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  第一章 異世界転生!?


「ひいくん――目を開けて! お願いだからっ」
「ひいろ! 父さんとの約束を破る気か? いっ、一緒に外を走るって、二人で……決めたじゃないか……」

 あれ? お母さんとお父さんが寝ている僕に抱きついている。
 なんで泣いてるのかな?
 僕は今、自分の病室でふわふわちゅうに浮かんで、ベッドに寝ている自分を見下ろしている。
 ふふ……変な夢。不思議な感じだな。
 あれ、んんん!? 
 宙に浮いてた僕の体が、突然上に引っ張られた。
 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
 僕はあっという間に自分の病室から、突然頭上に現れた真っ白な空間に引きずり込まれてしまった。
 白い空間の中に入っても、僕を引っ張る力は弱まることなく、ぐんぐんどこかに引っ張られていく――


        ★ ★ ★


 しばらくして、やっと動きが止まった。
 目の前には……何もない真っ白な世界が広がっている。
 これは何!? ここはどこなの?
 僕は病室で寝ていたはずなのに、気が付いたら宙に浮いてて……まだ夢の続きなのかな?

『おめでとう。ヤマトヒイロよ。其方そなたは神様ガチャで選ばれたのだ』
「うわっ!?」

 さっきまで何もなかったはずなのに、いきなり目の前に、見たことがないような綺麗きれいな男性が立っている。
 この人は誰!? もしかして僕、誘拐ゆうかいされちゃった!?
 どうして僕の名前を知ってるんだろう……? 
 怖いよ! お母さん、お父さん、助けて!
 僕は状況がめずに、パニックになって、ドキドキする胸を抑えながら、男性を見た。

『落ち着くのだ。ヤマトヒイロよ。おぬしは病気で死んだ』
「死!?」

 ……え。僕……死んだの?
 そうか、夢だと思っていたけど、上から見ていたのは、お母さんとお父さんと僕がお別れするところだったんだね。
 僕は生まれた時から重い病気で、だんだん悪くなっていってるのは、自分でもわかってた。
 いつ死んでもおかしくなかったけど、僕の体とうとう壊れちゃったのか。
 もう限界だったもんね。
 ……ってことは、ここって黄泉よみの世界!? この人はあの世の番人なの?

『私はこの世界の創造神そうぞうしん。あの世の番人などではない。そしてお主のたましいは神様ガチャによって、私がつくる世界の住人に選ばれたのだ。お主が次に生まれ変わるのは、科学の代わりに魔法が発達した世界……』
「神!? 選ばれ……? 僕が……?」

 何を言ってるの? ちょっと意味がわからない。魔法ってどういうこと?
 っていうか、創造神様に心の声が聞かれてる!?

「ふふふ、そうだ。それと、神様ガチャは魂を選ぶ時の方法のことだ」

 魂を選ぶ? なるほど、くじ引きみたいに魂を選ぶみたいな感じなのかな?
 それで、僕の魂が出てきたってこと? よくわからないけれど……

『前世では病気でやりたいこともできず、それでも弱音を吐かずに、つらい経験をよく乗り越えた。お主が頑張った褒美ほうびとして、おそらく神様ガチャが選んだのだ』

 創造神様が僕の頭をでる。神様ガチャで選ばれることは、ラッキーなことみたいだ。
 僕は急にめられて戸惑ってしまった。そんな僕……頑張ってないし……
 胸が苦しい。
 だって……だって、僕がお母さんとお父さんに迷惑をかけるような体で生まれちゃったから。
 二人が悲しむのは、僕のせいなんだ。

『もう頑張らなくていいんだ』
「頑張らなくて……いい?」

 創造神様にそう言われて、目を見開く。
 お母さんとお父さんには、せめて心配かけないように毎日笑顔でいようって、何があっても笑ってた。痛い検査や注射だって我慢がまんした。本当はすっごくいやだったけど。
 お母さんとお父さんが心配そうな顔をするから……平気だよって笑ってたんだ。

