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本編 燦聖教編
ユグドラシルのお願い
しおりを挟むーー誰?私ですよ。先程からずっと話をしてました。
美しい女性はニコリと微笑んだ。
「ユッユグドラシル?」
ーーはい。先程ティーゴ様から栄養たっぷりの美味しいお水を頂きまして、本来の力を取り戻しました。あんなに清らかで癒されるお水は初めてです。
私はもうあのお水の虜です。
ユグドラシルは少し恍惚とした表情をし、身体を少しプルプルと震わせた。
ーーそれにこの姿なら何処へでも移動出来るのです。
そう嬉しそうに話すユグドラシルを見てティーゴは安心したのか、眩しそうに少し目を細め大木ユグドラシルを見る。
その姿は生気が増しキラキラと輝いて見えた。
「元気になって良かったよ」
そんなティーゴの元にトレントがやって来た。
『トレ~ント』
ティーゴ達は大木の下に座り、お茶を飲みながらのんびりと心地よい風を浴び涼んでいた。
すると……ふとパールが何かを思い出したのか、徐に振り返りユグドラシルを見た。
「所で子供と言っておったが、ユグドラシルの子供は何処におるんじゃ?」
ーーこの場所では全く感じ取れないのですが、この異空間?ですか?この綺麗な場所から出て私が元いた世界に出ればすぐに子供と繋がれると思います。
「なるほどのう……」
「じゃ異空間から出てみる?」
ーー良いのですか?
「もちろん」
ティーゴは異空間のカギを取り出し、現れた扉を開ける。
突然目の前に、別世界が現れたユグドラシルは驚き中々扉に近寄る事が出来ない。
「ふふっ何も怖い事はないよっ!さあついて来て」
ティーゴはユグドラシルの手を引き異空間から出て来た。
その場所はガドウィン街を出てすぐの街道だ。
ーーああっ……ここはよく知っている世界です。
ユグドラシルは空気を身体中に浴び、懐かしいけどまだまだ濁っていますねと悲しそうに呟いた。
「そうなのか?」
ーーはいっそれを今、子供が必死に浄化している為、子供の命を削っています。
ティーゴ様!お願いがあります。どうか、どうか先程のお水を分けて頂けませんか?
あのお水を浴びる事が出来れば子供が復活出来ると思うのです。
「そんなの、もちろんオッケーだよ!でも水をどーやって運ぶ?沢山あった方が良いよな?」
ーーそれは……多いに越した事はないんですが……。
「なら、オーちゃんに大量の水を収納出来るバックを作ってもらったらどうじゃ?」
パールが良いアイデアじゃろ?っと言わんばかりの顔をして俺を見る。
「そんなのオーちゃん作れるのか?」
「ああっ。この前獣人達に渡しておったのを見たんじゃ。確か魚を入れるとか言っておったのう……」
オーちゃん尊敬するよ。
俺も早く教えて貰わなきゃ。
「よしっ早速オーちゃんの所に行こう!」
再び扉を出し、異空間に戻った。
オーちゃんのお店に行くと、カウンターでトレントが座って居た。足を少しパタパタと動かし何やら楽しそうだ。
早速パールはオーちゃんの所に行き説明をし何を作るか相談をしている。なれたもんだな。
などとパールのやり取りを横で見て居たら、トレントがコッチに歩いて来て何をするのかと思ったら……。
『トレント♪』
トレントはユグドラシルにコップを差し出した。
ーーまぁ!私にくれるのですか?
『トレ~ント♪』
そうだと言わんばかりに、更にコップをユグドラシルに突き出す。
ーーありがとうございます。いただきますね。
ゴクッ
ーーはわっこっ……コレは何て美味しいお神酒!はぁ……身体中が幸せで苦しい。
んっ?もしかしてコップの水はレインボーマスカッ酒!?
ーーああっこの様なお神酒まで異空間には存在しているのですね。
ユグドラシルは一気に飲みほした。頬はほんのり桃色に色付いている。
そして空のコップを寂しそうに見ていた。
プッ……何かトレントみたいだな。
この後水を持ち運べる袋が完成し、俺はそれにたっぷりと慈愛の水を注ぎ、ユグドラシルに渡してやる。
ーーそれで……あのう。先程のお神酒も少し袋に入れて持たせてくれたら、きっと子供が喜ぶと思うのです!子供もお神酒大好きですから!喜ぶと!
ユグドラシルが余りにも欲しがるので、もう一つ追加で袋を作ってもらい、それにレインボーマスカッ酒を入れてやった。
やたらと子供を強調していたが、アレは絶対自分のだろ?
ユグドラシルは満足気にニコニコと頬が緩みっぱなしだ。
そしてユグドラシルは、では子供に会いに行って来ますと飛んで行った。
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