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1巻

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 1 この世界のジョブ

 この世界では十二歳になると、自分に合ったジョブが決まる。
 これは神からのギフトとされ、この時に人生の勝者になれるか敗者になるのかが決まるのだ。
 みんな、華やかなジョブを希望するが、ギフトは神次第。
 シシカ村に住む俺――ティーゴは、今日、ジョブを決める十二歳の洗礼式で【魔物使い】のギフトを貰った。
 花形ではないが、色々な動物や魔物を使役テイム出来ることが嬉しくて、俺は魔物使いというジョブに期待しワクワクしていた。
 ちなみに、魔物というのはゴブリンなどの、魔力を持つ人型の生物のことで、同じく魔力を持つ獣を魔獣と呼ぶ。魔物使いはどちらのタイプも使役することが可能とされている。
 教会からの帰り道を軽い足取りで歩き、家の戸を開く。居間に入ると、家族みんながソワソワとした様子で待っていた。

「ただいまー」
「お帰りティーゴ! ジョブは何をギフトされたの?」

 母さんが心配そうに聞いてくる。
 俺は少し照れ臭くなって、思わず笑ってしまう。

「ふふっ、魔物使いだよ」
「おーっ、これまた面白いジョブを貰えたな!」

 父さんが自分のことのように喜んでくれる。

「えーっ! 良いなぁ、私も可愛い動物テイムしたいなぁ」

 妹のリムが魔物使いのジョブをうらやましがる。
 母さんはリムに「大きくなったらね」と声をかけた後、俺を席に座らせた。

「今日はティーゴのお祝いに、スペシャル料理を用意したからね。さぁ、パーティー始めるよ」
「「わー‼ やったー!」」

 人生で一番豪勢なんじゃないかと思うくらいに、手の込んだ料理が沢山並んでいる。こんなに祝ってもらえるなんて……!
 父さんとリムが早速チキンにかぶりつきながら、顔をほころばせた。

「母さんの料理は一番だからね」
美味おいしいねー」

 俺も二人に頷いて、チキンを頬張った。

「本当に! 修業に出たら母さんの料理が食べられないのが唯一の悩みだよ」
「もう……みんなめ過ぎ!」

 ふふっ、幸せだ。
 家族みんなで、俺がどんな魔物使いになるのか、いっぱい話をした。父さんはよっぽど今日のことが嬉しかったのか、お酒の瓶をもういくつもからにしている。

「母さんはな? かなり凄腕の戦士でな。綺麗でみんなの憧れだった。俺は母さんの武器を作れることが何よりの誇りだったんだよ」

 そんな父さんの姿を見て、俺はクスリと微笑んだ。
 酔っ払ってきたら、毎回父さんはこの話をするんだよな。
 俺の父さんは鍛冶師かじしのジョブをギフトされ、今はシシカ村で鍛冶屋をしている。
 母さんは戦士のジョブで冒険者をしていた時、父さんに武器を作ってもらう内に父さんに惚れて、猛アタックして結婚したという。
 それが父さんの自慢だ。
 母さんも満更でもなさそうで、酔っ払うと毎回二人で惚気のろけ話をしている。
 そんな二人は俺の理想の夫婦だ。

 ★ ★ ★

 ジョブが決まると、十二歳で家を出て、みんな学校に入って修業を始める。二年間の修業が終了し、それから一年後に十五歳になると成人となり、ジョブでお金を稼ぐこともできるようになる。
 例えば冒険者登録をして、世界を旅しながらお金を稼いでいる奴もいる。
 だからこの二年間の修業は、これから先の人生のための重要な時間なのだ。
 俺と一緒に洗礼式に出たシシカ村の仲間が、四人いる。
 洗礼式の翌日、俺達は集まってそれぞれのジョブを報告し合った。
 ガストンは【戦士】、ミナは【魔法使い】、エリックは【魔法騎士】、メリーは【弓使い】と、みんな人気ジョブがギフトされた。

