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54、光と闇の臥所
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「口にするのもおぞましい、ねえ…」
げんなりとした様子ながら、腕組みに足も組み上げ、息を抜いてアギレオは身を緩める。
「一度は闇の生き物へと堕ちた徴をその身に残したが、光の世界へと戻れたことを、ヴァルグ達はたいそう喜び、そして、悔いた」
「悔いた?」
「選んで堕ちたのでないとはいえ、ヴァルグ達は群れなし、軍さえ率いて、人間やエルフ、ドワーフら、光の者をあまりにも多く殺した」
「……」
「そうして彼らは誓ったのだという。残った魔物達が追い込まれた北方と、その南へ広がる光の国々の境に棲まい、魔物達と戦い、南の国々を守り続けると。その罪が許され、魔の徴が失せるまで」
「ああ~…」
合点の声を漏らすアギレオに、おや、とラウレオルンが瞬いた。
「聞き覚えのある話か?」
ああ、と、短く頷いてから、今度はアギレオが口を開き、ラウレオルンが耳を傾ける。
「ヴァルグの角は、後から生まれるガキの方が小せえんだ。俺みてえに、一人勝手に山を下りることまでどうこうは言わねえんだが、年寄り連中は“角のない子供が生まれるまで”群れで山を下ることはねえとは言うなあ」
「ほう…。そなたの角は、そなたの父母よりも小さいか?」
興味深いとばかりのラウレオルンに、アギレオは顎を擦って。
「いや、…ううん…。親子くれえじゃそれほど違わねえな。だがまあ、例えば氏族で一番の年寄りと、一番若いやつなんかを比べると、確かに多少違えんだ」
「なるほどのう…」
短くない間、互いに思い沈むような沈黙を経て、さて、とラウレオルンの声が区切る。
「ヴァルグ族とは何者であるか、今となっては知る者は少ない。語って聞かされる者もわずかであり、書物に残されることも稀だ。ヒトに戻りたいと願ったヴァルグ達が、その願いをいつか叶える妨げにならぬようにと。――不愉快な話であったなら、すまなかった」
浅く瞼を伏せるラウレオルンに、なんだよ、と少し笑ってアギレオが眉を上げ。
「いやまあ、…確かに、ヴァルグでもそんな話を聞きてえやつも、聞きたくねえやつもいるだろうよ。俺としちゃ、そんな大昔の話されても…ってとこだが」
左様か、と笑うラウレオルンに、おうよ、と軽く応じて、もういいか?と、アギレオが椅子から腰を上げる。
「だがまあ、面白え話だ。聞かせてくれて感謝する」
浅く目を伏せ礼を取るアギレオに、ラウレオルンも立ち上がり、胸に手をやって、額を下げた。
「引き留めてしもうたな」
どういたしまして、とアギレオが肩を竦め。
「じゃあな。うちのエルフと半エルフと探して連れ帰るとするぜ」
パチン、と、ラウレオルンが指を鳴らすと、空になった椅子が姿を失せ、近衛の一人がアギレオの傍らへと進み出た。
「案内させよう」
ああ、と、アギレオが頷き、ラウレオルンがもう一度胸に手を置いてみせ、互いに短く別れを告げて。
こちらです、と、近衛が導いていくヴァルグの背を、玉座に掛け直し、エルフの王が見送った。
案内された積史館にて、案の定あれもこれもと駆け回ってなかなか離れたがらぬレビを待つ間、アギレオは、ハルカレンディアと並んで、楽しげな魔術師の様子を眺め。
何の話だったんだ?と尋ねるハルカレンディアに、国家機密ってやつさ、とアギレオは笑った。
やぶさかではない様子ながらも、砦が気に掛かっているだろうアギレオに、王都を案内するのは短い時に留め。今や砦は国軍の一部なのだ、また機会もあるだろうと帰路に就いた。
荷ほどきもそこそこに、家に着けば早速風呂に入りたいと言い出したアギレオに、では水浴びをしてくる、と返せば、ふと、見つめ合ってしまって。
互いに、そういう意図で言ったのではない、と、けれど、そういう意図に変えてしまおうか、とでもいうような、無言の内にも不思議な思いの疎通があって。
何の約束も確認もなく、家を出ればそれぞれ別の方向へと歩き出し、戻ってくるなり腕を伸ばして抱き合い、互いに水気の残る肌から衣服を脱ぎ捨てながら歩いて、寝室へともつれ込む。
