59 / 74
56、巣離れ
しおりを挟む
そうして、待ちわびた報せが届くまでには、一年を要した。
他に何もない時には朝一番で、と決めている馬小屋の世話へと歩き出す。
集落の中でもほとんど端にある家から出て、別の端といえる馬小屋までの道すがら、一年の間に驚くほど様変わりした砦の様子を眺め、隣を見上げる。
「見違えるように、と言っても過言ではないだろうな。ここに砦を築いた時にも思ったが、集落や家を作るのが得手なのか?」
彼は彼で一日の仕事へと向かうアギレオが、アガ?と欠伸を噛み殺してから、淡く片頬に笑い。
「何言ってんだかな。ここに越してきた時にも、家建てるには外から大工入れてっし、ここ一年のは明らかにあいつらだろ」
褐色の顎がしゃくられる先に目をやり、合点して。
それぞれに仕事に取りかかり始める朝の景色の中、土を浅く掘り返しては整え、何人かで協力して、あちこちへと大小の石を運ぶ者達の姿を、少し目で追う。
「ヴィルベルヴィント達か」
そうそ、と頷くアギレオの声を耳に入れ。
「橋はともかく、その辺の石があっちにあろうがこっちだろうが、それがどうしたと思ってたが。こうも違うもんだとはな」
「本当だな。王都にも石畳の道はあるが、実際に道を作るというのは初めて見た」
二人で少し足を止め、増えた家々や、それらを繋ぐ石の道を眺める。
アギレオが捕らわれてから戻った頃に訪れたヴィルベルヴィントを代表とする、20人ほどの鹿の獣人達は、それほど経たぬ後に正式に砦に加わった。これに際して、ヴィルベルヴィントが“迎え入れてよかったと言わせる仕事をする”と堂々と言い切ったのを思い出し、頬が緩む。
これまで砦にいた獣人達とも違って、鹿の獣人達は農耕種族であり、人間達と同じ昼行性の生活だ。
新たな家に馴染むのも簡単ではないだろうに、ヴィルベルヴィント達は、畑仕事や生活面の仕事にも加わりながら、砦に居着くとすぐ、あちこちの整地と造成に取り掛かり始めた。
理屈でいえばどうということもない、アギレオのいう通り、元々地面にあった小石や別の場所の小岩を取り除き、人々が主に歩く場所に集めたものだが。
彼らの仕事は丁寧で、技術は高く、地面を削ってから敷き詰められた石の道は、小石を踏んだ時のようなわずかな不快感もない。当然、水はけはよくなり歩きやすく、靴や衣服の裾が汚れることが減って、洗濯が楽になったと、特に女性陣を大変に喜ばせた。
「石の道も相当なものだが、橋が変わったのは大きいな。架橋というのは貴重な技術だ」
「おうよ。外注すっと高えしな」
水場が多くて近い方がいいと、アギレオを中心に砦の面々が選んだこの場所は、ちょうど川の流れが二股に分かれる支流を抱え込み、砦を3つに分けている。
不便ではないのだろうかと思ったものだが、日々に欠かせぬ水を汲む場は、井戸であれ川であれ、確かに近くて多いに越したことはない。
この川を越える往来のために、丸太や木材で簡素な橋を架けていたのを、ヴィルベルヴィント達は頑丈な橋に架け替え、今も数を増やしてくれている。
仕事の効率すら上がった、と深く感心するところに、だなあとアギレオが頷き、また歩き出して件の橋のひとつを渡り。
「そうだそれで、例の防壁だ。リー達との話も加味した図案をヴィルベルヴィントに見せたんだが、やはり、簡単にはいきそうにない」
はいはい、とアギレオが相槌を打って。
「お前が書いてたアレな。アレはアレで話は合ってんだが、あのまんまじゃちょっと狭っ苦しいんだよなあ。手ェ割いて朝晩見回りも出てんだし、もうちょいどうとかこうとかなんねえかね」
「どうとかこうとか、な」
代名詞まみれだなと思いながらも、今や言わんとするところは充分に理解できて、では、どうとかこうとか思案してみねば、などと思い浮かべ。
あちらとこちらと、仕事に向かう道を別れようとするところで、再びアギレオと同時に足を止める。
東の方から聞こえたわずかなざわめきに目をやり、瞬いた。
二頭の馬に、二人の乗り手。遠目でも察せられる、砦の者でも、周辺の者でもない出で立ち。
「使者か」
アギレオに先立つよう、そちらへと歩き出しながら、次第にはっきりしてくる使者の様子に、思わず目を丸くする。
