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2巻

2-3

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 四天王メフィストは考えあぐねていた。
 取り急ぎトンネルを塞いで物流を混乱させるなどしてみたが、すぐに直されてしまったと報告があった。これもトリプルSの仕業なのか?
 ベリアルが用意していた策も失敗したと聞くし、まだ誰もリードしていない。次の一手こそ決めたいところだ。厄介なのはやはりトリプルSのフェンリルだが、何処かの誰かがほうむってくれないものか。少なくとも、自分で戦うのは御免だな。


 そして、四天王バフォメットはまだしつこく悩んでいる。
 あの聖龍の卵さえ取り戻すことが出来れば……私にもチャンスはある! 
 一番のお気に入りはこの私になるはずだ! 
 偵察ていさつの者によると、卵はまだかえっていない。再び穢れを沢山与えてやれば、邪竜が誕生するはずだ。
 フェンリルさえいなければ……簡単に取り戻せるのに! 
 どうやら卵は、人族の男が持っていると、偵察に行った奴が言っていた。
 相手が人族なら隙を見て盗めないだろうか……? 
 いやいや無理だ! フェンリルの奴は常に気配探知を使っており、我等が近くに行くとバレる! 何かいい計画を考えないと……! 
 せめて人族の男が一人になってくれたら……あっ? 
 んんっ? そうだ! これならいける! 
 クククッ……見ておれフェンリルよ。

 ★ ★ ★

「わっ、これはレア薬草!」

 俺は見つけた薬草のところに急いで走って行く。

「あっ、こっちにも! 神眼だと更にレアな素材がドンドン見つかる! はぁ……神眼って凄い……」

 神眼のおかげで薬草などが簡単に見つかるので、俺はご機嫌に採取していく。


『まただな……ティーゴの旦那は葉っぱ集めるのが本当に好きだな』
『そうなの? 何に使うの?』

 三号が不思議そうに質問した。

『んん? 傷薬作ったり、売るためって言ってたなぁ……?』

 スバルが曖昧に答える。

『ん~? 傷薬必要? 私達いるのに? それに薬草なんて、売っても大したお金にならないのにね?』

 三号は不思議でならない……。

『でも……まぁ……楽しそうだからな?』
『そうよね。ティーゴが楽しかったらいいわね。ふふっ』

 聖獣達が少し残念そうに、温かい目で自分を見ているなんて、そんなこと全く気付かずに、俺はせっせと薬草を採取し、アイテムボックスに入れていくのだった。


『ティーゴの旦那! もうそろそろ森を抜けるぜ!』
「わっ! もう? 採取しながらだとあっという間だったな……!」

 森を出ると、微かにいだことのない香りが……! 

『おーここまで来たら海の匂いがして来たな!』
『本当だの……』

 銀太達がこれが海の匂いだと言う。
 これが海の匂いか……! 初めて感じる海の匂い。これだけでもワクワクする。

「海! 楽しみだな!」

 俺は卵をリュックから出して、海の匂いを教える。

「卵! これが海の匂いだよ! 分かる?」

 プルプル……! 
 卵がほんのり黄色く光る。

「やっぱり! 卵ちょっと光ってる! 気のせいじゃなかったんだ」

 俺は嬉しくて卵をみんなに見せようと、大きな声で叫ぶ。

「なぁみんな見てくれよ! 卵が光るんだ」

 みんなが俺の所に集まってくる。

『卵が光ったのか? ってことはもうすぐ生まれるのかもな!』
『おおーっ楽しみだの! どんな龍が生まれてくるのかのぅ……?』

 スバルと銀太は楽しそうに卵を見ている。
 何だか嬉しいな。

『卵って光るのねー……ねぇ? 卵! もう一回光って見せてよ?』

 三号が卵に話しかける。

『……』
『うーん……何も反応ないわね……?』
「さっきは黄色に光ったんだけどな……なぁ? 卵」

 俺はそう言って卵を撫でた。
 すると卵はほんのりピンク色に光った。

『おお! 光ったのだ!』
「今度はピンク色だな。不思議な卵だな」
『私が言っても何も反応しなかったのに!』

 三号が少し頬を膨らませねる。

「たまたまだよ!」

 そう言って三号の頭を撫でてやる。

「なぁスバル? 港町ニューバウンまでは後どれくらい歩いたら着くんだ? 分かるか?」

 早くニューバウンに行きたい俺は、スバルに聞いてみた。

『どれくらいだろうなぁ? 俺が飛んでいったら五分くらいか?』

 全然参考にならないよ、スバル。
 まぁ……近づいてるってことだよな! 海も楽しみだし、名物だっていう新鮮な魚介類も楽しみだなぁ。
 そして、みんなでワイワイと楽しく話しながら歩いて行くと……あっ! 
 遥か先に大きな門が見えてきた! 
 人集りが……見える! ってことはあの場所がニューバウンの検問所だ! 

『おーっ! ニューバウンに着いたな!』
『私達どうしようかしら? 人化する?』
「そのままでいいよ! タダでさえ銀太がいて目立つからな! そこに綺麗な女の人を三人も連れてたら更に目立っちゃうよ!」

 それに黒犬の方が俺は落ち着くしな。 

「じゃあ行きますか! ニューバウンに!」

 しかし、俺達がニューバウンの検問所に着くと、人集りはなくなり、目の前には門番しか居なかった……。

「あわわっ……⁉ フェンリル……」

 門番の人達はいきなり目の前にフェンリルが現れたから、ビックリして今にも気絶しそうだ……! 
 はぁ……。
 この展開も慣れてきたな。

「大丈夫です、安心してください。このフェンリルは俺の使い獣です!」

 そう言って俺は銀太をモフりたおす。
 モフモフ……モフモフ……モフモフ……。

『フンスッ……気持ちいいのだ』
「あわわ……⁉ フェンリルがあんなに懐いて……嬉しそうに……ゴクリ……モフモフ……モフモフ……」

 あれ? 門番の様子が変だぞ? 目がウットリとして、銀太の被毛ひもうとりこになってないか? 

「あの? これ冒険者証です」

 俺はすかさず冒険者証を門番に見せる。
 はっ! と門番が我に返った。 

「おおっ! Aランクギルドカードですね。どうぞお入りください。ニューバウンの街へようこそ! ……モフモフ」

 門番の人達はウットリした目のまま送り出してくれた。

『アイツ等、銀太のことずっと見てたな!』

 スバルも気になったみたいだ。

『銀太に触りたかったのよ! あの目は! モフモフって言ってたし!』
『だよなぁー! はははっ』

 銀太に触りたいって思ってもらえるのは嬉しいな。怖がられるよりその方が断然いい。自慢の毛は毎日ブラッシングしてるからふわふわだしな! 

「おお? あれが海か! 凄い……うわぁ……!」

 こんなにたくさんの水が! 
 海は俺が想像していた何百倍も広かった。
 海を見ると、もっと近くに行きたくなってきた。

「なぁ? もっと海の近くに行ってみないか?」

 俺は海に興奮して、子供みたいにはしゃいで走って行った。

『ふむ! 我も行くのだ!』
『何だ? 行ってみるか!』
『ふふ……ティーゴったら子供みたいよ!』
『海は久しぶりっす』
『行くか!』


 ものの数分で、俺は砂浜に辿り着いた。
 これが海! 遠い所からどんどん水があふれてくる! 水がまるで生きているように動いている。……不思議だ。
 そうっと足先を海に入れてみる。
 するとすぐに波が押し寄せてきて、膝まで浸かる。

『ティーゴの旦那!』

 バシャッ!

「ウワップ……⁉」

 水がしょっぱい……! 
 スバルが水をかけてきた! 

「クソッやったなー?」

 俺も海水をバシャバシャと飛ばす。しかし、スバルはひょいひょいとかわした。

『へへっ? 簡単にはかからないぜ!』
「クソッすばしっこいな!」

 その時、バッシャーンッ! と大きな水柱が立ち上った。

『うわっ⁉ ちょっ! ぺっ? 銀太やったなー!』

 銀太が思いっきり海に飛び込んだせいで、みず飛沫しぶきが大量にスバルにかかった。

「あはははははっ」

 俺と銀太とスバルは海で思いっきり遊んだ。その間、一号、二号、三号は砂浜でのんびりとくつろいでいた。
 スバルがふと何かに気づいた様子で遠くを見た。

『あれ? なぁティーゴの旦那! あっちの方、凄い人じゃないか?』
「んん? 本当だ! 何かイベントでもしてるのかな?」
『イベント? 何だそれ?』

 スバルがイベントという言葉に反応する。

「ん~祭りみたいなもんだよ」
『祭りだと? それは楽しそーじゃねぇか! 行ってみようぜ!』

 よく見たら旗がいっぱい立ってる! なんて書いてあるんだ? 目を凝らすと文字が見えてきた。
【来たれ男の釣り大会開催!】。
 別の旗には【釣り人よ挑戦待ってるぜ……!】って書いてある。
 何だって! 

「スバル! 釣り大会やってるよ!」
『何? そりゃ俺が優勝だな!』
「イヤイヤ俺だよ?」
『行ってみようぜ!』

 釣り大会か……! 

「これは……楽しみだな!」

 俺とスバルは旗が立っている開催場所に向かった。
 みんなで行くと目立って大騒ぎになるので、とりあえず俺とスバルだけで行くことにした。

彼処あそこかな?」

 受付らしい場所に人が沢山集まっている。

「すみませーん!」
「はいよー!」

 頭にハチマキを巻いている、褐色かっしょくの肌をした筋骨隆々きんこつりゅうりゅうのおじさんが返事をする。

「釣り大会の旗を見てきたんだ! 俺も参加したいんだけど」
「釣り大会参加ね! ありがとうな。参加は二人でペアを組むことになるけどもう一人は居るかい?」
「えっ……⁉ ペア?」

 困ったな、二人か……。

『ここに居るぜ?』

 人化したスバルが横に立っていた。

「おっ? こりゃまたカッコいいニイちゃんだな? 大会は一時間後だ! それまでに準備しておけよ。ホラっこれは受付番号だ!」

 俺達は受付番号が書かれた紙を貰い、釣りの準備をすることにした。

「受付番号百十一だって! 一ばっかりだ! 縁起のいい番号貰ったぞ!」
『大会は一時間後か。楽しみだな! 早く釣りたいぜ!』

 大会が始まるまでに、俺とスバルは自分達の釣竿を作り、受付に戻った。

「今から釣り大会スタートだぜ! 準備は出来たか?」
「はい! バッチリです」
「ん? ペアはさっきのカッコいいアンちゃんじゃねーのか? このちっこいガキで大丈夫か?」

 えっ? ガキ? 
 ふと横を見るとスバルの姿は少年になっていた。

「えっ? スバル? 何でっ? どーいうこと! 子供になってる」
『……俺が人化すると子供になるんだよ。カッコつけて大人になってたけど、その姿は一時間しか持たないんだ。人化することなんて殆どなかったから……忘れてたぜ……クソッ』

 スバルは真っ赤な顔で少し恥ずかしそうにして、ソッポを向いた……。

「何だよ! スバル可愛いなぁ!」

 俺はスバルの頭をクシャクシャ撫でる。

『可愛いって何だよっ!』

 少年のスバルが口を尖らせ、膨れっ面して困ってる。
 スバルの姿は、大きな青い目に、真っ赤な長い髪が肩まで伸びて、その姿は可愛い女の子にも見える。

「弟が出来たみたいで嬉しいよ! スバル!」
『……弟? ……俺はティーゴの弟か‼ そっか』

 さっきまで膨れっ面してたのに、弟扱いが気に入ったのかスバルはニヤニヤしている。 

「よーしっスバル! 一位をとるぞ!」
『俺に任せとけ! 足引っ張るなよ?』

 俺達は張り切って海に向かった。

「何処にする? 場所決めも大事だからな」
『ここは? 誰もいないし』

 俺とスバルは釣り場を決めて、釣りの準備を始める。
 釣り大会は二時間。その間に一番大きな魚を釣った者の勝利だ。デカい魚を釣った奴が勝つ! 単純な勝負だ。
 俺が一番デカい魚を釣るぞ! 


 ピィィ――――――――――――ッ‼
  

 大会開始の笛の音が鳴った。

『よっし! デカいの釣ってやるぜ!』

 スバルが張り切っている。

「俺だって負けないよ?」

 釣り糸を垂らして構えると、何かが引っかかった感覚がした。
 おっ! 早速いいあたりが……? 中々強い。これは早々にデカい魚が来たか?
 釣り糸にかかった魚が水面から跳ね上がり、すぐにまた水の中へ。

「えっ……?」

 今……チラッと見えたけど……! 
 あれは……魚か? 
 バッシャーンッ! また獲物が姿を見せた。

「……人⁉」

 えっ……人? 何だあれは? 
 いやっ⁉ 違うっ! あれは……人魚だっ! 
 やばいやばいっ! 魚じゃなくて、違うの釣れてるよ! どーすんのコレ⁉ 

「スバル!」

 困った俺はスバルに助けを求めるも、あー……釣りに夢中で聞こえてない。
 釣り糸の先では、今も人魚が暴れている。よし! とりあえず釣り糸を切ろう。
 糸を切り離すと、人魚は水の中へ戻って行った。
 はぁー……ビックリした。海には人魚がいるのか……! この世界には知らないことがまだまだいっぱいあるな。
 気を取り直してもう一度! 釣り糸を投げた。
 バッシャーンッ! 
 ………………何で? また人魚だ! 
 すぐに糸を切って息をつく。

「ふうっ……」

 何で人魚ばっかり釣れるんだ? 
 ちらりとスバルの方を見ると、普通に……イヤイヤ普通じゃないよ! 
 何だアレは⁉ あのデカい化け物みたいな奴は……⁉
 釣り糸の先には、何か大きな生き物の体の一部が見えている。スバルは歯を食いしばって、大きくしなった釣竿を支えていた。
 スバルよ、一体何を釣ってるんだ?
 隣を見たことで、俺はなんだか達観した気持ちになっていた。 
 そうか……海には普通じゃない魚がいっぱい居るんだな。気を取り直してもう一度! 
 しかしまたも――

「はわっ!」

 また人魚! 何で人魚ばっかり釣れるんだ。また糸切らなくちゃ。

「ええっ⁉」

 人魚が釣り糸を掴んでこっちに泳いで来てないか? 
 やばいやばいっ! 怖いって! 慌てて釣り糸を切る。
 プチンッ……! 

「はぁビックリした……人魚が向かってくるなんて」

 そう思った瞬間、近くの水面が盛り上がって何かが姿を現した。

『何で釣り糸切るんですか! はぁ、はぁっ……』

 あわわっ、人魚が泳いで俺のところに来た! 
 人魚は息を荒くしている。

「えっ……? だって俺は魚を釣りに……」
『私達は貴方にお話があって、釣り糸に掴まったのに!』

 仲間の人魚も泳いで来て、その数は三人……三匹? とにかく人魚達は俺の目の前に集まった。
 人魚は下半身が魚。上半身は胸の辺りまで魚鱗ぎょりんで覆われていた。

「話がある? 俺に?」
『そうです! 貴方は私達の仲間が住む泉を浄化し、助けてくれたと聞きました!』
『だからお願いです! 今度は私達の仲間を助けてください!』

 人魚達の話によると……。
 森で俺が浄化した泉には、人魚の仲間の魚達が暮らしており、そして死にかけていた。それを俺が浄化したことで助かったと。
 その話を魚達から聞いた後に、今度は自分達以外の人魚が魔族に連れ去られた。
 どうしようかと途方に暮れていたところに、噂の人物(俺)がノコノコと海に現れたというわけだ。そして今に至る。 
 って、イヤイヤ⁉ 泉を浄化出来たのは偶然だし? 
 それにまた魔族……! 何で俺の行く先行く先に、いつも魔族が出てくるんだよ! はぁ……。