えらいぞ。いい子だ。もう無理して頑張らなくていいんだ』
「あ……ぼっ、僕。ふぅう……」

 気が付いたら、僕は大粒おおつぶなみだをポロポロと流していた。
 僕はこれまで、泣くことをずっと我慢してた。
 ベッドから一歩も動けないことを愚痴ぐちると、お母さんは『元気な体に産んであげられなくてごめんね』って泣くんだ。
 でも僕が笑うと、大好きなお母さんとお父さんも笑ってくれた。
 そんな二人を見るのが、僕は大好きだった。
 今まではずっと泣かずに笑っていたけど、もう……我慢しなくていいんだ。
 そう思ったら、涙があふれて止まらなかった。
 もう泣いても、大好きなお母さんとお父さんを悲しませないで済むんだ。

「ああああぁっ!」

 泣き叫ぶ僕の頭を、創造神様はずっと優しく撫でてくれた。

『落ち着いたか?』
「あ……はい」

 しばらくして泣きやんだ僕を見て、創造神様が優しく笑う。

『……ってことで、神様ガチャで選ばれたヒイロの願いを叶えてあげるわ。願い事は何かしら?』
「うわぁ!?」

 突然、創造神様と違う声が聞こえてきて、驚いて辺りを見回す。

『そんなに驚かなくてもいいじゃない。失礼ねぇ。私は美と豊穣ほうじょうの女神、よろしくね』

 創造神様の後ろから、桃色ももいろの髪をした綺麗な女性が、ひょこっと顔を出した。
 この人どこからあらわれたんだろう? 神様って瞬間移動とかできるのかな……
 それにしても、願いって……そんなことを急に言われてもわかんないよ。
 何かもらえるの?

『神様ガチャに選ばれた人は、特典として、生まれ変わる時に特別な力をもらえるの』

 特別な力……? 

『ヒイロはね、病気になってしまったから、前世で何もできなかった。でも心を病むことなく、前向きに頑張っていたでしょう? 創造神も言っていたけれど、そのご褒美よ』

 ご褒美か……本当に僕がもらってもいいのかな?

『いいのよ。さぁ、どんな特典が欲しい?』

 あれ? さっきから話してないのに、女神様も答えを返してくれる。
 ってことは、やっぱり! 僕が考えていることは全て筒抜つつぬけなの!?

『はははっ。当たり前だ。私たちは神だからな。頭でも口でも好きなほうで話すがいい』

 創造神様が楽しそうに笑う。
 そっ……そうなんだぁ! 心の声がダダれとか、ちょっと恥ずかしい。

『色々話しすぎたわね。もう時間がないわ。あと三分で希望を言ってね?』

 女神様がにっこり笑いながら、僕に話かける。
 え? 三分!? そんな急に決められないよ!

『はい。残り二分と四十八秒!』

 わぁぁっ! 急がないと!
 ええと、ベッドであさっていた本の知識を引っ張り出して……
 ファンタジー小説の主人公たちは、皆チート能力をもらってたよね。
 見た目も好きなようにできるのかな……? 
 ああ! 猫獣人ねこじゅうじんとかいいかも! もふもふ最高! 
 前世では映像を見るだけで、動物にれることは叶わなかったから。
 あとは、絶対病気にならない健康な体が欲しい。苦しむのはもう嫌だ。
 あっ……そうだ! スキルは何がいいかな……
 なんでも無制限に入る《アイテムボックス》と、色々便利そうな《鑑定かんてい》は必須ひっすだよね!
 いきなり知らない誰かと会うのは、緊張するなぁ。僕、誰かと上手に話せる自信ないし……最初はあんまり人がいないところから冒険を始めたいかも……

『はい! 時間切れ~! ヒイロの願いは、見た目がもふもふで、健康な体。スキルは《アイテムボックス》と《鑑定》を希望するのね。あと、前世の記憶は残して……初めはに会いたくない、っと。わかったわ、全て叶えてあげる! では、転生させるわね』

 え? もう転生!? 心の中で色々と考えてたけど、全て叶えてもらえるの?
 どれか一つだけかと思ってた! これってすごくラッキーなんじゃ?

