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4巻
4-2
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聖龍様との挨拶を終えて湖のふちに戻ると、ファラサールさんが待っていた。
「ティーゴ君。妖精の粉をプレゼントするよ!」
「えっ、いいんですか? こんな貴重なもの……!」
ファラサールさんが、俺に妖精の粉をプレゼントしてくれた。妖精の粉はかなり貴重で、今くれた小さな一瓶だけでも金貨数百枚はくだらないって聞いた。
そんな貴重なものをポンっとくれるなんて……。
「ありがとうございます!」
「ふふっ、これで上手に飛ぶ練習してね?」
……くそう。嬉しいのに何だろう。素直に喜べない……! 絶対に上手く飛べるようになってやる!
俺は気を取り直して、エルフの里を発つことにする。
「じゃあ……ルクセンベルク街に行きますか。銀太頼んだよ!」
『任せるのだ!』
ルクセンベルク街か。俺が神様に祭り上げられて、逃げ出して以来だな。さすがに大分時が経ったし、もう落ち着いてるだろうな!
…………なんて、のん気に考えていた俺が、バカだった……。
――何だこれ⁉
転移して来た広場には大きな銅像が……これは……どう見ても俺達。
『ほう……これは我か! 中々カッコ良いのう。我は気に入ったのだ!』
銀太は銅像を見て、尻尾をブンブン振って嬉しそうだけど!
元からあったカスパール様の立派な銅像の横に、俺達の銅像が負けじと並んでいた。
銅像を立てたって話は聞いて知ってたけど……こんなに大きいなんて! しかも街の一番目立つ場所に……!
銅像は俺の他に、銀太とスバル。そして人化した一号、二号、三号……それに! この時まだ卵だったはずのティアまで俺の肩に座っている。
何でだ⁉ いつティアのことを知った?
さらに周りの商店街を見渡せば……。
神様――つまり俺達のことだが――の商品が至る所で販売され……賑わっていた。
絵姿に加えて、銀太やスバルの形をしたぬいぐるみ、小さなチャームなど、種類が多過ぎて挙げたらキリがない。
「ファ……ファラサールさん、これって?」
「ああ! 神様グッズかい? ルクセンベルクの一番の人気商品なんだよ? 神様グッズのおかげで街が潤ってね? 魔族に壊された街が、すぐに立ち直ることが出来たんだよ」
「いやっ……はは。街が潤うのはいいんですが……この神様の絵姿とか俺達そっくりですよ? 誰がこんな上手に? 俺の顔なんてよく見られてないはずなのに。凄くよく出来てて……」
「そりゃそうさ! 僕も力を入れて頑張ったからね!」
――何だって⁉ 僕が力を入れて?
「えっ? ちょっ⁉ ファラサールさんもこれに関わってるんですか?」
「あっやっ? ちょっと手伝っただけだよ? 僕は全く関係ないよ?」
そう言いながらも、明らかにファラサールさんの様子はおかしい。瞳をキョロキョロさせ、手は落ち着かず指をモジモジと動かしている。
怪しすぎるだろ! 誤魔化すの下手か。
気が付くと俺達の周りに人垣が出来ていた。
一気に周囲がザワザワと騒がしくなる。
「神様が降臨された」「お姿を目に焼き付けないと」「麗しい」「神様ー! もういつ死んでも後悔しない」「ああ神様ー!」
みんなが手を合わせて俺達を拝んでいる。
ちょっと! 俺、神様じゃないからね? みんなと同じ人族だから!
そんな俺の気持ちとは裏腹に、どんどん人が集まってくる。このままこの場所に居るのはマズいな。
「銀太、ギルドに転移してくれ!」
『分かったのだ!』
ファラサールさんを連れて冒険者ギルドに転移し、俺達は二階の部屋に急いで駆け上がる。
凄いな……前に街を救った時より盛り上がってないか?
俺の疑問を察したのか、ファラサールさんが言う。
「今やこの街で、神様は凄い人気なんだよ! 神様グッズを集めると幸せになれるって噂も広まって、他国から買いに来る人も居るくらいなんだよ?」
他国……だと⁉ この国での旅を終えたら、他国にも行ってみようと思ってるのに……やめてくれ! この辱めを他国にまで広めないでくれ!
結局、俺達はこの街での買い物は諦めて、ドヴロヴニク街で買い物をすることにした。
こんな状態で買い物なんて絶対に無理だからな。
「あっ! そうそう、ティーゴ君。お土産貰って行ってよ。ルクセンベルクまで送ってくれてありがとう! またいつでも遊びにおいでよ?」
「うん……もう少し街が落ち着いたらまた来るよ! お土産ありがとう」
ドヴロヴニク街に転移する前に、ファラサールさんがお土産をくれた。大きな袋だな? 何が入ってるんだ?
