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本編 燦聖教編
パール、謎の作戦
しおりを挟む「こっこのっ…王城に乗り込み何をする気ですか!」
ジーク司祭と呼ばれている男が、震える声を必死に絞り出し質問してくる。
何をする気って言われても正直に言う奴いるか?
「何って燦聖教を潰しに来たんじゃ!」
パールが得意げに潰しに来たと答える。おいおい猫の姿で何を言いだすんだ。
「ねねっ!猫が喋ったー!」
燦聖教の男達はいきなり話し出したパールに驚く。そりゃそうだよな、普通の猫は人語を話したりしない。
「魔族様と一緒に居るだけあって普通の猫とは違う様ですね。燦聖教を潰す!?本気ですか?なぜ魔族様が人族に介入して来るのです。我ら燦聖教は魔族様に迷惑などかけていない筈です」
ジーク司祭が必死に自分達は何も悪い事をしてないとアピールする。
「人族や魔獣達に迷惑かけてるだろ?それにだ、そもそも俺は魔族じゃない!」
「へっ?魔族…じゃない?なら何だと?」
ジーク司祭が間抜けな顔をして俺を見る。
「俺は人ぞ……あっちがっ」
「あっちが?」
思わずいつもの調子で人族って言いかけたけど、俺もう人族じゃなかった。聖人族だった。
困ったな、そんなこと言えないし。聖人族なんて聞いたら何?ってなるよな。
「まぁ人族の様なもんだな。うん」
「人族の様な者?何ですかそれは?」
誤魔化そうとしてるのに、ジーク司祭という男がやたらと細かく聞いてくる。
ううん……面倒だな。なんて思っていたら俺の頭の上に座っていたスバルが頭から飛び立つ
『そんな事どうでも良いだろ?いちいちうるせーな』
スバルが怒鳴った次の瞬間、俺達の周りにいた全ての燦聖教の男達に、雷を落とし気絶させた。
えっ気絶だよな?死んでないよな?だいぶ黒コゲだけど。
俺が不安げな顔で男達を見ていると。
「大丈夫じゃ気絶しているだけじゃ」
パールが大丈夫じゃと安心させてくれる。はぁスバルは~ったく短気なんだから。
俺がジト目でスバルを見ると、少し申し訳なさそうに俺を見つめ返し。
『だってよー?先に進みたいのに邪魔するから……な?』
そう言うとスバルは、銀太の頭の上に飛び乗った。
スバルはジーク司祭という男がお気に召さなかったらしい。
「さっ!先を進むのじゃ」
気絶している燦聖教男達を尻目に、俺たちは先へと進んでいく。
三階をウロウロと歩いているんだが、その上に上がる階段がどこを探しても見つからない。
そして一周し、ジーク司祭達が倒れている場所まで戻って来てしまった。
「なるほど、これは隠蔽魔法じゃな……ふむ?ティーゴよサーチを上手く使って隠蔽されている階段を見つけるのじゃ!」
「えっ俺が?」
いきなりパールの魔法の訓練が始まった。
パールはできるかの?とでも言わんばかりに少し上目遣いで俺を見てくる。
よしやってやるよ。
ええと探索の使い方は大分コツを掴んで来たんだ。
俺は魔力を地面や壁に伝わせていく。おおっ建物の構造や何処に人がいるかまで鮮明に分かる。
すると見た目は壁にしか見えないのに、奥に大きな空洞が開いている場所がある。これは……!
「パール!分かったあっちだ。ついて来てくれ!」
俺はパール達を連れ、ある壁の前に立つ。
「この奥に階段がある!」
パールの方をチラリと見ると
「正解じゃ! この壁を隠蔽しておった」
「よっし!」
思わず拳をギュッと握り締める。
『主はすごいのだ!』
銀太が尻尾をフリフリ褒めてくれる。
その姿があまりにも可愛くて頭をクシャクシャと撫でる。
『わっ妾だって主殿がすごいって思っていたのじゃ!』
銀太に対抗するかのように、コンちゃんまで俺を褒めてくる。顔を見ると撫でて欲しそうに腕の中から俺をジッと見るので、もちろん撫でてやる。
相変わらず聖獣達が可愛すぎる。
「さてと隠蔽魔法を解くか!」
バチンッ!!