『ではヒイロ、次の人生楽しんでね』

 女神様の言葉を聞いたあと、真っ白で明るかった世界が暗転して、僕は意識を手放した。


        ★ ★ ★


「うわぁ……」

 しばらくして意識が戻り、目を開けると、目の前には見たこともない景色が広がっていた。
 ここはどこかな? 見渡す限り木や草しかない。
 未開のジャングルに、いきなり放置されたようだ。
 ちょっと待って、これ思ってたのと違う。
 僕はてっきり赤ちゃんからスタートするのかと思っていたのに、森で一人ぼっちなんて……
 あれ? なんで? チートはどうやったら使えるの~!
 自分が置かれた現状を理解できず、混乱して呆然ぼうぜんと立ち尽くしていると――

『お~い。ヒイロ!』

 この声は女神……様?

っていっても、誰もいないところで赤ちゃんからスタートするのは流石さすがにかわいそうだから、特別に前世の年齢と同じ十歳にしてあげたわよ。あと、人の言葉も理解できるようにしておいてあげたわ。じゃ、頑張ってね』

 あっ……! 女神様が最後に言っていた言葉が、頭をよぎる。

『初めはに会いたくない』

 ああああーっ! だからか! だから、森に転生させられたのか。
 人が少ない村とか、辺境に転生させてほしいってことだったんだけど……
 あの時、もっと上手く説明できてたら!
 そもそも、『いきなり知らない誰かと会うのは、緊張する』なんて、考えなければ……
 まさかの異世界ぼっちスタートだなんて。今の自分の状況を理解して、早々に落ち込む。

「なんでぇぇぇぇ!」

 思わず両手で顔をおおうと――プニッとした、なんとも言えない感触がほほに触れる。

「え?」

 両手を見ると、そこには可愛かわいい肉球と、それを取り囲むふわふわの茶色い毛。
 あれ? 手が毛だらけ……
 僕はあわてて自分の体を見た。足もお腹もふわふわした毛で覆われている。
 あれ、僕……もしかして全身毛むくじゃら?
 なんか、想像していた猫獣人と違うんだけど……
 これじゃ、二足歩行する猫じゃないか! 
 でも視線の高さからして、背丈は普通の猫よりも大きくて、幼児くらいありそう。
 確かに、あの時『猫獣人とかいいかも! もふもふ最高!』って思ったけど、 容姿については詳しく考えてなかった。
 ああああああっ! 僕ってば、間違えてばっかりじゃん。
 顔はどうなっているんだろう……
 ファンタジー小説によく登場する、人の姿に猫耳の獣人に憧れてたんだけどなぁ。
 まぁ、いいか。毛並みふわふわだし。
 とりあえずもふもふを満喫まんきつしてみようと、僕は自分を抱きしめてみた。

「ふわぁぁぁぁぁぁっ!」


 もふもふってこんなにも気持ちいいの? ずっと触っていたいよ。
 ぬいぐるみとは比べ物にならないや。

「ああ……幸せ」

 もふもふをたっぷりと堪能たんのうしたあと、改めて自分の全身がどうなっているのか確認したくなって、辺りを見回す。
 流石にこんなところに鏡はないよね……
 前世で読んでいたファンタジー小説では、こういう時は大体、水に自分の姿をうつしてたなぁ。
 あれ、なんとなくだけれど、あっちのほうに水場があるような気がする。
 水のにおいがする……意識したら木々や土の匂いも感じることができた。
 猫だから、色んな匂いをけられるのかな?
 死んじゃう前はずっと病室の中にいたから、こんなに濃い自然の匂いは嗅いだことがない!
 色んな匂いも、足の裏に触れる草や土の感触も、今まで味わったことがない。
 全てが新鮮で幸せ。

