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本編 浮島編
謎の魔導具
しおりを挟む「これは……思ってたより多いな」
「小さな国じゃのに意外とおるのう」
屋上庭園には、ジャイコブウルフ達が連れて来たレミアール王国の人達で埋め尽くされ、人で犇めきあっていた。
こんなにも人がいるにもかかわらず、誰一人として騒ぐ者はいなかった。
なぜなら統率されたジャイコブウルフ達が、魔道兵士に乗り宙に浮き周りを囲っている。そんなジャイコブウルフ達に見張られ怯えきっているんだ。
「まずは一番多い兵士たちをどうにかするかのう」
「でもさパール、兵士たちにも戦いたく無かった人もいただろうし。そんな人たちまで罰を与えるのはおかしいだろ? これをさぁ、どう分ける?」
「確かに……人質をとられ従わされていた者もいたと、さっきの研究者たちの話で分かったしのう……ふむ」
パールは長く伸びた顎髭をゆっくりと触り、何やら難しい顔をして考えている。こんな時のパールは突拍子もない事を言い出す事が多いんだが……今回はどうなんだろう?
「……あれをこうして……ふむ。それであーしてじゃ……おおっ!」
パールがどうやら何かを閃いたようだ。
「良い案が思いついたのか?」
「ふふふ……ワシを誰じゃと思うておる!」
「偉大なる大賢者様、カスパール様ですよ」
「こりゃ茶化すでない、これなら完璧じゃ! ちょっと待っておれ! テンサを連れて来る」
「えっ!? ちょっ!? パール!?」
パールが突然消えた、もしかすると研究室にいるテンサの所に行ったのか!?
数分もすると、テンサを連れたパールが戻って来た。
「ちょっとパール説明してくれよ! なんでテンサをまた連れて来たんだ?」
「むう? 一緒に作って貰う魔導具があるからじゃ! ティーゴはオーちゃんを呼んで来てくれっ」
「ええ!? オーちゃん? なんで急に?」
「つべこべ言う間があったらさっさと行けい!」
「分かったよ! オーちゃん呼んできたら良いんだな?」
そう言ったがパールからの返事はなく。
パールはテンサと何かを夢中で紙に書いている。
……とりあえず俺は、オーちゃんを連れて来たら良いんだな。
俺は船に出しっぱなしにしていた異空間の扉まで走り、オーちゃんを呼びに行った。
「パール! オーちゃんを連れて来たぞ!」
「おおっ! オーちゃん待っておった。はよう手伝ってくれ」
「はいっ! 分かりました」
パールはオーちゃんを見るや手伝えと急かす、もう既に短時間で何だか分からない物体が出来上がっている。おいおいパールこれは一体何を作ろうとしてるんだ?
「よっし完成じゃ!」
オーちゃんも一緒に混ざり何やら得体の知れない物が完成した。
「パールこれは一体……なんだ?」
「ふふふ良くぞ聞いてくれた。これはのう。この門を通れば悪いヤツか良いヤツかわかる! その名も【善悪分かる門】じゃ」
パールがふんぞり返って教えてくれるけれど、なんだその変な名前は……!
どうじゃ? ワシのネーミングセンス最高じゃろう? って目でさっきから俺を見てくるけどな?
俺は笑いを堪えるのに必死だぞ?
「くっくくっ」
とりあえずこの大きな門は悪人と善人が判断出来るって事だよな。
どーやったらそんな物が作れるんだろう。ホント凄いしかない。
この後、レミアール王国の住民たちは全員この善悪分かる門を通る事になるのだった。
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