一人はローブ、もうひとりは軍装だが、騎士隊のものではない。
人間達に声を掛けて馬の鼻先を向ける二人も、こちらに気づいたのが分かる。
馬の足を速めて近付く距離をなお詰めるよう、思わず早足になる。
「メリリエル! ランシリエル!」
幼馴染みたちに呼びかける声に、馬上の一人が大きく手を振る。
「ハルカレンディア! 久し振り!」
「お待ちかねの報せを持ってきたわよ! 喜びなさい!」
少し向こうで馬を止め、ローブ姿が滑るように、軍装の方は颯爽と、それぞれに馬から降りるのに、駆けるようになる後ろに、ヒエ、などとアギレオが声をひそめているのが聞こえた。
「今度は女エルフか…」
夜が明けてしまっているから、と、リーは起こさずアギレオと二人で、メリリエルとランシリエルを食堂に案内した。
昼食の準備にはまだ早く、早朝の食事の片付けが終わって、食堂は今しがた空になったばかりだ。窓から日が差し込み、室内には穏やかな光が満ちている。
「彼女はメリリエル、国軍に属する有能な魔術師のひとりで、こっちのランシリエルは、私と同じ年ながら国内でも名の知れた剣士だ。二人とも私と同じく金の芽寮の出身者で、幼馴染みというわけだ。それで、この大男がアギレオ。この境の森砦の頭領を務めている」
「噂のアギレオね。ヴァルグ族を見たのは初めてだわ。よろしく」
淡い金髪が豊かに波打ち、ランシリエルが鮮やかな青色の瞳を笑ませる。
「ランシリエル、アマランタに会ってないのね」
あら、と声するメリリエルの意外な言葉に瞬き。
「アマランタに会ったのか?」
ええ、と、癖のない濃い蜂蜜色の金髪をサラリと揺らし、メリリエルが桃色の瞳で頷いた。
「あなたの書き付けを持ってたわよ。北東の山で見つけた薬草について、エルフの知識を得たいって訪ねてきたの。人間とは思えないすごい知識で、魔術師隊じゃしばらく引っ張りだこだったのよ」
それはすごい、と、思わず頬を緩め。
「ここにも優秀な魔術師がいるって聞いたから、楽しみにして来たの。よろしくね」
「よろしく。和平が決まった話だろ。使者が二人で来んのは初めてだな」
ついでに見学か?と顎をひねるアギレオに、大きく性格が違うのに子供の頃から仲の良い二人だ、帰りに物見遊山にでも行くのだろうかと相槌を打って。
「いいえ、留守番に来たのよ」
「ハルカレンディアがここに自分の代わりのエルフを寄越して欲しがってるって、前々から聞いてたから」
ああ、と、思わず声を上げそうになる。そう、アギレオが本気で考えてくれていると知って、一年前から、定期的に王都へ戻るたびに、心当たりはないかと方々に声を掛けていたのだが。
まさか幼馴染みたち、しかも女性二人が手を挙げてくれるとは思っておらず。
「和平が決まったら恋人と遠出したいから、しばらく誰かここに住めないかって」
屈託ないメリリエルの言いように、噴き出しそうになるのをこらえ、よじれたように咽せてしまう。
「そっ!? そんな言い方はしてないだろう!?」
「あら。そういう意味じゃなかった? 要するに、恋人の生まれ故郷まで、西の大陸の、しかも山奥まで行くのに何年もかかるから、そう簡単には代わりが見つからないのかと思ってたわ」
「いやッ、そ、それは……その通りなんだが……」
「その通りなんじゃない」
なによ、と、青色の目をたわませ、含むように笑うランシリエルの様子は相変わらずで、額を押さえてしまう。
「へえ。ここに住むのか? 女のエルフが? 二人も?」
へええ、と珍しいといわんばかりに繰り返すアギレオに、ええ、と彼女達が頷き。
「さすがに、勝手の分からない国境に、一人で何年も住み着くのは…、と思ってたんだけど、この間ランシリエルと話したら、同じように考えてたみたいだから、なら二人で行ってみる?って」
「無理ならまた王都に声をかけて、短い期間で交替していくことも考えるわよ。行ってらっしゃい」
相変わらず行動的で、しかも二人そろえば恐れ知らずと呼べるほどのメリリエルとランシリエルに、圧倒されながらも、気持ちも申し出も心からありがたく。
