上 下
242 / 314
本編 燦聖教編

サラマンダー

しおりを挟む

「ええとさ? サラマンダーだっけ? お前は何でこの世界に飛ばされたんだ?」

ーーんん~?

 サラマンダーはソフィアの頭にべったりとしがみ付いている。どうやら頭から魔力を貰うのが最高に美味いらしい。
 その最中に話しかけられ、少し煩わしそうに俺の方へ頭を向けると、面倒げに話し出した。

ーーええとだな? 俺は火山火口で眠ってたんだよ。火口のエネルギーは気持ち良いからな。昼寝には丁度良いんだ。それがな? 突然凄い振動で目が覚めたと思ったら、見た事もないこの世界にいたんだよ! 

「火山火口で昼寝?! 気持ちが良い? 炎の妖精王って変わって……ゲフッ。凄いんだな」

ーー凄い? そうさ! こんな訳の分からない世界に飛ばされてなきゃな、消えそうになる程に弱ったりしねーよ! まぁコイツのおかげで助かったから良かったけどな。はぁ……美味っ

 そう言ってソフィアの頭に自分の頭を擦り寄せる。

「……そうだったのね」

 それを聞いて安堵したのか、ソフィアの表情は緊張が少しほぐれ緩んでいる。

ーーええと……ソフィアだっけ? お前の魔力、俺は気に入ったぜ。だからな有り難く思え? お前と契約してやった! ふふんどうだ? 嬉しいだろう? サラマンダー様と契約した人族なんて今まで居ないんだぜ? お前が初だ。

 サラマンダーが嬉しいだろう? と得意げに話す。

「くくっ……」
 何だかその様子がスバルと似ていて、思わずほくそ笑む。

「……えっ?! ちょっ? 何て言ったたの? 契約!?」

 それを聞いたソフィアは驚き、体を大きく揺らし座り込んだ。その所為でサラマンダーが頭から落っこちる。

 流石に妖精王と契約なんて、嬉しくてビックリしたのかな?

ーーいててっ。何するんだよ!

「何するって? そ・れ・は、コッチのセリフよ! 何勝手に契約とかしてるの? これ以上妖精王と契約なんて……」

 ソフィアがプルプルと身体を震わせ真っ赤な顔で訴える。

 あれ? 嫌がってる?

ーーなっ……俺との契約が嫌だってのかよ?

「そうよ! 私はすでに風と水とそれに土の妖精王と契約してるし、精霊王にまで付きまとっ……とっとにかく! 困るのっ」

ーーかっ……風と水……土。そんな……。

 ソフィアにコテンパンに拒否され、サラマンダーは背中を小さく丸め大きな瞳からポロポロと涙を流す。そんな姿を見たら可哀想になってきた。

「ちょっ……ソフィア。言い過ぎじゃ……」

「! ごめっ……サラマンダーが嫌って訳じゃなくてね? 動揺しちゃって言い方が悪かったわ。これ以上妖精王と契約は……困るってだけでね? ゴメンね? 泣かないで?」

ーーううっ俺が嫌って訳じゃないんだよな?

 サラマンダーは瞳をウルウルさせながらソフィアを見る。

「もちろんよ! サラマンダーの事可愛いって思ってる!」

 ソフィアはそう言うと、泣いているサラマンダーの頭を優しく撫でる。

ーーなっ……なんだよー! ビックリしたぜ。なら問題ねーな! これから宜しくなソフィア。

 サラマンダーはケロッとした顔で再びソフィアの頭に飛び乗った。泣いたカラスが何とやらとは正にこの事。

「プハッ面白い妖精王だな」

「ティーゴ様? 笑い事じゃないですよ?」

「ごめんごめん……やり取りがさ余りにも楽しそうで……」

「もう!」

 俺がソフィアと何気ない話しをしていたその時だった。パールが俺達の前に飛び出て来た。

「えっ?」

 何だ? 
 銀太まで俺を守る様にべったりと体をくっ付けてきた。スバルは頭に飛んでくるし……みんな急にどうしたって言うんだよ。

ーーあっ!?

 サラマンダーが何かに気付き何も無い場所をジッと見る。

「来るのじゃ!」

 次の瞬間。
 空間が歪み割れた。その隙間から、神々しい人なのか何なのか分からない者が現れた。

「なっ何だ……!?」

 俺が目の前の人物に驚きを隠せないでいると……

「あーー!? 精霊王様!」

 え? 
 なんて? 精霊王? ソフィアの知り合い?

ーーやっと繋がったのじゃ。はぁ良かった。

「精霊王様……どうやってこの世界に?!」

ーーそれはじゃ。このサラマンダーの魔力が満タンになった事で、我と繋がる事が出来たのじゃ。

ーー精霊王様! 俺を探しに来てくれたのか?

