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1巻

1-3

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 フェンリル騒動がやっと落ち着いたので、改めて【深緑の牙】とどんなことがあったのかみんなに詳しく話す。
 銀太が俺を追いかけてダンジョンに来たって件は誤魔化して、偶然居たことにしたけど。銀太の名誉のためにもね。

「すげえな! そんなことがあるんだな! 普通なら一瞬で殺されて終わりだぞ」
「しっかしティーゴは規格外だな! 今まで一匹もテイム出来なかったのによぉ。初めての使い獣がフェンリルとか! 意味分かんないぜ」
「「「ワハハハハハハッ」」」
「「「それな!」」」

 ここら辺の警備隊や冒険者はみんな大雑把だからか、俺の話を疑うことなく受け入れてくれた。有難いけど、なんとなく拍子抜けだな。

「俺は【深緑の牙】のやり方は初めっから気に入らなかった。ティーゴを奴隷どれいのように扱っているとしか思えなかった」
「アルト……!」

 アルトはずっと俺のことを心配してくれていた冒険者仲間だ。

「だからな、ティーゴがフェンリルなんてすげえ魔獣をテイム出来て、俺は嬉しいよ!」
「ありがとうな、アルト」

 自分のことのように心配してくれる仲間が居たのに、俺は気持ちに余裕がなくて、何も見えてなかったんだな。

「しっかしアイツ等、最低だな! 仲間を捨て駒にして自分達だけ逃げるとか」
「冒険者としてあるまじき行為だ!」

 みんながいきり立っていると、一人の男性が側に来た。

「ティーゴ、ちょっといいか?」

 この中で一番偉い警備隊長シルクだ。

「今回の話は色々と事が大き過ぎる。冒険者ギルドに行ってギルドマスターに報告しないといけない。今から一緒に行ってくれるか?」
「ハイ、分かりました」

 こうして俺と銀太は、冒険者ギルドに行くこととなった。


 ここはドヴロヴニク街。
 城下街ということもあり、ヴァンシュタイン王国一繁栄している街だ。
 この街は建物の屋根が煉瓦れんが造りなのが特徴で、朱色に統一された屋根が珍しく、観光の名所にもなっている。冒険者ギルドも国で一番大きく、商店街通りには何でも揃っている。住みたい街として、人気ナンバーワンだ。
 そんな凄い街の入り口で立ち止まり、俺達は中に入れず困っていた。
 理由は簡単だ。門番が銀太を見て気絶し、街に入るための受付が出来なくなってしまったのだ。

「うーむ、ちょっと待っててくれよ! 俺が直接ギルドマスターを呼んでくる。その時に許可証も貰ってくるから!」

 警備隊長のシルクさんが、ギルドマスターを呼びに行ってくれた。観光の名所なだけあり、街を出入りする時に、毎回許可証が必要なのだ。

『主~。早く街に入りたいのう! 我は人族の街になど入ったことがないからの! ワクワクするのだ』

 銀太はウロウロと歩いて落ち着かない様子だ。街に入るのが楽しみで仕方ないって感じだな。

「フフッそうか、それは良かった」

 何だろう。銀太と話していると、妹のリムのことを思い出す。
 魔物使いの修業で家を出てから今まで、俺は一度も家に帰ってない。魔獣をテイム出来るまでは帰らないとか、俺が勝手に意地になってたせいだけど。
 父さんには凄く怒られるだろうな。もしかしたら殴られるかもな。
 母さんは泣かせちゃうかな。
 でも、今は凄く会いたくて仕方ない。
 よし! 家に一度帰ろう。素直に全部話して怒られよう。
 俺がこれからのことを考えていたら、大きな足音と共にシルクさん達が走ってきた。