寝台に放り出そうとするアギレオの腕に耐えて踏みとどまり、ン?などと鼻先で声しているのに、噛みつくようなくちづけの合間、ふふっと吐息で笑いをこぼして。
仰向けに寝転がらされると自由がきかない。
もっと、もっと触れていたい。
湯であたためられた熱い肌をまさぐり、太い首から肩に流れる皮膚のなめらかさや、筋張った固さをなぞって、背の広さを掌で数える。背筋の力強さが収束していくような引き締まった腰、一度なだらかになってから盛り上がる臀部。
互いに、時折こらえきれぬよう吐息を揺らしながら、けれど声にする間はないほど、唇を擦りつけては吸い合い、大きく突き出す舌で舌を舐めては絡ませ。
己の好きにさせてくれているつもりか、小さく肘を畳んで手狭のように挟み込み、ほぐすように胸を揉まれて息が溶ける。
性感よりも安堵のような快さが大きかったそれも、血の巡りが強くなるだに、敏感さを増して。
「あっ! は、」
そろそろもう、己もアギレオも、と、気づいてはいたけれど。
尻を掴み返され股座を押しつけられて、勃起したペニス同士が押し合うのに、息が漏れる。
どうしてそのような格好でそう確かに動かせるのか、素早く数度、裏筋同士を擦り合わさせられ、膝から力が抜けてしまう。
待ってましたとばかり寝台の上に放られれば、不意打ちで与えられた甘い刺激に気を取られて、あえなく身を投げ出し。
斜めに乗り込むように覆い被さるアギレオの舌が、左の乳首に触れて。尖らせた舌は熱いのに、ごく小さな動きで巡らされ、吐息が唾液を冷やせば時折ひんやりとして。
「ぅ、んゥ、ぁう!」
繊細な刺激にとろけそうな心地を、けれど逆の乳首をキュッとつままれ、背が跳ね上がる。
そのままペニスを握って焦らすように弄り回されれば、身体の制御すらも人の手に渡してしまったかのようで、溺れるように手を伸ばしてアギレオの頭を抱いて。
扱きながら裏筋をくすぐる器用な指に、ペニスの先が容易く濡れる。そのぬめりすら、弄ぶように亀頭に塗り広げられて、尻が動いてしまう。
「はっ、ぁ、ぁ、ぁ、ああ…!」
促されるまま躊躇いもなく精をやって、吐精の快感にしびれる指先をアギレオの頭皮に擦りつけ。
退くアギレオに手が届かなくなり、我が身の上に落ちた掌で、肌を撫でる。胸から肩、首筋、通う血の道に沿って快感は全身に運ばれるようで、自らの手ですら甘い。
脚を開かされて身を割り入れられ、あ、と、声をひとつで堪える。
たっぷりと塗り込まれる練り薬が冷たく、けれど、それに小さく身震いしただけで、身体は再び熱を上げて。
「アギレオ…」
浮つく足の片方を肩に担ぎ上げ、腿の裏まで愛撫してくれているアギレオの目が、ン?とばかりにこちらを向く。
「…もっと…こっちへ…」
足を肩に掛けさせられたまま身を寄せられ、尻が上がる。どうだとでも言うよう、開く穴の深いところを掻き回されて、声が出る。
どうした、と、落とされる低く甘い声に恍惚となりながらも、伸ばした手で探って、アギレオのペニスを握った。
うは、と笑う声を聞きながら、熱を持った掌にもなお熱い剛直を支え、わざと指先ばかり使って根から先へと裏をなぞり、先端にいたってクルリと亀頭の縁を一巡りさせてやる。
吐息ばかり絡ませるよう、言葉を失い互いの身体を弄んで。
握る手の中で脈打っては震え、時折跳ねる熱い肉の硬い感触。余らせる皮もないほど、張り詰めた反りに指を這わせ、こね回して。欲しいだろう快感を与えず、その端緒ばかりをつつき。
目を合わせて余裕のように笑い、こちらが与える快をわずかにだけ追い越すよう、尻の中でうごめく指は巧みに真っ直ぐな出入りばかりを繰り返す。
濡れた尻の穴にぬるぬるとこすれる往復の、身悶えるような悦さ。腹の中で指の腹がこする甘痒いような刺激。
穴を広げる指は細く、物欲しさで口を閉じられず。
早く言え、と互いに挑むよう絡ませる目線の向こうに、けれど三日月のようにたわむアギレオの瞳も濡れている。
「…っ、どうした、頑張るじゃねえか……」
こらえて掠れる声に、背が振るうほど感じる。
