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本編 燦聖教編

王族の話

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俺は王族達の足枷を全て外し、全員の怪我を治してあげた。
そこまでは良かった。困ったのはその後だ。
王族達はずっと俺の前に黙って跪いている。

「頼むから楽にしてくれないか?その……話しにくいって言うか、俺が緊張する!」

「楽にですか? 天使様の前でそんな事できません」

田舎もんの俺なんかに跪いている王族達に、普通にしてくれと必死に懇願する。
だが王族達は、俺の言っている意味が理解できないのか一向にやめてくれない。

俺に偉そうに文句を言っていたフィリップって男に至っては、頭を床に擦り付けずっと平伏しているし。
ハッキリ言って意地悪してる見たいで凄く嫌だ。

もう緊張と訳の分からない感情で、俺はいっぱいいっぱいで変な汗も止まらない。
そんな俺をみてパールが少し呆れたように笑うと、奥にある広いソファに向かってスタスタと歩き、ドカッと座った。

「ティーゴもこっちに座るのじゃ!」

ソファに座ったパールが俺を呼ぶ。
なるほどな! ソファに座れば跪かれる事もないな。さすがパールだ。
俺は慌ててその場を離れパールの横に座った。

「お主らも前に座るのじゃ!」

パールが王族達を呼ぶ。
するとソファの前で並ぶ様に正座して座った。だからなんでソファに座らないんだよ。

「お主ら! ソファに座って良い。ワシが許す」

パールがソファに座れと少しキレ気味に言う。

「え……でも……」

それでもまだ座らない王族達。何でそんな頑なにソファに座らないんだ?
それ程今までが過酷な状況だったのか?
その気持ちも分かるけど……俺には無理だ。

「いいから座るのじゃ! これは神の命令じゃ」

パールが自分の言う事を「神の」だと言うと、王族達はさすがに慌て、急いで目の前のソファに綺麗に並んで座った。

ふう。やっとこれで普通に話ができるな。
姿勢をピンっと正してソファに座る王族達の姿はちょっと……あれだけど、うん。視界にあまり入れない様にしよう。

「それでじゃ?なんでこの国はこのような事になったのか、ワシらに詳しく教えてくれんか?」

パールがそう言うと、王族達は俯き唇を噛み締めた。
その姿を見て色々と嫌な事を思い出しているんだなと何も言わなくても伝わってくる。

「それについて僕が代表して話します。僕はこの国の第一王子、フィリップと申します」

フィリップ王子は俺らに深くお辞儀をすると、ジャバネイル王国であった出来事を話し出した。

「わが国ジャバネイル王国は魔道具が有名で、いろんな種類の魔道具があると自負しております。わが国の魔道具は他国からも人気で、色んな国の者達が購入に訪れ賑わっていました。それがある日一変しました。我が国の大司教マーク様が、連れてきた見ず知らずの男にいきなりその座を譲ると言い出したんです。その男が燦聖教を作った男大司教グリモワールです」

そこまで話すとフィリップ王子は言葉がつまり黙ってしまった。

「すみません。その時の事を思い出して……」

フィリップ王子達王族は、始め大司教グリモワールの事を尊敬し慕っていたらしい。
すごい大賢者様だと、それがある日を境に変わってしまった。
その日からジャバネイル王国は変貌する。いろんな国の人達が訪れ賑わっていた国交も閉鎖し、他国の人達がジャバネイル王国に入国出来なくなってしまった。
それが燦聖教がこの国に出来た日だ。

燦聖教の大司教と名乗ったグリモワールは、反乱分子を引き連れ王城に登城し王族をこの部屋に閉じ込めた。

王子達は知らなかっただけで、水面下では燦聖教を作るための怪しい動きもあったのに、気づけなかったと。
悔しそうに話してくれた。

それから後は、他国との交渉に使えるだろうとこの部屋に閉じ込められ生かされていた。
外に出ることも、親しい友人達に合うことも無かった。

ただこの部屋に閉じ込められていた。
餌を与え家畜のように王族を扱っていたのだと言う。

胸糞悪い話を聞き終え気づいたのだが、王族達はどうやらこの場所にずっと閉じ込められていたので、自国が今どんな状況かなのか全く知らないようだ。

まだ心身ともに回復していない王族達に、俺が見てきたこの国の出来事を全て話すのは少し酷だ。

俺がなんて言おうか悩んでいたら

ぐぅぅぅ!!

『我はお腹が空いたのだ』

銀太の腹の音が鳴り響いた。

「ぷっ!」

銀太のやつなんてタイミングで腹を鳴らすんだ。

『俺も腹が減った!』
『妾もじゃ』

スバルとコンちゃんまで!

みんなもう腹が減ったのか?ケーキ祭りで甘味をしこたま食べただろ?

「あわ……っ天使様の使い獣達は、みんな人語を話すのですね。さすがです」

フィリップ王子は目を見開き、キラキラした目でスバルやコンちゃんを見ている。

人語を話す魔獣は確かにびっくりするよね。普通はいない。
今はもう慣れたけど、俺だって初めて言葉を聞いた時はビックリしたもんだ。

これは王族達との親睦を深める為にも肉祭りか?
何が良いかな?
せっかくだから、王族の人達にも喜んで食べてもらいたい。きっと久しぶりのまともな食事の筈。

「ようっし!美味い飯にするか」

『やったのだ~』

それを聞いた銀太とコンちゃんが大きな尻尾を高速でぷりぷり動かし嬉しそうに走り回っていた。







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