「ティーゴ、待たせたな!」

 シルクさんが、ギルドマスターと新しい門番を連れてきた。

「…………………………」

 銀太を見た男性が固まってしまった。

「本当にフェンリルがいる。初めて見たよ……」

 この人がギルドマスターなのかな? 彼は銀太を見て、口をポカンって開いたままだ。

「…………はっ! あっこんにちは。僕がギルドマスターのシェンカーだよ。よろしくね」

 我に返ったシェンカーさんが手を差し出してきたので、それを握り返して挨拶あいさつをする。

「魔物使いのティーゴです。よろしく」
「今すぐティーゴ君達にギルドに来てもらい、話を聞きたいんだけど……。街の人達がフェンリルを見て怖がって、この門番のように気絶するかもしれない」

 ギルマスのシェンカーさんが、あごに手を当てて難しそうな顔をした。

「なるほど、確かにそれは困りますね」

 うーむ、とシェンカーさんとシルクさんが困っている。
 確かに街のみんなが気絶するとか、やば過ぎるよね。どうにか銀太が怖くないとアピールする方法を考えないと。
 三人で色々と考えた結果。
 何だろう……一番目立つことになっている気がする。正解なのか、これは?
 銀太の首には大きな赤いリボン。
 俺はそんな銀太の上に乗っている。さらに銀太の両脇をシルクさんとシェンカーさんが挟み込むように歩く。
 まるで何かのパレードだ。
 みんなが端に避けるので、必然的に道の真ん中を歩くことになり、余計にパレード感が増し増しだ。
 街の人達が俺達を見て口々に何かを話している。

「凄い! フェンリルに乗ってる」
「ギルドマスターのシェンカーさんと隊長のシルクさんまで一緒だ!」
「あの少年は何者なんだ⁉」

 何を言っているか少し聞こえてきて、さらに恥ずかしくなる。
 俺は何者でもないよ、一般人だ。
 あまりの注目に、俺は耐えられず赤い顔でうつむいてしまう。頼むから早くギルドに着いてくれ、と願いながら。
 一方の銀太は尻尾を左右に動かし、嬉しそうだな。顔もちょっと得意げだ。
 銀太の奴、本当に面白いな。
 でも、あー……早く冒険者ギルドに着かないかな。

 ★ ★ ★

「よし! やっと着いたね。二階の特別室を使おう。さあ行こう」

 シェンカーさんに促され、ギルドの大きな扉を押し開けた。
 銀太を連れて足を一歩踏み入れると、中に居た冒険者達が一斉に騒ぎ出す。
 ダンジョンの時とは逆で、俺の周りに人が集まってきてギルドの二階に行けない。みんな銀太のこと、怖くないのかよ?

「フェンリルをテイムしたって本当か!」
「ティーゴすげぇな!」
「おめでとう」
「Aランクダンジョンクリア」

 みんな思い思いのことを喋っていて、収拾がつきそうにない。
 シェンカーさんが、ギルド中に響き渡る大声で叫んだ。

「おい! お前達、話は後で聞くから、今は道を空けてくれ!」


 冒険者達をかき分け、俺達はどーにかこーにか、やっと二階の特別室で落ち着くことが出来た。

「ふぅ~っ。凄い騒ぎだった」
「本当にな! 当分この騒ぎは続きそうだがな」

 俺とシェンカーさんは向かい合わせでソファに座る。シルクさんはシェンカーさんの横に座った。
 銀太は俺の近くで寝そべっている。
 ギルドで一番広い部屋のはずだが、大きな銀太がいるせいか少し狭く感じる。

「こちら紅茶とクッキーです。し上がってください」

 ギルド職員さんが紅茶とクッキーを用意してくれた。
 さすがギルドの特別室だな。この建物には何度も来たけど、こんなことされたの初めてだよ。
 フンスフンスッと、銀太がテーブルの上をぐ。