★ ★ ★
ドヴロヴニク街での買い物を終え、俺と銀太は異空間に帰って来た。
自分の家があるっていいな。落ち着くよ。
家に入ると、そのままみんなが寛いでいる居間へと向かう。
「ただいまー!」
「お帰り! 何を買って来たんじゃ?」
俺に気付いたパールが、ゆらりと尻尾を揺らしながら近寄ってくる。
「食材とか調味料とか……追加でパールが欲しがってた種とか色々買って来たよ!」
「そうか! バッチリじゃのう。それで外の畑は見たか?」
パールは嬉しそうに話す。
「見たよ、黄金色に輝く大きな小麦畑! その横にあった小屋は何?」
「あれは小麦を小麦粉にする場所じゃ!」
「す……凄い! さすがパールだね。先のことまで考えてるなんて天才だ!」
「まっ……まあの? ワシ、天才じゃからして……」
パールの尻尾の揺れが激しく揺れる。すっごく嬉しいのが尻尾でバレてるぞ。
「あっそうだ! お土産貰ったんだった」
「土産?」
「うん。ファラサールさんがね、くれたんだ」
貰った大きな袋をアイテムボックスから出し、みんなの前に広げると……。
何と袋の中には、沢山のぬいぐるみが入っていた。
『わっ! これはティアなの! 可愛いの!』
『お? これは俺か? 小さい小鳥の姿の方だな。中々……可愛いじゃねーか!』
『あら? 私達も可愛いじゃない。抱き心地もいいわね』
『あっし……カッコいい』
『俺がぬいぐるみに……』
ティア、スバル、一号達が自分そっくりのぬいぐるみに大興奮。まさかこんなものが入っていたとは。
――ん?
ピラッと、お土産が入っていた袋から何かが落ちる。
何だ……手紙?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ティーゴ君。これは今度発売される神様グッズの、新作ぬいぐるみだよ!
【モフッと最高の抱き心地♡神様達】っていうんだけど、どうかな?
実を言うと自信作なんだ。気に入ってもらえたらいいなぁ♪
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は手紙を握りしめて遠くを見つめた。
ファラサールさん……やっぱり……グッズ製作にめちゃくちゃ絡んでるじゃねーか!
★ ★ ★
ぬいぐるみのお土産を開けてから少しして、俺は居間でパールにある相談をする。
「あのさパール。エルフの里で女神様から教えてもらったんだけど、俺が慈愛の手で愛情込めて水をやると、作物が大きく成長するんだって! 試してみていいか?」
「ほう? そんな面白いことが! それは早速試してみるのじゃ」
パールは今すぐに試そうとやる気満々。一緒に外の畑に出て行こうとすると、二号も気になったのか、後をついて来た。
俺達は早速ウロウロと作物を見て回る。
種に使うのが良いのか? 成長してても使えるのか? どれにしようか?とか考えながら色んな作物を眺める。
すると俺達に気付いたキラが、ドスドスと音を立てて走ってきた。
『ティーゴ!……何して、るだ?』
「あれ? キラ、こんな所に居たのか!」
『オデ、外が、落ち着く……異空間、サンポしてた』
「そうか。今日はもう遅いから、明日ドラゴン渓谷に出発しような!」
『分かった……明日。楽しみ』
「今から水やりするんだけど、見て行くか?」
『ありがとう!……でも、オデ、もすこし、サンポしてくる』
「そうか。あんまり遠くに行くなよ?」
『うん』
キラは楽しそうに異空間の散歩を再開した。
その横をジャイコブウルフ達が踊りながら歩く。いつの間に仲良くなったんだ?
★ ★ ★
『なぁティーゴ。まずはこの小麦に試してみないか?』
二号が一つの小麦を指差す。
だがそれは、収穫出来るほどに成長してるぞ?
「黄金色に成長してるけど、これ以上、変化するか?」
『だから、これ以上どう成長するのかを試してみたいんだよ! 枯れるのかもしれないしな』
「ほう……二号は意外と勝負師じゃの。その考え、面白いのう」
「なるほどね。試す価値ありだな」
パールが笑い、俺も頷く。
ようし!とやる気を出してはみたが、全てに水をかけてダメにするのは嫌だから、小麦の一部分に試してみることにした。
ええと……愛情を込めて水をやるんだよな? 愛情を込めるってどーするんだ?
とりあえず俺は心の中で……(大きくなーれ! 大好きだよー)と言いながら魔法で水を出して小麦にかけていく……声に出すのは恥ずかしいからな!
「なっ⁉」
次の瞬間! 水をかけた小麦の種子だけが二倍の大きさに膨らんだ!
