242 / 315
本編 燦聖教編
妖精王探し
しおりを挟むとりあえず、妖精王をどうやって探すか……だよな?
この広い世界で……な。
まだ行ったことがない国が沢山ある中で、俺達には見えない妖精王を探すって……はぁ。
これは……途方もないな。見つけることが出来るのか? 不安でしかない。
少し沈黙が続くと……カリンがポソっと話しかけて来た。
「あの……ティーゴ様。お話を少し聞いていたんですが……」
「カリン?」
カリンは俺達の話を聞いていて、何か思い付いたらしい。
「私の想像なのですが……お兄っ…グリモワールが禁忌の魔法で異世界人達を召喚した時に、この世界の時空が歪んだので……もしかしたらその時に、この国と異世界に繋がる道が出来て……ソフィア様の所の妖精王はそれに巻き込まれこの世界に来たたのかな?って」
そう言ってカリンはチラリとグリモワールを見る。
しかし当の本人は話が聴こえている筈なのに、下を向いて座ったまま何の反応もしない。
ううん? 何かの反応があっても良い筈なんだが。
グリモワールはこの村に来てから何も言葉を話さない。
その代わりに、パールが何かに気付いたのか、ソワソワしだす。
「そうか……なら!」
カリンの話を聞いて何か閃いたらしく、パールの目が爛々と輝く。
「ソフィアよ! 妖精王はこの辺りにおるぞ。この近くにお主の世界とこの世界を繋いでいる鍵があるはずなんじゃ。お主は何処に現れた? きっとその場所近くに妖精王とやらもおるはず」
「えっ? 何処に……? 私は気がつくとこの村近くにある金色の花畑に立っていました」
「金色……グーテの花か! よし、そこに行ってみるのじゃ」
俺達はグテ村を出て、グーテの花畑がある森に歩いて行く。
グリモワールの様子が少しおかしかったので、カリンとグリモワールは村に待機してもらった。カリンがグリモワールを見てくれるから大丈夫だろう。
「この先にあるあのお花畑に気がついたら立っていました」
ソフィアが先に見えるグーテの花畑を指差して教えてくれる。
そこは辺り一面、見事な金色のグーテの花が咲き誇っていた。
「えっ? こっち?」
何やらソフィアは空を見て呟いている。もしかして一緒について来た妖精達と話をしているのか?
その様子が気になりじっと見ていると不意に俺をみてフニャりと破顔した。
「ティーゴ様! ついて来た妖精さんが言うには、あっちからかすかに妖精王の魔力を感じるそうです!」
少し得意げにソフィアが森の奥を指差す。手がかりが早速見つかり嬉しいのか張り切っている。
「さぁ! 行って見ましょう。私について来て下さい」
「ふふっ了解だ」
ソフィアはそう言ってガンガン森の奥に向かって歩いて行く。
綺麗なドレスが汚れるの事なんて気にする事なく。
不思議な子だな……。貴族様が何も気にせずに森の中に入るとか……普通は嫌だと思うんだが。
「ティーゴ様ー! 何してるんですか? 置いていきますよ」
うっそりとその姿を不思議に見ていたら、足が止まっていたらしくソフィアに急かされる。
「あっ……っと! 待ってくれ」
俺は慌ててソフィアの所に走って行く。
『ティーゴの旦那! 何ポーッとしてんだよ。早く妖精王とやらを見つけてさ! 約束の肉祭りしようぜ』
スバルが勢いよく飛んできて頭に乗ると、ぶつぶつと文句を言って来た。どうやら妖精王探しより肉祭りで頭がいっぱいらしい。
「そうだったな、早く見つけて異空間で肉祭りしようぜ」
スバルの頭を優しく撫でてやる。
『ふふっ……ティーゴの手は気持ちいいな。やっぱり一番だ』
何と比べているのやら……まぁ一番は嬉しいけどな。
「あっつっ」
「大丈夫か?」
前を歩くソフィアが、よろけて倒れそうになる。
「だっ大丈夫! ちょっと……この道無き道を歩くのが難しくて……森は歩き慣れてるんですが、この森はかなり地面がでこぼこしてる上にこの靴じゃ……」
そう言って高そうな靴を脱いだ。
森は歩き慣れてる? 貴族令嬢が? かなり違和感しかないが今はそれよりもソフィアの足だ。
豪華で華奢な靴、それで森を歩くのは困難だろう。よく見ると足も赤く腫れている。
「治れ」
ソフィアが赤く腫れた足に触れると瞬く間に治癒された。魔法も使えるのか……
「ソフィアは回復魔法も使えるのか……凄いね」
「えへへ……少し……だけね……制御が上手く出来ないんだけど」
少し困った顔で答えてくれる。
あっ!
