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03、毒
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頭が重い。
脳がむくんでいるように感じて、呼吸はできているのに、息苦しい。
ハア!と、わざと大きく息を吐き出して、何も解決しないモヤモヤとした苦痛に失望しながら、目を覚ます。柔らかいものに触れている背中が軋む感覚に足掻こうと、もぞつかせる手足の先に痺れを感じた。
「もう目が覚めたのか。予測より少し早いな」
強く聞き覚えのある、けれど馴染みの薄い声。
それに、カルドゥワ語だ。
ハッと急に意識と記憶が転がり込んできて、身を起こす。
「ここは、」
ジャケットとベストを着ていない、きちんとアイロンされた素っ気ない白いシャツ姿になると、退役という言葉の意味を考え直してしまうほど、ネイハウスの背中が逞しいのが判る。
「ここはどこだ」
カフスのボタンを外しながら、肩越しに振り返る彫りの深い金髪碧眼。
様になる、という感想が蘇る。けれど、それよりも。
身を起こした上の方、頭の天辺から液体のようにみるみる流れ落ちていく、ねばついた不快感の去っていく感覚が、非現実的で、鳥肌が立つ。
思わず腕をこすれば、拭うようにそこからも痺れが取れて、えも言われぬ奇妙さに、余計震えが帯びた。
「血流の鈍化が確認されている。痺れのある場所は、そうやってマッサージするか、少し動かすといい」
袖と襟元を寛げてこちらに向き直るネイハウスを睨みつけ、それから辺りを見回し、深く眉間を詰める。
やけに広い部屋だ。放り出されているベッドも、正直言うとラブホテルでしか見たことがないくらい大きい。ベッドがあって、ネイハウスの後ろには鏡台。扉がいくつか。引き出しのチェストと開き戸のロッカーは、暗い木目調で、部屋の調度は品良く統一されている。
「ここはどこだと聞いたんだ」
睨みつける自分を、色のない表情で見下ろすネイハウス。
どこでどう途切れて、いつどうやって繋がったか分からないまま、続いているように見える。
毒を飲まされ、てっきり死んだと思ったが。
「友人の家、正確には別荘だ」
勢いよく声を荒げそうになり、大きく息を吸い込んで、吐き出す。
手負いの獣のように吠えつけることが、この男を動かすようには思えない。確信はないが。
「何故?」
短い言葉に、けれど意味が多くこもる。
「私と寝たいんだろう?」
「ハア!!?」
抑えたばかりの声を上げてしまったのが、自分のせいだとは思えない。
「勘違いか?」
眉を上げてみせるネイハウスに、絶句する。
勘違いでも間違いでもないが。
すべてが想像を超えていて、理解が及ばない。
気を失って、いや、失わされて、目覚めたらベッドに放り出されているという横暴もさることながら。毒を飲まされ、それも、自らそれを飲むよう促されることも。確かに自分が仕掛けた誘いだが、互いにそれを踏み込み確かめる手順も踏まず、確信を持っている傲慢さも。
なにもかもが、呆れるほどめちゃくちゃだ。
「気が変わったのなら、明日の朝送っていこう」
何の感慨もなさそうに言って踵を返す彼に、慌ててベッドから飛び降り、手を伸ばす。
手首を掴んだ手は、丁寧に引き剥がされた。
「OKってことだな、答えは」
我ながら中途半端になってしまった確認に、その内容を判断する短い間を置いて、ネイハウスがこちらに身を向け直す。
絨毯の毛足が長く、足音がしない。
「そうだ」
ゾクゾクゾク、と、短絡的な己の中の雄が興奮に震える。
離された手を持ち上げ、筋肉に沿って滑らかな稜線を描く胸に掌を置いて。抵抗されないと理解して、円を描くようにその胸を淡く撫でる。
もう少し、掌を押しつけ捏ねるように動かしても、乳首は浮いてこない。