「凄いのじゃ! 一瞬でこんなにも大きな種子が! しかも、特殊効果もついておるぞ」
えっ、特殊効果だって? 急いで神眼で確認すると……。
【癒しの小麦】
普通の小麦よりも甘く栄養価も高い。
食べるだけで慈愛の効果により心が満たされ癒される。
魔力が一時的に20%上昇する。
攻撃力が一時的に20%上昇する。
なっ何だ、これは……普通の小麦じゃなくなってる。何だ? 癒しの小麦って。
『凄いぜティーゴ! どんな愛情を込めたんだよ』
二号は小麦の変貌ぶりに驚きを隠せない。目を見開き俺の背中をバンバンと叩く。
「これは凄いのじゃ! 次は種を蒔いて水をかけてみよう」
パールはトゥマトの種を、わくわくしながら畑に蒔く。
よし! さっきみたいに……大きくなーれ。大好きだよー。美味しい実をつけろよー。
心の中でそう唱える。
すると種はすぐに芽を出し、ニョキニョキと大きく成長!
あっという間に、赤く大きなトゥマトの実がなった。もちろん特殊効果付きだ。
【パワートゥマト】
フルーツみたいに甘いトゥマト。
濃厚なのにアッサリ。
攻撃力が一時的に20%上昇する。
体力が一時的に20%上昇する。
「こっ……これはワシのオリジナル魔法【植物急成長】の効果まであるのか! 凄いのじゃ、慈愛の手」
本当に凄過ぎる。これがあったら何でも作ることが出来る。
もう……食材を買いに行かなくても良い! 必要になったら種を蒔いて水をかければいいんだから。在庫の心配がなくなるなんて最高だ。
『ティーゴ! このトゥマト食べてみろ。めちゃくちゃ美味しい!』
二号がトゥマトを頬張りながら、俺に熟したトゥマトを手渡してきた。
ガブッとかぶりつくと……。
「ほっ……本当だ! 甘くてジューシーで……普通のトゥマトの何倍も美味しい」
「美味いのじゃ! 甘味みたいじゃ!」
パールも口周りの毛を真っ赤に染めながら美味しそうに食べる。
「よし。ティーゴよ、トウカの木にも水をかけるのじゃ」
『ティーゴ! レインボーマスカットにも!』
「こっちもじゃ!」
『これもだ!』
俺はパールと二号に連れ回され、延々と水やりをさせられた。
気が付くと家の周りは、大きく成長した果実や野菜の畑と化していた。
『ティーゴ。今日はこの大きく育ったトウカの実でパイを作ってくれよ!』
二号がトウカパイを食べたいと言う。俺も食べてみたいし……よし作るか。
「いいね! じゃあ折角だから収穫した小麦を使って作る? きっと最高に美味いぞ!」
「ああっ早く食べたいのじゃ! 小麦を魔法で収穫するのじゃ」
俺の話を聞いた食いしん坊のパールは、一瞬で小麦を収穫してしまった。
「早く作るのじゃ!」
収穫した小麦の前でヨダレを垂らすパール。おいおい、大賢者様の威厳は何処に?
★ ★ ★
『主お帰り~!』
部屋に戻ると、みんなは自分のぬいぐるみを抱いてゴロゴロしていた。
一号と三号は気持ち良さそうに寝てるな。
『主~、何処行くのだ?』
「美味い甘味を作るために調理場だよ」
『甘味! やったのっ、ティアは楽しみなの!』
銀太とティアが調理場までついてきた。
二匹が見ている前で、俺は早速料理に取りかかる。
まずは作りたての小麦粉を使って、パイ生地をコネコネ……完成したら、ちょっと寝かせて。
その間にトウカの実を、ジュエルフラワーの蜜で煮詰め、ペースト状にする。
ついでにキラービーの蜜漬けトウカも作る!
それから、形を整えた生地にペースト状のトウカを塗って、さらに蜜漬けトウカをゴロッと載せる!
後はそれを焼くだけ! どんな味かなぁ……楽しみだなぁ♪
数分もすると、甘くていい匂いが調理場に充満する。
おっ? そろそろパイが焼けたかな?
『主! 出来たのか? 我は食べたいのだ!』
『ティアも! ティアも!』
匂いに我慢出来なくなった銀太とティアが、ヨダレを垂らし待ち切れない、といった様子。
相変わらずの食いしん坊達。それもまた可愛いんだがな。
「よし焼けたぞ。はいどーぞ」
焼けたトウカパイを、銀太とティアが待つ机に並べる。
『美味しいの! はわ……ティアは口の中が幸せなの』
『うむ! 美味いのだ。我も心が満たされていく……!』
銀太とティアがウットリしてるな……そんなに美味いのか?
どれ? 俺も食べてみるか。
サクッと心地好い音が響いた後、口いっぱいに甘い旨味が広がる。
「うんまー! 何これ⁉」
前に作ったトウカパイの何倍も美味い! それに一口食べるごとに、心が満たされていく。不思議だ。
「よし! みんなで食べるぞ」
家の外にキラやジャイコブ達が沢山いるから、外でパイ祭りにしよう!