『主~? この丸いのとか四角いの、いい匂いする~』

 ん? 丸いの? あっ、クッキーのことだな!
 銀太の目がクッキーに釘付けだ。

「これ、銀太にあげていいですか?」

 職員さんに聞くと笑顔で頷いてくれた。

「もちろん。どうぞどうぞ、銀太様、お食べください!」
「銀太。これはな、クッキーというお菓子だよ。食べていいよ? どうぞ」

 クッキーを差し出すと、銀太は恐る恐る口に入れて噛み締める。

『うっ、美味うまいのだ! この【クッキー】とやら! 我はもっと……もっとクッキーを所望しょもうする!』

 銀太の尻尾がを描くようにして激しく振られる。何だその動きは。
 そうか、銀太は甘党なんだな。
 ギルド職員さんが追加でクッキーをいっぱい持ってきてくれた。それが嬉し過ぎるのか、銀太の尻尾ブンブンが止まらない。

「アハハッ」

 可愛いな銀太。俺、銀太と出会えてからずっと笑ってるよ。


 銀太のクッキー熱も落ち着き、俺はシェンカーさんとこれからのことを決めていた。

「まずは、ティーゴ君が所属していたパーティ【深緑の牙】についてだね。ティーゴ君が【深緑の牙】からされたことは犯罪行為だ。ギルドから何らかの厳しい処分を下すことになるだろう」

 シェンカーさんがそう話してくれた。

「ただ、ティーゴ君を疑うわけではないが、ギルドの規約で、【真実の水晶すいしょう】に触れてもらい、嘘をついてないか調べないといけない。嫌かもしれないが調べさせてもらえるかな?」

 シェンカーさんは凄く良い人だ。俺はそんなことなど気にしないのに、そこまで気を使ってくれて嬉しかった。

「大丈夫です。そんなこと、気になりません」
「良かった。では、今からティーゴ君の話に嘘がないか、真実の水晶にて判断させてもらう。嘘がある場合は水晶が赤く光る。これらの会話や映像は全て魔道具にて記録する。以上、良いかな?」
「ハイ。了解しました」
「では質問。聖獣フェンリルが目の前に現れた時、ティーゴ君は【深緑の牙】からどんな仕打ちを受けた?」
「麻痺の魔法をかけられて俺は囮にされ、その間に【深緑の牙】のメンバーは逃げました」

 この時に赤く光れば、俺は嘘をついたことになる。

「……」
「何も起こらないね。これで、ティーゴ君が【深緑の牙】にされたことが事実として記録された」
「良かったなティーゴ! 【深緑の牙】の脱退の手続きはすでに済ませてある。また一からのスタートになるが頑張れよ!」

 警備隊長のシルクさんがそう言って、ガッツポーズをする。

「ありがとうございます」
「あっ! そうだ。一からスタートするソロランクだけど、伝説のフェンリルをテイムしている人を一番下のFランクからスタートさせるわけにはいかない。Aランクとさせてもらったよ」

 そう話し、シェンカーさんはニコリと笑った。
 今とんでもないことを言わなかった? 何だって? Aランクって言わなかったか?
 一からスタートなのに、前よりランク上がってるじゃん‼ どう考えてもおかしいだろそれは。

「あっあの、Aランクって……」
「本当はSランクでもSSランクでも良かったんだけど。あまりにも目立ち過ぎるのでAランクスタートにしたんだ」

 いやいやシェンカーさん? Aランクスタートも十分目立ちますよ? 分かってます?

「それと、大事なお願いがある。聖獣フェンリル様をテイムしたとなれば、この国始まって以来のこと! このことは国王陛下に報告が行くから、いずれ陛下からの呼び出しがあると覚悟しておいてね」
「えっ? 王様? 田舎村出身の俺が?」
「うん! そうなると思うよ」

 無理無理無理無理無理無理無理無理!
 絶ッッ対に無理だ! 変なことして不敬罪ふけいざいとかになったらどーすんだよ。
 マナーとか何も知らないし!