「俺、戦士だって! 夢みたいだ……花形ジョブだぜ!」

 ガストンが興奮気味に話す。

「私だって! 魔法使いよ!」
「私の弓使いだって、花形じゃないけど人気なんだから!」

 ミナとメリーも負けずにジョブをアピールする。

「俺の花形ジョブ、魔法騎士を忘れてもらったら困るぜ?」

 興奮気味に話す仲間達を、俺は少し口元を緩めて見つめている。

「みんな、良いジョブが貰えて良かったな」

 俺はみんなを褒めた。こんなに喜んでいる姿を見ると、こっちまで嬉しくなってくる。

「何言ってんだよ! 魔物使いも良いジョブじゃねーか!」
「ねー……!」

 ガストンとミナがそう言ってくれて、俺もなんだか誇らしい気持ちになる。
 この時俺は……まだ見ぬ輝かしい未来を期待していた。


 だが俺は一年経っても……修業が終わる二年が経っても、一匹の魔物もテイム出来なかった。
 底辺魔物のスライムやゴブリン、犬や猫でさえテイム出来ない。
 俺のジョブは本当に魔物使いなのか疑うほどに。
 後から魔物使いの修業仲間になった奴は、すぐに馬やオークをテイムして街の人のために役に立っている。
 なのに、俺は……!
 何でだよ!


 悔しさのあまり、修業が終わっても俺は村に帰らず、一人必死に色んなことを勉強した。
 寝る間を惜しんで色んな本を読み漁った。何か得る物はないかと俺は必死だった。
 だが……貧乏暇なしの俺は勉強ばかり出来る訳もなく、お金を稼ぐために色んな雑用を引き受けて金を稼いでいた。
 そんなある日、同じ村出身のガストンが俺を訪ねてきた。

「俺達は十五歳になり、大人の冒険者としてギルドに登録出来るようになった! それで村出身の仲間で……冒険者パーティ【深緑しんりょくの牙】を組むことにしたんだ! 良かったらティーゴも一緒に組まないか?」

 ガストンの誘いは有難い。しかし、受け入れるのには気が引けた。

「正直な話、誘ってくれて嬉しい。……だが俺は、魔物使いなのに何もテイム出来ない半端者だ。こんな俺が仲間になったところで、みんなのお荷物になるだけだ」
「何言ってんだよティーゴ。同じ時に洗礼を受けた仲間じゃないか! 一緒に組もうぜ。ミナやメリー、それにエリックも、ティーゴが仲間になることに賛成してる」

 みんなが……? こんな半端者を受け入れてくれるだって⁉

「くっ……ガストン。ありがとう……」

 思わず涙がにじみ、俺はガストンに分からないようにソッと目元をぬぐった。

「俺はテイマーとしては半端者だけど、お前達のために一生懸命頑張るよ!」


 それからの俺は必死だった。パーティのどんな雑用も引き受けた。
 冒険者ギルドの依頼受付、装備の手入れ、ダンジョンの下準備、食料や薬草集め……文字通り、何でもだ。
 たまに、「ガストン達に利用されてるんじゃないか?」と他の冒険者パーティに心配されることもあったが、取り合わなかった。
 こんな半端者を仲間にしてくれた優しいガストン達が、そんなことをするわけがないと……俺は深く考えもしなかった。
 次の日の討伐依頼準備で、寝る時間さえない日も多々あったが……俺はこの生活に満足していた。

 ★ ★ ★

 パーティを組んで二年が経つと、俺達はちょっと名の知れたBランクパーティになっていた。
 そして……。
【深緑の牙】リーダーのガストンが、今回初めて、Aランクダンジョンに挑戦すると言い出した。チームランクはBだが、一つ上のダンジョンまでは挑戦して良いことになっている。
 宿屋の談話室に集まった俺達は、ガストンの主張を聞き終え、思い思いの反応を示した。