「外でパイ食べるよー!」
みんなに声をかけ、外に出てトウカパイを食べる準備をする。
この前創造神様からもらったスキル、コピー料理があるおかげで、元になる料理と材料さえあればどんどん増やせるから楽ちんだ。
「美味いのじゃ! これはパワーアップトウカパイじゃ!」と命名するパール。
『はぁ……美味過ぎるぜ……トウカパイさんよ。俺をこんなに虜にして……どうする気だ』
ブッッ……スバルよ。どうにもしないよ。
パールとスバルはトウカパイが気に入ったのか、口いっぱいに頬張って何個も食べている。
散歩から帰って来たキラもやって来た。
『ティーゴ……これは?』
不思議そうにトウカパイを見ている。
『美味いから食べてみな?』
キラにトウカパイを渡してやる。
『う、美味い……オデ、こんな、美味しいの初めて……食べた』
「美味いだろ?」
『ああ……オデ、幸せ、心満たされる……うう……うわーん』
キラは突然子供みたいに泣き出した。
「どうしたんだ? 何泣いてんだよキラ?」
俺はキラを優しく撫でてやる。
『オデ……オデ……うう』
ズチャ‼と、誰かがリズミカルにステップを踏んだ。そして……
こんな時はぁ~♪ 俺達の出番~♪
ハクがずいっと前に出て、高らかに歌う。すると、ロウとキューもその側に寄っていき、三匹は軽やかに踊り始めた。
ジャイジャイ♪ ジャイコブ♪ ジャイジャイジャイコブ♪ キュッキュウ♪
独特の節をつけて歌い踊る三匹が、泣いているキラの所へやってきて、そして連れて行く。
『はえ?……オデ、オデ⁉』
初めはどうしていいのか分からずに、オロオロしていたキラだけど、銀太やスバルも集まり踊り出すと……楽しくなったのか、ジャイコブダンスを楽しそうに踊り出した。
ジャイジャイ♪ ジャイコブ♪ ジャイジャイジャイコブ♪
凄いな! ジャイコブダンス♪ みんなが笑顔になる。
良かった。キラもみんなと仲良くやれそうだな。
さぁ。明日はドラゴン渓谷への旅に出発だ!
……と決意を固めたけど、夜はまだまだ続く。
あの後……みんなで二号の作ってくれた露天風呂に入り、俺は全員綺麗にシャンプーすることになった。仲間が増えたから、シャンプータイムは中々の重労働だ。それに、風呂から上がった後もアフターケアが待っている。
「次は……リンリン! おいで?」
『ンン♪ パパン♪』
リンリンに毛がツヤツヤになるオイルを塗り、丁寧にブラッシングしていく。
「なっ……⁉」
リンリンの尻尾は二倍に膨らんだ! 全身モッフモフだ。
初めてのシャンプー効果、凄過ぎる。
「次は? ジャイコブ達か?」
ふうう……ブラッシングタイムも中々重労働になってきた。
でも、いいんだ! みんなの毛並みは俺が守る! モフモフに仕上がった時が、最高に幸せだからな。
さぁて、風呂上がりのジュースは何にしようかな?
さっきトウカパイを食べたから……リコリの実でジュースを作ろう!
細かく潰したリコリにミルクを注いで、簡単ミルクジュースの完成だ。
どれ? 味見してみよう……はわっ……何これ! めっちゃ美味い。
『ティーゴ! ズルいの! ティアも』
ジュース大好きなティアが一目散に飛んできた。
「はいはい」
俺はジュースをみんなに配る。
『美味しいの! 前のより美味しいの!』
パタパタパタパタッと翼を羽ばたかせ、ティアは嬉しそうに飛び回る。
『うっ……美味いジャイ! はぁ……こんな飲み物があるなんて……!』
『本当コブ……生きてて良かったコブよ』
初めてミルクジュースを飲んだハクとロウは、感激ダンスを踊り始めた。
アハハッ……美味いのは分かるけどな。相変わらず楽しい奴等だな。
「なっ⁉ これは美味いのじゃ! 前に飲んだミルクジュースより美味い」
「パールもそう思うか? これって慈愛の力のおかげだよな?」
「ふうむ……こうなると美味いミルクも手に入れたいのじゃ! さすれば……最高のミルクジュースが完成するのじゃ!」
パールがミルクジュースに対して熱く語る。そこまで気に入ったのか。
「そうだな」
相変わらず食いしん坊だな、パールは。中身が大賢者様だったとは思えない。
今は猫の姿だから余計に。
「ようし……ティーゴよ? ワシ、明日はベヒーモスを仲間にする!」
「えっパール? 何言ってるんだ⁉ ……ベヒーモスだって?」
確か幻のSランク魔獣だろ? 中々出会えないって……本で読んだぞ。
「ワシには昔知り合ったベヒーモスが居るんじゃよ! 其奴を訪ねてみる!」
「そ、そっか……さすがだな、パール」
ベヒーモスの知り合いって……やっぱり中身は大賢者様なんだな。
明日は、俺達はドラゴン渓谷に向かって旅を始めて、パールはベヒーモス探しに出発か。しばらくは別行動になりそうだ。
「ティーゴ君。妖精の粉をプレゼントするよ!」
「えっ、いいんですか? こんな貴重なもの……!」
ファラサールさんが、俺に妖精の粉をプレゼントしてくれた。妖精の粉はかなり貴重で、今くれた小さな一瓶だけでも金貨数百枚はくだらないって聞いた。
そんな貴重なものをポンっとくれるなんて……。
「ありがとうございます!」
「ふふっ、これで上手に飛ぶ練習してね?」
……くそう。嬉しいのに何だろう。素直に喜べない……! 絶対に上手く飛べるようになってやる!