苦しいと答えて頷けば、ニヤリと笑う顔が。だが亀頭を括ってやれば獣のように呻いて、胸がとろけるようで。
「……、ッ、おい、…出、ちまうぜ、」
「、ふ、…だめ、だ……嫌…」
あン?と、次第にかすんで曖昧になっていく視界に見えずとも、片笑いしている顔が目に浮かぶ。
「…なんだよ。…降参だ、もういいだろ…」
何がしてえんだよ、と、声は耳の下の皮膚をふるわせ、それだけの刺激で声が出る。
なにということもない、成り行きだと思い浮かべて、けれど。
「い、っぃ、入れさせて、ください、と、言え…っ」
アギレオがしたがるような遊びを思いついて、もう彼の顔も曖昧であるのに、笑ってみせ。
ハ、と。短く息を区切ったのが聞こえて。濡れたペニスが容易く手から逃れ、尻の穴から指を引き抜かれるのに、そこがこすれて甘い声をしてしまう。
「あっ、ああ! ん、……は、ぁ、あァ…」
容赦なく押し込まれた勃起は、待ち望んだ渇きを満たして溢れるほど熱く、太く、硬い。
「やなこった」
「あっ、あ、ああ、…は、ぅ、んぅゥ、あ、ああ、いっ、いい、い、あ、」
手で触れ指で確かめていた猛々しいペニスの形が、脚の間の深みから、尻の穴をこじ開けて更に内側へと食い込んでくるのが、生々しくよく分かる。
弄ぶ指に掻き乱された粘膜は擦り上げられ、その奥の疼きが満たされて意識がおかしくなる。
身体の形を失い、甘くゆるい肉の塊になったような錯覚と、己の腹に身を沈めて息を切らすアギレオの吐息が、重ならないまま身の内に渦巻いて。
穴の形が馴染むのも待たれず、肉道を獣のように犯され、戯れを拒まれていいようにされているのに、解放されたような奔放な快感が膨れ上がり。
単調で激しい往復に突き上げられ、そのたびに性腺を轢き潰されて不規則に小さく絶頂を繰り返して。
「あッ…!」
腹の奥に射精され、己の身の内を汚しながら双眸をたわめて笑うアギレオに、眉を下げる。
「…ひどい、やつ……」
甘えるように芝居がかって詰りながら、また腹の内を絞るように極めて。甘っ怠い芝居が勝手に出てきてしまう驚きと、付き合うように眉を上げて、どうだとでもいう風な顔をするアギレオに、ひどく昂揚する。
艶めくというよりは甘っ垂れ、淫靡と呼ぶよりははしゃいだような気持ちで、褐色の首を抱き寄せ顎にかじりついて、続きをねだった。
げんなりとした様子ながら、腕組みに足も組み上げ、息を抜いてアギレオは身を緩める。
「一度は闇の生き物へと堕ちた徴をその身に残したが、光の世界へと戻れたことを、ヴァルグ達はたいそう喜び、そして、悔いた」
「悔いた?」
「選んで堕ちたのでないとはいえ、ヴァルグ達は群れなし、軍さえ率いて、人間やエルフ、ドワーフら、光の者をあまりにも多く殺した」
「……」
「そうして彼らは誓ったのだという。残った魔物達が追い込まれた北方と、その南へ広がる光の国々の境に棲まい、魔物達と戦い、南の国々を守り続けると。その罪が許され、魔の徴が失せるまで」
「ああ~…」
合点の声を漏らすアギレオに、おや、とラウレオルンが瞬いた。
「聞き覚えのある話か?」
ああ、と、短く頷いてから、今度はアギレオが口を開き、ラウレオルンが耳を傾ける。
「ヴァルグの角は、後から生まれるガキの方が小せえんだ。俺みてえに、一人勝手に山を下りることまでどうこうは言わねえんだが、年寄り連中は“角のない子供が生まれるまで”群れで山を下ることはねえとは言うなあ」
「ほう…。そなたの角は、そなたの父母よりも小さいか?」
興味深いとばかりのラウレオルンに、アギレオは顎を擦って。
「いや、…ううん…。親子くれえじゃそれほど違わねえな。だがまあ、例えば氏族で一番の年寄りと、一番若いやつなんかを比べると、確かに多少違えんだ」
「なるほどのう…」
短くない間、互いに思い沈むような沈黙を経て、さて、とラウレオルンの声が区切る。
「ヴァルグ族とは何者であるか、今となっては知る者は少ない。語って聞かされる者もわずかであり、書物に残されることも稀だ。ヒトに戻りたいと願ったヴァルグ達が、その願いをいつか叶える妨げにならぬようにと。――不愉快な話であったなら、すまなかった」
浅く瞼を伏せるラウレオルンに、なんだよ、と少し笑ってアギレオが眉を上げ。