「えーっ大丈夫かな。ちょっと不安だなぁ」
「確かに、何かあった時どーするの?」

 ミナとメリーが不安をらす。

「まぁ落ち着けよ? 今が一番大事な時なんだよ。俺達はBランク冒険者としてかなり有名になった。上のAやSランクを目指すなら、ここらでAランクダンジョンでの実績やクリアは必須になる!」

 ガストンは自信あり気に力強く話す。

「確かに。俺達はBランクで終わるつもりはない! 俺は賛成だ」

 エリックまで賛同すると、ミナとメリーもそうだよね、と考えを変えた。

「それに、『もしも』の時はあれがあるだろ?」

 そう、ガストンが話す。
 ん? あれって何だ?
 俺はそんな話聞いてないぞ。

「おいガストン、あれって何だ?」
「んっ? ああ……ティーゴが気にする話ではないよ。なぁみんな?」

 ガストンにうながされ、みんなは食い気味に頷いた。

「そうそう。大した話じゃないよ」
「ティーゴ、ダンジョンの準備、頼りにしてるからね」
「本当だな! 俺達はお前に頼ってばかりだよ」

 何かを誤魔化ごまかされたような気もするが、そう言われて悪い気はしない。
 今日もまた俺は、準備のために必死に街を走り回るのだった。

 ★ ★ ★

 次の日俺は、ダンジョン攻略の下準備のために朝から走り回っていた。ガストンが明日には攻略を始めたいと言うので、昨日今日でなんとか物資をかき集めた。
 今回はAランクダンジョンに挑戦だからな。回復薬は多めに用意しないといけないし、長くもぐることを考えると、食料だっていつもより多く……なんて考えて購入した物を、部屋に戻ってリュックに詰めていくと、パンパンにはち切れそうになってしまった……これを背負って潜るのか。
 中々の重労働だな。でもみんなの期待を裏切りたくない、頑張らないと。
 そこまで考えて、あっ! と思い出した。ガストンから武器調整を頼まれていたのに、肝心の剣を預かるのを忘れていた。
 手入れをしなければ、明日のダンジョン攻略に響くかもしれない。
 俺は慌ててガストンが泊まる部屋に向かう。
 一日中走り回っていた俺の足は限界を通り越し、ガストンの部屋に着くまでに何度ももつれて転びそうになった。
 はっはぁ……。息を切らして扉の前まで来ると、話し声が聞こえてきた。
 んっ、あれ? どういうことだ?
 他の仲間達が部屋に集まっているようだ。
 俺は呼ばれていないのに、何でだ?
 この時、そんなことしなければ良いのに、少し疑問に思った俺は、部屋の扉の前で耳を澄まして中の様子をうかがった。
 まず聞こえてきたのは、ガストンの笑い声だ。

「今日もクズは役に立ってくれたなぁ! ギャハハッ」
「本当に! 面倒な準備とか全部クズがやってくれるし! ちょっと褒めたらホイホイ何でも言うこと聞いてくれるし。本当に楽だわぁ」
「クズのクセにメンバーづらしてるところも笑えるし! ぷぷっ」
「「「それな!」」」

 なっ……? これは何を話しているんだ? クズって……クズって……。

「本当にクズのティーゴはバカで扱いやすいから助かるわ」
「本当にねー! あははっ」
「ガストンが初め、ティーゴを仲間に入れるって言い出した時は正気なの? って思ったけど」
おだてといたら何でも頼み事聞くし」
「そうそう! ティーゴじゃないと出来ないの! って上目遣いで言ったらイチコロね」
「使いやすいバカで助かるよ」
「「「それなー!」」」