俺は気を取り直して、エルフの里を発つことにする。
「じゃあ……ルクセンベルク街に行きますか。銀太頼んだよ!」
『任せるのだ!』
ルクセンベルク街か。俺が神様に祭り上げられて、逃げ出して以来だな。さすがに大分時が経ったし、もう落ち着いてるだろうな!
…………なんて、のん気に考えていた俺が、バカだった……。
――何だこれ⁉
転移して来た広場には大きな銅像が……これは……どう見ても俺達。
『ほう……これは我か! 中々カッコ良いのう。我は気に入ったのだ!』
銀太は銅像を見て、尻尾をブンブン振って嬉しそうだけど!
元からあったカスパール様の立派な銅像の横に、俺達の銅像が負けじと並んでいた。
銅像を立てたって話は聞いて知ってたけど……こんなに大きいなんて! しかも街の一番目立つ場所に……!
銅像は俺の他に、銀太とスバル。そして人化した一号、二号、三号……それに! この時まだ卵だったはずのティアまで俺の肩に座っている。
何でだ⁉ いつティアのことを知った?
さらに周りの商店街を見渡せば……。
神様――つまり俺達のことだが――の商品が至る所で販売され……賑わっていた。
絵姿に加えて、銀太やスバルの形をしたぬいぐるみ、小さなチャームなど、種類が多過ぎて挙げたらキリがない。
「ファ……ファラサールさん、これって?」
「ああ! 神様グッズかい? ルクセンベルクの一番の人気商品なんだよ? 神様グッズのおかげで街が潤ってね? 魔族に壊された街が、すぐに立ち直ることが出来たんだよ」
「いやっ……はは。街が潤うのはいいんですが……この神様の絵姿とか俺達そっくりですよ? 誰がこんな上手に? 俺の顔なんてよく見られてないはずなのに。凄くよく出来てて……」
「そりゃそうさ! 僕も力を入れて頑張ったからね!」
――何だって⁉ 僕が力を入れて?
「えっ? ちょっ⁉ ファラサールさんもこれに関わってるんですか?」
「あっやっ? ちょっと手伝っただけだよ? 僕は全く関係ないよ?」
そう言いながらも、明らかにファラサールさんの様子はおかしい。瞳をキョロキョロさせ、手は落ち着かず指をモジモジと動かしている。
怪しすぎるだろ! 誤魔化すの下手か。
気が付くと俺達の周りに人垣が出来ていた。
一気に周囲がザワザワと騒がしくなる。
「神様が降臨された」「お姿を目に焼き付けないと」「麗しい」「神様ー! もういつ死んでも後悔しない」「ああ神様ー!」
みんなが手を合わせて俺達を拝んでいる。
ちょっと! 俺、神様じゃないからね? みんなと同じ人族だから!
そんな俺の気持ちとは裏腹に、どんどん人が集まってくる。このままこの場所に居るのはマズいな。
「銀太、ギルドに転移してくれ!」
『分かったのだ!』
ファラサールさんを連れて冒険者ギルドに転移し、俺達は二階の部屋に急いで駆け上がる。
凄いな……前に街を救った時より盛り上がってないか?
俺の疑問を察したのか、ファラサールさんが言う。
「今やこの街で、神様は凄い人気なんだよ! 神様グッズを集めると幸せになれるって噂も広まって、他国から買いに来る人も居るくらいなんだよ?」
他国……だと⁉ この国での旅を終えたら、他国にも行ってみようと思ってるのに……やめてくれ! この辱めを他国にまで広めないでくれ!
結局、俺達はこの街での買い物は諦めて、ドヴロヴニク街で買い物をすることにした。
こんな状態で買い物なんて絶対に無理だからな。
「あっ! そうそう、ティーゴ君。お土産貰って行ってよ。ルクセンベルクまで送ってくれてありがとう! またいつでも遊びにおいでよ?」
「うん……もう少し街が落ち着いたらまた来るよ! お土産ありがとう」
ドヴロヴニク街に転移する前に、ファラサールさんがお土産をくれた。大きな袋だな? 何が入ってるんだ?
