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本編 燦聖教編

マーク司教

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二階観客席の一段高く上がった場所にある、特別席にてマーク司教は、全ての闘いを見ていた。
マーク司教とは燦聖教を作った男【大司教グリモワール】の右腕だ。
マーク司教は異世界の勇者召喚にも立ち会っている。
そんな男が偶然闘技場に勇者達の闘いを見に来ていたのだ。

「ーーなっ……あれは!?九尾の狐では?!禁忌の書物に封印されていたはず……どうやって封印を解いたのだ?!いやっそれもだが何故あの少年が禁忌の書物を持っているんだ?」

マーク司教は九尾の狐の横に堂々立つ少年ティーゴの事が気になって仕方がない。
今は狐の姿に戻りティーゴに抱っこされているが。

マーク司教は観客席から目一杯身を乗り出し、ティーゴの一挙一動を必死に見ている。

「あんな……普通の少年が封印を解いたのか?」

(しかし九尾の狐が封印されし書物は、我ら燦聖教の研究所【森の研究所】にて保管されていたはず。その場所は厳重な結界を何重にも張り、誰も入れないようにしていた。そこから書物を手に入れる事など不可能だ。……では一体どうやって?分からぬ)

マーク司教は席の後ろに控えている部下の男達に、声を荒げ命令する。

「お前達!至急森の研究所を調べて来てくれ。今すぐにだ!」

「へっ?研究所ですか……?」

「そうだ!さっさと急げ!」

「ひぁっ!はいっ!」

部下の男達はバタバタと急ぎ出て行った。

マーク司教は再びティーゴ達に目を向けた。

(まずい事になった……折角召喚したのに、勇者達全員……九尾の狐に殺られたんじゃ。勇者ヒイロはさっきからピクリとも動かないし、応援席にいた、タケシとレントはもう……あの様子では…)

マーク司教は黒焦げた応援席に目をやる。

「んっ?また男が増えている?さっきまでは鳥と獣人しか少年の周りに居なかったのに……」

ティーゴの横に立つ男とはもちろんパールの事である。
賭けた配当金を払い戻しする為に人化し。その後ティーゴ達の所に合流したようだ。

「ティーゴという少年は何をしているんだ?」

マーク司教が不思議そうに首を傾げる。それもその筈、ティーゴ達は消し炭となった勇者達の応援席に集まっていた。
もちろんリザレクションを使いタケシとレント生き返らせる為なのだが。

「むう……遠くて見えずらい。何をしておるのだ?」

ティーゴ達はマーク司教が身を乗り出し必死に見ているとも知らず、リザレクションを放った。
すると消し炭になっていたタケシとレントの姿が現れた。

「なっ……!?」

次にヒイロの所にも行きリザレクションをかけると、ティーゴ達は逃げ惑う観客達に混ざり何処かへと消えていった。

それを見たマーク司教はプルプルと震え青褪めていた。

「嘘だろう?あれはリザレクション?失われし伝説の古代魔法……あのティーゴと言う少年は古代魔法まで使えるのか!?なんてこと!あっ?あれっ?どこに消えたんだ!?」

マーク司教は姿を消したティーゴ達を見つけようと、さらに身を乗り出したもんだから……

「あっ!あわっ……!?」

その勢いですぐ下の観客席に落ちてしまった。

「いっ…いたたっ」

(はあ……ビックリした。落ちたのが、観客席で良かった。だが、ちょっと目を離した隙に逃げられてしまった。とりあえずこの事を大司教グリモワール様に至急報告しないと!)

「いたた……」

マーク司教は落ちた時に打った尻を撫でながら大司教グリモワールの元へと急いだ。


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