江の島案内します!

壬玄風

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江の島に着いたよ

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 私は高橋彰子。高校生。現在一人旅の真っ最中で、鎌倉から江ノ電に乗り江の島に向かっているところ。時折、車窓から美しい海が見える。ワクワクするなあ。

 ああちょっと待って。
 女子高校生が一人旅してるからって、友達がいないわけじゃないのよ。
 時には気兼ねすることなく自由に行動したいことってあるでしょう?
 ふとそんな気分になって地元福島を飛び出したの。

 さてさて、江ノ島駅に着いたよ。
 ああそうだ、いまのうちに家に定時連絡しておこうっと。

 私が一人旅するっていったら、母さんすっごく心配して連絡しろってうるさいんだよね。
 さっそく公衆電話の列に並んで、と。
 ラッキー!すぐ順番が回ってきた。

 私:あー母さん、今江の島ー!海が綺麗だよ!
 母:あらそうなの。早く帰ってきなさいな

 あーあ、心配してくれてるのはわかるけど、相変わらずそっけないなあ。百円入れて損した。
 もっと十円玉貯めておこうっと。

 江ノ島駅っていうけど江の島にあるわけじゃないんだよね。
 ここから歩いて橋を渡るんだって。よーしこの健脚見せてやろうじゃないか。


 はい到着。

 ガイドブックなどで断片的に情報を仕入れて来たけど、まずはどこに行けばいいかな?
 どのコースも魅力的で目移りしていると、背後から声をかけられた。


「あの、すみません」


 私に声をかけてきたのは、小柄な女の子だった。


「私ですか?」

「はい。突然ごめんなさい。どこから見て回ろうか迷っているように見えたものでつい」

「ええ……確かにそうだけど」

「良かったら案内させてもらえませんか?私何度も来てるから詳しいと思いますよ」


 一人で気ままに歩きたいんだけどな。とはいえ、適当に歩いて時間を無駄にするよりは、詳しい人に案内してもらうのも悪くはないかもしれない……と思ったのは、ここまで訪れた観光地でガイドブックだけでは心許ないという事実に気づいてしまったからだ。


「それならお願いしようかな。私は高橋彰子、福島から旅行に来てる高校二年生です」

「小野寺初穂、十四です。横須賀からよく遊びに来てます。こちらこそよろしくお願いしますね」


 私達は握手をして、歩き出した。
 とりあえず私は、少し早いけど昼食をとることにした。


「まずは腹ごしらえですね。それじゃ素敵なおそばやさんはいかがですか?」

「ええ、いいわね。行きましょう」


 二人で東の道を進み蕎麦屋に向かうが、件の店はなく、ドリンクショップになっていた。

「あっ、もう閉店していたみたいです。ごめんなさい」

「残念だけど仕方ないよ。あっちの店に行こう」


 初穂ちゃんは出端をくじかれて気落ちしていたけど、これは本当に仕方ないと思う。
 私達は近くのおしゃれな――とはいえどこにでもありそうな――レストランでおしゃべりを楽しみながらナポリタンを食べて店を出た。
 初穂ちゃんは流行等に疎く、芸能人は知らないし新語が通じないこともままあった。
 なんとも不思議な子だな。
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