だが、窪んだ眼窩の奥で瞼が伏せられ、薄く開いた唇が音もなく吐息を逃がす。
たまらず、少し首を屈めるようにして、下から掬うようにその唇を奪う。
閉じきらない目に、わずかに、だが明確に、彼も顎を傾けてくちづけを受け止めたのが分かり、膨れ上がるような欲望が背に広く広がった。
吐息を弾ませながら舌を押し込む己に、舌で受け止め、意外なほど情熱的に唾液を絡め合いながらも、ネイハウスが深い呼吸を繰り返していることが、掌で撫で回すシャツの下の身体から伝わる。
無礼で不愉快な言い様が得意な口の中を、蹂躙するよう舐め回し。
手で探って、彼自身が寛げかけていた襟元を見つけると、その合わせ目を下に辿りながらシャツのボタンを外していく。
ボタンを外す指の背に触れる肌のおうとつで、身体のどこか分かるほど、現役のアスリートのように正しく筋肉がついている。
この次はヘソ辺りかとおぼろげに思い浮かべるところで、スルリと衣擦れの音が耳に触れた。
細くはない。固くなった皮膚も多くゴツゴツした、だが指の長い手が、肩の裏と腰の裏に添えられて。ゆっくりとなぞるようにして首筋へ、脊椎から尾骨につながるくぼみへ、襟足から逆さに分け入って髪を掻き分け、背と腰の後ろ、スラックスの履き口にわずかに出来る隙間へと。
滑らかに手先を滑り込まされ、強く勃起してしまう。
みるみる血を集めて硬くなっていく股間を、遠慮なく互いのスラックス越し、向き合わせの股座に擦りつけ、ボタンを外しきったシャツを裾から引ったくるようにして剥ぎ取って。
これのせいかと思ったアンダーシャツを奪い取って、だが、手で探り当てた乳首は、やっぱり固くなってはおらず、弄り慣れてなさそうな小粒さだ。
嫌がらせのようにしつこく舌をしゃぶってやりながら、少しむきになって乳首をつまむ。つねって、捏ね、固くしてやろうと弄り回し。
「おい、痛い」
顔を引き剥がし、嫌そうにしているネイハウスの、唇がだらしなく濡れている。
「乳首は感じない?」
ああ。と、煩わしそうに答えられるのが愉快で、半ば抱えるように彼をベッドの上に放り出す。
何事もないように背中でシーツの上に着地する彼を見下ろしながら、引きちぎりそうになる指でボタンを外し、シャツを脱ぎ捨てる。
ネイハウスに比べれば可もなく不可もない程度だが、ジムにも通っていて見苦しくはないはずだ。
横たわったまま足を引き寄せ、革靴を脱いでベッドの下に落としている、後の方を手伝って放り出しながら、絵に描いたような軍人体型の上に覆いかぶさり。
ベルトを外しスラックスの前を寛げさせて、下着の上から膨らみを握る。ペニスは勃起していないが、蒸れそうなくらいには、そこだけ体温が上がっている。
芯を探すように揉み込んで、掌底で亀頭を擦らせてやりながら、晒された左の乳首を大きく舐め上げる。
感じないと言われたのは承知で、見えなくとも知れる、大きなため息をついて胸と腹が上下したのに、密かに笑いをこらえた。
どういうつもりでOKしたのか知らないが、経験が足りないだけのように思える。
そんな予想に追いつくよう、優しく舐め上げ、舌を尖らせてくすぐってやる乳首は尖り、頭の上では吐息が乱れはじめ、手の中のペニスが次第に大きくなってくる。
下着を下げて引っ張り出し、自然と張り詰めるのを手伝うようにのんびり扱いてやりながら、優しく育てた乳首に、淡く噛み付いてやる。
「ッ、」
詰めたかすかな吐息が、心地よく耳をくすぐった。
舌を伸ばし、今度は逆の乳首へと位置を変えながら、目を上げる。
角度のせいで顔は見えないが、手の甲で口元を押さえているのがわかる。
「男と寝たことが?」
息が乱れているせいか、短く一拍の間が空く。
「ある」
へえ、と、少し意外に思えて、けれど今更意外に思うのもどうかと、自分で少しおかしい。