「よし、行ってみるか」

 この直感が当たってるのかわからないけれど、僕は思いっきり走ってみた。
 気持ちいい。これが『走る』……!
 僕は今、走ってるんだ! 前世で憧れてやまなかったことをしてるんだ!
 うぅ……嬉しいよう。体中で息をしているみたいだ。
 呼吸が早くなって息苦しいはずなのに、それさえも心地いい。ああ。幸せだなぁ。
 神様、さっきはちょっとがっかりしちゃって、ごめんなさい。
 僕は今、最高に幸せです。
 走れることが嬉しくって、無我夢中むがむちゅうで走っていると、目の前に青く輝く泉が現れた。
 本当に水場があった! 匂いは当たってたんだ。僕ってすごい!
 泉に近付いて、恐る恐る覗き込む。

「わっ!?」

 水面みなもに映し出された姿を見て、思わず声が出た。
 だって、この姿はまるで……アメリカンショートヘアーじゃないか!

「僕……可愛い」

 何も言ってないのに、僕が一番好きな猫の姿にしてくれた。
 偶然かもしれないけれど、創造神様ありがとうございます。
 この姿、最高に気に入りました。
 前世のファンタジー小説に出てくる猫獣人の姿じゃなくていいです。
 二足歩行ってのが、ちょっとシュールではあるけれど……
 でもね、可愛いからいいんだ。
 初めは思っていたのと違ったからどうしようかと思ったけど、これも最高だよね。
 さぁ、異世界スタートだ!
 キラキラと輝く水面を見ていたら、喉がかわいてきた。ゴクンッと生唾なまつばを吞み込む。
 水をたくさん飲みたい! こんな気持ちは初めて。
 口の中をお水でいっぱいにしたい!
 前世の時の僕は、ベッドで寝たきりで、食べ物も飲み物も、いつもゆっくり口にしていた。
 量も少ししか食べられないから、毎日の食事は栄養に特化した流動食。
 それが悲しいって思ったことはないけれど、思いっきりご飯を食べたり、ジュースを飲んだりするのってどんな感じなんだろうって、色々な想像をしていた。
 たまにお母さんがあめを少しだけ舐めさせてくれるのが、楽しみだったなぁ。
 もっと色んなものを食べたいと言って、お母さんを困らせちゃったこともあったっけ。
 お母さんはそんな僕の希望をいつも叶えようとしてくれた。

「ふふふ」

 前世の記憶を思い出すと、辛いこともあったけど、嬉しいこともいっぱいあった。
 さて、お水を飲むぞ!
 でもどうやって飲む? コップなんてもちろんないし……
 ええい!
 ドブンッと顔を泉に入れて、その勢いのまま飲む。ゴクッゴクッ、と喉が鳴る。

「プハァ~ッ!」

 美味しい! 水が喉を通る感覚がたまらないや。
 思いっきり飲み物を飲むと、こんな感覚なんだ。楽しい!
 僕は再びドブンッと泉に顔をつけ、水を飲む。

「はぁぁ♪  幸せ」

 本当は女神様からもらったスキル、《鑑定かんてい》で調べてから飲んだほうがいいんだろうけれど、早く飲みたかったから仕方ない。
 そもそも《鑑定》はどうやって使うのかな?

「わっ!」

 頭の中で《鑑定》って念じたら、そこら中にあるもの全てに、透明のネームプレートが浮かび上がった。
 すごい……ちょっと情報量が多すぎて、これは慣れないと目が疲れそう。


 【精霊せいれいいずみ
   精霊の力が宿る泉。濃い魔素まそが満ちている。
   結界が張ってあるため、見つけることが困難。泉の水を飲むと力がみなぎってくる。
   この泉の水はドラゴンの好物であり、この場所を見つけることができる高位のドラゴ
   ンなどが、まれに泉の近くに住処すみかを作っていたりする。


 泉の情報だ! ふむふむ……精霊の泉? 
 魔素っていうのは、魔法のもとみたいなものかな。
 えっ? ドラゴンの……好物!? 住処!? 
 ちょっと待って、これって……僕ピンチなんじゃ?
 だって、ドラゴンが近くに住処を作ってるかもしれないんだよ。
 せっかくいい泉を見つけたけど、急いで逃げなくちゃ。

「ん!? あれ……は?」

 泉から離れようとした時。
 森の中から小さな女の子が現れて、泉の中に入っていった。こんなところに子供!?