「いやまあ、…確かに、ヴァルグでもそんな話を聞きてえやつも、聞きたくねえやつもいるだろうよ。俺としちゃ、そんな大昔の話されても…ってとこだが」
左様か、と笑うラウレオルンに、おうよ、と軽く応じて、もういいか?と、アギレオが椅子から腰を上げる。
「だがまあ、面白え話だ。聞かせてくれて感謝する」
浅く目を伏せ礼を取るアギレオに、ラウレオルンも立ち上がり、胸に手をやって、額を下げた。
「引き留めてしもうたな」
どういたしまして、とアギレオが肩を竦め。
「じゃあな。うちのエルフと半エルフと探して連れ帰るとするぜ」
パチン、と、ラウレオルンが指を鳴らすと、空になった椅子が姿を失せ、近衛の一人がアギレオの傍らへと進み出た。
「案内させよう」
ああ、と、アギレオが頷き、ラウレオルンがもう一度胸に手を置いてみせ、互いに短く別れを告げて。
こちらです、と、近衛が導いていくヴァルグの背を、玉座に掛け直し、エルフの王が見送った。
案内された積史館にて、案の定あれもこれもと駆け回ってなかなか離れたがらぬレビを待つ間、アギレオは、ハルカレンディアと並んで、楽しげな魔術師の様子を眺め。
何の話だったんだ?と尋ねるハルカレンディアに、国家機密ってやつさ、とアギレオは笑った。
やぶさかではない様子ながらも、砦が気に掛かっているだろうアギレオに、王都を案内するのは短い時に留め。今や砦は国軍の一部なのだ、また機会もあるだろうと帰路に就いた。
荷ほどきもそこそこに、家に着けば早速風呂に入りたいと言い出したアギレオに、では水浴びをしてくる、と返せば、ふと、見つめ合ってしまって。
互いに、そういう意図で言ったのではない、と、けれど、そういう意図に変えてしまおうか、とでもいうような、無言の内にも不思議な思いの疎通があって。
何の約束も確認もなく、家を出ればそれぞれ別の方向へと歩き出し、戻ってくるなり腕を伸ばして抱き合い、互いに水気の残る肌から衣服を脱ぎ捨てながら歩いて、寝室へともつれ込む。
寝台に放り出そうとするアギレオの腕に耐えて踏みとどまり、ン?などと鼻先で声しているのに、噛みつくようなくちづけの合間、ふふっと吐息で笑いをこぼして。
仰向けに寝転がらされると自由がきかない。
もっと、もっと触れていたい。
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互いに、時折こらえきれぬよう吐息を揺らしながら、けれど声にする間はないほど、唇を擦りつけては吸い合い、大きく突き出す舌で舌を舐めては絡ませ。
己の好きにさせてくれているつもりか、小さく肘を畳んで手狭のように挟み込み、ほぐすように胸を揉まれて息が溶ける。
性感よりも安堵のような快さが大きかったそれも、血の巡りが強くなるだに、敏感さを増して。
「あっ! は、」
そろそろもう、己もアギレオも、と、気づいてはいたけれど。
尻を掴み返され股座を押しつけられて、勃起したペニス同士が押し合うのに、息が漏れる。
どうしてそのような格好でそう確かに動かせるのか、素早く数度、裏筋同士を擦り合わさせられ、膝から力が抜けてしまう。
待ってましたとばかり寝台の上に放られれば、不意打ちで与えられた甘い刺激に気を取られて、あえなく身を投げ出し。
斜めに乗り込むように覆い被さるアギレオの舌が、左の乳首に触れて。尖らせた舌は熱いのに、ごく小さな動きで巡らされ、吐息が唾液を冷やせば時折ひんやりとして。
「ぅ、んゥ、ぁう!」
繊細な刺激にとろけそうな心地を、けれど逆の乳首をキュッとつままれ、背が跳ね上がる。
そのままペニスを握って焦らすように弄り回されれば、身体の制御すらも人の手に渡してしまったかのようで、溺れるように手を伸ばしてアギレオの頭を抱いて。
扱きながら裏筋をくすぐる器用な指に、ペニスの先が容易く濡れる。そのぬめりすら、弄ぶように亀頭に塗り広げられて、尻が動いてしまう。
「はっ、ぁ、ぁ、ぁ、ああ…!」
促されるまま躊躇いもなく精をやって、吐精の快感にしびれる指先をアギレオの頭皮に擦りつけ。