★ ★ ★
ドヴロヴニク街での買い物を終え、俺と銀太は異空間に帰って来た。
自分の家があるっていいな。落ち着くよ。
家に入ると、そのままみんなが寛いでいる居間へと向かう。
「ただいまー!」
「お帰り! 何を買って来たんじゃ?」
俺に気付いたパールが、ゆらりと尻尾を揺らしながら近寄ってくる。
「食材とか調味料とか……追加でパールが欲しがってた種とか色々買って来たよ!」
「そうか! バッチリじゃのう。それで外の畑は見たか?」
パールは嬉しそうに話す。
「見たよ、黄金色に輝く大きな小麦畑! その横にあった小屋は何?」
「あれは小麦を小麦粉にする場所じゃ!」
「す……凄い! さすがパールだね。先のことまで考えてるなんて天才だ!」
「まっ……まあの? ワシ、天才じゃからして……」
パールの尻尾の揺れが激しく揺れる。すっごく嬉しいのが尻尾でバレてるぞ。
「あっそうだ! お土産貰ったんだった」
「土産?」
「うん。ファラサールさんがね、くれたんだ」
貰った大きな袋をアイテムボックスから出し、みんなの前に広げると……。
何と袋の中には、沢山のぬいぐるみが入っていた。
『わっ! これはティアなの! 可愛いの!』
『お? これは俺か? 小さい小鳥の姿の方だな。中々……可愛いじゃねーか!』
『あら? 私達も可愛いじゃない。抱き心地もいいわね』
『あっし……カッコいい』
『俺がぬいぐるみに……』
ティア、スバル、一号達が自分そっくりのぬいぐるみに大興奮。まさかこんなものが入っていたとは。
――ん?
ピラッと、お土産が入っていた袋から何かが落ちる。
何だ……手紙?
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ティーゴ君。これは今度発売される神様グッズの、新作ぬいぐるみだよ!
【モフッと最高の抱き心地♡神様達】っていうんだけど、どうかな?
実を言うと自信作なんだ。気に入ってもらえたらいいなぁ♪
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
俺は手紙を握りしめて遠くを見つめた。
ファラサールさん……やっぱり……グッズ製作にめちゃくちゃ絡んでるじゃねーか!
★ ★ ★
ぬいぐるみのお土産を開けてから少しして、俺は居間でパールにある相談をする。
「あのさパール。エルフの里で女神様から教えてもらったんだけど、俺が慈愛の手で愛情込めて水をやると、作物が大きく成長するんだって! 試してみていいか?」
「ほう? そんな面白いことが! それは早速試してみるのじゃ」
パールは今すぐに試そうとやる気満々。一緒に外の畑に出て行こうとすると、二号も気になったのか、後をついて来た。
俺達は早速ウロウロと作物を見て回る。
種に使うのが良いのか? 成長してても使えるのか? どれにしようか?とか考えながら色んな作物を眺める。
すると俺達に気付いたキラが、ドスドスと音を立てて走ってきた。
『ティーゴ!……何して、るだ?』
「あれ? キラ、こんな所に居たのか!」
『オデ、外が、落ち着く……異空間、サンポしてた』
「そうか。今日はもう遅いから、明日ドラゴン渓谷に出発しような!」
『分かった……明日。楽しみ』
「今から水やりするんだけど、見て行くか?」
『ありがとう!……でも、オデ、もすこし、サンポしてくる』
「そうか。あんまり遠くに行くなよ?」
『うん』
キラは楽しそうに異空間の散歩を再開した。
その横をジャイコブウルフ達が踊りながら歩く。いつの間に仲良くなったんだ?
★ ★ ★
『なぁティーゴ。まずはこの小麦に試してみないか?』
二号が一つの小麦を指差す。
だがそれは、収穫出来るほどに成長してるぞ?
「黄金色に成長してるけど、これ以上、変化するか?」
『だから、これ以上どう成長するのかを試してみたいんだよ! 枯れるのかもしれないしな』
「ほう……二号は意外と勝負師じゃの。その考え、面白いのう」
「なるほどね。試す価値ありだな」
パールが笑い、俺も頷く。
ようし!とやる気を出してはみたが、全てに水をかけてダメにするのは嫌だから、小麦の一部分に試してみることにした。
ええと……愛情を込めて水をやるんだよな? 愛情を込めるってどーするんだ?
とりあえず俺は心の中で……(大きくなーれ! 大好きだよー)と言いながら魔法で水を出して小麦にかけていく……声に出すのは恥ずかしいからな!
「なっ⁉」
次の瞬間! 水をかけた小麦の種子だけが二倍の大きさに膨らんだ!
