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本編 浮島編
船旅
しおりを挟む「んーっ風が気持ちいいな」
ニューバウンを出発してはや二日が経過した。船旅は順調で、なんの問題なく進行している。
異空間の扉を出しっぱなしにしているので、色んな仲間達が代わる代わる船の甲板に出て来て海を見たり、中の部屋で寛いでいる。
『ティーゴ旦那! 見てくれよっ! 俺こんなの釣ったぜ』
甲板で潮風を感じていたら、スバルが意気揚々とやって来た。その手に持つ釣竿の先には……!?
「なんだよっ!? そのバカでかい魚はっ? てか……それは魚なのか?」
魚なのに人の様な太い脚が、二本生えているんだが。
『ええー?! 何言ってんだよ。どこからどう見ても……!? あーーーーーー!!』
「なっなんだよ! 急に叫んだらビックリするだろ?」
『いやビックリだぜ……コイツは魚じゃねぇ。神眼で見たら魔魚だ!』
「えっ? はっ? 魔魚ってなんだ?」
ピコン
【魔魚】
Bランク
深海に生息している。
深海をずっと走り続けている。走る事が好きなだけで無害。止まると死ぬ。
食べれるが物凄く不味い。
おいおい……食べると不味いって書いてあるぞ。それに無害って。
止まると死ぬ!? だから釣竿につり上げられてても、脚はバタバタとジョギングしている様に動いてるのか。
「スバル! コイツは不味いらしいから逃がしてやろう」
『だな。不味いのはいらねーな』
スバルが魚を海に投げた。すると魔魚は海上を凄いスピードで走り去って行った。
スバルのやつ……相変わらず変わった魚ばっか釣り上げるんだから。
「ふっふっふ。どうやら今日もワシの勝ちのようじゃな」
「パール! 一緒に釣りをしてたのか」
「そうじゃ! スバルと勝負しておったんじゃ。まぁほれっこの通り、ワシの勝ちじゃ」
パールがどうだと言わんばかりに、釣った魚を見て欲しそうに出して来た。
その手に持つ竿の先端には、何やらキラキラと金色に輝くやたらと眩しい魚が、甲板の上を引き摺られながら姿を見せる。
「なんだこれ?」
ピコン!
【ゴールデンキングウナァギィ】
ランクA
レア度 SS
ぷりぷりで美味い。良い脂が凝縮された期間限定のキングウナァギィ。この金色に輝く時期が一番美味い。
中々釣れなくて、出くわす事も中々ない。レアな魚。
味は最高に美味い。塩焼きがおすすめ。
ゴールデンキングウナァギィ……ヤバいじゃないか。
最高に美味いって! ウナァギィでさえ恐ろしく美味いのに!
はぁ……食べる事想像したらヨダレが……。
「クソっ……俺だって魔魚が美味かったら……」
スバルが悔しそうに地団駄を踏む。ってか勝ちの基準は何なんだ?
「これはどうなったら勝ちなんだ?」
「それはじゃな? 珍しくて美味い魚を釣り上げた方が勝ちじゃ! じゃから今回はワシの圧勝! ふんすっ」
『くそーっ! 魔魚が美味かったらなぁ。俺にも勝ちはあったかもなのにな』
「何を? 食えたとて、ワシのゴールデンキングウナァギィには勝てんよ!」
『くぅぅぅっ!』
スバルが悔しそうに翼をばたつかせ身悶えている。
パールよ……コテンパンだな。もう少し謙虚さもあっていいんじゃないか? その姿を見ていると、元大賢者様っての忘れちゃうよ。俺が少し飽きれた目で見ていたのを気付いたのか、パールが「なんじゃ?」っと俺を見る。
「あははっ! 今日の昼ご飯はゴールデンキングウナァギィの塩焼きだな!」
『「やったー!」』
「むっ?」
いきなり何かの気配を感じたパールとスバルに、後ろに思いっきり引っ張られる。えっ!?
次の瞬間、轟音が響き甲板が揺れる。
前を見ると俺が立っていた場所に傷だらけの翼が生えた人? が倒れていた。
「これは珍しい……鳥人族か」
俺が見た事もない人種に驚いていると、パールがポツリと呟いた。
【鳥人族】ってなんだ?! 初めて聞いたんだが。
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