「やっハッハハ……」

 どーにか拒否出来ないかと悶々もんもんとして、この後の話が全く耳に入ってこなかった。


 閑話 深緑の牙――メリーの苦悩

 何で? 私達はこれからAランクになるんじゃないの? あー嫌だ! もう無理。
 ティーゴを囮にして逃げてから三日が経った。
 まだ私――メリーと仲間達はダンジョンにいる。
 お風呂に入りたい。
 お腹が空いた。
 髪を洗いたい。
 フカフカのベッドで寝たい。
 何で私がこんな目に遭わないといけないのよ。いつもならもうみんなで祝杯して盛り上がってる頃なのに。
 クソッ!
 私達は十五階層で下に落ちた。
 記録は十五階層攻略の時点で終わっている。攻略した階層以外からは地上に上がれない。だから私達が地上に上がるためには、最低でも十五階層まで戻らないとならない。
 今は何階層なの?
 こんな時にティーゴが居たら、すぐに教えてくれるのに。
 ティーゴが居たら、優しい言葉で安心させてくれるのに。
 ティーゴが居たら、こんな荷物は全部持ってくれるのに。
 ティーゴが居たら、美味しいご飯だって用意してくれるのに。
 ティーゴが居たら、フカフカの寝る場所だって。
 あーーーーっ。
 そう思ったところでフェンリルに殺されたティーゴは戻ってこない。戦闘では役に立たなかったけど……今思えばそれ以外は、全てティーゴに頼りっきりだった。
 ああ! 今日は水しか飲んでない。私達いつ地上に戻れるの?

「ねぇ! ガストン! お腹が空いて何も出来ない。何か食べ物頂戴!」
「うるせえな! 何もないんだよ! 早くダンジョンから出ないと俺達は死ぬだけだ。ぐずぐずしねぇでサッサと歩け!」

 頼りになると思っていたガストンは、ティーゴが居なくなったらずっと怒ってばっかり!
 はぁぁ……何なのよ!
 何で私がこんな目に遭わないといけないの?


 4 デボラのお店

「…………ということで、分かった?」

 え? やばい、途中から王様のことばかり考えてて、シェンカーさんの話を全く聞いてなかった。

「あの……そのう? 王様に会うってことですよね?」

 俺が不安になりながら質問すると、シェンカーさんはクスリと笑い、教えてくれた。

「そうだよ。後は銀太様がティーゴ君の使い獣だと街の人達に分かるように、何かアイテムを付けてね? 使い獣用の装備や武器、アイテムなどは【デボラのお店】がお勧めだ。少し変わった店主だけど、物は全て一級品だ。紹介状がないと入れないので僕が書いとくね」

 銀太用の装備……。
 魔物使いはみんな、使い獣に色々な装備やアイテムを付けたり、服を着せたりして個性を出している。使い獣が居なかった時は、そういうお店に行くのが憧れでもあった。
 しかも【デボラのお店】に入れるなんて‼
 俺だけじゃない、この辺りの魔物使い全員が憧れる有名店だ。

「やったー! ありがとうございます。早速お店に行ってきます」
「買い物が終わったら、またギルドに帰ってきてよ? まだ伝えたいことがあるから」
「了解!」

 シェンカーさんがさらさらと書いてくれた紹介状を持って、俺は銀太と意気揚々いきようようと特別室を出た。階段を下り一階の広間に行くと、さっきと打って変わってかなり人が少なくなっていた。
 俺が「?」って顔をしていたら、受付のお姉さんが教えてくれた。

「先程、大量の魔獣討伐依頼があって、皆様その討伐に行かれました」

 なるほどな。ナイスタイミングだったな。
 よしっ、今の内にデボラのお店に買い物に行こう。
 銀太には申し訳ないけど、大きな目立つリボンは付けたままだ。使い獣だとアピールする必要があるからな。