「凄いのじゃ! 一瞬でこんなにも大きな種子が! しかも、特殊効果もついておるぞ」
えっ、特殊効果だって? 急いで神眼で確認すると……。
【癒しの小麦】
普通の小麦よりも甘く栄養価も高い。
食べるだけで慈愛の効果により心が満たされ癒される。
魔力が一時的に20%上昇する。
攻撃力が一時的に20%上昇する。
なっ何だ、これは……普通の小麦じゃなくなってる。何だ? 癒しの小麦って。
『凄いぜティーゴ! どんな愛情を込めたんだよ』
二号は小麦の変貌ぶりに驚きを隠せない。目を見開き俺の背中をバンバンと叩く。
「これは凄いのじゃ! 次は種を蒔いて水をかけてみよう」
パールはトゥマトの種を、わくわくしながら畑に蒔く。
よし! さっきみたいに……大きくなーれ。大好きだよー。美味しい実をつけろよー。
心の中でそう唱える。
すると種はすぐに芽を出し、ニョキニョキと大きく成長!
あっという間に、赤く大きなトゥマトの実がなった。もちろん特殊効果付きだ。
【パワートゥマト】
フルーツみたいに甘いトゥマト。
濃厚なのにアッサリ。
攻撃力が一時的に20%上昇する。
体力が一時的に20%上昇する。
「こっ……これはワシのオリジナル魔法【植物急成長】の効果まであるのか! 凄いのじゃ、慈愛の手」
本当に凄過ぎる。これがあったら何でも作ることが出来る。
もう……食材を買いに行かなくても良い! 必要になったら種を蒔いて水をかければいいんだから。在庫の心配がなくなるなんて最高だ。
『ティーゴ! このトゥマト食べてみろ。めちゃくちゃ美味しい!』
二号がトゥマトを頬張りながら、俺に熟したトゥマトを手渡してきた。
ガブッとかぶりつくと……。
「ほっ……本当だ! 甘くてジューシーで……普通のトゥマトの何倍も美味しい」
「美味いのじゃ! 甘味みたいじゃ!」
パールも口周りの毛を真っ赤に染めながら美味しそうに食べる。
「よし。ティーゴよ、トウカの木にも水をかけるのじゃ」
『ティーゴ! レインボーマスカットにも!』
「こっちもじゃ!」
『これもだ!』
俺はパールと二号に連れ回され、延々と水やりをさせられた。
気が付くと家の周りは、大きく成長した果実や野菜の畑と化していた。
『ティーゴ。今日はこの大きく育ったトウカの実でパイを作ってくれよ!』
二号がトウカパイを食べたいと言う。俺も食べてみたいし……よし作るか。
「いいね! じゃあ折角だから収穫した小麦を使って作る? きっと最高に美味いぞ!」
「ああっ早く食べたいのじゃ! 小麦を魔法で収穫するのじゃ」
俺の話を聞いた食いしん坊のパールは、一瞬で小麦を収穫してしまった。
「早く作るのじゃ!」
収穫した小麦の前でヨダレを垂らすパール。おいおい、大賢者様の威厳は何処に?
★ ★ ★
『主お帰り~!』
部屋に戻ると、みんなは自分のぬいぐるみを抱いてゴロゴロしていた。
一号と三号は気持ち良さそうに寝てるな。
『主~、何処行くのだ?』
「美味い甘味を作るために調理場だよ」
『甘味! やったのっ、ティアは楽しみなの!』
銀太とティアが調理場までついてきた。
二匹が見ている前で、俺は早速料理に取りかかる。
まずは作りたての小麦粉を使って、パイ生地をコネコネ……完成したら、ちょっと寝かせて。
その間にトウカの実を、ジュエルフラワーの蜜で煮詰め、ペースト状にする。
ついでにキラービーの蜜漬けトウカも作る!
それから、形を整えた生地にペースト状のトウカを塗って、さらに蜜漬けトウカをゴロッと載せる!
後はそれを焼くだけ! どんな味かなぁ……楽しみだなぁ♪
数分もすると、甘くていい匂いが調理場に充満する。
おっ? そろそろパイが焼けたかな?
『主! 出来たのか? 我は食べたいのだ!』
『ティアも! ティアも!』
匂いに我慢出来なくなった銀太とティアが、ヨダレを垂らし待ち切れない、といった様子。
相変わらずの食いしん坊達。それもまた可愛いんだがな。
「よし焼けたぞ。はいどーぞ」
焼けたトウカパイを、銀太とティアが待つ机に並べる。
『美味しいの! はわ……ティアは口の中が幸せなの』
『うむ! 美味いのだ。我も心が満たされていく……!』
銀太とティアがウットリしてるな……そんなに美味いのか?
どれ? 俺も食べてみるか。
サクッと心地好い音が響いた後、口いっぱいに甘い旨味が広がる。
「うんまー! 何これ⁉」
前に作ったトウカパイの何倍も美味い! それに一口食べるごとに、心が満たされていく。不思議だ。
「よし! みんなで食べるぞ」
家の外にキラやジャイコブ達が沢山いるから、外でパイ祭りにしよう!