「本当にありがとう。心から感謝する。新しく建てた家にも、まだ人の入っていないものがあるから、案内しよう。アギレオ、いいだろうか」
面白そうに自分たちを眺めていたアギレオが、ン?と眉を上げてから、おうと快活な片頬笑みで頷いて。
「このところ、人数は減るより増える話が多いからな。家ももうちょい増やしとくかって話してたところだ。…が」
が?と、区切られるのに、浅く首を傾げ。
「まさか、和平の報せと同時に“行ってこい”とくるとは思ってなかったからな。リーとも前から準備してっから行くにゃ行くが、すぐのことにはならねえぜ?」
うん、と答えに頷く頬がゆるいのが、自分でも分かる。
「それは勿論そうだな。私も色々支度をしたいし、メリリエルとランシリエルにも砦のことをよくよく案内しておかなければ」
二人を振り返れば、何か声をひそめているのが、己と目が合った途端に声をそろえて「なんでもないわ」と微笑まれるのに、少し言葉に詰まるが。
「よろしくね」
「あら、自分で勝手に歩き回って確かめるわよ」
即答で答えの分かれる二人が、ちょっと!と、声を上げ、それからクスクスと笑い合っているのに、相変わらずだと思わずまなじりを緩めた。
他に何もない時には朝一番で、と決めている馬小屋の世話へと歩き出す。
集落の中でもほとんど端にある家から出て、別の端といえる馬小屋までの道すがら、一年の間に驚くほど様変わりした砦の様子を眺め、隣を見上げる。
「見違えるように、と言っても過言ではないだろうな。ここに砦を築いた時にも思ったが、集落や家を作るのが得手なのか?」
彼は彼で一日の仕事へと向かうアギレオが、アガ?と欠伸を噛み殺してから、淡く片頬に笑い。
「何言ってんだかな。ここに越してきた時にも、家建てるには外から大工入れてっし、ここ一年のは明らかにあいつらだろ」
褐色の顎がしゃくられる先に目をやり、合点して。
それぞれに仕事に取りかかり始める朝の景色の中、土を浅く掘り返しては整え、何人かで協力して、あちこちへと大小の石を運ぶ者達の姿を、少し目で追う。
「ヴィルベルヴィント達か」
そうそ、と頷くアギレオの声を耳に入れ。
「橋はともかく、その辺の石があっちにあろうがこっちだろうが、それがどうしたと思ってたが。こうも違うもんだとはな」
「本当だな。王都にも石畳の道はあるが、実際に道を作るというのは初めて見た」
二人で少し足を止め、増えた家々や、それらを繋ぐ石の道を眺める。
アギレオが捕らわれてから戻った頃に訪れたヴィルベルヴィントを代表とする、20人ほどの鹿の獣人達は、それほど経たぬ後に正式に砦に加わった。これに際して、ヴィルベルヴィントが“迎え入れてよかったと言わせる仕事をする”と堂々と言い切ったのを思い出し、頬が緩む。
これまで砦にいた獣人達とも違って、鹿の獣人達は農耕種族であり、人間達と同じ昼行性の生活だ。
新たな家に馴染むのも簡単ではないだろうに、ヴィルベルヴィント達は、畑仕事や生活面の仕事にも加わりながら、砦に居着くとすぐ、あちこちの整地と造成に取り掛かり始めた。
理屈でいえばどうということもない、アギレオのいう通り、元々地面にあった小石や別の場所の小岩を取り除き、人々が主に歩く場所に集めたものだが。
彼らの仕事は丁寧で、技術は高く、地面を削ってから敷き詰められた石の道は、小石を踏んだ時のようなわずかな不快感もない。当然、水はけはよくなり歩きやすく、靴や衣服の裾が汚れることが減って、洗濯が楽になったと、特に女性陣を大変に喜ばせた。
「石の道も相当なものだが、橋が変わったのは大きいな。架橋というのは貴重な技術だ」
「おうよ。外注すっと高えしな」
水場が多くて近い方がいいと、アギレオを中心に砦の面々が選んだこの場所は、ちょうど川の流れが二股に分かれる支流を抱え込み、砦を3つに分けている。
不便ではないのだろうかと思ったものだが、日々に欠かせぬ水を汲む場は、井戸であれ川であれ、確かに近くて多いに越したことはない。
この川を越える往来のために、丸太や木材で簡素な橋を架けていたのを、ヴィルベルヴィント達は頑丈な橋に架け替え、今も数を増やしてくれている。