 笑いながら楽しそうに酒をみ交わす音が聞こえる。
 ――クズって、俺のことかよ。
 ……何だよ……結局は裏でバカにされてたのかよ。
 俺は仲間に入れてもらえて嬉しかったのに! みんなのために頑張ってたのに……! ただガストン達に都合良く利用されていただけなんて。
 そーかよ。分かったよ! こんなパーティ、とっとと辞めてやるよ。
 そう思って扉に手をかけるが、明日のダンジョン攻略のことが頭をよぎる。
 俺は明日のために必死に走り回って準備してきた。
 それを無駄にするのか?
 色々と考えたが、やはり途中で投げ出すことは自分の矜恃きょうじに反するように思え、扉のノブから手を離した。
 ダンジョン攻略が終わったら、こっちからパーティを辞めてやる。
 俺は自分の努力を無駄にしたくないがために、パーティ脱退を延ばすことにしたのだ。
 後でこの時の決断を、強く後悔することになるとは知らず――。


 明くる日の朝、俺達はAランクダンジョンの入り口に立っていた。
 今日はいやに、入り口の大きな岩穴が不気味に思える。

「緊張するな!」
「本当にね! Aランクと思うと余計に」
「最下層は四十階層か。行けるかな」
「まぁ気楽に行こう! なっ」

 ガストンがみんなをふるい立たせる。

「ティーゴ、今日もありがとうな! 頼りにしてるぜ」

 いつもなら尻尾を振って喜ぶところだが、さすがに昨日の今日では、全てバカにされているようにしか聞こえない。
 苛立ちを抑えつつ、俺は入り口近くの警備隊の人が立っている所で受付を済ませ、ガストン達の元へ戻った。
 少し緊張しながら、ついに俺達はAランクダンジョンに足を踏み入れた。
 初めに出てきた魔獣は、グレイウルフ三体。コイツ等はDランク魔獣だ。

「ここは俺に任せとけ!」

 ガストンが前に出て大剣で斬りつけると、グレイウルフの体が真っ二つに切り裂かれた。あっさりと三体を次々にほふっていく。

「どんなもんだ!」
「やるなー。次は俺の番だからな?」

 ガストンの戦いぶりに、魔法騎士のエリックも闘志とうしをメラメラと燃やす。
 一階層で出てくる魔獣はBランクダンジョンとほとんど変わらず、俺は少しホッとする。
 この先も俺の入念な準備のおかげで、ダンジョン攻略は順調に進み、十五階層まで到達することが出来た。
 十五階層の奥にはオアシススペースと言って、魔獣が全く出ない場所がある。他の冒険者達もみんなこのオアシススペースで休憩する。

「おっ今日はラッキーだな、この広いスペースに誰もいないぜ」
「ホントね~、貸切じゃない」

 ガストンとメリーが珍しく誰もいないオアシススペースに興奮し、声を上げる。
 俺達は一旦オアシススペースにて休憩を取ることにした。
 こういう時のご飯や寝床の準備は、もちろん俺!
 今回で最後だ、そつなくこなしてやるよ。

「ダンジョンで温かいスープが飲めるなんて、ティーゴのおかげね!」
「本当にね。美味しい!」

 俺は今まで何を見てきたんだろう。
 よく聞けば、心のこもってない上辺だけの薄っぺらいセリフだ。みんなの表情に俺への軽蔑けいべつがうっすら滲んでいる。
 ここまで露骨ろこつだと、むしろ何で今まで気付かなかったんだ? って感じだ。
 他の冒険者パーティに「ガストン達に利用されてないか?」と心配されるはずだよ、こんなの。
 俺はパーティに入れてもらえたことが嬉しくて、ガストン達のことがちゃんと見えてなかったんだな。

「はぁぁ……」

 思わず深いため息が出る。
 コイツ等と一緒に居るだけで辛くなってきた。

「よし! じゃあ進むか」

 ガストンが次の階層に行こうと、勢い良く立ち上がったその瞬間。

「なっ⁉」

 オアシススペースの床がグラグラと揺れ、崩れ出した。

「キャ! 何で? ここはオアシススペースじゃないの⁉」

 ガラガラガララッ! ガラッ!
 大きな音と共に床がドンドン崩れ落ち、立っているスペースがなくなっていく。一体何が起きてるんだ?

