上 下
266 / 314
本編 浮島編

vsドノーキン

しおりを挟む

ドノーキンside


「ドノーキン団長! 魔導兵士が動かなくなりました! 何故か契約解除されています」

 部下達が青ざめ次々に報告にくる。もう報告を聞きたくない。
 この浮島で一体何が起こってるんだ?
 夢ならこんな悪夢早く覚めてくれ!

「ドノーキン団長! 船から降って来たジャイコブウルフ達が、次々に魔道兵士を奪い乗っ取られています。もう全て奪われました」

「はっはぁぁぁぁぁぁ?! 魔導兵器が乗っ取られただと? あれは契約者しか動かす事が出来ない筈だぞ? 苦労して運び込んだのに」

「それが……あれを見て貰えば」

 騎士が指を指すその場所には、有り得ない光景が飛び込んできた。

「えっ?! ちょっ? ジャイコブウルフ達は一体何がしたいんだ?」

 あの不思議な踊りと掛け声はなんだ!? 何故魔導兵士に乗り込み攻撃もせず、只踊ってるんだ?
 俺達に敵意がある訳じゃないのか?

「ああっ!? 船が島に上陸して来ます」
「何だって!? もう目の前じゃないか!」

 あの馬鹿でかい船と呼んで良いのか分からん乗り物に、どんな人物が乗ってるんだ。まさか魔族とかじゃ!?

 ああっ! 船から何かが降りて来た! 一体何が降りてくるんだよ! 怖いい。


「ふえっ?? 少年と猫?」


★★★


 船から降りると、ジャイコブ達が楽しそうに踊っている。アイツらが関わると、毎回お祭り騒ぎだな。


「くくっ……ジャイコブ達楽しそうに踊ってるなぁ。あんな強そうな兵器を使って踊るとか……」

「まぁ魔導兵器あれを乗っ取られたら彼奴らは何も出来んじゃろうて」

 不意に前を見たら、間抜けな顔して俺達をポカンと見ている、一際高そうな鎧を纏ったガタイの良い男がいた。

 あの男が一番偉い奴か? あいつだけ鎧が違うし……

「彼奴の所に行くか」

「だな。ここに居た鳥人達の事も気になるし」

 男の前に歩いて行くと

「おいっ! お前みたいなひよっこが……あのジャイコブウルフを従えていたのか?」

 俺を見て何だか偉そうに話しかけてきた。俺がまだ幼いから舐めてる感じだな。

「そうだけど?」

 そう言うと男は少し驚き、口角を上げ嫌な笑い方をした。はぁこんな笑い方をする奴は大体いつもまともな事を言わない。こいつもきっとそうだろう。

「なっ……まあいい。お前ワシと手を組まんか?」
「はっ? 手を組む?」

 こいつは何を言ってるんだ? そんな事する訳がないだろう? 俺ってそんな子供騙しが通用する程、幼くバカに見えるのか? そもそも自分の方が窮地に立たされているって、分かってないんだろうか? 

「どうだ? 俺達と一緒に浮島を乗っ取れば金も入るし、地位だって貰えるぜ? いい話だろ?」
「はぁ……お前はバカなのか? する訳ないだろ? 答えはノーだ!」

「そうかそうか……!? へっ? ノー?」
「そうだよ! それにお前達とこんな話をしている場合じゃないんだ! この島に居た鳥人達は何処にいるんだ?」
「なっ……知らねーなぁっ!?ギャッ」

 パールが男の目の前に雷を落とす。少しでも動いていたら雷が当たっていただろう。

「さっきからどうでもいい話をウダウダとしおってからに! さっさと案内せい!」 
「ねっ猫が喋っ?!」
「はぁ五月蝿い次は当てるぞ?」
「ヒイッ!」
 
 パールに脅えながら案内された所には、辛うじて生きている鳥人達が、見世物に使うような大きな檻に入れられていた。
 檻の数は五つか……ざっと見てだが百前後って所かな。

 檻に近づいた俺たちに気付いた鳥人が睨む。あれ? 俺達仲間と勘違いされてないか?

「お前達! さっさと殺せ。お前達に仕えながら生きながらえるなんて死んだ方がマシだ」
「そうだ! 生き恥を晒したくなどない。鳥人としての誇りをもって死にたい」 

 殺してくれと騒ぎ立てる鳥人を落ち着かせるように、俺は精一杯心を込めて話しかける。

「落ち着いて聞いてくれ、俺はティーゴだ。鷹の王に頼まれてお前達を助けに来たんだ。良く頑張ったな。お疲れ様だ」

鳥人達に全回復魔法を唱える

《リザレクト》

「ああっ……そんなまさかっ」
「千切れた翼が元通りに……」
「ああっ失った筈の足が!」
「痛くない……ううっ」

 鳥人達はお互いを抱きしめあい、喜びを分かち合っている。

 良かった。

「「「「「大賢者様」」」」」

気がつくと俺に向かって全員が平伏していた。

「いやっちょっ!? 普通にしてくれ! それに俺は大賢者じゃない! テイマーだ!」
しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる
ファンタジー
 ハンターギルド最強の男ブラウンが突如の引退勧告を受け  あっさり辞めてしまう  最強の男を失ったギルドは?切欠を作った者は?  結末は?  

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。