そう言えば、靴や服はカリン用の予備がアイテムボックスに入ってたな。
ドレスじゃないけど、この服の方が歩き易いだろう。
「ソフィア、良かったらこの服どうぞ。豪華なドレスじゃないけど、森を歩くならこれくらいラフな服の方が良いかなと……」
俺はアイテムボックスから出した服とブーツを、少し自信無げにソフィアに渡す。
「わっ! えっ! こんな素敵な洋服と靴を私が頂いて良いんですか? すっごく嬉しいです。ありがとうございます」
ソフィアは嫌な顔をするどころか、とても嬉しそうに渡した服を喜んでくれた。
この服はエンシェントスパイダー達の糸を、獣人達が紡ぎ服を作ってくれている。
最高の着心地なんだ。
靴はオーちゃんお手製。
それをあんなにも喜んでくれたら、仲間達の事を褒められた様で嬉しくてついニマニマしてしまう。
ソフィアがどうやって着替えようかと困っていたら
「よし、ここで着替えるといいのじゃ」
パールがあっという間に簡易な小屋を魔法で作ってくれた。
「一瞬で木の小屋が現れた……これを猫ちゃんが? 作ったの?」
ソフィアは驚きを隠せず、あんぐりと口を開けてパールを凝視する。
その気持ち凄く分かるよ。ずっと一緒にいる俺でさえ、小屋を立てるその早さにビビる。
相変わらずパールは規格外すぎる。
★ ★ ★
新しい洋服に着替えたソフィアは、クルクルとその着心地を確かめるかの様に楽しげに回っている。
その様子から気に入ってくれたみたいで安心する。
「はぁー♪ 何て素敵な着心地なの……モフモフ達に包まれているみたい……こんな服を知ってしまったら、他の服が着れない体にされてしまったわ……」
「ブフォ! 言い方な? 語弊がある言い方はやめてくれよ」
服の着心地を気に入ってくれたのは嬉しいんだけどな。変な言い回しはスバルみたいだぞ。
「この洋服なら何処まででも飛んで行けそうです。さぁ行きますよー。妖精達が言うにはあと少しらしいです」
着替えたソフィアの足は早かった。さっきとは別人の様に森をスイスイと歩いて行く。
もはや走っているかの様な速さだ。森を歩き慣れているは本当らしい。
十五分ほど歩くと、俺の目でみても分かるくらいに小さく光る何かが集まっている場所があった。
「いたわー!」
ソフィアはその場所目掛けて勢いよく走って行く。
「これは……トカゲの赤ちゃん?」
大きな大木の根元に、掌程の大きさの赤いトカゲ? の様な生き物が横たわっていた。
「この子が妖精王らしいです」
ソフィアが弱っているトカゲを手で掴むと、パチッと閉じていたトカゲの目が見開き、勢いよくソフィアの頭に飛び乗った。
ーーはぁーっ! 助かったぜ。美味い飯が歩いて来てくれるなんて! 死ぬかと思った……。ああっうんまー!こいつの魔力はなんて美味さなんだ。
何だこの声は……ソフィアの頭に乗っているトカゲの声か?
ーー久しぶりの魔力は美味いなぁ……。最高だ
ソフィア頭に乗っているトカゲがウットリとしている。やはりトカゲの声か。
「ソフィア……そのトカゲの声が聞こえるんだが……」
「……ティーゴ様にも聞こえますか?」
「……ええと……トカゲが美味い美味いって…」
「あわっ……そのっ。私の魔力が妖精にはご馳走様で……」
ソフィアが恥ずかしそうにもじもじしていると
ーーさっきからトカゲ、トカゲって! 俺は炎の妖精王、サラマンダー様だ。ありがとうな助けてくれて。
そう言って翼を広げてふわりと飛んだ。その姿は小さなドラゴンの様だった。
「「炎の妖精王?!」」
どうやら探していた妖精王を見つける事が出来たみたいだ。想像していた妖精王の姿とは違ったが。
これで、ひと段落するのかと少しほうっと安堵の息がもれた。
★ ★ ★
中々更新出来ず久しぶりの更新となりました。
かなりお待たせしてしまい申し訳ありません。まだ花粉症の症状は治っていませんが、少しずつですがマシになってきました。(*´꒳`*)
早く続きをお届けしたいので、なるべく間を空けず更新したいと思ってます。
34
お気に入りに追加
8,167
あなたにおすすめの小説

5歳で前世の記憶が混入してきた --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--
ばふぉりん
ファンタジー
「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は
「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」
この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。
剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。
そんな中、この五歳児が得たスキルは
□□□□
もはや文字ですら無かった
~~~~~~~~~~~~~~~~~
本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。
本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。
【完結】魔物をテイムしたので忌み子と呼ばれ一族から追放された最弱テイマー~今頃、お前の力が必要だと言われても魔王の息子になったのでもう遅い~
柊彼方
ファンタジー
「一族から出ていけ!」「お前は忌み子だ! 俺たちの子じゃない!」
テイマーのエリート一族に生まれた俺は一族の中で最弱だった。
この一族は十二歳になると獣と契約を交わさないといけない。
誰にも期待されていなかった俺は自分で獣を見つけて契約を交わすことに成功した。
しかし、一族のみんなに見せるとそれは『獣』ではなく『魔物』だった。
その瞬間俺は全ての関係を失い、一族、そして村から追放され、野原に捨てられてしまう。
だが、急な展開過ぎて追いつけなくなった俺は最初は夢だと思って行動することに。
「やっと来たか勇者! …………ん、子供?」
「貴方がマオウさんですね! これからお世話になります!」
これは魔物、魔族、そして魔王と一緒に暮らし、いずれ世界最強のテイマー、冒険者として名をとどろかせる俺の物語
2月28日HOTランキング9位!
3月1日HOTランキング6位!
本当にありがとうございます!

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました

眠り姫な私は王女の地位を剥奪されました。実は眠りながらこの国を護っていたのですけれどね
たつき
ファンタジー
「おまえは王族に相応しくない!今日限りで追放する!」
「お父様!何故ですの!」
「分かり切ってるだろ!おまえがいつも寝ているからだ!」
「お兄様!それは!」
「もういい!今すぐ出て行け!王族の権威を傷つけるな!」
こうして私は王女の身分を剥奪されました。
眠りの世界でこの国を魔物とかから護っていただけですのに。
種族【半神】な俺は異世界でも普通に暮らしたい
穂高稲穂
ファンタジー
旧題:異世界転移して持っていたスマホがチートアイテムだった
スマホでラノベを読みながら呟いた何気ない一言が西園寺玲真の人生を一変させた。
そこは夢にまで見た世界。
持っているのはスマホだけ。
そして俺は……デミゴッド!?
スマホを中心に俺は異世界を生きていく。

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。