「みんな落ち着け⁉ 大丈夫だからっ!」

 しかし次の瞬間‼
 全ての床が崩れ落ち、俺達は床の破片と共に、奈落ならくの底と思えるような所まで、長い時間をかけて落ちていった。

「いっ……⁉ ったくない?」

 かなり下の階層に落ちたはずなのに、俺は傷一つ負っていなかった。そんなことあるんだな。
 俺は嬉しくて、思わずガストンに声をかける。

「かなり下に落ちたけど、無事で良かったな」

 だがガストンは真っ青な顔をして震えている。
 よく見たら、みんな同じ方を見ておびえていた。

「ななっ、何だよあれ⁉」
「無理無理無理」
「イヤー‼ 死にたくない!」
「何でこんな所に居るんだよ!」

 みんなの悲鳴で体が強張る。
 何だ? 一体何が居るって言うんだよ!
 得体の知れない恐怖が俺を襲い、冷や汗と震えが止まらない。頭の何処かが、『見るな』と警告しているのが分かる。
 震える体を必死に動かし、ガストン達の視線が捉える先を見る。
 そこには果たして、明らかにレベルが桁違いの魔獣がいた!
 あれは……伝説の魔獣フェンリル。その姿は本でしか見たことがない。美しい銀色の毛で覆われた、五メートルはある巨躯きょくが俺達を冷たく見下ろしていた。
 やばい、本当に体の震えが止まらない。

「何で伝説のフェンリルが、Aランクダンジョンなんかに居るのよ……」
「こんなこと……夢よっ、現実じゃないわっ」
「……フェンリル、本当に存在したんだ……俺は死ぬのか」

 パニック状態のメンバーにガストンが叫ぶ。

「みんな落ち着け!」

 みんながガストンに注目する。

「こんな時のために決めていた作戦があるだろ! 今がその時だ」
「「あっ‼」」
「分かった!」

 次の瞬間、俺の体は麻痺して動かなくなっていた。

「なっ……? 何でこんな⁉」

 魔法使いのミナが、俺に麻痺の魔法をかけやがった。

「役立たずのお前をパーティに入れてやったんだ!」

 バカにしたような目で俺を見て叫ぶガストン。

「なっガストン、何でっ……」
「最後に役に立つ時がきたな!」
「エリックお前っ……!」
「私達のためにたぁ~っぷり時間稼ぎ、頼んだからね? ふふっ」
「くっ……メリーッ! ……クソックソォォ!」

 思い思いに罵倒ばとうした挙句、麻痺で動けない俺を残し、奴等は逃げて行った。今まで頑張ってきたのに、最後にこれか?

「……そーいうことかよ‼ 捨て駒か俺は……作戦って俺をおとりにすることか!」

 こんなことなら……昨日、文句を言ってぶち切れて、パーティを辞めたら良かった。
 散々バカにされ利用され、最後はゴミくずみたいに捨てられたな……何だったんだ。俺の人生って。
 シシカ村に一度も帰らず必死に働き、小間使いのように扱われ、最後はフェンリルに食われて死ぬのか。
 本当にバカだな、俺は。
 こんなことなら意地を張らず、シシカ村に帰ったら良かった。父さん、母さん、リム……最後に会いたかったな。
 それにしても、生きてる内に一匹でもいいから、何かテイムしたかったなぁ。
 恐ろしい気を放つ美しいフェンリルが、俺にゆっくりと近付いてきた。
 俺だってこんな伝説級の魔獣をテイム出来てたら、こんなミミッチイ扱いじゃなかったかもな。
 俺はフェンリルに向かって言葉を発する。

「テイム……」

 ククッ……何てな?
 その途端。
 パアアーッ‼
 まばゆい光がフェンリルを包み込み、光が収まると。
 テイム完了しました、と何やら呑気な声が聞こえた。

「えっ? はっはああ?」

 テイム完了⁉ 何が起こったんだ?


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