上 下
135 / 314
本編 燦聖教編

キノ小人達のその後

しおりを挟む

『主殿……キラーウルフ達コイツらが言ってるジャイが、このキノ小人の村を、百匹以上からなるキラーウルフの群れが探し回っているみたいジャイ』

『キラーウルフ達は以前にキノ小人達が作るキノコやキノ小人を食べて味を占めたらしいコブ』

「何だって!」

たまたまキラーウルフが襲って来たんじゃなかったのか。

『キラーウルフは三グループに分かれていて、コイツらのグループが一番少ないグループらしいジャイ』

「やはりそうでしたか……」

俺達の話を一緒に聞いていたキノ小人族の長老が、肩をガクッと落とし大きな溜息をはいた。

「実はキラーウルフ達に村が襲われたのは、これで四回目になるんですよ。
その度にキノ小人が食べられ、今では以前居た人数の半分以下になってしまった。
私の妻もその時に食べられてしまった……はぁ」

「そんなっ……!」

楽しく生きていると思ってたのに、キノ小人達にそんな辛い過去があったなんて……。

「見つかる度に村を移動して逃げ回っていたのですが、キラーウルフ達にはどうも隠蔽魔法をかけ隠れ住んでいても、私共の特殊な胞子の匂いを辿り住処が見つかってしまう事が分かりました……。
隠蔽魔法で隠れる事が出来ないなんて!
それなら私共キノ小人族は、キラーウルフに食べられる死を待つだけじゃないですか……」

長老のマッタケさんは項垂れ何も話さなくなってしまった。

「なぁパール……」

「ふむ?ティーゴも同じ事考えておるのじゃろう?」

「ああ。良い住処が見つかるまで、キノ小人達を異空間で一時的に避難させようと思ってる」

「ワシも同じ考えじゃ」

パールと俺は目を合わせてニヤリと笑う。

「マッタケさん、これは提案なんだけど魔獣から全く襲われない安全な場所があるんだ。
その場所は今すぐにでも移住出来るんだ。
キノ小人達皆で移住しないかい?」

「えっ!?全く襲われない場所?」

項垂れていた長老は、顔を上げ瞳を輝かせてティーゴの話に耳を傾ける。

「見て貰った方が早いかな?」

ティーゴは鍵を出し異空間の扉を開ける。

「ここが移住してもらう場所です。中にいる魔獣達は皆俺の仲間なのでキノ小人族を襲ったりする奴はいない」

長老は異空間の扉入り口で、口をポカンと開け何も言わず立っていた。

「……あの?マッタケさん?」

何も話さない長老にティーゴは不思議に思い話しかける。

「ああっ……ティーゴさん、いやっティーゴ様……この様な楽園に私共が住んでも良いと?」

「もちろん!なぁ皆?」

『…オデと…仲良し…よろしく』

『ティアも大歓迎なの!あの甘味キノコ大好きなの……ふふ』

『うむ……あのキノコは美味かったのだ。我も賛成なのだ』

銀太とティアよ?それはキノ小人じゃなくて完全にキノコ目当てだろ。食いしん坊達め。

「ありがとうございます」

マッタケさんは涙を流し喜んでくれる。
今までずっと不安だったんだ、これからは安心して異空間で過ごしてほしい。

「さてと移動するかのう?」

パールが異空間への移動準備を始めた。

先にキノ小人達全員に異空間の中に移動してもらい、住んでいた場所を丸々パールが移動させた。

「キノ小人の住処はスパイダーの森で良いじゃろう」

パールはキノ小人達の住処をスパイダーの森へ置いた。

自分達の住処まで移動してくると思ってなかったキノ小人達は、パールに集まり皆涙ながらにお礼を言っていた。

パールは、少し照れ臭そうにして困っている。

クスッ……良かった。 

パールとキノ小人達の事を見ていたら、長老のマッタケさんと目があった。

長老はティーゴの所に走って来た。

「ティーゴさん本当に何から何までありがとうございます。
それで、皆と話あったんですが一時的ではなくこの楽園で私共が住むのは難しいでしょうか?」

「ここに?俺は別に構わないよ。本当に良いのか?」

「もちろんです!ここが良いのです。
この楽園は空気まで澄んでいて、ここならもっと素晴らしいキノコが作れる気がします」

何やらマッタケさんは、メラメラと闘志を燃やし張り切っている。
まぁ……楽しそうならそれで良い。

また住人が増えたな。


ピコン!