「なんで!?」

 女の子の様子を見守っていると、泉に入ったはいいものの泳げないみたいで、ブクブクとしずんでいく。

「あっ! 沈んじゃう、助けないと!」

 僕は勢いよく泉にダイブした。とっさの行動だった。
 あの子のところに行くんだ! 助けるんだ!
 でも……あれ? ちょっと待って、どうやって泳ぐの?
 そういえば僕、泳ぎ方なんて知らない。

「アブブッ、ゴファ……」

 体が泉の中に引き込まれる。
 何をやってるんだ僕は、泳げないのに飛び込むとか!
 胸がっ、苦しっ……転生してすぐに死んじゃうの?
 そんな嫌なことを考えた次の瞬間。僕の体がいきなり浮上した。

「ぷはぁっ! はぁっはぁっ」

 え? ……息ができる?
 下を見ると……泉の水面と自分の足が見える。
 ……僕、浮いている?

「なんで?」
『大丈夫かい?』

 頭の上から声が聞こえた。

「……え? うわぁぁぁ」

 声のするほうを見ると、大きなドラゴンが僕を前足で掴み、空に浮かんでいた。
 さらにもう一つの前足で、おぼれていた女の子を掴んでいる。

『急に大きな声を出すんじゃないよ。変わった猫獣人さね』

 大きなドラゴンが僕に話しかける。

『なんで泳げないのに泉に飛び込んだのさ』

 不思議とドラゴンの話している言葉がわかる。なんでかな?
 って、こんなこと考えてる場合じゃない! 返事をしないと。

「そっ、それは……その子が……溺れて死んじゃうかと思って……」

 僕はそう言って、ドラゴンが掴んでいる女の子を指さした。

『あははっ。面白いことを言う猫さね。我らはこんなことで死んだりしないさ。コイツはね、寝ぼけて泉に入ったのさ』

 ドラゴンはそう言って、前足で掴んでいた女の子を地面に放り投げた。

「わっ! 落ちちゃっ……」

 すると女の子は、瞬く間に子供のドラゴンの姿へと変身し、翼を広げパタパタと空を飛んだ。

「さっきまで人の姿をしていたのに……」
『我ら竜族りゅうぞくは、成人するまで見た目が安定しないのさ。意識しないと、人の姿になったり、ドラゴンの姿になったりしてしまう。この子は手のかかる私の四番目の子供さ』

 そう言って、ドラゴンのお母さんは僕を地面に下ろしてから、飛んでいる子供ドラゴンに寄り添う。
 見た目は大きくって怖いけど、なんとなく悪いドラゴンじゃないってわかる。
 このお母さんドラゴンを見ていると、前世のお母さんを少し思い出すから。
 それに僕を助けてくれて、そっと地上に下ろしてくれたし、何より子供ドラゴンや僕を見る目が優しい。

「あのう……助けてくれてありがとう」
『ふふ。この泉で会ったえんさ。ここには特殊な結界が張ってあって、簡単に近寄ることはできない。なのに、不思議な猫が聖域せいいきに入ってきたんだ。興味が湧くってもんさ』

 大きなドラゴンが、ハハハと笑う。つられて僕も笑ってしまう。

「そういえば、なんで言葉がわかるの?」
『んん? そりゃ、お前たちの共通言語で話してやってるからさ。我ら竜族は言葉を話さなくとも会話ができる。ただ、長く生きていたら、お前たちの言葉も覚えてしまったさね』
『ん。そう』

 お母さんドラゴンの言葉に、子供ドラゴンも頷く。

『まぁ、この子はまだ共通言語を上手く話せないから、カタコトだけどね』

 お母さんドラゴンが子供ドラゴンを見てニヤリと笑う。

『むっ、そんなことない』

 子供ドラゴンが頬をぷぅっと膨らませる。
 その姿があまりにも可愛くって顔がほころんでしまう。
 異世界で初めて出会ったのが、この優しいドラゴンたちでよかったなと思った。
 そんな時。ぎゅるるるっるるるっ!


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