「銀太、嫌だと思うけど、デボラのお店に入るまでは、そのリボン付けたままでいい?」
『んっ? むう……? この赤いやつは後で取るのか?』

 あれ……? 何か不満そうだな。まさか、リボン取るのが嫌なのか?
 そう聞いてみると、銀太はもじもじする。

『えっ……? んん⁉ 嫌というか……でも、そのう。主が付けてくれたから取らなくても……赤いのも中々カッコいい!』

 ブッッ……!
 何コイツ……本当可愛い。
 でもな。その赤いリボンは可愛過ぎて、少し似合ってないからな。もっと似合うやつを今から買いに行こうな。

「今から行くお店は、銀太の装備を選ぶために行くんだ。だから、ちゃんと使い獣のお店で、銀太に似合うのを選ばせてくれよ?」
『なっ? わわっ……我のためのお店‼ 行きたいのだ、スバルが言っておったのだ! 使い獣のお店にはカッコいいのがいっぱいあるって! スバルがいっぱいカッコいいのを持っておって、毎回我に自慢してきて……我がどれだけ悔しかっゲッゲフンゲフン! とっ! とにかく早く我のお店に行きたいのじゃ!』

 銀太が興奮気味に尻尾をブンブンと回しながらお店について語る。
 ……友達のスバルは変な風に、使い獣のことを銀太に色々と教えてないか?
 街を銀太と一緒に歩いていると何だろう、街の人達の対応が少し変わった気がする。
 先程の恥ずかしいパレードの効果なのか?
 俺達は街の人達に気絶されることなく、デボラのお店まで来られた。

『ここが我のお店……やっと我もカッコいいになれるのだな』

 銀太がウットリとデボラのお店を見つめている。
 銀太の『カッコいい』の定義が、友達のスバルのせいで色々とおかしい気がするが、今はつっこまないでおこう。

「じゃあ、入るか! デボラのお店!」

 デボラのお店は、白亜の壁が建物を上品に見せ、高級な印象を与える外観だ。
 俺は店の入り口に立っている、少し強面こわもての黒い服を着た店員に紹介状を見せる。

「ご来店ありがとうございます。お客様。中にお入りくださいませ」

 店員の男はそう言って扉を開ける。
 ヤバイ! 急に緊張してきた。心臓の音がうるさい。落ち着け、俺。
 店内には、一人の女性がカウンターの前に立っていた。

「デボラのお店へようこそ。私が店主のデボラさ」
「あっよろしくお願いします」

 俺はぎこちない返事をして頭を少し下げた。

「こりゃ驚いた! フェンリルを使役した子がいるって街が大騒ぎになってたけど、まさか本当にいたとはねっ」

 そう言ってデボラさんは無邪気に微笑んだ。
 デボラさんは、一度見たら忘れられないくらい綺麗な人だった。真っ赤な髪に金色の瞳。そして大きな胸…………。

「ちょっと坊や? いくら私が魅力的でもね? 胸ばっかり見たらダメよ?」
「はわっ! すみません……」

 やってしまった……こんなに綺麗な人初めて見たから、つい見惚れちゃったよ。決して胸ばかり見てたわけじゃないからな。

『ふうむ? お主はエルフか? 何で姿をいつわっておる?』

 デボラさんに銀太が話しかけ、エルフだと言っている。何だって? 嘘だろ? エルフなんて俺見たことないぞ⁉

「なっ? さすがフェンリル様。私の変身を見破るなんて……そうだよ、エルフさ」

 本当にエルフなのか⁉ 噂でしか聞いたことがないぞ。エルフは実在していたのか。

「仕方ないね、特別サービスだよ? これが私の本当の姿さ!」

 そう言うとデボラさんは突然、本来のエルフの姿に戻った。
 エルフの姿になったデボラさんも綺麗だった。
 プラチナブロンドの髪色に、宝石のようにキラキラと輝く瞳、陶器とうきみたいに透き通った白い肌。耳は長くて尖っている。胸は……? あれ? 大き……くない?
 思わず胸を凝視する俺に気付いたデボラさんは、口を尖らせ怒った。

「だーかーらー! 胸ばっかり見ない! 悪かったわね。本当は胸が小さくて!」
「いっいや……そういうわけではなくて……あの、そのっ、どっちの姿も綺麗です」

 恥ずかしくてどうして良いか分からず、少しパニックになってしまう。

『なるほどのう、主は胸の大きな女子が好みなのだな』

 追い討ちをかけるように、銀太まで胸の話をする。
 もうやめてください。恥ずかしくて倒れそうです。


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