退くアギレオに手が届かなくなり、我が身の上に落ちた掌で、肌を撫でる。胸から肩、首筋、通う血の道に沿って快感は全身に運ばれるようで、自らの手ですら甘い。
脚を開かされて身を割り入れられ、あ、と、声をひとつで堪える。
たっぷりと塗り込まれる練り薬が冷たく、けれど、それに小さく身震いしただけで、身体は再び熱を上げて。
「アギレオ…」
浮つく足の片方を肩に担ぎ上げ、腿の裏まで愛撫してくれているアギレオの目が、ン?とばかりにこちらを向く。
「…もっと…こっちへ…」
足を肩に掛けさせられたまま身を寄せられ、尻が上がる。どうだとでも言うよう、開く穴の深いところを掻き回されて、声が出る。
どうした、と、落とされる低く甘い声に恍惚となりながらも、伸ばした手で探って、アギレオのペニスを握った。
うは、と笑う声を聞きながら、熱を持った掌にもなお熱い剛直を支え、わざと指先ばかり使って根から先へと裏をなぞり、先端にいたってクルリと亀頭の縁を一巡りさせてやる。
吐息ばかり絡ませるよう、言葉を失い互いの身体を弄んで。
握る手の中で脈打っては震え、時折跳ねる熱い肉の硬い感触。余らせる皮もないほど、張り詰めた反りに指を這わせ、こね回して。欲しいだろう快感を与えず、その端緒ばかりをつつき。
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濡れた尻の穴にぬるぬるとこすれる往復の、身悶えるような悦さ。腹の中で指の腹がこする甘痒いような刺激。
穴を広げる指は細く、物欲しさで口を閉じられず。
早く言え、と互いに挑むよう絡ませる目線の向こうに、けれど三日月のようにたわむアギレオの瞳も濡れている。
「…っ、どうした、頑張るじゃねえか……」
こらえて掠れる声に、背が振るうほど感じる。
苦しいと答えて頷けば、ニヤリと笑う顔が。だが亀頭を括ってやれば獣のように呻いて、胸がとろけるようで。
「……、ッ、おい、…出、ちまうぜ、」
「、ふ、…だめ、だ……嫌…」
あン?と、次第にかすんで曖昧になっていく視界に見えずとも、片笑いしている顔が目に浮かぶ。
「…なんだよ。…降参だ、もういいだろ…」
何がしてえんだよ、と、声は耳の下の皮膚をふるわせ、それだけの刺激で声が出る。
なにということもない、成り行きだと思い浮かべて、けれど。
「い、っぃ、入れさせて、ください、と、言え…っ」
アギレオがしたがるような遊びを思いついて、もう彼の顔も曖昧であるのに、笑ってみせ。
ハ、と。短く息を区切ったのが聞こえて。濡れたペニスが容易く手から逃れ、尻の穴から指を引き抜かれるのに、そこがこすれて甘い声をしてしまう。
「あっ、ああ! ん、……は、ぁ、あァ…」
容赦なく押し込まれた勃起は、待ち望んだ渇きを満たして溢れるほど熱く、太く、硬い。
「やなこった」
「あっ、あ、ああ、…は、ぅ、んぅゥ、あ、ああ、いっ、いい、い、あ、」
手で触れ指で確かめていた猛々しいペニスの形が、脚の間の深みから、尻の穴をこじ開けて更に内側へと食い込んでくるのが、生々しくよく分かる。
弄ぶ指に掻き乱された粘膜は擦り上げられ、その奥の疼きが満たされて意識がおかしくなる。
身体の形を失い、甘くゆるい肉の塊になったような錯覚と、己の腹に身を沈めて息を切らすアギレオの吐息が、重ならないまま身の内に渦巻いて。
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単調で激しい往復に突き上げられ、そのたびに性腺を轢き潰されて不規則に小さく絶頂を繰り返して。
「あッ…!」
腹の奥に射精され、己の身の内を汚しながら双眸をたわめて笑うアギレオに、眉を下げる。
「…ひどい、やつ……」
甘えるように芝居がかって詰りながら、また腹の内を絞るように極めて。甘っ怠い芝居が勝手に出てきてしまう驚きと、付き合うように眉を上げて、どうだとでもいう風な顔をするアギレオに、ひどく昂揚する。
艶めくというよりは甘っ垂れ、淫靡と呼ぶよりははしゃいだような気持ちで、褐色の首を抱き寄せ顎にかじりついて、続きをねだった。
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