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本編 燦聖教編

とばっちりのティーゴ

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「クククッボロ儲けだな、お前のアイデア最高だせ」
「俺達が出ても良いんだけどオッズがなぁ1.5倍とか低過ぎだからな」
「本当この方法が手っ取り早くて最高だぜ! 王がくれる金だけじゃ足りねーんだよな」

男達がワイワイと雑談しながら歩いている。あの姿は闘技場で見た男達で間違いない。パールが足速に近付いて行く。
頼むから面倒な事にはしないでくれよ。

「おい! ちょっと待てぇ。お主達ズルをしたじゃろ?」

パールが男達を呼び止めた。

「ああん? 何だよ俺達に何かようか?握手やサインなら断ってるからな」

「ププッ……タケシ。サインって!」
横に立つ男が俺達をバカにした様に笑う。

何だ?感じ悪いな。

「はぁ? 何でワシがお主達と握手せねばならんのじゃ。ワシはお主達がさっきの試合で横槍を入れズルをした事を注意しに来たんじゃ!」

パールの話を聞き男達の眉間に皺が入る。

「はぁ? 何を言って……」

「ワシはちゃんと見たのじゃ間違い無い! お前達が不正をしたと言いに行く!」

「ちょっ……パールそんな喧嘩ごしに言ったら」

「どこに言いに行くって言うんだよ? お前の言う事なんて誰も信じないさっ」

「何でじゃ?」

「お前達はどこの田舎もんだ? 俺達、異世界の勇者を知らないのか?」

異世界の勇者?この世界の勇者のジョブとは違うのか?

パールを見ると何か気付いたのか少し驚いた様な顔をしている。

「この王都じゃあな? 俺達に逆らう奴なんていないんだよ? 分かる?ギャハハ! 教えてやろうか? 俺のジョブはな、聖剣なんだよ? 聖剣のタケシ様だ。これ聞いたらビビった?」

「俺達に楯突いて無事でいられると思うなよ?賢者のレント様が直々に痛めつけてやるよ」

「おいっタケシにレント、この前宰相様に注意されたばかりだろ?今問題を起こすのは不味い」

「まぁ……そうだけどよ。どーすんだよ?」

「まぁ僕に任せてくれないか? その後ろに立つ男が抱いている狐を寄越したら許してやるよ!」

『なっ!わっ…ムグッ』

狐じゃないと言い怒り出しそうなコンちゃんの口を慌てて俺は塞いだ。気持ちは分かるが喋る狐はいないからな?我慢してくれ。

「またかよ……お前は動物が好きだなぁ」

「タケシみたいに女に興味ないからね。その点動物はいつだって僕を癒してくれる」

「へっ良く言うよ勇者様?癒しの動物を虐待して死骸にしてるのは誰だっけ?」

「虐待じゃないよ。僕の深い愛情だ」

「へーへー怖い愛情です事」

コイツらは何を言ってるんだ?
動物を虐待?それが愛情だと?ふざけるのも大概にしろ!

「お前達みたいな頭のオカシイ奴に、可愛いコンちゃんは渡さない!パール行こうぜ」

俺が怒りを露わにしその場を去ろうとした瞬間、魔法が俺に向かって放たれた。
だがそれは高貴なるオソロの守護により弾き返された。

返った魔法は既の所で避ける事が出来たが、勇者一行の顔色は一気に青ざめた。

「なっ……魔法を弾き返しやがった!何だコイツは」

「お前達……こんな所で魔法を放つとかバカなのか?」

俺は呆れた顔で勇者一行とやらを見た。

「五月蝿い!何をしたんだよ」

「何をって……はぁ」

面倒だが言わないとずっと執念深く聞いてきそうだったので、高貴なるオソロの効果を話した。

それを聞いたコンちゃんが自分も欲しいと言わんばかりに羨ましそうにオソロを見つめていた。

分かったよ、コンちゃんの分も作ってもらうからな。
俺はコンちゃんにだけ聞こえる様にそう言うと優しく頭を撫でた。

「ズルしやがって!何だよそれ俺達に寄越せ」

賢者と名乗った男が、俺の手を無理やり握ろうとしたが、パールが結界を張り近寄る事が出来ない。さすがパール。

余りにも異世界の勇者達が騒ぐので、燦聖教のローブを羽織った男達が数人集まって来た。その背後には野次馬の様に人集りが出来ていた。

「ヒイロ様!どうされましたか?」
「ああっジーク聞いてくれよ!コイツらが俺達の事をバカにするんだよ。変な魔道具を使って近寄る事も出来ないし」

「それは……お前達!勇者様に何たる無礼。どうなるのか分かってるのか?」

ジークって男が文句を言って来たがもう本当どうでも良い。この茶番劇どうにかならないか?
人集りが出来てるし……最悪だ。

「知らないよ!そっちがコンちゃんを寄越せって、訳の分からない事を言って来たんだ」

俺はコンちゃんをギュッと抱きしめた。

「なっ!その狐を寄越せば許してやるって言っただけだろ?」

「ヒイロ様少し落ち着いてください。宰相様にもこれ以上問題を起こすなと注意されています」

「だけど……」

そう言われても勇者の男はコンちゃんをじっと物欲しそうに見てくる。
俺はコンちゃんを隠す様に勇者と言われる男に背を向けた。

少し沈黙した後ジークと言う男はニヤリと笑いとんでもない事を言い出した。

「分かりました。では決着は闘技場でつけましょう」

ジークと言う男の言葉に勇者達は歓喜の声を上げた。

「ジーク!ナイスアイデアだ。闘技場で起こったことなら仕方ないよな」
(試合で死人が出る事だってザラにあるからな……ククッ)

「なっ何で俺がそんなのにっ」
嫌だと断ろうとしたらパールに止められる。

「ティーゴ待つのじゃ。分かった受けて立とう」

「ちょっ?パール!何言ってんだ?」

「ワシは色々とムカついたのじゃ!このティーゴが勝負に勝てばお主らの不正を認めるんじゃ!分かったの!」

「分かったよ。その代わり僕が勝てばその狐を貰うからね」

「望む所じゃ!」

ちょっと待って?俺の意見はムシですか?
理解が追いつかないぞ?俺は闘技場で戦うのか?
パールを見ると親指を立てて俺を見る。
何その頑張るのじゃって無言のエール!
はぁ……勘弁してくれ。
って言うか俺勇者に勝てるのか?パールが試合に出た方が良かったんじゃないのか?

俺の不安を他所に闘技場での戦いの話はドンドン勝手に進んで行った。
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