音が鳴ると目の前に大きな階段が現れた。
「さあ上がるのじゃ。この四階に親玉がおりそうじゃのう」
パールが四階に燦聖教の黒幕がいると言う。
そんな事を聞くと、少しピリッと緊張が走る。
階段を上がると天井の高い大きな広間があり、その奥に黒い金属で作られた重厚な扉があった。
きっとあの扉の奥がそうに違いない。
ふと、手前にある扉が気になる。
この気配って……。
「なぁパール!この部屋に居るのってもしかして?」
「そうじゃ!勇者達じゃ」
パールがよく気が付いたな?と言わんばかりに優しく笑う。
「やっぱり!どうする?」
するとパールは何か思い付いたのか、ニヤリと悪い顔して笑った。
そんな顔する時のパールは、大概悪い悪戯を考えている。
「ふふふっワシに任せるのじゃっ」
パールはそう言うと、俺達を残して一人扉の中に入って行った。
「ワシが合図したら入ってくるのじゃ!」
パタン……。
★ ★ ★
「ん?何だこの猫?」
聖剣タケシがパールが入って来た事に気付いた。
「わぁっ!何て綺麗な猫なんだっ僕のペットにしよう」
勇者ヒイロがパールを抱こうと飛びつくが、ひらりと交わされる。
「なっなんだよっ!連れないなっせっかく撫でてやろうと思ったのに!」
勇者ヒイロは子供の様に地団駄を踏む。
パールは扉側の壁に何かを付けると直ぐに部屋を出て行った。
「パール!何をしたんだ?」
俺は慌ててパールの所に行くと
「ちょっと待っておれ!」
パールはどこかに転移してすぐまた戻って来た。
「何をして?」
「ふふふっショーの始まりじゃよっ!さぁティーゴ扉を開け中に入るのじゃ」
パールは何も説明してくれないまま部屋に入れと言う。
何をする気だ?
言われるがままパールの後を追い中に入ると。
「わっ猫ちゃん!戻ってき……ギャアァァァー!」
パールに近寄ろうとした勇者が俺を見て驚き叫ぶ。
何だよ。その化け物を見るような反応は……少しショックだな。
「何デカい声だっしっギャアァァァー!ままっ魔族だっ!」
「イャァァァァァァ!殺さないでっ!」
聖剣と賢者の男は、俺を見て叫び腰を抜かした。
その様子を見たパールは、俺の背後に立つと、話しだした。
「クククッそうじワシは魔族の王、魔王じゃ!」
ちょっとパール?何言い出してるの?俺が喋ってるみたいじゃねーか!
「たたっ助けっ…」
「助けて欲しいか?お前達を助ける代わりにこの城下街に住む全ての者の命を奪うがそれでも良いんじゃな?」
「そっそんな事で!助けてくれるのか?」
聖剣タケシが四つん這いになりながらも必死に返事を返す。
「そんな事?お主らは魔獣達からわざわざ街人を救うくらい大切なんじゃないのか?」
パールがワザと勇者達を煽っている。何がしたいんだ?
「あれはっ!バカな街人達に俺達が凄い事を知らしめる為のデモンストレーションだっ!」
聖剣タケシが、さっき広場で聞いた事はデモンストレーションだと言う。
やっぱりな。そうだと思ったけど……。
「ほう?」
「俺達は街人なんかどうでもいい!あんなゴミ屑の命と賢者である俺の命比べるまでも無い!」
「そうだ!だから俺達を助けてくれっ!あっ!そうだ何なら俺を魔族の仲間に入れてくれてもいい!力になります」
「僕も!仲間にして下さい!勇者の力。魔王様の為に使います!」
「「「だから俺(僕)達だけ助けて!」」」
「クククッ!はぁ……分かった。今回はお前達も街人も助けてやろう」
「えっ?助かった?」
「お前達など仲間に要らぬ!でわのっ」
そう言うとパールはスタスタと部屋から出て行った。俺も慌てて後を追う。
一体何がしたかったんだ?
「ぷぷっ!これで彼奴らの人気は地に落ちたのじゃ!」
パールが楽しそうに笑う。
「えっ?どーいうこと!?」
後から話を聞くと映像の魔道具を使い、パールは先程の勇者達との会話の映像を広場に流していたらしい。
俺の背後から録画しているので、俺の顔は映ってないらしい。良かった。
映ってたら俺はこの街で魔王様になる所だった。
広場でこの映像を見た街人達が勇者達をどう思うのかは……。
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