界人なのよ。聖女召喚の儀でこの世界に呼ばれちゃったの。異世界人だから、ステータス画面が見れたりするのよ。便利よね』と。 ※最初しばらく暗いですw

処理中です...