「外でパイ食べるよー!」
みんなに声をかけ、外に出てトウカパイを食べる準備をする。
この前創造神様からもらったスキル、コピー料理があるおかげで、元になる料理と材料さえあればどんどん増やせるから楽ちんだ。
「美味いのじゃ! これはパワーアップトウカパイじゃ!」と命名するパール。
『はぁ……美味過ぎるぜ……トウカパイさんよ。俺をこんなに虜にして……どうする気だ』
ブッッ……スバルよ。どうにもしないよ。
パールとスバルはトウカパイが気に入ったのか、口いっぱいに頬張って何個も食べている。
散歩から帰って来たキラもやって来た。
『ティーゴ……これは?』
不思議そうにトウカパイを見ている。
『美味いから食べてみな?』
キラにトウカパイを渡してやる。
『う、美味い……オデ、こんな、美味しいの初めて……食べた』
「美味いだろ?」
『ああ……オデ、幸せ、心満たされる……うう……うわーん』
キラは突然子供みたいに泣き出した。
「どうしたんだ? 何泣いてんだよキラ?」
俺はキラを優しく撫でてやる。
『オデ……オデ……うう』
ズチャ‼と、誰かがリズミカルにステップを踏んだ。そして……
こんな時はぁ~♪ 俺達の出番~♪
ハクがずいっと前に出て、高らかに歌う。すると、ロウとキューもその側に寄っていき、三匹は軽やかに踊り始めた。
ジャイジャイ♪ ジャイコブ♪ ジャイジャイジャイコブ♪ キュッキュウ♪
独特の節をつけて歌い踊る三匹が、泣いているキラの所へやってきて、そして連れて行く。
『はえ?……オデ、オデ⁉』
初めはどうしていいのか分からずに、オロオロしていたキラだけど、銀太やスバルも集まり踊り出すと……楽しくなったのか、ジャイコブダンスを楽しそうに踊り出した。
ジャイジャイ♪ ジャイコブ♪ ジャイジャイジャイコブ♪
凄いな! ジャイコブダンス♪ みんなが笑顔になる。
良かった。キラもみんなと仲良くやれそうだな。
さぁ。明日はドラゴン渓谷への旅に出発だ!
……と決意を固めたけど、夜はまだまだ続く。
あの後……みんなで二号の作ってくれた露天風呂に入り、俺は全員綺麗にシャンプーすることになった。仲間が増えたから、シャンプータイムは中々の重労働だ。それに、風呂から上がった後もアフターケアが待っている。
「次は……リンリン! おいで?」
『ンン♪ パパン♪』
リンリンに毛がツヤツヤになるオイルを塗り、丁寧にブラッシングしていく。
「なっ……⁉」
リンリンの尻尾は二倍に膨らんだ! 全身モッフモフだ。
初めてのシャンプー効果、凄過ぎる。
「次は? ジャイコブ達か?」
ふうう……ブラッシングタイムも中々重労働になってきた。
でも、いいんだ! みんなの毛並みは俺が守る! モフモフに仕上がった時が、最高に幸せだからな。
さぁて、風呂上がりのジュースは何にしようかな?
さっきトウカパイを食べたから……リコリの実でジュースを作ろう!
細かく潰したリコリにミルクを注いで、簡単ミルクジュースの完成だ。
どれ? 味見してみよう……はわっ……何これ! めっちゃ美味い。
『ティーゴ! ズルいの! ティアも』
ジュース大好きなティアが一目散に飛んできた。
「はいはい」
俺はジュースをみんなに配る。
『美味しいの! 前のより美味しいの!』
パタパタパタパタッと翼を羽ばたかせ、ティアは嬉しそうに飛び回る。
『うっ……美味いジャイ! はぁ……こんな飲み物があるなんて……!』
『本当コブ……生きてて良かったコブよ』
初めてミルクジュースを飲んだハクとロウは、感激ダンスを踊り始めた。
アハハッ……美味いのは分かるけどな。相変わらず楽しい奴等だな。
「なっ⁉ これは美味いのじゃ! 前に飲んだミルクジュースより美味い」
「パールもそう思うか? これって慈愛の力のおかげだよな?」
「ふうむ……こうなると美味いミルクも手に入れたいのじゃ! さすれば……最高のミルクジュースが完成するのじゃ!」
パールがミルクジュースに対して熱く語る。そこまで気に入ったのか。
「そうだな」
相変わらず食いしん坊だな、パールは。中身が大賢者様だったとは思えない。
今は猫の姿だから余計に。
「ようし……ティーゴよ? ワシ、明日はベヒーモスを仲間にする!」
「えっパール? 何言ってるんだ⁉ ……ベヒーモスだって?」
確か幻のSランク魔獣だろ? 中々出会えないって……本で読んだぞ。
「ワシには昔知り合ったベヒーモスが居るんじゃよ! 其奴を訪ねてみる!」
「そ、そっか……さすがだな、パール」
ベヒーモスの知り合いって……やっぱり中身は大賢者様なんだな。
明日は、俺達はドラゴン渓谷に向かって旅を始めて、パールはベヒーモス探しに出発か。しばらくは別行動になりそうだ。
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