仕事の効率すら上がった、と深く感心するところに、だなあとアギレオが頷き、また歩き出して件の橋のひとつを渡り。
「そうだそれで、例の防壁だ。リー達との話も加味した図案をヴィルベルヴィントに見せたんだが、やはり、簡単にはいきそうにない」
はいはい、とアギレオが相槌を打って。
「お前が書いてたアレな。アレはアレで話は合ってんだが、あのまんまじゃちょっと狭っ苦しいんだよなあ。手ェ割いて朝晩見回りも出てんだし、もうちょいどうとかこうとかなんねえかね」
「どうとかこうとか、な」
代名詞まみれだなと思いながらも、今や言わんとするところは充分に理解できて、では、どうとかこうとか思案してみねば、などと思い浮かべ。
あちらとこちらと、仕事に向かう道を別れようとするところで、再びアギレオと同時に足を止める。
東の方から聞こえたわずかなざわめきに目をやり、瞬いた。
二頭の馬に、二人の乗り手。遠目でも察せられる、砦の者でも、周辺の者でもない出で立ち。
「使者か」
アギレオに先立つよう、そちらへと歩き出しながら、次第にはっきりしてくる使者の様子に、思わず目を丸くする。
一人はローブ、もうひとりは軍装だが、騎士隊のものではない。
人間達に声を掛けて馬の鼻先を向ける二人も、こちらに気づいたのが分かる。
馬の足を速めて近付く距離をなお詰めるよう、思わず早足になる。
「メリリエル! ランシリエル!」
幼馴染みたちに呼びかける声に、馬上の一人が大きく手を振る。
「ハルカレンディア! 久し振り!」
「お待ちかねの報せを持ってきたわよ! 喜びなさい!」
少し向こうで馬を止め、ローブ姿が滑るように、軍装の方は颯爽と、それぞれに馬から降りるのに、駆けるようになる後ろに、ヒエ、などとアギレオが声をひそめているのが聞こえた。
「今度は女エルフか…」
夜が明けてしまっているから、と、リーは起こさずアギレオと二人で、メリリエルとランシリエルを食堂に案内した。
昼食の準備にはまだ早く、早朝の食事の片付けが終わって、食堂は今しがた空になったばかりだ。窓から日が差し込み、室内には穏やかな光が満ちている。
「彼女はメリリエル、国軍に属する有能な魔術師のひとりで、こっちのランシリエルは、私と同じ年ながら国内でも名の知れた剣士だ。二人とも私と同じく金の芽寮の出身者で、幼馴染みというわけだ。それで、この大男がアギレオ。この境の森砦の頭領を務めている」
「噂のアギレオね。ヴァルグ族を見たのは初めてだわ。よろしく」
淡い金髪が豊かに波打ち、ランシリエルが鮮やかな青色の瞳を笑ませる。
「ランシリエル、アマランタに会ってないのね」
あら、と声するメリリエルの意外な言葉に瞬き。
「アマランタに会ったのか?」
ええ、と、癖のない濃い蜂蜜色の金髪をサラリと揺らし、メリリエルが桃色の瞳で頷いた。
「あなたの書き付けを持ってたわよ。北東の山で見つけた薬草について、エルフの知識を得たいって訪ねてきたの。人間とは思えないすごい知識で、魔術師隊じゃしばらく引っ張りだこだったのよ」
それはすごい、と、思わず頬を緩め。
「ここにも優秀な魔術師がいるって聞いたから、楽しみにして来たの。よろしくね」
「よろしく。和平が決まった話だろ。使者が二人で来んのは初めてだな」
ついでに見学か?と顎をひねるアギレオに、大きく性格が違うのに子供の頃から仲の良い二人だ、帰りに物見遊山にでも行くのだろうかと相槌を打って。
「いいえ、留守番に来たのよ」
「ハルカレンディアがここに自分の代わりのエルフを寄越して欲しがってるって、前々から聞いてたから」
ああ、と、思わず声を上げそうになる。そう、アギレオが本気で考えてくれていると知って、一年前から、定期的に王都へ戻るたびに、心当たりはないかと方々に声を掛けていたのだが。
まさか幼馴染みたち、しかも女性二人が手を挙げてくれるとは思っておらず。
「和平が決まったら恋人と遠出したいから、しばらく誰かここに住めないかって」
屈託ないメリリエルの言いように、噴き出しそうになるのをこらえ、よじれたように咽せてしまう。
「そっ!? そんな言い方はしてないだろう!?」