少し身を起こし手を空けて、乱れた履き口を掴むと、一気に下着ごとボトムスを奪い取った。
脳がむくんでいるように感じて、呼吸はできているのに、息苦しい。
ハア!と、わざと大きく息を吐き出して、何も解決しないモヤモヤとした苦痛に失望しながら、目を覚ます。柔らかいものに触れている背中が軋む感覚に足掻こうと、もぞつかせる手足の先に痺れを感じた。
「もう目が覚めたのか。予測より少し早いな」
強く聞き覚えのある、けれど馴染みの薄い声。
それに、カルドゥワ語だ。
ハッと急に意識と記憶が転がり込んできて、身を起こす。
「ここは、」
ジャケットとベストを着ていない、きちんとアイロンされた素っ気ない白いシャツ姿になると、退役という言葉の意味を考え直してしまうほど、ネイハウスの背中が逞しいのが判る。
「ここはどこだ」
カフスのボタンを外しながら、肩越しに振り返る彫りの深い金髪碧眼。
様になる、という感想が蘇る。けれど、それよりも。
身を起こした上の方、頭の天辺から液体のようにみるみる流れ落ちていく、ねばついた不快感の去っていく感覚が、非現実的で、鳥肌が立つ。
思わず腕をこすれば、拭うようにそこからも痺れが取れて、えも言われぬ奇妙さに、余計震えが帯びた。
「血流の鈍化が確認されている。痺れのある場所は、そうやってマッサージするか、少し動かすといい」
袖と襟元を寛げてこちらに向き直るネイハウスを睨みつけ、それから辺りを見回し、深く眉間を詰める。
やけに広い部屋だ。放り出されているベッドも、正直言うとラブホテルでしか見たことがないくらい大きい。ベッドがあって、ネイハウスの後ろには鏡台。扉がいくつか。引き出しのチェストと開き戸のロッカーは、暗い木目調で、部屋の調度は品良く統一されている。
「ここはどこだと聞いたんだ」
睨みつける自分を、色のない表情で見下ろすネイハウス。
どこでどう途切れて、いつどうやって繋がったか分からないまま、続いているように見える。
毒を飲まされ、てっきり死んだと思ったが。
「友人の家、正確には別荘だ」
勢いよく声を荒げそうになり、大きく息を吸い込んで、吐き出す。
手負いの獣のように吠えつけることが、この男を動かすようには思えない。確信はないが。
「何故?」
短い言葉に、けれど意味が多くこもる。
「私と寝たいんだろう?」
「ハア!!?」
抑えたばかりの声を上げてしまったのが、自分のせいだとは思えない。
「勘違いか?」
眉を上げてみせるネイハウスに、絶句する。
勘違いでも間違いでもないが。
すべてが想像を超えていて、理解が及ばない。
気を失って、いや、失わされて、目覚めたらベッドに放り出されているという横暴もさることながら。毒を飲まされ、それも、自らそれを飲むよう促されることも。確かに自分が仕掛けた誘いだが、互いにそれを踏み込み確かめる手順も踏まず、確信を持っている傲慢さも。
なにもかもが、呆れるほどめちゃくちゃだ。
「気が変わったのなら、明日の朝送っていこう」
何の感慨もなさそうに言って踵を返す彼に、慌ててベッドから飛び降り、手を伸ばす。
手首を掴んだ手は、丁寧に引き剥がされた。
「OKってことだな、答えは」
我ながら中途半端になってしまった確認に、その内容を判断する短い間を置いて、ネイハウスがこちらに身を向け直す。
絨毯の毛足が長く、足音がしない。
「そうだ」
ゾクゾクゾク、と、短絡的な己の中の雄が興奮に震える。
離された手を持ち上げ、筋肉に沿って滑らかな稜線を描く胸に掌を置いて。抵抗されないと理解して、円を描くようにその胸を淡く撫でる。
もう少し、掌を押しつけ捏ねるように動かしても、乳首は浮いてこない。
だが、窪んだ眼窩の奥で瞼が伏せられ、薄く開いた唇が音もなく吐息を逃がす。
たまらず、少し首を屈めるようにして、下から掬うようにその唇を奪う。
