シュガーポットはなくならない

壬玄風

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第一章 脱出

コーディネーターAYA

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「それじゃ、そろそろ用事済ませて帰ろっか」

 喫茶店を出ると、さらに賑わっている通りへと向かい、衣料品店が並ぶ一角へ。
 通りすがりにショーウィンドウや店内の様子をのぞいて見るとやっぱり黒や紺の服が多い。
 そこからさらに横道に入り、少し奥まった店に入った。どうやらこの店は黒服率が低いみたい。

「それじゃ理恵、私に服選ばせてよ」

「いいの?じゃあお願いするね」

 私は試着室でアヤを待つ。
 好きな人に服を選んでもらうのは嬉しいことだけど、果たしてアヤはどんな服を見繕ってくれるのだろうか。
 この国の許容範囲はかなり広いんだよね。
 日本ではちょっと眉を顰められそうな露出度高い服だって許容されてるみたいで、日本でいう水着みたいな服着てる子がいるけど、スタイルに自信があるんだろうなあ。実際に見惚れるほどきれいだし……
 私なんかが着て外出しても恥ずかしいだけだよね。あれ?なんかちょっと不安になってきたよ。

 あ、アヤが戻ってきた。

「さあ、この四種の服を着てみるがよい」

 1.ペールピンクのワンピース

「可愛い。でも園児服みたいでなんかちょっと」

「……」

 ん?アヤ?
 なぜ目を逸らす?


 2.女戦士風ビキニアーマー。

「結構重い……」

「金属鎧だからね。これでも部分的だから軽い方だよ」

「本当に防御力あるの?」


 3.オレンジ色のブラウス+ダークグリーンのスカート

「……このコーデはなくない?」

「湘南コーデだよ」

 日本で間違った知識を仕入れたらしい。


 4.インディゴブルーのポロシャツ

「下は?」

「これは裾が長いからこうしてワンピース風に着るんだよ」

「えー、それはちょっと」

「この国ではポロシャツに下着は一切つけないのが流儀だよ」

「さすがに嘘だよね」



 ☆ 結果発表!

「湘南コーデはともかく、ダークグリーンのスカートは落ち着いてて気に入ったよ」

「それじゃこれに合うトップ選んでくる!」

 アヤを待っている間、手元の服でいろんなコーデを試していた。

「おまたせー」

「きゃっ!?」

 突然試着室に入ってきたアヤに驚き、困惑する私。
 だって……全裸だったもの。

「なんで裸?」

「ポロシャツ着ようと思って……」

 下着なしで着るものだなんて信じたわけじゃないけど、なんかやってみたくなったんだよね。

「そんなこと言って、裸で待ってたんじゃないの?誘ってるよね」

 するとアヤは私にキスしながら身体をまさぐりはじめた。

「違う、誤解だよ」

 ああ、どうしよう。アヤの目が本気だよ。

 やばい私もおかしな気持ちになってきた。
 でも!だめだって!はじめてが試着室なんて……

 ああ、でもっ……乳首に触れられるだけで身体が熱く脈動を打つ。
 私この状況に興奮してるの?ああ、無理、もう止められない……

 ”……ピポパポピン……ピポパポピン……”

 理性を捨て欲望に呑み込まれようとした矢先、館内放送が聞こえてきて、私達は突然我に返った。

 危なかった。
 もう少し自制できるようになろう……

 私は天使の服を着直し、二人でこそこそとその場を離れた。

 帰りがけにスカート、ポロシャツに後から適当に選んだプリントTシャツだけは買ったけど、もうこれ以上買い物ができるような雰囲気じゃなくなり、日を改めて出直すことになった。
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