「あら。そういう意味じゃなかった? 要するに、恋人の生まれ故郷まで、西の大陸の、しかも山奥まで行くのに何年もかかるから、そう簡単には代わりが見つからないのかと思ってたわ」
「いやッ、そ、それは……その通りなんだが……」
「その通りなんじゃない」
なによ、と、青色の目をたわませ、含むように笑うランシリエルの様子は相変わらずで、額を押さえてしまう。
「へえ。ここに住むのか? 女のエルフが? 二人も?」
へええ、と珍しいといわんばかりに繰り返すアギレオに、ええ、と彼女達が頷き。
「さすがに、勝手の分からない国境に、一人で何年も住み着くのは…、と思ってたんだけど、この間ランシリエルと話したら、同じように考えてたみたいだから、なら二人で行ってみる?って」
「無理ならまた王都に声をかけて、短い期間で交替していくことも考えるわよ。行ってらっしゃい」
相変わらず行動的で、しかも二人そろえば恐れ知らずと呼べるほどのメリリエルとランシリエルに、圧倒されながらも、気持ちも申し出も心からありがたく。
「本当にありがとう。心から感謝する。新しく建てた家にも、まだ人の入っていないものがあるから、案内しよう。アギレオ、いいだろうか」
面白そうに自分たちを眺めていたアギレオが、ン?と眉を上げてから、おうと快活な片頬笑みで頷いて。
「このところ、人数は減るより増える話が多いからな。家ももうちょい増やしとくかって話してたところだ。…が」
が?と、区切られるのに、浅く首を傾げ。
「まさか、和平の報せと同時に“行ってこい”とくるとは思ってなかったからな。リーとも前から準備してっから行くにゃ行くが、すぐのことにはならねえぜ?」
うん、と答えに頷く頬がゆるいのが、自分でも分かる。
「それは勿論そうだな。私も色々支度をしたいし、メリリエルとランシリエルにも砦のことをよくよく案内しておかなければ」
二人を振り返れば、何か声をひそめているのが、己と目が合った途端に声をそろえて「なんでもないわ」と微笑まれるのに、少し言葉に詰まるが。
「よろしくね」
「あら、自分で勝手に歩き回って確かめるわよ」
即答で答えの分かれる二人が、ちょっと!と、声を上げ、それからクスクスと笑い合っているのに、相変わらずだと思わずまなじりを緩めた。
0
お気に入りに追加
95
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
エリート上司に完全に落とされるまで
琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。
彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。
そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。
社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。
転移した体が前世の敵を恋してる(旧題;砂漠の砂は海へ流れ)
せりもも
BL
ユートパクス王国で革命が起きた。貴族将校エドガルドは、王への忠誠を誓い、亡命貴族となって祖国の革命政府軍と戦っていた。エイクレ要塞の包囲戦で戦死した彼は、ユートパクスに征服された島国の王子ジウの体に転生する。ジウは、革命軍のシャルワーヌ・ユベール将軍の捕虜になっていた。
同じ時間軸に転生したエドガルドは、再び、王の為に戦いを続けようと決意する。手始めに敵軍の将軍シャルワーヌを亡き者にする計略を巡らせる。しかし彼の体には、シャルワーヌに対する、ジウ王子の激しい恋心が残っていた……。
※革命軍将軍×異国の王子(亡命貴族)
※前世の受けは男前受けで、転生してからはけなげ受けだったはずが、どんどん男前に成長しています
※攻めはへたれで、当て馬は腹黒、2人ともおじさんです
※伏線、陰謀に振り回され気味。でもちゃんとB(M)Lしてます
[表紙]Leonard,ai

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる