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本編 燦聖教編
カスパール様!
しおりを挟む「なっなんで生きておるのじゃ!?」
パールが大司教グリモワールを見て驚いている。何だ? 二人は知り合いなのか?
明らかにパールの態度がおかしい。
こんな慌てているパールを見るのは初めてかも知れない。
「パール知り合いか?」
動揺しているパールに聞いてみると、パールは大きく深呼吸した後
「……ワシの元弟子じゃ」
なんて?
おれの弟子?
「ええーーーー! パッパールの元弟子?!」
「声が大きいっ!」
「ごっごめんビックリして……パールの弟子って?」
「正確にはカスパールのじゃ」
そういってパールは難しい顔をしてグリモワールを睨んだ。
ちょっと待ってくれ? 意味が分からない?
カスパール様の元弟子なら何で今生きているんだ?
カスパール様が亡くなってから少なくとも三百年以上は経っている、グリモワールは見た感じエルフとかには見えない。
デボラさんみたいに姿を人族に偽っているんだろうか?
「彼奴は人族じゃ」
俺の考えてる事が聞こえてるんじゃ? と思うくらいパールがすぐに疑問に答えてくれた。
何で? 分かるんだとパールを見ると。
「ティーゴは素直じゃから考えてることが顔に出過ぎる」
すみませんね。隠し事ができない顔で。
俺とパールが入り口でモタモタしていたら、大司教グリモワールの方が近付いてきた。
「お前達どうやってこの部屋に入って来たんだ? ここに来るまでに魔道具の扉が何箇所もあっただろう? 魔道具の鍵がないと入って来れないはずだが?」
大司教グリモワールは驚き訝しげに俺たちを見ている。
「それは全て壊したのじゃ」
「なっ? 壊した? あの魔道具を?……そんな……っ!」
大司教グリモワールは困惑した後、俺の腕に抱かれているコンちゃんを凝視する。
「その抱いておる狐は本に封印されていた九尾の狐では……もしやお前達が、闘技場に現れた魔族か!」
何だよ闘技場に現れた魔族って!俺の方が悪役みたいじゃねーか!
「森の研究所を破壊し、封印していた書物を奪ったのであろう? 何のために魔族が邪魔をする?」
「何ってお主ら燦聖教を潰すためじゃ!」
横からパールが言うが、どうやら俺が言った事になっている。
「ほう……小僧が生意気な口を言う。私は魔族であろうと、何も怖くなどない。クククッ……私がお前達魔族を怖がり命乞いをするとでも思ったか? 私はお前達など怖くなどない」
俺の事を魔族だと思い込んでるグリモワールは怖くないと流暢にはなすが、そもそも俺は魔族じゃないからな?
どう対応しようかなと考えていたら、パールが再び話しかける。
「……リィモよ。お主は何故生きておるのじゃ。本来なら命は尽きておるはずじゃろうて?」
「なっ!? なぜその名前を! わっ私の……ああっ何であの人と同じ呼び方! 僕をそう呼ぶのは大賢者カスパール様だけ! 何でお前がその名前を軽々しく呼ぶ? 呼んでいいのはカスパール様だけだ!」
リィモと呼ばれ大司教グリモワールが急に怒り出した。明らかに様子がオカシイ。
おいおい……なんかややこしくなりそうな匂いがぷんぷんするんだが。
「じゃからワシが、名前が長いからリィモと付けたんじゃろう? 何でワシが呼んだらダメなんじゃ!」
パール? ねぇ気付いてる? 今の姿は猫だよ? 大賢者カスパール様の姿じゃないよ?
猫が名付けたって……。
どう考えてもおかしいだろ?
「ほう……どこでその情報を仕入れたのかは分からんが、大賢者カスパール様を偽るなど! 許せぬ」
大司教グリモワールはそう言って俺を思いっきり睨む。俺が騙そうとしてると思ったみたいだ。流石に猫がペラペラ喋るとは考えが及ばないか。
「お前達! 消し去ってくれる」
大司教グリモワールが何か魔法を繰り出そうとするも、パールがそれを全て打ち消した。
「……ったく。リィモよ? お主の悪い癖じゃ。すぐにキレて周りが見えなくなる」
「なっ…….! あっなんで……っ」
大司教グリモワールの視線が俺から外れ猫のパールを見ている? まさかパールの事に気付いた?
パールを見ると。
「あっあわっ……っ! カスパール様!」
俺の横に、本で見たままの姿の大賢者カスパール様が立っていた。
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