閉じきらない目に、わずかに、だが明確に、彼も顎を傾けてくちづけを受け止めたのが分かり、膨れ上がるような欲望が背に広く広がった。
吐息を弾ませながら舌を押し込む己に、舌で受け止め、意外なほど情熱的に唾液を絡め合いながらも、ネイハウスが深い呼吸を繰り返していることが、掌で撫で回すシャツの下の身体から伝わる。
無礼で不愉快な言い様が得意な口の中を、蹂躙するよう舐め回し。
手で探って、彼自身が寛げかけていた襟元を見つけると、その合わせ目を下に辿りながらシャツのボタンを外していく。
ボタンを外す指の背に触れる肌のおうとつで、身体のどこか分かるほど、現役のアスリートのように正しく筋肉がついている。
この次はヘソ辺りかとおぼろげに思い浮かべるところで、スルリと衣擦れの音が耳に触れた。
細くはない。固くなった皮膚も多くゴツゴツした、だが指の長い手が、肩の裏と腰の裏に添えられて。ゆっくりとなぞるようにして首筋へ、脊椎から尾骨につながるくぼみへ、襟足から逆さに分け入って髪を掻き分け、背と腰の後ろ、スラックスの履き口にわずかに出来る隙間へと。
滑らかに手先を滑り込まされ、強く勃起してしまう。
みるみる血を集めて硬くなっていく股間を、遠慮なく互いのスラックス越し、向き合わせの股座に擦りつけ、ボタンを外しきったシャツを裾から引ったくるようにして剥ぎ取って。
これのせいかと思ったアンダーシャツを奪い取って、だが、手で探り当てた乳首は、やっぱり固くなってはおらず、弄り慣れてなさそうな小粒さだ。
嫌がらせのようにしつこく舌をしゃぶってやりながら、少しむきになって乳首をつまむ。つねって、捏ね、固くしてやろうと弄り回し。
「おい、痛い」
顔を引き剥がし、嫌そうにしているネイハウスの、唇がだらしなく濡れている。
「乳首は感じない?」
ああ。と、煩わしそうに答えられるのが愉快で、半ば抱えるように彼をベッドの上に放り出す。
何事もないように背中でシーツの上に着地する彼を見下ろしながら、引きちぎりそうになる指でボタンを外し、シャツを脱ぎ捨てる。
ネイハウスに比べれば可もなく不可もない程度だが、ジムにも通っていて見苦しくはないはずだ。
横たわったまま足を引き寄せ、革靴を脱いでベッドの下に落としている、後の方を手伝って放り出しながら、絵に描いたような軍人体型の上に覆いかぶさり。
ベルトを外しスラックスの前を寛げさせて、下着の上から膨らみを握る。ペニスは勃起していないが、蒸れそうなくらいには、そこだけ体温が上がっている。
芯を探すように揉み込んで、掌底で亀頭を擦らせてやりながら、晒された左の乳首を大きく舐め上げる。
感じないと言われたのは承知で、見えなくとも知れる、大きなため息をついて胸と腹が上下したのに、密かに笑いをこらえた。
どういうつもりでOKしたのか知らないが、経験が足りないだけのように思える。
そんな予想に追いつくよう、優しく舐め上げ、舌を尖らせてくすぐってやる乳首は尖り、頭の上では吐息が乱れはじめ、手の中のペニスが次第に大きくなってくる。
下着を下げて引っ張り出し、自然と張り詰めるのを手伝うようにのんびり扱いてやりながら、優しく育てた乳首に、淡く噛み付いてやる。
「ッ、」
詰めたかすかな吐息が、心地よく耳をくすぐった。
舌を伸ばし、今度は逆の乳首へと位置を変えながら、目を上げる。
角度のせいで顔は見えないが、手の甲で口元を押さえているのがわかる。
「男と寝たことが?」
息が乱れているせいか、短く一拍の間が空く。
「ある」
へえ、と、少し意外に思えて、けれど今更意外に思うのもどうかと、自分で少しおかしい。
少し身を起こし手を空けて、乱れた履き口を掴むと、一気に下着ごとボトムスを奪い取った。
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