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本編 燦聖教編
話し合い
しおりを挟む三人は見つめ合うと……黙り込み、少し沈黙が続く……。
誰から話をしようか考えてるんだよなきっと。
分かるけど……。
ただ……この重い雰囲気はちょっと耐えられないな。
俺はアイテムボックスからコップと茶葉を出してブルーティーを入れて三人に出した。
ブルーティーは珍しい青い茶葉で貴族の間でも人気のお茶だ。
買えば凄く高いんだけど、偶然ある村を助けたきっかけで、苗木を貰えたんだよな。
今はこのお茶を異空間で育てていて、獣人達にも人気だ。
「とりあえずお茶でも飲みながら話さないか?」
「おおっ……ブルーティーか。ワシこれ好きなんじゃ」
パールはニコニコとお茶を飲む。
グリモワールとカリンは少し緊張しているのか手をつけない。
『主! 我はお茶より甘味が欲しいのだ』
『俺はパイが良いな、あっ黒い最終兵器でも良いぜ?』
『妾もじゃ! パイが食べたい』
パール達にお茶を出したら、銀太達が甘味と騒ぎだした。
スバルよ? 黒い最終兵器とは大福の事か? 兵器は食べ物の名前じゃないからな!
甘味をよこせと騒いで五月蝿いので、アイテムボックスに入れていたリコリパイをたっぷり出してやる。
銀太達が騒いでゆっくり話も出来ないからな。これで落ち着いて話が出来るだろう。
「グリモワールとカリンも飲んでくれ」
「あっありがとうございます」
カリンがおずおずとブルーティーを口にする。
その姿をみたグリモワールも後に続く。
「いただきます」
「おっ美味しい……それに幸せで満たされるようで……ああ……」
「……僕こんなに美味しいお茶は初めて……」
カリンとグリモワールは一瞬でブルーティーを飲み干した。
「あっ?もうない」
「ふふっおかわりはいっぱいあるから!どんどん飲んでくれよ」
俺は二人のコップにブルーティーを注ぐ。
「カリンにリィモよ……泣いておるのか?」
パールが二人が泣いていると言う。
「えっ……あ? 私……分からないけど、心が満たされて幸せで……涙? 本当だ」
「……僕も泣いて……? このお茶を飲んだら、何故だか心が幸せってなるんだ……」
ふふっ慈愛の水で作ったからな!良かった。
グリモワールとカリンは慈愛のパワーで癒されてくれたみたいだ。
これも女神様の加護のおかげだな。
慈愛の女神ヘスティア様感謝しますよ。
異空間に戻ったらお礼にいっぱい奉納しよう。聞きたい事もあるし。
「ええと……先ずは私からお兄ちゃんに話しをしても良いですか?」
「えっ? カリンが? 僕に? 話があるの?」
「ビックリしないで欲しいんだけど……私はお兄ちゃんとずっと一緒にいたの」
「えっ? 一緒に?」
グリモワールは目の前に?マークが浮かんで見える程に驚いている。カリンが言ってる意味が理解出来ないようだ。
「……過去に戻って話をするね。私が死んだ時、まだ私の魂は天に昇天してなかった。私はお兄ちゃんが心配で魂になってもずっと側にいたの……」
「カリンが? あの時僕のそばに?」
「そう……そしてお兄ちゃんが見つけた祠で黒い塊に取り憑かれたでしょう?」
「……ああ」
黒い塊と聞いて、グリモワールの顔が苦しそうに歪む。
「その時に私の魂も一緒に同化しちゃって……それからずっとお兄ちゃんのことを一番近くで見ていたの」
「ずっと見ていた?……見て?」
「そう」
「そんなっ……僕の犯した悪事をカリンは側で? 全てを知って……なんて事だ……! そんなああああああ……カリン許してくれっ! すまない……なんて事を」
グリモワールはまた狂った様に叫ぶ。必死にカリンに謝りながら。
「お兄ちゃん! もう終わった事だから。私は大丈夫! その時にいっぱい泣いて乗り越えたから」
「……でも僕は……」
「終わった過去を振り返っても仕方ない。これから先の未来をどう生きるかだよ!」
カリンが過去にとらわれるなと、未来を見ろとグリモワールに言っている。
その通りだよな。
前を向いて進まないと、後ろばかり振り返ってちゃ何も変わらないし進まない。
「……確かにね? 初めお兄ちゃんと同化した時は……見てるだけで何も出来ない自分が苦しかった。止める事も、文句も言えない。でもね? 同化したおかげで私は今生き返る事が出来た。カスパール様にヨシヨシして貰えた。ふふっ」
「カリン……」
「だから二人でお兄ちゃんのした過ちを正して行こう。この国を良くしよう? ねっ?」
カリンはキラキラと眩しい笑顔で笑った。
「お前は……強いんだな」
グリモワールは眉尻を下げ、やっと少しだけ……笑顔を見せた。
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