異空間ランク【C】↑up

異空間の住人が五百人を超えました。

ランクアップにより異空間に森が現れます。
この森には未知なる果物の木や薬草、野菜など沢山生息しています。

次のレベルアップは千人です。

なっ……何だって?キノ小人達が住むと言ったら。
森が現れた!そうか五百人超えたのか。

小さかったスパイダーの森が何十倍もの大きな森に変わった……。

「この森……どこまで広がってるんだよ」
しおりを挟む
感想 1,508

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

最強の男ギルドから引退勧告を受ける

たぬまる
ファンタジー
 ハンターギルド最強の男ブラウンが突如の引退勧告を受け  あっさり辞めてしまう  最強の男を失ったギルドは?切欠を作った者は?  結末は?  

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

異世界もふもふ召喚士〜俺はポンコツらしいので白虎と幼狐、イケおじ達と共にスローライフがしたいです〜

大福金
ファンタジー
タトゥーアーティストの仕事をしている乱道(らんどう)二十五歳はある日、仕事終わりに突如異世界に召喚されてしまう。 乱道が召喚されし国【エスメラルダ帝国】は聖印に支配された国だった。 「はぁ? 俺が救世主? この模様が聖印だって? イヤイヤイヤイヤ!? これ全てタトゥーですけど!?」 「「「「「えーーーーっ!?」」」」」 タトゥー(偽物)だと分かると、手のひらを返した様に乱道を「役立たず」「ポンコツ」と馬鹿にする帝国の者達。 乱道と一緒に召喚された男は、三体もの召喚獣を召喚した。 皆がその男に夢中で、乱道のことなど偽物だとほったらかし、終いには帝国で最下級とされる下民の紋を入れられる。 最悪の状況の中、乱道を救ったのは右ふくらはぎに描かれた白虎の琥珀。 その容姿はまるで可愛いぬいぐるみ。 『らんどーちゃま、ワレに任せるでち』 二足歩行でテチテチ肉球を鳴らせて歩き、キュルンと瞳を輝かせあざとく乱道を見つめる琥珀。 その姿を見た乱道は…… 「オレの琥珀はこんな姿じゃねえ!」 っと絶叫するのだった。 そんな乱道が可愛いもふもふの琥珀や可愛い幼狐と共に伝説の大召喚師と言われるまでのお話。 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

授かったスキルが【草】だったので家を勘当されたから悲しくてスキルに不満をぶつけたら国に恐怖が訪れて草

ラララキヲ
ファンタジー
(※[両性向け]と言いたい...)  10歳のグランは家族の見守る中でスキル鑑定を行った。グランのスキルは【草】。草一本だけを生やすスキルに親は失望しグランの為だと言ってグランを捨てた。  親を恨んだグランはどこにもぶつける事の出来ない気持ちを全て自分のスキルにぶつけた。  同時刻、グランを捨てた家族の居る王都では『謎の笑い声』が響き渡った。その笑い声に人々は恐怖し、グランを捨てた家族は……── ※確認していないので二番煎じだったらごめんなさい。急に思いついたので書きました! ※「妻」に対する暴言があります。嫌な方は御注意下さい※ ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

卒業パーティーで魅了されている連中がいたから、助けてやった。えっ、どうやって?帝国真拳奥義を使ってな

しげむろ ゆうき
恋愛
 卒業パーティーに呼ばれた俺はピンク頭に魅了された連中に気づく  しかも、魅了された連中は令嬢に向かって婚約破棄をするだの色々と暴言を吐いたのだ  おそらく本意ではないのだろうと思った俺はそいつらを助けることにしたのだ

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。