「俺はどうしたらいいわけ?」
『私達の仲間を助けてください! お願いします!』

 ですよね……! 何となく想像はついてたよ。

「分かった! 俺に出来ることならするから。仲間達が何処に連れ去られたかは分かるのか?」
『はい! 沖に見える離れ小島に幽閉ゆうへいされてます』

 人魚達が指す方向に小さな島が見えた。あの島か。 

「分かった! 仲間達に相談して作戦を立てて、絶対に助けてやるからな!」
『ありがとうございます』

 スバルは釣りに夢中なので、俺は銀太達と合流し、相談してみた。

『なるほどねー。助けてあげるのは賛成よ。でも本当に……魔族絡みが続くわね……』

 三号は少し魔族のことが気になるようだ。

『我は主が決めたなら行くだけだ!』
『あっしもティーゴがいいんなら』
『俺もティーゴが決めたなら賛成だ』
「みんな! ありがとう」

 優しい聖獣達はみんな賛成してくれた。

「それで、あの島までどうやって行く?」
『我が転移して……』
『あんなに小さな島よ? そんなことしたら、魔力を察知されて魔族にバレるわよ!』
『じゃあスバルに乗って?』
『それも目立つでしょ?』
『じゃあどーするんだよ!』
『うーん……?』

 三号が中心になって、方法を色々と考えてくれる。
 魔法を使ったらバレるんなら……。

「じゃあさっ、泳いで行くとか?」
『『それだ!』』

 その時、大きな笛の音が鳴り響いた。
 釣り大会終了の合図だ! 

「ちょっと待ってて? スバルを連れて来るから!」

 スバルは……っと何処にいる? あっ、いたいた!

「スバルー! デカい魚は釣れたか?」
『バッチリさ! 大漁だぜ? これは俺の優勝だな!』
「凄いじゃないか!」

 俺達は話しながら受付に向かう。

「アンちゃん達! 何も持ってないじゃねーか? ボウズだったのか?」

 俺達の登録をしてくれた受付のおじさんが話しかけてきた。

『何言ってんだよ! デカい奴釣れたよ!』

 そう言うとスバルは、デカさ四メートルはあるクラーケンを、アイテムボックスから出した! 

「クククックラーケンだと! ココッコレを? アンちゃん達が釣ったのか?」

 俺は何もしてないけどね……人魚しか釣れなかったからな。

「スゲー! クラーケンを釣る奴がいるなんて!」
「クラーケンって釣れるんだな……!」
「凄いな!」

 周りはスバルの釣り上げたクラーケンで大騒ぎ。
 凄い凄いと褒められて、スバルは頬を赤らめ嬉しそうだ。
 当然、釣り大会はスバルの優勝で終わった。釣った獲物のデカさは歴代一位らしい。良かったなスバル。優勝賞金として、金貨二十枚も貰った。これでみんなに、美味いもんを買ってあげよう。
 俺とスバルは銀太達の所に戻り、いよいよ島に向かって出発だ。
 スバルはいつもの姿に戻り、銀太の上に乗った。みんなで泳いで島まで行く。
 俺はこんなに長い距離を泳ぐのは初めてなので、少しドキドキする。できるだけ装備を軽くして、海の中に潜り込んだ。
 波にまれると、真っ直ぐ泳ぐのは中々難しい。五百メートルくらい泳いだところで、俺の腕はもう重くなっていた。


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