ーーそうじゃ。ソフィアもな。

「じゃあ……私達元の世界に帰れるの?!」

ーーそれは……今はまだ戻る事が出来ぬ。

「……そんな」

ーーそれにしても……はぁ。

 精霊王とやらはジト目て俺達を見回すと、とんでもない事を言いだした。

ーーソフィアよ? お主は異世界に行って、いったい何をしとったんじゃ?……何じゃこの化け物の集まりは……どうやったらこんな恐ろしい奴らと知り合えるんじゃ……。

 ちょっ? 化け物って俺達の事を言ってるのか? 

ーー特にこの猫の姿をした何かは特別やばいのじゃ!

「なっ! ワシは何もヤバくなどないのじゃ! 至って普通。それが見抜けんとは精霊王とやらは、ポンコツじゃのう」

 やばいと言われ、馬鹿にされたと思ったのか、パールは精霊王を煽る様に言い返す。

ーーなっ!? 我は偉大なる精霊王なのじゃ! ポンコツなどではないのじゃ!

「…………それで? 偉大なる精霊王が何のようじゃ?」

ーーあっ! そうじゃ。しまった五分しか無いのに余計な事で……むう!

 精霊王は何やら一人わたわたと悶えている。恐ろしく美形だが……何だろう少し残念な匂いがプンプンするのは……。

ーーなっ! お主ら……我をそんな目で見て! もっと我を至尊の目で見るのじゃ。

 意外と目敏いのか、残念だなと思って見ていた事に気付いたらしい。

「あのさ? そんな事より大事な話があるんじゃ……」

ーーああっ! そうじゃ。しまった! もう残り一分しかないではないか! よいか? ソフィアよ。我は今から精霊国に戻り力を溜める。明日の昼には満タンになるじゃろう。その時にそのサラマンダーと我を繋ぎ、お主らがこちらの世界に戻れるように空間を開くから! 待っておるのじゃぞっ!

 そう言い終えると、チラチラと誉めて欲しそうにソフィアを見ている。精霊王様? 感情がダダ漏れですよ?

「さすが精霊王様! ありがとうございます」

 ソフィアが頬を紅潮させ興奮気味に誉めると……

ーーそうじゃっ。もっと敬って……

 更に調子に乗って何か言おうとしたみたいだが、空間が途切れ精霊王の姿は消えてしまった。

 ブフォッ……面白すぎるなんて考えてたらソフィアと目が合った。

「んんっ。とっとりあえず、ソフィアは明日元の世界に戻れるって事だよな? 良かったな」

「はい!」

 ………凄い事なのに……なんだろう。このモヤっとする残念な気持ちは。









しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

もふもふ転生!~猫獣人に転生したら、最強種のお友達に愛でられすぎて困ってます~

大福金
ファンタジー
旧題:【もふもふ転生】病弱で何も出来なかった僕。森で猫カフェをオープンすると大好評♪最強種のお客様ばかり遊びに来ます  生まれた時から奇病を患い、病院から一歩も出たことなかった主人公(大和ひいろ)夢は外を走り回る事だったが、叶う事なく十二歳で他界したのだが……。  気がつくと見たこともない場所に立っていた。  そこには創造神様と女神様がいて、前世でいっぱい頑張ったご褒美に、好きなスキルや見た目にしてくれると言ってくれる。 「ご褒美を決めろって……急に言われてもっ」  ヒイロは慌てて猫獣人の姿、鑑定やアイテムボックス等のチート能力をお願いし、転生を果たすが。  どうやら上手く説明出来て無かったらしく。何もない謎の森に、見た目普通の猫の姿で生まれ変わっていた。 「これって二足歩行する普通の猫!?」  その謎の森でドラゴンの親子に出会い、料理を作ってあげる事になったり。  さらには猫獣人の村で、忌み子と虐げられていた猫獣人の子供を助けたり。  家を作ったら、いい匂いにつられて最強種ばかりが度々遊びにきたり。  だがそれだけではなかった。ヒイロには隠された力が……!?    このお話は、ヒイロが毎日を楽しく生きている内に、良きせぬハプニングに巻き込まれたりするお話。 ※ハプニングのせいで、なかなかカフェはオープンしません。 ※二章カフェ編がやっとスタートしました。 ※毎日更新がんばります!

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜

自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成! 理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」 これが翔の望んだ力だった。 スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!? ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。 ※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

大賢者カスパールとグリフォンのスバル

大福金
ファンタジー
この世界で誰も届く事がない領域まで達した大賢者カスパール。 彼が得れる魔法は全て修得した。 そんなカスパールを皆が神様の様に崇め奉る ウンザリしたカスパールは一人山奥でひっそりと好きに暮らす事に。 そんなカスパールがひょんな事からグリフォンの赤子を育てる事に… コミュ障でボッチの大賢者カスパールが赤子を育てながら愛情を知っていく出会い〜別れまでのストーリー。 このお話は【お人好し底辺テイマーがSSSランク聖獣たちとモフモフ無双する】のサイドストーリーになります。 本編を読んでいなくても内容は分かります。宜しければ本編もよろしくお願いします。 上記のお話は「お人好し底辺テイマー…………」の書籍二巻に収録されましたので、スバルとカスパールの出会いのお話は非公開となりました。 勇者達との魔王討伐編のみ公開となります。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。