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本編 浮島編
これは……!?
しおりを挟むロックの後に続き船が雲の中に突き進む。
直ぐに雲が消え去ると、パールが「ふうむ。やはり結界の効力がかなり弱っておるようじゃのう」と少し困ったように顔を顰める。その横で嬉しそうに尻尾と翼を動かす2匹。
「なんだこれは!?」
『ほう……これは中々凄いのだ』
『なんだか大きな山が浮かんでるみたいだな』
銀太とスバルが、浮島フロッティを見て感嘆の声をあげる。
『俺ちょっと先に見てくるぜ』
「あっ! スバル」
興奮したスバルは浮島フロッティに飛んでいってしまった。相変わらず自由だな。
だがその気持ちは凄く分かる。
覆っていた雲が消えると、浮島フロッティの全貌が明らかになる。その姿は想像していたのより遥かに大きくて、見ていて興奮で胸が高鳴る。
なんて表現したらいいんだろう。とても神秘的で美しく、雲の上に山が乗って浮いているようだ。全部で五つの浮島が幻想的に浮かんでいた。
一番大きな浮島から、小さな浮島と連なって浮かんいる。
これは圧巻だな。うっとりと景観を眺めていると、ロックが翼を羽ばたかせ飛んできた。
「ティーゴ様! あの一番大きな浮島が、フロッティと言われる浮島で、王城がある場所です。後に付いてきて指定する場所に船をとめて頂けますか?」
「了解だ」
パールに言われた事を伝え、ロックの後を船で付いて行き、指定された浮島の一番端っこの、余り邪魔にならない場所にとめた。その場所のすぐ近くには街があり、その奥に見えるお城の様な建物が、ロックが話していた王城だろうか?
「ふむ……むかしよりも随分と発展したもんじゃ。家などは簡易な木造じゃったのに」
パールが船から降りて、街をまじまじと見ている。そうか、パールは過去の浮島を知ってるんだもんな。そりゃ感慨深いよな。
街並みは全てレンガ造りで白で統一されていた。
街の大きさに反して、鳥人があまり歩いていない。なんでだろう?
「……鳥人が余りいないな」
『我も思っていたのだ』
横を歩く銀太が、頭を俺の腹に擦り寄せながら、自分も主と同じように思っていたのだ、撫でてくれと言わんばかりの目で見てくる。
可愛すぎるぞ銀太。
船から浮島に降りて来たのは俺と銀太、それにパールに二号。あとのメンバーは気が向いたら降りてくるみたいだ。
あっそれと、先にどっかに飛んで行ったスバルもいたか。
『レンガ造りで全て白とは……これはこれで中々いいのかもな』
ふふ二号は建物に興味津々だな。
「ティーゴ様! パール様! 今鷹の王に確認をとってきました。一緒に王城に来て貰えますか?」
ロックがふわりと空から舞い降りて来た。
「ロック! もちろんいいよ」
「ありがとうございます」
俺達はロックの案内で街を歩いて行く。
「この街がフロッティでは一番栄えています。居住区はこの街の反対側に集まっています。別の浮島には果実ばかり植わっている島や、畑や家畜を放牧している島などがありますね。大きな湖がある島は奪われてしまい……」
流暢に説明してくれていたロックが口を濁す。そうかその島が取られた島か。
「大丈夫だよ。ちゃんと取り戻してやるからな」
「ティーゴ様……ありがとうございます」
ロックは深々と俺に頭を下げた。
「ロック大丈夫だから! 普通にしてくれ」
「嬉しくて……すみません」
ロックに案内されながら、王城まで歩いて来た。近くでみると教会の様な雰囲気だ。建物は大きいが仰々しく飾り立てられていないシンプルな作りだ。
「さぁ中に入って下さい」
中にはいると出迎えてくれたのは、十メートルは優にあるカスパール様の銅像だった。
こんな場所にも銅像があるのかよ!
「ほう! ワシか……ふうむ」
パールは満更でもない感じでみているけども……大賢者カスパール様の銅像色んな場所に有りすぎだよな? そりゃもちろん凄い人なんだけど。
俺とパールが銅像の前で立ち止まっていると、ロックが恍惚とした表情で「この銅像は至高なるお方、大賢者カスパール様です。我ら鳥人族を救ってくれた神の様なお方なのです」とウットリしながら言っていた。
至高なるお方なら、すぐ横にいるけどな?
「さぁ。あちらに鷹の王がいますので向かいましょう」
ロックは扉を開け俺達を中にいれた。
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